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健達ねっと>健康お役立ち記事>嚥下>高齢者は摂食障害になりやすい?摂食障害となる原因について紹介

高齢者は摂食障害になりやすい?摂食障害となる原因について紹介

摂食障害とは食事に対しての異常を起こし、健康のバランスを崩してしまうことです。
なかでも加齢や認知症を発症した方が「摂食障害」になりやすいともいわれています。
では何が原因で高齢者の「摂食障害」を引き起こすのでしょうか?

本記事では高齢者の「摂食障害」について以下の点を中心にご紹介します。

  • 高齢者の問題となる摂食障害の原因は?
  • 高齢者が摂食障害になるとどんな問題がある?
  • 高齢者の摂食障害を防ぐにはどうすれば良い?

摂食障害について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

摂食障害とは

摂食障害とは食事の「量」や「食べ方」などの異常が続いて、心と体のバランスを崩す病気です。
「摂食障害」と一言でいっても、以下のようなさまざまな症状がみられます。

  • 体に必要な量の食事が食べられない
  • 自分では食欲が抑えられず食べ過ぎる
  • 飲み込んだ食べ物を意図的に吐き出す
  • 下剤を乱用して排出させる

摂食障害は10代〜20代の体型を気にした若い女性が多いと思われがちです。
しかし加齢や心疾患によって発症する方も多く、年齢や性別、置かれた環境もさまざまです。

摂食障害は健康のバランスを崩してしまうだけでなく、心の病や合併症など深刻な影響をもたらします。

日本では摂食障害を発症して医療機関を受診している方が年間21万人といわれています。
しかしそのほかに「治療を受けていない」、「病気を自覚していない」という方もいます。
さらに「治療を中断している」方も多数いるのが現状です。

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高齢者の問題となる摂食障害の原因

高齢になると、若い時に比べて徐々に食事量が減ってしまうものです。
しかし、食べ物を飲み込めない「嚥下障害」と摂食障害は違います。
病気や食事の認識力の低下により「食事を摂らなくなる」のです。

認知症による影響

認知症によって目の前の食べ物を認識することができなくなります。
したがって食べ物に興味を示さなくなり、口に入れることができなくなります。

認知症を発症した高齢者の嚥下造影を行い、多くの方の嚥下機能は問題なかったという結果もあります。
この結果から、食べることはできるけれど「食事自体を認識することが難しくなっている」と考えられます。

老化による影響

高齢者の摂食障害の多くは「認知症」のほかに「加齢」による影響もあります。
老化に伴い、口腔機能や唾液分泌量の低下で食事中にむせたり、食べづらさを感じます。
これらの症状は、嚥下障害の可能性があります。

また筋力や運動量が低下し空腹を感じにくくなるため、食欲が湧かないのも原因となります。

病気による影響

脳卒中などの後遺症で、感覚麻痺や運動障害により摂食障害が起きることが多くあります。
後遺症で口や舌、のどの動きが思うようにいかず、食べ物が上手く飲み込めなくなってしまうためです。
さらに食事中にむせて誤嚥(ごえん)しやすくなり、苦痛を感じて食事量が減ることも摂食障害の原因になります。

また腫瘍の化学療法や放射線治療で、摂食障害を引き起こすこともあります。
化学療法の副作用で嘔吐や味覚障害、口内炎などができやすくなるからです。
味覚障害で食事がまずく感じたり、口の中が炎症して痛みで食事が思うように摂れなくなるためです。

副作用による影響

高齢になると複数の内服薬を処方され同時に飲むこともあります。
しかし薬の飲み合わせや副作用によって、食欲不振や胃腸障害を起こしてしまうことがあるのです。
また治療でうつ病や睡眠薬などの薬を飲んでいる場合も注意が必要です。
食事中に眠気が出てしまったり、口腔内の乾燥を招くなど食事に影響をもたらすことがあります。

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高齢者が摂食障害になるとどうなる?

