嚥下障害は、加齢や病気などが原因で起こる障害です。
嚥下障害になると、普通の食事を摂ることが難しくなってしまいます。
では、嚥下障害の看護にはどのようなことがあるのでしょうか。
本記事では、嚥下障害の看護について以下の点を中心にご紹介します。
- 嚥下障害の看護の役割とは
- 嚥下障害の患者への看護計画について
- 嚥下障害のリハビリについて
嚥下障害の看護について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
嚥下障害とは
嚥下障害とは、飲食物を飲み込み、胃に送る際にむせる、うまく飲み込めないなどの症状があることです。
嚥下障害があると、食事に時間がかかり、食べ物が口の中に残りやすくなってしまいます。
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嚥下障害の原因
嚥下障害の原因には、口腔周辺の筋肉や神経に障害があることで、咀嚼や飲み込みができなくなります。
原因となる疾患には
- 脳血管障害
- パーキンソン病
- 脳腫瘍
- 脳性麻痺
などがあります。
嚥下障害の看護の役割
嚥下障害の看護では、嚥下障害による窒息や誤嚥などのリスクに対して、注意を払い対応します。
また、食事中の嚥下障害となる訴えがない場合でも、夜間の咳き込みや体重減少などの症状が嚥下障害によることもあります。
そのため、嚥下障害のリスクのある患者を発見することが大切です。
食事中以外にも就寝中も観察をし、嚥下障害の症状を早く察知することが大切です。
嚥下障害の患者への看護目標
さまざまな障害が原因で、食事がうまく摂取できない患者へは、誤嚥が起きないように食事の工夫をすることが大切です。
食事を通して得られる喜びや楽しみを得られるように、食欲を回復させることが看護目標です。
嚥下障害の患者への看護計画
嚥下障害の患者への看護計画には
- OP(観察項目)
- TP(ケア項目)
- EP(教育・指導項目)
があります。
それぞれみていきましょう。
OP(観察項目)
嚥下障害の患者への看護目標について以下の表にあらわしています。
観察項目 | 内容 |
血圧・脈拍・体温・酸素飽和度 | 各項目に異常がないか |
体重 | 大幅な増減がないか |
意識レベル | 意識があるか、受け答えがしっかりできるか |
呼吸状態 | 呼吸が荒かったり、弱かったりがないか |
チアノーゼの有無 | 唇が紫色に変色していないか |
食事摂取の状態 | 残さず食べているか、水分もきちんと摂っているか |
嚥下障害の有無 | むせ・咳込み・痰の絡みなどがないか |
口腔内 | 食事のカスが残っていないか |
吐き気や嘔吐 | 吐き気や嘔吐がないか |
食事に対する不安 | 噛みにくい、飲み込みにくいなどの不安がないか |
観察により異常がある場合 | 臨床検査・胸部X線などの追加 |
摂食嚥下障害を起こすと、食べることが困難になります。
その結果、低栄養や脱水、食べ物が誤って気道に入る誤嚥性肺炎を引き起こす可能性があります。
食事に対する不安や食事摂取の状態を確認しましょう。
TP(ケア項目)
TP(ケア項目)の看護計画について以下の表にあらわしています。
ケア項目 | 内容 |
食事前の準備 | 食事の前の嚥下体操などを言語療法士の指導のもとで行う |
食事の環境を整える | 食事に集中できるように、テレビなどは消す |
適切な食事の準備 | 嚥下障害のレベルに合うように、とろみをつけるなどの工夫ができているかの確認 |
吸引器の準備 | 痰の貯留に気をつけて、必要があれば吸引する |
正しい姿勢 | 食事を摂るときに、誤嚥が生じないように猫背などを正す |
意識のチェック | 眠たそうにしている場合などはきちんと覚醒させて食事を摂らせる |
食事の介助 | 食べる量・速さなどに注意し、ゆっくりと食べさせる |
口腔ケア | 食事後の歯磨きなどの介助をする |
摂食嚥下障害のケアでは、食事の姿勢も大切です。
そのため、間違った姿勢をしていないか食事前に確認する必要があります。
また、患者によっては長時間座ることが難しいため、食事中に疲れてしまい姿勢が乱れてしまうこともあります。
患者の嚥下障害の状態に合わせて、姿勢のポジショニングを行うことが大切です。
EP(教育・指導項目)
EP(教育・指導項目)の看護計画について、以下の表にあらわしています。
教育・指導項目 | 内容 |
食事内容の工夫 | とろみをつけたり、ペースト状にするなど、むせたり詰まらせたりしないように指導する |
口に入れる量 | 一度に口に入れる量は、無理なく一口で入る量にし、慌てずゆっくりと咀嚼することを指導する |
口腔内の環境 | 口腔内を清潔に保てるように、歯磨きや嚥下マッサージについて指導する |
