せん妄によって、急に時間や場所の認識に異常が起こる、または急に無気力になってしまう、高齢者の方がいます。
もし、家族や周りの方にせん妄の症状が現れた場合、どのように対処すればよいのでしょう?
今回はせん妄について以下の項目を中心に解説します。
- せん妄の症状について
- せん妄の原因について
- せん妄の治療法について
- せん妄の予防方法について
家族や身近な方にせん妄の症状がみられた時のために、せん妄について正しい知識を身に着けましょう。
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認知症とせん妄の違い
せん妄は一種の意識精神障害で、高齢者に多く見られる病気です。
身体疾患や薬の影響など、何らかの理由で引き起こされます。
せん妄を発症することで、時間や場所をうまく認識できなくなってしまう見当識障害や、注意力、思考力の低下などが引き起こされます。
これらの症状が認知症の症状ととてもよく似ており、せん妄はしばしば認知症と混同される事があります。
しかし、せん妄は認知症とは違い、発症期間が一時的(数時間、数日間など)です。
また、急に症状が現れるため、発症時期を特定することができます。
中には、数分前にはせん妄状態だった方が、急に正常な精神状態に戻る場合や、逆に正常な精神状態から、一気にせん妄状態に陥る場合もあります。
認知症について詳しく知りたい方は、こちらの記事も合わせてお読みください。
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せん妄の主な症状
せん妄によって引き起こされる主な症状として、以下の5つが挙げられます。
- 注意の障害
- 認知機能の障害
- 感情の変動
- 睡眠・覚醒リズムの障害
- 幻覚や錯覚
それぞれ解説していきます。
注意の障害
せん妄の症状として、注意力の低下が挙げられます。
注意力が低下することで、会話に集中できなかったり、視点が定まらなかったりすることがあります。
また、注意力だけでなく思考力も低下するため、以下のような症状が出現する可能性があります。
- 会話のつじつまが合わない
- 考えがまとまらない
- 何もせずにぼんやりとしている など
認知機能の障害
せん妄によって、見当識障害などが起こります。
物事を認知する機能に影響を及ぼすため、注意が必要です。
ちなみに、具体的な症状については、以下をご覧ください。
- 今いる場所や帰り道などが分からなくなる
- 今の時間など側からなくなる
- 自分が誰なのか分からなくなる
- 最近のできごとを思い出せなくなる など
症状が落ち着いても、せん妄が起きていた間の記憶を思い出せない場合が多いのも特徴です。
感動の変動
せん妄の症状には、以下のような感情の変動も含まれます。
- 不安になったりイライラしたりする
- 内向的な方が攻撃的になるなど、人格の変化が起こる
- 興奮したり憂鬱になったりと、感情の変化が起こる など
まるで、人格が変わったように感情は変動します。
そのため「いつもと何か違う」という印象を受ける場合もあります。
睡眠・覚醒リズムの障害
せん妄によって、以下のような睡眠障害が起こることがあります。
- 睡眠中に良く動いている
- 睡眠中に落ち着いていない
- 昼夜逆転が起こる・夜に覚醒する
- 日中に寝ぼけた状態である
- 夜間せん妄 など
幻覚や錯覚
せん妄は意識精神障害の1つであるため、意識の混濁によって錯覚や幻覚が起こることもあります。
現れる症状を具体的にまとめると、以下の通りです。
- 実際にはいない小さな生き物や動物(虫や蛇など)などが見える
- 自分の記憶や経験を誤って解釈して妄想する
- 幻覚に怯えたり恐怖を感じたりする など
せん妄の現れ方
せん妄は、手術の後、持病の重症化、高齢者によく見られる、一時的な意識精神障害です。
せん妄が発症すると、自分の居場所や今の時刻が急にわからなくなる、急につじつまの合わない発言を繰り返すといった症状が現れます。
また、話しかけても反応がない、気力が感じられないといった症状のせん妄のケースも存在します。
そのため、認知症やうつ病と混同され、その病状がせん妄であると気づかれないことがあります。
しかし、認知症やうつ病と誤認して、適切な対応を怠ると、せん妄の病状悪化や病状の長期化につながる可能性があります。
近年の研究では、せん妄の状態が長期間続く程、脳の体積が減少し、認知症を発症しやすくなることが明らかになっています。
そのため、患者に対して適切な処置を行い、せん妄が長期間続く状態を避けることが大切です。
せん妄は治療開始から1週間程度で改善し始め、多くの場合、完治するまでには2週間〜1ヶ月程度かかります。
夜間せん妄とは?
