パーキンソン病の病名は聞いたことがあるという方がほとんどだと思います。
しかし、どのような病気でどのようなリハビリをするのか知らない方もいるのではないでしょうか。
本記事では、パーキンソン病のリハビリを中心に以下の内容に沿って解説していきます。
- パーキンソン病の症状
- パーキンソン病の原因
- パーキンソン病のリハビリ方法
- パーキンソン病のリハビリのLSVTとは何か
パーキンソン病の予防についても触れていますので、ぜひ最後までお読みください。
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パーキンソン病の症状とは
パーキンソン病は緩やかに進行する難病です。
緩やかと言われていますが、進行の速さには個人差があります。
根本的なパーキンソン病の治療はまだ確立されておらず、投薬治療によって症状を軽減させる方法とリハビリを併用することが一般的です。
パーキンソン病の症状は、運動症状と非運動症状に分けられます。
パーキンソン病の運動症状には、手足が震える(振戦)、筋肉がこわばる(筋固縮)、動きが鈍くなる(無動)、姿勢反射障害の4大症状があります。
手足の震えが主症状だと進行は遅く、筋肉のこわばりが主症状だと進行が早いと言われています。
この手足の震えと筋肉のこわばりは通常、体の片側に症状が現れ、次第に両側に現れるようになります。
手足の震え(振戦)
座っている時や寝ている時など安静時に手足が細かく震えます。
逆に、物に手を伸ばすなどの運動時には手足の震えは出にくいと言われています。
パーキンソン病の症状の中で最も特徴的な症状で、比較的初期から出やすいと言われています。
筋固縮
筋肉がこわばり、思うように体が動かなくなります。
中には、動かすときに痛みを感じる人もいると言われています。
手足だけでなく顔面の筋肉もこわばるため、次第に無表情に感じられるようになります。
動きが鈍くなる(無動)
とっさに体を動かすことができなくなります。
歩き始めに足が出にくくなるすくみ足や、話し方に抑揚がなくなり声が徐々に小さくなるような言語障害もみられるようになります。
いくつもの動作を一度にしようとすると、さらに動作が鈍くなりやすいです。
姿勢反射障害
体のバランスがとりにくくなります。
軽く押されるなど体が傾いたときに、姿勢を元に戻すことが難しくなり、転んでしまうこともあります。
姿勢反射障害は、発症初期よりも数年経過してから症状がみられることが多いと言われています。
その他に、非運動症状は、自律神経の症状、認知・精神の症状、感覚の異常、睡眠障害などさまざまな症状がみられる可能性があります。
パーキンソン病は、難病指定されている疾患でとくに高齢の方に多く見られます。パーキンソン病は早期の発見・治療によって進行をゆるやかにできるため、症状を見逃さないことが大切です。本記事では、パーキンソン病について解説します。[…]
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パーキンソン病の原因とは
脳は心身の状態をコントロールする中枢です。
脳が神経伝達物質を出し、体の各部位に伝えることによって、私たちの体はさまざまな運動をしたり感覚を感じたりすることができます。
しかし、パーキンソン病は中脳黒質の神経細胞で作られる神経伝達物質のドパミンが減少してしまいます。
神経伝達物質のドパミンは、脳のさまざまな部分の連絡役として働き、体の動きや働きの調整を行っています。
ドパミン不足になると情報伝達がうまく行えず、体の動きや働きに支障が出てしまいます。
なぜ黒質の神経細胞が減少するかは、まだ原因が十分にわかっていません。
しかし、パーキンソン病の方の脳を調べると、黒質の神経細胞にレビー小体が蓄積していることが知られています。
レビー小体の主な成分は、異常なタンパク質のαシヌクレインです。
この異常なタンパク質が黒質の神経細胞に蓄積することによって、神経細胞がダメージを受け、ドパミンが減少しパーキンソン病を発症するのではないかと言われています。
パーキンソン病は50歳以上で発症しやすく、徐々に症状が進行していく病気として知られています。体の一部がうまく動かせない症状から始まり、症状が進行すると全身が思うように動かせなくなる病気です。そんなパーキンソン病は、どのような原因によっ[…]