誤嚥のリスク | 食べたものや唾などが気管の方に流れることにより、一緒に入った細菌が原因で誤嚥性肺炎になるリスクが高くなることを説明する |
口から食べることは栄養補給だけでなく、生きる喜びとなります。
どなたでも最後まで食べることを楽しめられるように、食べたいという思いを尊重し、看護を提供することが大切です。
嚥下障害の検査方法
嚥下障害の検査方法には
- 簡易検査
- 精密検査
があります。
それぞれみていきましょう。
簡易検査
反復唾液嚥下テスト
30秒間で空咳が何回できるかを調べます。
道具は使用しないため、簡単に安全に実施できるテストです。
改訂水飲みテスト
少量の水を使用し、実際の嚥下状態を調べるテストです。
反復唾液嚥下テストと同じく、指示を理解するのが難しい場合や意識レベルが低下している場合はテストの実施を控えます。
フードテスト
少量のプリンなどの半固形物を飲み込んでもらい、その後、口腔内に残っている食べ物、むせの有無の確認をします。
呼吸の変化などで嚥下機能を評価します。
頚部聴診法
フードテストのときに聴診器を頚部にあて、飲み込む音や飲み込む前後での呼吸音の変化を確認します。
精密検査
嚥下造影検査
X腺を使用し、実際に造影剤が含まれた模擬食品を飲み込んでもらい、誤嚥の有無を確認します。
嚥下障害がどの部分で起きているか、確実に飲み込むことができる姿勢、嚥下状態に適した食物形態を検討します。
嚥下内視鏡検査
鼻から細い内視鏡を入れ、嚥下時の咽頭、喉頭を観察する検査です。
嚥下内視鏡検査は、ベッドサイドで行えるというメリットがあります。
嚥下障害のリハビリテーション
嚥下障害のリハビリテーションには
- 間接訓練
- 直接訓練
があります。
それぞれみていきましょう。
間接訓練
アイスマッサージ
凍らせた綿棒を水に浸し、口腔内をなぞり、嚥下反射を誘発させます。
嚥下体操は指示に対して理解が乏しいと実施が困難ですが、アイスマッサージは意識レベルが低下している場合でも有効です。
ブローイング訓練
水が入っているコップにストローを入れて、優しく息を吐く訓練です。
肺機能や鼻咽喉閉鎖機能、唇を閉じる筋肉の強化のために行います。
頭部挙上訓練
仰向けに寝た状態で頭部だけを上げて、つま先をみます。
嚥下するために必要な喉頭挙上を促進するために、舌骨上筋群、喉頭挙上筋などを強化します。
プッシングエクササイズ
プッシングエクササイズは、座っている椅子を引っ張りながら発生する訓練です。
声門閉鎖を促進して、誤嚥を予防する効果があります。
メンデルゾーン法
喉仏に手をあてて、飲み込むと同時に挙上させ数秒間保ちます。
嚥下時に喉頭が十分に上がらない方、食道の開きが不十分な方に対して、喉頭挙上量と時間を延長させるために行う訓練です。
直接訓練
交互嚥下
固形物、流動物のように異なる形状の食べ物を交互に口に入れることで、嚥下反射を促します。
口に入れる量は同量となるようにして、食事終了時には水分を摂るように促します。
誤嚥がある場合は、とろみをつけます。
複数嚥下
嚥下後に唾だけを飲み込み、食べ物が口に残らないようにします。
しかし、食べ物が口の中に残っている自覚がない方も多く、慣れるまでは声かけをして空嚥下を促します。
意識嚥下
食べ物をしっかりと嚥下することを意識しながら行います。
しっかりと意識することで、誤嚥予防や咽頭の食べ物の残留を減らせます。
一口量の把握
嚥下後に食べ物がまだ口の中に残っている場合は、一口量が多すぎる可能性があります。
そのため、患者の嚥下状態に合わせて一口量を調整します。
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摂食・嚥下障害の割合
国立長寿医療研究センターの調査結果があります。
調査の結果、摂食・嚥下障害の割合は、医療療養、介護療養、老健、特養では4割を超えています。
とくに、療養病床では高率の結果となっています。
高齢者の摂食・嚥下障害、栄養問題について考えたとき、加齢に加えて、認知症や脳障害などの原因が考えられます。
低栄養状態は、さまざまな問題と深い関係があることから、適切な嚥下食の提供や対策をとる必要があります。
出典:国立長寿医療研究センター「摂食嚥下障害に係る調査研究事業報告書」
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嚥下障害の看護のまとめ
ここまで、嚥下障害の看護の情報を中心にお伝えしました。
要点を以下にまとめます。
- 嚥下障害の看護の役割とは、窒息の危険や誤嚥などのリスクに対して注意を払う
- 嚥下障害の患者への看護計画について、食事摂取の状態、嚥下障害の有無など
- 嚥下障害のリハビリは、アイスマッサージ、ブローイング訓練、交互嚥下など
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。