日本では高齢化が進んでいます。
高齢者に見られる症状の一つにせん妄というものがあります。
現在せん妄を患って困っている方や、ご家族のせん妄への対応を模索している方もいらっしゃるかもしれません。
今回は、せん妄の患者さんへの看護について以下の点を中心にご紹介します。
- せん妄とは何か
- せん妄の患者さんを看護する際の注意点
- せん妄の症状例
せん妄の知識をつけ、せん妄の患者さんの看護の対策をするためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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せん妄とは
そもそもせん妄とはどのような症状なのでしょうか?
認知症との違いも合わせて簡単に解説していきます。
せん妄とは、高齢者に多く見られる一種の意識精神障害です。
認知症が長期的な見当識障害であるのに対し、せん妄は数時間や数週間で治まる場合もあります。
せん妄状態と正常な状態が短いスパンで繰り返されることがあります。
通常は継続しても数日間ですが、まれに数ヵ月間続く場合もあり、的確な処置が行えない場合、死や昏睡に繋がるケースもあります。
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せん妄患者の看護方法
せん妄の看護方法とはどのようなものがあるでしょうか?
ここではせん妄の看護方法について解説していきます。
結論から申し上げますと、せん妄には確立した治療方法がありません。
せん妄の原因には、体調や心理的なストレスなど一時的な要因が考えられていますが、原因も明確には分かっていない状態です。
治療法や原因がはっきりしていない状態でも、以下のような看護の対応があります。
専門医療機関に受診する
せん妄の治療に関連する専門機関は全国に9,000か所以上あります。
専門機関を受診することによって、投薬が必要か、環境を整えることで改善できるかなどの情報を手に入れることができます。
また、ご家族向けの悩み相談を行っている場合もあるので、ぜひ活用してください。
抗精神病薬を投与する
抗精神病薬を投与し、せん妄の看護をする場合もあります。
しかし、人によっては様々な事情で「内服できない場合」「内服可能で興奮を伴う場合」「内服可能で興奮を伴わない場合」というように、使用する薬の種類を分ける必要があるかもしれません。
服用する際は注意してください。
虚弱体質を改善する
せん妄の原因の一つとして虚弱体質があると考えられています。
その虚弱体質の2大要因が「高齢であること」と「脳の機能低下が見られること」です。
虚弱体質を改善するための漢方薬等もあるので、気になる方はそちらも検討してみてください。
気の休まる環境を作る
脳や心理的なストレスも、せん妄を引き起こす原因とされています。
適度な運動や睡眠がとれる時間や、健康的な生活を心がけ、気の休まる環境を作ることが大切です。
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せん妄患者を看護する際の注意点
せん妄の患者さんを看護する際、専門機関ではなく自宅などで看護することもあるでしょう。
その際、予期せぬせん妄の方の言動に戸惑うこともあるでしょう。
ここでは、せん妄の患者さんを介護する際の注意点について記載していきます。
まず自分が落ち着く
せん妄は突発的に症状が現れます。
急に動き回る、落ち着きがなくなる、幻覚を見て興奮するなど様々な症状が現れます。
周りの方は症状があらわれたとき、パニックになってしまうかもしれません。
しかし、まずは自分が落ち着くことが大切です。
初めてせん妄の症状を見た際は驚いてしまいますが、看護する側は落ち着いて対応できる体制でいることを心がけましょう。
無理に止めず話を聞いてあげる
行動や言動を無理に止めると、余計に興奮してしまう可能性があります。
興奮が暴言や暴力に繋がり、大きな事故になる可能性もあります。
いったん焦らず観察し、無理に止めずに話を聞くようにしましょう。
せん妄の方が興奮しているときは、恐怖や不安を感じていることがあります。
恐怖や不安を取り除くように、優しく名前を呼び、そばにいることを伝えて安心をさせましょう。
その際、判断ができていないことが不安の原因という場合もあるので、時間や場所を伝えることも有効かもしれません。
せん妄の方ご本人に、落ち着いて安心してもらうことを意識しましょう。
危険なものを置かない
せん妄の症状が出ているときは、強い興奮状態が見られます。
刃物や火の元など、周りに危険なものがあるとけがや事故に繋がる危険性が高いです。
転倒の原因になるもの、投げつけられそうなものは無いか、日頃から危険物になる可能性があるものは置かないようにしましょう。
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せん妄の患者さんの介護でやってはいけないこと
せん妄の症状と向き合う際、予想外のことがたくさんあるはずです。
良かれと思ってやったことが、思わぬトラブルに繋がることもあります。
ここでは、せん妄の患者さんの介護でやってはいけないことについて記載していきます。
本人の言っていることを否定・非難する
せん妄の症状のひとつとして、つじつまの合わない会話をすることがあります。
その会話をつい否定してしまいたくなりますが、否定されることで苦痛に感じてしまいます。
苦痛やストレスがせん妄の原因となり、せん妄の悪循環になることも考えられるので、まずは話を聞くことが大切です。
説得したり、命令する
間違いを正すということは、患者さんの自尊心を傷つけてしまいます。
せん妄の方が何を話したいのかを想像し、何が気がかりなのかを一度考えてみてください。
せん妄は時間や場所が判断できなくなることはありますが、ご家族の顔を忘れることはめったにありません。
あなたを認識し信頼したうえで話しかけているのかもしれません。
眠りを妨げる
せん妄は動きが激しく、落ち着きが無いように見えることがあります。
そのため、眠りを浅くしたり短くすることで、疲れを促し、せん妄症状を抑えようとすると逆効果になります。
せん妄を和らげるには、整った生活リズムが必要と考えられています。
また、検査や処置のためとは言え、無理やり眠りを妨げることは、せん妄の長期化をもたらす可能性があるため、やってはいけません。
せん妄が起こるきっかけ
ここまでせん妄への対応について記載しました。
そもそも、なぜせん妄は起こるのでしょうか?