夜間に現れるせん妄のことを「夜間せん妄」といいます。
夜間は暗くなり周囲が見えにくくなるため、不安感や恐怖感を覚えやすくなります。
さらに、夜間は不安感や恐怖感が増幅されやすくなるため、せん妄が起こりやすいといえます。
夜間せん妄の症状は、以下をご参照ください。
- 夜に家の中などを歩き回る
- 夜に独り言を言う
- 周りの状況が分からず怯える など
上記に当てはまっている場合は「夜間せん妄」である可能性があります。
ちなみに、夜間せん妄の症状は周囲が明るくなる日中には落ち着きます。
タイプ別の症状例
また、せん妄と一口に言っても、その症状には様々な種類があり、「過活動型」「低活動型」「混合型」の3種類に大きく分類されます。
ここからは、せん妄の種類である「過活動型」「低活動型」「混合型」について、1つずつ詳しく解説していきます。
過活動型
過活動型のせん妄の患者には、いつもより大声で話す、興奮したりイライラして落ち着かない、幻覚や妄想が出現する、つじつまが合わない話をする、不眠といった症状が見られます。
これらの症状は認知症の症状とよく似ているので、過活動型のせん妄は認知症に間違えられやすいです。
以下は、過活動型のせん妄と思われるOさんの症状です。
Oさんは特別介護老人ホームで暮らしており、施設の都合で居室が移動になりました。
すると、移動したその日の夜、Oさんが眠ることができず、イライラして落ち着かないといった状態になりました。
老人ホームのスタッフが「どうしましたか?」と尋ねると、「ベッドの周りに知らない人がいるから、気になって眠ることができない」と話したそうです。
ですが実際にはベッドの周りに誰もいません。
スタッフが「ベッドの周りには誰もいませんよ」と言っても、「いや、そこにいる!」と大声で抗議したようです。
Oさんには居室を移動する前日まで、このような症状は見られませんでした。
ですが、居室の移動が引き金となり、過活動型のせん妄が引き起こされたと考えられます。
低活動型
低活動型のせん妄の患者には、反応の乏しさ、無表情、無気力といった症状が見られます。
そのため、低活動型のせん妄はうつ病と間違えられやすいです。
以下は、低活動型のせん妄の患者と思われるSさんの症状です。
Sさんは特別介護老人ホームで暮らしており、毎朝決まった時間に食堂に来るという、几帳面な性格の方でした。
しかし、ある朝Sさんが食堂に一向に姿を見せない事がありました。
老人ホームのスタッフが心配をし、Sさんの部屋に行くと、ぼんやりとした様子のSさんを発見しました。
スタッフはSさんに何回も呼びかけるのですが、Sさんは意味のわからない言葉をつぶやいたまま反応することはなかったそうです。
これらのSさんの症状は、低活動型のせん妄によるものであると考えられています。
混合型
混合型のせん妄は、先程まで解説してきた過活動型の症状と低活動型の症状が、どちらも現れる症状です。
そのため、過活動型、低活動型どちらか一方の症状より、精神的により不安定になることが考えられます。
せん妄の症状について詳しく知りたい方は合わせてご覧ください。
皆さんは、せん妄という症状について耳にしたことはありますか?せん妄と認知症の症状の違いや、いざ起こったときにどう対応したらいいのか分からず困っている方も多いのではないでしょうか。この記事では、以下のことを解説していきます。[…]
せん妄の原因は何?
