嚥下訓練とは、嚥下障害のある方に対してリハビリし、機能回復を目指すことです。
嚥下訓練では、医師、作業療法士、言語聴覚士などさまざまな職種の方が関わります。
中でも言語聴覚士は、嚥下訓練ではどのような役割があるのでしょうか?
本記事では、嚥下訓練と言語聴覚士について以下の点を中心にご紹介します。
- 嚥下訓練での言語聴覚士の役割とは
- 言語聴覚士が行う嚥下訓練の内容について
- 言語聴覚士が行う嚥下訓練のポイントとは
嚥下訓練と言語聴覚士について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
嚥下訓練とは
嚥下訓練とは、食べるために必要な筋肉を動かしたり、刺激を与えたりして口腔の周りの運動や感覚機能を促します。
また、嚥下訓練には食べ物を使わない基礎訓練と食べ物を使った摂食訓練があり、基礎訓練と摂食訓練を組み合わせながらリハビリします。
嚥下訓練することで、摂食による誤嚥のリスクを予防でき、安全に食事を楽しむことを目標としています。
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嚥下訓練での言語聴覚士の役割
嚥下訓練での言語聴覚士の役割について
- 言語聴覚士とは何かとは何か
- 嚥下訓練に介入する目的
についてそれぞれ具体的にご紹介いたします。
言語聴覚士とは
言語聴覚士とは、音声機能、言語機能、聴覚に障害のある方に対して、機能の向上と維持を図るために指導、援助します。
言語聴覚士は、機能の向上と維持を図るために言語訓練、そのほかの訓練、さらに必要な検査を助言します。
また、言語聴覚士法に沿って、診療の補助として、医師や歯科医師の指示の下、嚥下訓練をします。
嚥下訓練に介入する目的
言語聴覚士が行う嚥下訓練には、実際に食べ物を使って食べることで摂食機能を高める摂食訓練があります。
また、食べ物を使わないで、口腔の運動や拳上訓練など運動を誘発する基礎訓練があります。
さらに言語聴覚士が嚥下訓練する場合、必ず医師、または歯科医師の指示の下で行います。
医師から嚥下訓練が必要と判断された方に対して、言語聴覚士が機能評価します。
その後、カンファレンスで医師を含めたチームで情報を共有し、嚥下機能の向上を目指しアプローチしていきます。
摂食が可能になるには、摂食訓練の過程を経る必要があります。
基礎訓練と並行しながら、早期に嚥下訓練を開始することが有効といわれています。
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言語聴覚士が行う嚥下訓練の内容
言語聴覚士が行う嚥下訓練の内容には
- 直接的嚥下訓練(摂食訓練)
- 間接的嚥下訓練(基礎訓練)
があります。
それぞれ具体的にご紹介いたします。
直接的嚥下訓練
直接的嚥下訓練とは、実際に食べ物を食べることにより摂食機能を高めていきます。
各種検査で状態を把握し、残存している能力を有効に活用します。
姿勢や食べ物の形態を、安全で適切にできるように設定した上で、嚥下訓練を施します。
患者の状態に合わせて、徐々に姿勢や食べ物の形態を変化させていきます。
間接的嚥下訓練
間接的嚥下訓練の種類について、以下の表にあらわしています。
アイスマッサージ訓練 | 肩・頸部・胸郭の関節可動域訓練 | 嚥下体操 | 舌・口唇・頬など口腔周囲のマッサージ・運動 |
頭部挙上訓練 | 咀嚼訓練 | 咳嗽訓練 | ブローイング訓練 |
【アイスマッサージ訓練】
凍った綿棒に少量の水分を含ませます。
凍った綿棒に嚥下反射誘発部位を刺激して、嚥下反射を刺激していきます。
【肩・頸部・胸郭の関節可動域訓練】
ストレッチやマッサージすることで、肩甲骨、頸椎の関節可動域の改善を目指します。
【嚥下体操】
嚥下体操は、発声発語器官、嚥下関連筋肉の筋力維持、頸部、胸郭の可動性の維持につながる体操です。
食事前などに、定期的に嚥下体操することで、誤嚥性肺炎の予防効果が期待できます。
【舌・口唇・頬など口腔周囲のマッサージ・運動】
舌の筋肉増強、口唇周りの筋群の可動域を改善させて、食べ物の口腔内の保持や喉への送り込みを促します。
【頭部挙上訓練】
仰臥位の姿勢をとり頭部を持ち上げることで、舌骨上筋群の筋力の強化を図ります。
嚥下に必要な喉頭挙上を促進していきます。
【咀嚼訓練】
咀嚼訓練では、ガムやスルメを使って咀嚼を促します。
咀嚼を促すことで咀嚼に必要な筋肉を強化します。
【咳嗽訓練】
深く息を吸い込む咳嗽を促進します。
むせた時にしっかりと喀出ができることを目指す訓練です。
【ブローイング訓練】
ブローイング訓練とは、ペットボトルや水の入ったコップにストローを入れ、鼻をつまみながらストローから息を吐きます。
鼻から息が漏れてしまう方や軟口蓋が挙上しにくい方や呼気が減弱している方に対して行う訓練です。
言語聴覚士が嚥下訓練する際のポイント
言語聴覚士が嚥下訓練する際のポイントは、嚥下障害がどの部位にあらわれているかによって、訓練が変わってきます。
たとえば、舌の筋力が低下していて喉への送り込みが上手く行かない場合は、咽頭周辺を中心に嚥下訓練します。
咽頭周辺を中心に嚥下訓練することで、舌の筋力強化、発語器官の可動域が鍛えられます。
どの部位で障害が起きているかを確認し、状態に合わせた訓練内容を決めるのも言語聴覚士の大切な役割です。
嚥下訓練に携わる言語聴覚士以外のメンバー
嚥下訓練に携わる言語聴覚士以外のメンバーは、どのようなメンバーがいるのでしょうか?