先述したように、せん妄のきっかけは明確になっていません。
しかし、環境の変化や身体の不調などが原因で、一時的な意識障害や認知機能の低下に繋がると考えられています。
また、せん妄を引き起こすと考えられている因子が3つあります。
準備因子
認知症や高齢など、身体が弱っているとせん妄になりやすい状態です。
その他視覚・聴覚障害、脳血管障害の既往、うつ病、アルコール中毒なども、せん妄のリスクを高めると言われています。
直接因子
薬剤、手術、身体疾患など単体でもせん妄を引き起こし得る因子です。
脳症で起こりやすいと言われています。
促進因子
便秘、不安な環境、不眠などせん妄を悪化、遷延させる要因です。
外的な要因なので取り除くことが可能ですが、個人によって要因の判別が難しいというデメリットもあります。
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せん妄を予防するために
せん妄には要因や対策があると記載しましたが、予防できるといいですよね。
ここではせん妄を予防するためにできることについて記載していきます。
ぜひ参考にしてみてください。
せん妄は様々な原因で引き起こされます。
その原因を最初から取り除くことで、未然に防げる可能性もあります。
それぞれのパターンに分けて解説します。
生活リズムを整える
せん妄は、特に高齢になると身体の不調によって引き起こされることがあります。
生活リズムを整え、水分補給やトイレ時間の調整などを心がけましょう。
生活環境を変えない
せん妄は、心理的な負担も原因とされています。
特に介護施設への入所や引越しなど、環境の変化に対するストレスはせん妄の大きな原因になりかねません。
引越し先や施設の部屋に家族写真を飾るなど、できる限り環境の変化を抑えることが大切です。
「今が何時か分からない」「ここがどこか分からない」という状況は、本人にとって大きなストレスになります。
こまめなコミュニケーションをとり、会話で不安に思っている点を取り除くことも、せん妄を予防するために有効かもしれません。
せん妄の症状例
せん妄にはどのような症状が現れるのでしょうか?
せん妄の症状の例を挙げますので、せん妄の事前知識として参考にしてみてください。
睡眠の障害
不眠、昼夜逆転の生活のリズム、覚醒と睡眠状態が半々で存在するような感覚で寝ぼけた状態となり、睡眠中は落ち着きがなくよく動きます。
幻覚や妄想
実際にはいない虫や人が見える幻視、幻覚、記憶や経験を本来のものとは違って解釈してしまう妄想などが見られます。
見当識や記憶障害
現在の時間や場所が急にわからなくなること、最近のことを思い出せなくなることが挙げられます。
認知症と違って、家族の顔は覚えていることが大半です。
情動や気分の障害
イライラしたり錯乱や興奮、不安など感情や人格の変化が起こります。
不随意運動などの神経症状
手の震えなどの神経症状はアルコールせん妄に多く見られます。
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せん妄の患者は老人ホームに入れるのか
せん妄の看護を在宅で行うことに限界を感じることもあるかもしれません。
認知症などの場合は老人ホームの利用などの手段がありますが、せん妄の場合は老人ホームへの入所は可能なのでしょうか?
せん妄の場合の対処について記載していきます。
せん妄は医療ではなく、介護の点で見られています。
そのため、せん妄のための施設入所の可能性はあります。
施設入所のためには、認知症などと同様に介護度の認定を受け、それに見合った施設を探す必要があります。
介護度の認定を受けた場合は介護保険が適用となり、介護保険を利用して介護サービスを受けられます。
しかし、介護度の認定が無いからといって施設入所が不可能というわけではなく、自費でサービスを受けられる場合もあります。
それ以上の要介護度を調べる場合は、かかりつけ医などに相談し、地域包括支援センターなどに繋いでもらうことも有効です。
ただし、老人ホームなど施設全体に当てはまることですが、施設は多くの人が共同で生活を送っています。
そのため、暴力行為が日々見られるなど、他の利用者の生活の質を脅かす可能性がある場合は、介護度に関わらず入所を断られることもあります。
また、「大変だから」「仲が良くないから」などの理由で申し込むのも入所が危うくなります。
施設の利用料金が払われるか、手続きがスムーズに行えるかなどの観点から見ると、入所を許可しづらいからです。
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せん妄の患者の介護のまとめ
ここまでせん妄の患者さんの介護についてお伝えしました。
要点を以下にまとめます。
- せん妄とは、高齢者に多く発症する一種の意識精神障害の一種
- せん妄の患者を介護する際の注意点は、介護する側が落ち着いて、危険物などを取り除いておくことが必要
- せん妄の症状例は、見当識障害や睡眠障害など
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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