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パーキンソン病のリハビリとは
パーキンソン病のリハビリの主な目的は、症状の進行を緩やかにすることと症状を軽減させることです。
パーキンソン病になると徐々に活動性が低下しやすくなり、それに伴って全身の筋力や柔軟性、体力が低下していきます。
そのため、症状に合わせて早期から積極的にリハビリを行っていくことが大切です。
一般的にパーキンソン病は投薬治療を行います。
パーキンソン病のリハビリは投薬治療と併用して、体が動かしやすいときに無理のない範囲でできる運動をしていくことがすすめられています。
パーキンソン病の方がリハビリをするときには、以下のものに注意が必要です。
- 薬の効果があるときに行うこと
- 無理をせず、疲れない程度で行うこと
- 痛みを伴うような運動はしないこと
- できるものからはじめ、だんだん難しい運動に進むこと
- 環境に配慮し、転倒やケガに十分気をつけること
関節・筋肉を柔らかくするリハビリ
パーキンソン病は筋肉がこわばり、体が動かしにくくなります。
体を十分に動かさないでいると、さらに症状が進行します。
この症状の予防のために、「パーキンソン体操」というものがあります。
パーキンソン体操は簡単に自宅でできるリハビリで、日常生活動作では足りない部分を補うことができます。
以下がパーキンソン体操の例です。
顔の運動
口を大きく開けたり閉じたり、口をすぼめて呼吸をしたりします。
顔の筋肉のこわばりや話しにくさを改善します。
頭と首の運動
痛みのない程度で、頭を左右にゆっくり回したり倒したりします。
頭と首の筋肉のストレッチになります。
手や指、肩や腕の運動
両手を合わせてゆっくり手を上にあげたり、手を背中の後ろで握って上げ下げをしたりします。
また両手を胸の前で合わせて左右に手首を回したりします。
手や肩などの関節の柔軟性が高くなります。
立って行う運動
肩幅に足を開いて前後方向にゆっくり曲げ伸ばしたり、体を起こして体をひねったりします。
また、壁にもたれて背筋を伸ばしたり、壁に両手をついて背筋を伸ばします。
首や背中、お腹周りのストレッチになります。
座って行う運動
肩幅に足を開いた状態でイスに座り、両手を頭の後ろに組み体を前後方向にゆっくり曲げ伸ばしたり、体を左右にひねったりします。
上半身の筋肉や関節の柔軟性が高くなります。
パーキンソン病の方は、病状の進行とともに前屈みの姿勢になりやすい特徴があります。
また歩行は可能であっても、寝返りがうまくできなくなる方もいます。
この他に、パーキンソン病の方は無表情になったり、声が小さくなったりすることがあります。
パーキンソン体操はこのような症状が起きている場所を中心に、症状の進行が緩やかになるようにさまざまな運動を取り入れていくことができます。
体力低下を防ぐリハビリ
パーキンソン病の方は、さまざまな症状によって体の動かしにくさを感じ、運動不足になりがちです。
長い間体を動かさないでいると体力が低下してしまいます。
体力低下を防ぐためにも、初期の段階から運動習慣を身につけることが大切です。
体力低下を防ぐためには有酸素運動が有効的です。
体を無理なく動かせる方は、ジョギングやウォーキングなどを行うことが望ましいです。
運動の頻度は、2日以上間隔をあけず、一回20〜40分程度の運動が望ましいと言われています。
このとき歩幅を大きくすることや、かかとから床に着くように意識をしながら歩きましょう。また姿勢が前屈みにならないように注意してください。
ジョギングやウォーキングなどの運動が難しい場合は、イスからの立ち上がり運動や仰向けに寝て自転車を漕ぐように足を動かす運動、仰向けに寝て足を床につけお尻をあげる運動など無理なくできる運動が良いです。
パーキンソン病の進行を緩やかにするためには、自主的にリハビリを行うことが非常に有効的といわれています。
そのときの症状の違いで無理なくやれるリハビリを継続していくことが大切です。
パーキンソン病の治療法は「薬物療法」が中心となります。しかし、薬物療法はときに副作用を伴うため、体調や症状の変化を注意深く観察する必要があります。本記事では、以下の項目について解説します。 パーキンソン病とは パーキンソン病[…]
パーキンソン病のリハビリのLSVTって何?