以下でそれぞれみていきましょう。
医師
医師とは、医術を仕事とする専門家で、医師法の適用を受けて病気を診察・治療します。
嚥下訓練では、全身管理、リスク管理、検査などを最終決定します。
看護師
看護師は、全身状態を把握して医療的な管理の上で良い状態を保ち、サポートします。
体温、血圧などの管理、摂食のサポート、口腔ケア、薬を投与します。
また、不安を受け止めるなど精神面でも支え、意欲を引き出します。
医療、介護、福祉との連携を取りながら、できる限り自立した日常生活を保ち在宅生活の安定を目指します。
管理栄養士
嚥下障害を持つ患者は多くの場合、低栄養の状態です。
栄養が十分にとれないと、リハビリを進めることが難しくなります。
管理栄養士は、栄養状態の評価、必要な栄養量の検討、経腸栄養剤の選択、栄養食事の指導などをします。
救急救命士
救急救命士は、救急自動車内で医師の指示のもと、心肺機能停止状態の方に対して、器具を用いて気道に詰まった異物を取り除きます。
そのほか、気道確保、静脈路の確保のための輸液など、救命措置を施します。
また、一定の要件のある救急救命士は、気道挿管と心拍再開に使用するアドレナリンの投与が認められています。
命を救うためには、救急救命士による病院到着前の迅速で的確な処置が重要です。
作業療法士
作業療法士は食べるための姿勢の維持、腕などの動き、手指の巧緻性の訓練など食事動作として一連の動きを指導・援助します。
こぼさないように口の中に食べ物を入れたり、噛んだりする動作をスムーズにできるように指導します。
歯科医師
歯科医師は、歯科疾患を含めた口腔内の器質または口腔機能にかかわる嚥下機能を診断・評価します。
機能回復に必要な歯科治療をし、嚥下訓練、口腔ケアの実施と指導管理をします。
歯科衛生士
歯科衛生士は、口腔衛生状態を観察、評価し、医療器具、薬剤を用いて口腔清掃します。
噛んだり、飲み込む力が弱っていたりする方に対して、指導、訓練します。
口腔衛生状態を維持し、口腔機能を向上させることで、誤嚥性肺炎の予防に効果があります。
また、歯科衛生士は歯科医師の指示、指導の下で訓練が行われます。
診療放射線技師
診療放射線技師とは、厚生労働大臣の免許を受けて医師、歯科医師の指示の基、人体に対して照射し検査します。
嚥下機能を診断、確認するために、X腺検査、CT検査、MRI検査、超音波検査などをします。
また、医療用放射線利用に関して安全管理などもしています。
理学療法士
理学療法士は、日常生活動作や生活関連動作に対して、機能訓練・動作訓練を実施し、指導します。
摂食、嚥下の姿勢の評価、身体の機能訓練、体力向上、呼吸理学療法を指導します。
嚥下訓練をすることで、生活環境を整えて自立を促します。
また、在宅生活の活性化を目指し、より社会的活動に参加できるように訓練します。
臨床検査技師
臨床検査技師とは、厚生労働省が管轄している国家資格です。
病院やクリニックなどの医療機関において、さまざまな臨床検査をする専門家です。
臨床検査技師の主な業務は、医師、歯科医師の指示の基に体の構造、機能に関する情報を調べることです。
具体的には、肺活量、心電図、脳波、超音波検査などの検査、血液、尿など検体から調べる検査があります。
言語聴覚士の嚥下訓練以外の業務内容
言語聴覚士の嚥下訓練以外の業務には、話したり書いたりする練習、言葉を発音する練習などがあります。
具体的には、交通事故で頭部外傷などにより、話したり、聞いて理解したりすることが難しくなる方などに練習します。
また、運動麻痺によって、舌や口唇を使って発音が難しくなった方には、機能回復の運動を指導します。
そのほか、声が出ない、ガラガラする状態に対して症状に合わせた発声方法を指導します。
また、加齢により音や言葉が聞こえない方に対しては、補聴器やコミュニケーション方法を指導します。
以上のことから、言語聴覚士の業務内容は多岐にわたります。
嚥下訓練と言語聴覚士のまとめ
ここまで、嚥下訓練と言語聴覚士の情報を中心にお伝えしました。
要点を以下にまとめます。
- 嚥下訓練での言語聴覚士の役割は、嚥下訓練が必要とされた方に対して言語聴覚士が機能評価する
- 言語聴覚士が行う嚥下訓練の内容について、直接的嚥下訓練と間接的嚥下訓練がある
- 言語聴覚士が行う嚥下訓練のポイントは、嚥下障害がどの部位にあらわれているかにより訓練が変わる
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。