せん妄は、何かしらの疾患が脳に影響した際に起こることは判明しています。
しかし、具体的に脳のどの部分が、どのような損傷を受けて発症するのかは、まだ明らかになっていません。
ただ、せん妄の原因は「準備因子」「直接因子」「促進因子」という3つの大きな因子に分類できることは分かっています。
また、器質疾患や、肺炎による酸素不足、肝臓や腎臓などの内蔵の病気が原因となる場合もあります。
ここからは、せん妄の原因となる3つの因子について解説していきます。
準備因子
準備因子とは、加齢、脳血管障害、認知症などによって生じる認知機能の低下のことを指します。
高齢者の場合、若年者では影響のない疾患や薬でもせん妄の原因になりえるので、注意が必要です。
また、高齢者は体に負荷がかかればかかるほど、せん妄が起きやすいことも分かっています。
ある病院の調査では、救急外来を受診した高齢者の5〜10%、入院した高齢者の15〜21%の方が、せん妄の症状を引き起こすことが明らかになっています。
さらに、手術を受けた高齢者の方の50%以上、ICUで治療を受けた高齢者の方の70~80%がせん妄の症状を引き起こすというデータもあります。
また、合わない眼鏡や補聴器の使用による認知機能の低下も、社会とのつながりが絶たれる原因になり、この感覚遮断がせん妄を引き起こすきっかけになることもあります。
直接因子
直接因子とは、身体疾患や薬物の影響によるものを指します。
具体的には、がんの疼痛緩和を目的とするオピオイド、ベンゾジアゼピン系の薬、ステロイド、胃薬のH2ブロッカーなどがせん妄につながりやすいといわれています。
ある男性の実例を紹介します。
その男性は弁護士で囲碁が得意な方で、風邪で総合感冒薬と咳止めを処方されていました。
男性が処方された薬を飲んだその日の夜、様子がおかしくなり、囲碁の免状を誰かに盗られたと言ってベランダを捜索し始めたそうです。
この男性のケースでは、総合感冒薬の成分が、過活動型のせん妄を引き起こしたと考えられています。
また、長期間服用していた薬をやめた場合にも、せん妄が発症する可能性があります。
促進因子
促進因子とは、睡眠妨害や環境の変化による精神的ストレスによるものを指します。
具体例として、上述したOさんのような居室の移動、騒音問題、転居などが挙げられます。
また、身内や友人の不幸などによる心理的ストレスも、せん妄発の症の原因となることがあります。
せん妄の原因について詳しく知りたい方は合わせてご覧ください。
せん妄は高齢者の病気というイメージを持つ方も多いでしょう。しかし、せん妄の原因は老化以外にもたくさん存在します。本記事では、せん妄の原因について詳しく解説します。 せん妄とは何か せん妄の原因は何か せん妄[…]
せん妄の治療方法
せん妄はある程度時間が経つと収まることもある病気です。
しかし、決して放置をしておいて良い病気ではなく、せん妄の治療はほとんどの場合入院治療となります。
ここからは、せん妄の具体的な治療法について解説していきます。
せん妄の治療法は、大きく分けると2通りあります。
- 薬物治療
- 非薬物治療
薬物治療
薬物治療では、薬物を使用してせん妄の症状に対する治療(対症療法)を行います。
せん妄は意識精神障害の1つであるため、第一に「抗精神病薬」が投与選択されます。
使用される薬物の例は以下をご覧ください。
- ハロペリドール
- リスペリドン
- ペロスピロン
- クロルプロマジン
- クエチアピン
まずは少量ずつの投与から始まります。
そして、症状が改善され次第、薬物の投与は中止となります。
非薬物療法
一方、非薬物治療では薬物を使用せずに、以下のような治療を行います。
- 身体の負担を減らす
- 環境を調節する
1つずつご紹介します。
身体の負担を減らす
身体の負担を減らすことが、せん妄の治療へ繋がります。
具体的にいうと、以下のように症状に対するケアを行います。
- 脱水
- 便秘
- 尿閉
- 頻尿
- 疼痛
- 呼吸の苦しさ
- 不眠 など
例えば、せん妄が起こる方に不眠の症状がある場合には、以下のような対処を行いましょう。
- 眠気を妨げる原因に対する対処を行う