LSVTはパーキンソン病に特化したリハビリプログラムです。
LOUD(言語機能)とBIG(運動機能)に分けられています。
パーキンソン病の方は会話する声が小さくなったり、体の動きが小さくなったりするため、それらの意識的な改善を目的としています。
このプログラムを実施するには、LSVT認定を受けた療法士(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士)のみ施術が認められています。
”LOUD”は、声の大きさに焦点を当てたトレーニングです。
日常会話の声の大きさと発話の明瞭度改善を目的としています。
意識的に大きな声を出すように習慣づけます。
”BIG”は、体の動きの大きさに焦点を当てたトレーニングです。
正常に近い動きの獲得を目的としています。
大きな動きを何度も繰り返し、安全な日常生活ができるように習慣づけます。
訓練スケジュールは一般的に1ヶ月の入院もしくは通院(週4日、4週間の計16回)で、LOUD・BIGそれぞれ1時間、療法士と個別訓練を行います。
個別訓練の他に、毎日のセルフトレーニングも行います。
LSVTは訓練が終われば終了ということではなく、訓練が終わってからも日常的に続けていくことで効果があります。
そのため、繰り返し行うことが非常に重要です。
パーキンソン病のリハビリ:具体的なエクササイズ
パーキンソン病は、神経細胞の損失により運動機能が低下する疾患です。
しかし、適切なリハビリテーションとエクササイズを通じて、患者の生活の質を向上させることが可能です。
以下では、パーキンソン病のリハビリテーションにおける具体的なエクササイズについて解説します。
パーキンソン病のリハビリテーションとエクササイズの重要性
パーキンソン病のリハビリテーションは、病状の進行を遅らせ、身体機能を改善し、日常生活の質を向上させるために重要です。
特に、適切なエクササイズは筋力、バランス、柔軟性の向上に寄与し、症状の管理に役立ちます。
エクササイズは、パーキンソン病の症状に対する自然な対策として、医療専門家から推奨されています。
パーキンソン病に有効なエクササイズの種類
パーキンソン病のリハビリテーションにおけるエクササイズは、患者の症状や体力に応じて様々です。
有酸素運動、筋力トレーニング、エクササイズ、ダンスなどがあります。
これらのエクササイズは、パーキンソン病の症状を緩和し、身体機能を改善することが研究で示されています。
エクササイズの量や頻度
エクササイズの量や頻度は、個々の患者の症状や体力によります。
一般的には週に少なくとも150分の中強度の運動、または75分の高強度の運動を目指すことが推奨されています。
また、筋力トレーニングは週に2回以上、バランスと柔軟性のエクササイズは週に2〜3回行うことが推奨されています。
パーキンソン病のリハビリテーションとエクササイズの注意点
パーキンソン病のリハビリテーションとエクササイズを行う際は、患者の安全を確保することが最も重要です。
エクササイズは医療専門家の指導のもと、または専門家が作成したプログラムに従って行うべきです。
また、エクササイズの強度は、患者の体力や症状に応じて調整する必要があります。
過度のエクササイズは逆効果となり、症状を悪化させる可能性があるため、注意が必要です。
パーキンソン病の予防とは
パーキンソン病を予防する確実な方法はまだわかっていません。
しかし、パーキンソン病の原因であるドパミンの減少を防ぐことが予防に繋がります。
脳の神経細胞は加齢とともに減少してしまうため、パーキンソン病でない人でもドパミンは減ってしまいます。
ドパミンの減少を遅らせるような生活を心がけることが大切です。
適度な運動
ドパミンは運動をすることで増えます。
少し疲れたと感じる程度の運動が効果的です。
体の柔軟性が低い人はパーキンソン病になる傾向があるため、ストレッチなど体を動かすことも効果があります。
ストレスの解消
ドパミンは幸せや楽しさを感じることで増えます。
また、何か課題を達成したときの達成感により、ドパミンの分泌が活性化されるとも言われています。