高齢者が摂食障害を発症すると、食事に興味を示さなくなり「食に対する欲求」が低下します。
そして徐々に食事量が減り「栄養失調」になりかねません。
栄養が不足すると体が疲れやすくなったり、感染症や風邪をひきやすくなってしまいます。

食事が減り、噛む回数が減ると咀嚼力や口腔内の機能が低下し、さらに食事がしづらくなります。
このように摂食障害をきっかけに体に悪循環が生まれてしまうのです。

また食べ物が飲み込みづらくなると、嚥下障害による誤嚥性(ごえんせい)肺炎を引き起こすリスクが高くなります。
誤嚥性肺炎は、食べ物や飲み物が細菌と一緒に誤って気管に入ってしまい、炎症を起こします。
口腔機能が低下すると誤嚥しやすくなり、食事中でなくても自身の唾液によって肺炎を起こすことがあります。
この誤嚥性肺炎は最悪の場合、死に至ることもあります。

摂食障害を防ぐにはどうすれば良い?

では、摂食障害を防ぐためには、どのようなことに気を付ければ良いのでしょうか。
普段の生活の中に気軽に取り入れられる対策をまとめていきます。

バランスの取れた食事を意識する

まずは「食生活の見直し」を意識しましょう。
私たちの体は食べ物や飲み物の「栄養素」で作られています。
バランスの良い食事をすることで脳血管疾患や心疾患、また認知症などの根源を見直すことになります。

また少し歯ごたえのあるものや、大きめにカットされた料理も意識して食べるようにします。
よく噛むことで咀嚼筋が鍛えられ口腔機能が活性化するためです。
さらに咀嚼が増えると唾液の分泌量も増えて、嚥下機能が活発になり良い循環が生まれます。

頬や唇のトレーニング

顔や口の筋肉を鍛える「口腔体操」もおすすめします。
まず「頬」の筋肉のトレーニングを行います。
頬を思いっきりふくらませたり、ストローで吸うように頬を引っ込めます。
このトレーニングで口の周りの筋肉が活性化しやすくなります。

次に「舌」のトレーニングです。
口を大きく開けて舌を思いっきり伸ばし、左右に動かします。
頬と舌の体操は、それぞれ10回を目安に行いましょう。

このトレーニングでは舌の動きがスムーズになり発語をしやすくします。
いずれも座りながら出来るので、気が付いた時に気軽に行うことができます。

唾液腺マッサージ

高齢者になると老化とともに体の水分量が減り、唾液が出にくくなります。
内服している薬の副作用で、唾液が減ることもあります。

口渇の状態では、食事がのどを通りにくく、しゃべることも億劫になってしまいます。
そこで潤いのある口腔環境を維持するためにおすすめなのが「唾液腺マッサージ」です。

以下の3箇所を重点的に優しくマッサージします。

【耳下腺(じかせん)】
耳たぶの少し前あたりに指を押し当てて、円を描くようにマッサージします。
(1セット 5~10回)

【顎下腺(がっかせん)】
あごの骨の内側を顔のラインに沿って、少しずつずらしながら優しく押します。
(1セット 5~10回)

【舌下腺(ぜっかせん)】
あごの真下(舌のつけ根)を両方の親指で下から押し上げるようにゆっくり指圧します。
(1セット 5~10回)

座りながら、家事の合間にも気軽にできるので、ぜひやってみてください。

そのほかに【唾液を増やす方法】

  • 梅干しやレモンなどの酸味のあるあるものを食べる
  • 鼻呼吸を意識する
  • 水分をまめに摂取する

口腔ケア

口の中が不衛生でいると細菌が増殖し炎症を起こします。
さらに老化とともに唾液の分泌が減り、虫歯になりやすくなります。

食事後は必ず歯を磨き、口やのどをうがいするなど「清潔を維持する」習慣をつくります。
抜歯して食べ物が嚙みにくくなると「摂食障害」の原因にもなりますので日々の口腔ケアが大切です。

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認知症摂食障害の看護について

認知症を発症すると、食べ物を認識できなくなり口に入れることを拒む方もいます。
また箸やスプーンを「どのように使っていいのか分からなくなる」こともあるのです。
そのときは介助者や看護する方のサポートが必要になるでしょう。