- 昼と夜のメリハリをつける(日光浴など)
環境を調整する
環境を見渡し、調節することもおすすめです。
例えば、昼と夜のメリハリをつけるために、以下のように調節を行いましょう。
- 朝起きたら日の光を浴びてメラトニンの分泌を促す
- 日中に活動(覚醒)して夜に寝られるようにする
- 音や光なども必要に応じて調節する など
また、以下のようなアプローチも有効ですので、ぜひ試してみてください。
- 人や場所、時間など現実的な情報を、日常会話の中でさりげなく伝える
- 時間や日付が分かるように、見えやすいところに時計やカレンダー等を置く
- 日々のニュースやできごとを知らせるTVやラジオを活用する
- 感覚を補助するもの(補聴器や眼鏡等)を使う など
家族にできること
では、せん妄の治療を行う際に、家族はどうしたら良いでしょうか?
まず、家族は慌てないように気を付けましょう。
家族が慌てるとさらに混乱させるため、せん妄の症状が進行する恐れがあります。
そのため、せん妄になった方を「安心させること」が家族の役割だといえます。
また、安心感を与えるためにも、家族が安心感を持って接するように心がけましょう。
家族の安心感は、顔の表情や態度など言葉以外のメッセージでせん妄になった方に伝わります。
家族の安心感が伝わると、せん妄が起こる回数が減っていく可能性があります。
原因を治療する
せん妄は、先程も述べたように「準備因子」「直接因子」「促進因子」から発症します。
そのため、これらの因子の原因となる症状を治療することが、せん妄の治療につながります。
具体的には、認知症や内蔵の病気の治療、アルコールの過度な摂取をやめることなどが挙げられます。
家族の方は、まずせん妄の原因が何なのかを一緒に見つけましょう。
そして、本人が原因を取り除けるように支援することが大切です。
薬物療法が行われる場合、副作用が少ない抗精神病薬である、リスペリドン、クエチアピンンフマル酸塩、ハロペリドールなどが使われます。
なお、抗精神病薬の副作用として、筋肉の反射が弱まる場合があり、誤嚥(ごえん)や窒息のリスクが高くなります。
そのため、食事の際には喉に食べ物を詰まらせないように気をつけましょう。
また、侵襲性の高い手術などを受けた場合にも、せん妄発症のリスクがありますが、このケースでは後述する見当識の保持を行います。
見当識を保つ
せん妄の治療には、見当識を保つことも重要です。
具体的には、目に見える所にカレンダーや家族の写真を置く、部屋を明るくして物や人の場所を把握しやすいようにするといった行動が、治療につながります。
また、必要であれば、眼鏡や補聴器も手に届く所に準備しておくといった、家族が環境を整えるも効果的です。
興奮の管理
不眠や日常生活の些細なストレスによって精神的な興奮が生じ、せん妄を引き起こす場合もあります。
そのため、このようなストレスを減らすための、興奮の管理がせん妄の治療には重要です。
具体的には、昼間に散歩などの適度な運動をする、夜間はしっかりと眠り生活リズムを整えるといった行動が大切です。
また、口の渇きのような些細なストレスも、せん妄の引き金になりえるため、不調がないかどうかこまめに確認することも大事です。
せん妄の治療法について詳しく知りたい方は合わせてご覧ください。
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せん妄の看護計画
せん妄を治療する際は、ゴールを設定することが大事となります。
ちなみに、ゴールは以下の2つを挙げることができます。
- 安全確保
- 苦痛緩和
ここでは分かりやすく、以下の症状・状態の方を例に挙げます。
- 夜間せん妄の症状ありクエチアピン25㎎を投与
- 1時間が経過して少し落ち着いたが眠らない
- 目的のない動作をしている
上記に加えて、術後で胸腔ドレーンをいじっている場合には「安全確保」をゴールに設定しましょう。
また、以下のような場合には「苦痛緩和」をゴールに設定することをおすすめします。
- 終末期を迎えており、安全管理上の問題がない場合
- 幻覚の訴えが焼失した場合
せん妄患者は死期が近い?