自分の趣味など、好きなことを楽しみながら笑顔になることがおすすめです。
食事の見直し
乳製品・肉・果物の摂取が少ない人はパーキンソン病になりやすいといわれています。
乳製品・肉・果物が苦手な方も中にはいらっしゃると思いますが、バランスよく摂取すると良いでしょう。
またコーヒーに含まれるカフェインは神経細胞の減少を予防する作用があります。
その他、緑茶に含まれるポリフェノールはパーキンソン病の予防になると言われています。
パーキンソン病のリハビリ:家庭でできること
パーキンソン病は、神経細胞の損傷により運動機能が低下する疾患です。
しかし、適切なリハビリテーションにより、日常生活の質を向上させることが可能です。
この章では、家庭で行えるリハビリテーション方法について詳しく解説します。
筋力維持のための運動
パーキンソン病の進行に伴い、筋力の低下が見られることがあります。
特に足腰の筋力は、立ち上がりや歩行など日常生活動作に直結するため、維持することが重要です。
家庭で行える筋力維持のための運動として、足全体の筋肉や体を支える足と背中の筋肉を鍛える運動があります。
これらの運動は壁や平らな場所で行うことができます。
ただし、無理をせず、怪我や転倒をしないように十分に気をつけて運動を行いましょう。
柔軟性維持の運動
パーキンソン病の患者さんは、体が硬くなる傾向があります。
そのため、首と背筋を伸ばしたり、体をひねったり、体の側面を伸ばしたりして、硬くなってきた体をやわらかくする運動が有効です。
これらの運動も平らな場所で行うことができます。
無理をせず、怪我や転倒をしないように十分に気をつけて運動を行いましょう。
歩行改善のための運動
パーキンソン病の進行により、歩幅が小さくなることがあります。
大きな一歩を出す歩行運動や、大きな歩幅で歩くためにバランスをとりやすくする運動が有効です。
これらの運動は手すりやテーブル、壁、杖を使って行うことができます。
無理をせず、怪我や転倒をしないように十分に気をつけて運動を行いましょう。
姿勢改善のための運動
パーキンソン病の患者さんは、姿勢が悪くなる傾向があります。
背筋を伸ばしたり、背筋を鍛えたり、また、棒(または杖)を使って上半身の筋肉を伸ばす運動が有効です。
これらの運動も家庭で行うことができます。
無理をせず、怪我や転倒をしないように十分に気をつけて運動を行いましょう。
持久力をつけるための運動
パーキンソン病の患者さんは、疲れやすくなることがあります。
疲れにくい体を作るには、持久力をつけることが大切です。
足の筋肉を維持する運動とバランスをとりやすくする運動の組み合わせや、バランスをとる運動の組み合わせが有効です。
体の状態や気になる点にあわせた適切なリハビリテーションを行いましょう。
無理をせず、怪我や転倒をしないように十分に気をつけて運動を行いましょう。
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まとめ:パーキンソン病のリハビリ
ここまでパーキンソン病のリハビリについて書いてきました。
この記事のポイントをおさらいすると以下の通りです。
- パーキンソン病の症状は、手足が震える、筋肉がこわばる、動きが鈍くなる、姿勢反射障害などの4大運動症状や、自律神経障害などの非運動症状などさまざまである
- パーキンソン病の原因は神経伝達物質のドパミンが減少することや、神経細胞にレビー小体が蓄積するためと言われている
- パーキンソン病のリハビリは、関節や筋肉を柔軟にするパーキンソン体操や体力低下を防ぐ有酸素運動が効果的である
- パーキンソン病リハビリのLSVTとは言語障害や運動障害に効果が期待されるリハビリプログラムで、意識的に大きな声を出したり大きく体を動かしたりする訓練を行う
- パーキンソン病の予防は、ドパミンの減少を抑えることが大切であり、適度な運動やストレスの解消、食事の見直しが大切である
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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