ここで大切なのが以下の3つです。

【食事をする】
摂食障害を発症すると食事量が大幅に減ってしまいます。
そのため体重が減り、痩せてくると周囲は心配になります。

しかし「食べないから」といって無理やり食べさせてはいけません。
食事を強要したり、食べないことを責めたりしては、なおさら食事が苦痛になります。

認知症の摂食障害の方を介助する際は以下の点を意識しましょう。

  • スプーンなどの食具が上手く使えない場合は「使いやすいもの」に変える
  • 食べやすい姿勢に整えることを意識する
  • 盛り付けは「少量」にして食べれたときの達成感を味わってもらう
  • 手づかみで食べられる「のり巻き」や「おかず」などを用意する

また薄味や濃い味、甘い酸っぱいなど本人の好みの味を知るのも良いでしょう。
「好きなものだけ食べて良い」というおおらかな気持ちで対応することが大切です。
食べ物を口に運んで咀嚼し「食事をする」ことが重要なのです。

【誤嚥を防ぐ】
認知症になると食べ物を認知できず飲み込むまで、かなり時間がかかることもあります。
かといって無理やり口の中に押し込むようなことをしては、ますます食事が進まなくなります。
さらに「誤嚥」する危険性もあり、食事はつらいものと認識してしまいます。

食事をする前にうがいをして口の中を潤したり、口腔体操で動きを良くすることも食事をしやすくするポイントです。

【楽しく食事をしてもらう】
安心安全に食事を楽しんでもらえるような雰囲気づくりも大切です。
静かに食べたい方もいれば、にぎやかに食卓を囲むのが好きな方もいます。

また器を変えたり、きれいな盛り付けの工夫もあると良いでしょう。
食事を目で楽しむことで、摂食のきっかけになることもあります。
ほかに、ゆったりとした音楽をかけるのもひとつの方法です。

薬の使い方

若い人でも摂食障害になるの?

摂食障害は誰もがなりえる病気で年齢や性別は関係ありません。
若者でも心因性や脳疾患の病気の後遺症や、薬の副作用で摂食障害を引き起こします。

摂食障害は大きく3つに分けられます。

  • 神経性やせ症(拒食症)
  • 神経性大食症(過食症)
  • 過食症障害

過度なダイエットが引き金になり摂食障害を起こしたり、対人関係や家庭環境のストレスも要因になります。

摂食障害になりやすい年齢層

摂食障害になりやすいのは高齢者に限らず10〜30代の若者、とくに女性に多いといわれます。
10代後半が発症のピークですが、子どもや男性も少なくありません。
若い時に発症し、そのまま中高年に至っている方もいて「過食性障害」を患う方は年齢層が比較的高めです。

摂食障害のきっかけは、ダイエットや対人関係などのストレスが要因になることが多いといわれます。
一度発症すると回復には長期間必要です。
発症してから回復まで、早くても5年ほどかかり全体の6割程度といわれます。
なかには10年以上回復しないケースもあります。

摂食障害が長引くと、全身の臓器にもダメージがあり合併症が起こりやすく死亡する場合もあります。
発症後、治療を開始するまでの期間はできるだけ早い方が回復しやすいといわれています。
摂食障害を疑うような量や食べ方をしている場合は、早めに受診し治療を始めることが大切です。
出典:摂食障害全国基幹センター 摂食障害の現状

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高齢者の摂食障害まとめ

ここまで高齢者の摂食障害についてお伝えしてきました。
高齢者の摂食障害について要点をまとめると以下の通りです。

  • 高齢者の摂食障害の原因は、認知症や病気の発症、口腔機能の低下や薬の副作用も影響している
  • 高齢者が摂食障害になると栄養不足のため体の不調、口腔機能の低下がみられる
  • 高齢者の摂食障害を防ぐには、食生活の見直しや口腔周りのマッサージで筋力を鍛える

これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

監修者 メディカル・ケア・サービス

  • 認知症高齢者対応のグループホーム運営
  • 自立支援ケア
  • 学研グループと融合したメディア
  • 出版事業
  • 社名: メディカル・ケア・サービス株式会社
  • 設立: 1999年11月24日
  • 代表取締役社長: 山本 教雄
  • 本社: 〒330-6029埼玉県さいたま市中央区新都心11-2ランド·アクシス·タワー29F
  • グループホーム展開
  • 介護付有料老人ホーム展開
  • 小規模多機能型居宅介護
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