2010年に行われた複数の研究を統合・解析した結果、せん妄によるリスクが明らかになりました。
まずは以下をご覧ください。
死亡リスク | 施設入所リスク | 認知症発症リスク |
1.95倍 | 2.4倍 | 12.52倍 |
せん妄患者の死亡リスクは通常の約2倍、家に帰れずに施設入所となるリスクは2.4倍となっています。
さらに、せん妄患者が認知症を発症するリスクは、なんと12.52倍を示しています。
また、せん妄患者の死亡リスクについて以下のような結果も出ています。
ICU(集中治療室)に滞在した人の6ヶ月後を調査した研究結果 |
せん妄になった方とならなかった方とで、死亡率が約20%違っている |
せん妄の症状が10日間以上見られた方の場合、2年後に生存している確率は10%台だといわれています。
80〜90%の方は2年後に死亡する可能性があります。
そのため、せん妄は死亡に繋がるリスクの高めの疾患であるといえます。
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各年代のせん妄リスクは?
年代ごとのせん妄リスクについて気になる方も多いと思います。
そこで、次は以下の年代のせん妄リスクについてご紹介します。
- 高齢者
- 子供
高齢者のせん妄リスク
高齢者の方のせん妄リスクは高めです。
なぜなら、せん妄の原因となる準備因子、直接因子、促進因子を以下のように満たしているからです。
因子 | せん妄リスクが高い理由 |
準備因子 | 高齢者は複数の疾患を患っていることが多いため、高齢社は身体に負荷がかかればかかるほどせん妄が起こりやすくなるため等 |
直接因子 | 加齢に伴って身体の機能が低下しているため、複数の疾患を治療する薬を飲んでいるため、治療のために服用している薬が要因となることがあるため等 |
促進因子 | 高齢者は適応能力が低下するので環境の変化に対するストレスなどを受けやすいため等 |
子供のせん妄リスク
小児科に入院している約10%の患者に、せん妄が出現するという報告があります。
出典:子どものせん妄
ちなみに、子供に出現するせん妄の特徴は、以下をご覧ください。
- 認知の障害や行動上の障害よりも、気分の不安定・イライラ・妄想や幻聴などの方が現れやすい
- 発達に伴って、現れる症状が異なる場合がある
- 急性の発症が多い
- 非活動性(低活動性)のせん妄の場合も多い など
また、子供のせん妄には以下のような危険因子も含まれています。
- 大人よりも子供の方がせん妄への脆弱性が高い
- せん妄患者の養育者が感じる不安や抑うつ
- 既存の問題や行動上の問題(低年齢や男子等)
- ノイズや孤独、不安などによって睡眠が妨害される
- 入院などの特殊な環境によって感じる孤独や不安 など
大人だけでなく子供にもせん妄が出現します。
そして、子供のせん妄にはさまざまな症状・タイプがあるため、見逃さないように注意しましょう。
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がん患者のせん妄は見逃されやすい?
実は、がん患者のせん妄発症率は高い数値を示しています。
まずは以下をご覧ください。
一般病棟の入院患者 | がんによる入院患者 | 治療以外の目的で入院する65歳以上の進行がん患者 | (がんの)緩和ケア病棟の入院患者 | 死亡する直前 |
約10~30% | 約17% | 約40% | 約42% | 約88% |
がんによる入院患者の約17%の、せん妄が認められています。
また、緩和ケア病棟や治療以外の目的で入院する65歳以上の進行がん患者の有病率は、約40〜42%に上ります。
さらに、がんによって死亡する直前には、約88%の方がせん妄を羅漢しているという結果となりました。
しかし、上記のように有病率の高いにもかかわらず、がん患者のせん妄は見逃されやすいとされています。
一体なぜ見逃されやすいのでしょうか?
考えられる原因として以下の2点が挙げられます。
- がん患者の反応と似ている
- 主治医の担当分野ではない
それぞれ解説していきます。
がん患者の反応と似ている
せん妄が見逃される原因として、がん患者の反応と似ていることが挙げられます。
なぜなら、がんの医療で使用する薬物や、がんに伴う疾患などがせん妄の要因になることがあるからです。
がんの医療でよく使用する薬物 | がんに伴う疾患 |
オピオイド、ステロイドなど | 高カルシウム血症、脳転移など |
がんの手術後やがんの終末期に出現することもあります。
がん患者の反応と似ていますが、混同しないよう注意しましょう。
また、がん患者のせん妄は「気持ちの状態である」と誤って認識されやすいです。
しかし、せん妄は意識の混濁など身体の問題によって起こるため、適切なケアを行うと症状は改善します。
主治医の担当分野ではない
がん患者の主治医は、腫瘍内科医などの医師です。
しかし、せん妄は意識精神障害であるため、主治医の担当分野以外となります。
担当分野以外の主治医がせん妄の初期対応をおこなうため、見逃されやすいとされています。
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せん妄の疑いがあるときはどうすればいい?
いくら予防に力を入れていても、せん妄を発症してしまう場合はあります。
もし、せん妄の疑いがある場合には、どのように行動すればよいのでしょうか?
薬の服用を控える
内科から処方された薬など、薬剤がせん妄を引き起こす場合があります。
そのため、薬を中止することができるのなら中止した方が良い場合があります。
ただし、どうしても中止できない薬ももちろん存在するため、薬を中止してもよいかどうかは、医師との相談が必要です。
生活環境に変化を加えない
せん妄が発症すると、前触れもなく興奮し、異常な行動をとってしまう場合があります。
そのような興奮した時の対策として、手に届く所にはさみやカッターなど、危険の元となるものを置かないようにすることが大切です。
また、話のつじつまが合わない場合は、その話を否定しないで、本人の気を逆撫でないことが大事です。
病院に行く
せん妄は長期化すると、特に高齢者の方にとっては、認知症につながってしまう危険な病気です。
そのため、せん妄の可能性が少しでもある場合は、認知症の進行などと決めつけないで、精神科医師の診断を仰ぐことが重要です。
なお、せん妄の検査として、せん妄の原因となる脱水や感染症などの徴候がないかどうかを調べる場合があります。
そのため、CTやMRI、血液検査や心電図検査など、様々な身体検査が行われることもあるので、病院に行く際は様々な検査を行う心づもりで向かいましょう。
せん妄の方への対応法について詳しく知りたい方は合わせてご覧ください。
せん妄は、突発的に発生する精神機能障害です。身近な人がせん妄と診断されてしまった時、どのようにして対応をしていけばよいのでしょうか。この記事では、以下のポイントについて解説しております。 せん妄の症状とは せん妄[…]
せん妄の評価方法について
せん妄の評価方法についてもご紹介します。
評価が必要な理由
せん妄の多くが低活動性です。
そのため、症状だけではせん妄であると判断できない場合もあります。
せん妄を見逃さないためにも「せん妄の評価」が必要です。
しかし、せん妄の評価を主観的に行うと、見逃す恐れがあります。
せん妄を見逃さないためにも、評価はスクリーニングテストで行われます。
せん妄の評価方法
せん妄の評価方法の1つに、CAM-ICU(キャムアイシーユー)がありますのでご紹介します。
CAM-ICUでは、以下の4つのポイントを評価します。
上記のポイントが以下の組み合わせで3つ認められると、せん妄であると評価されます。
- 1と2と3が認められた場合
- 1と2と4が認められた場合
特に「注意力の欠如」の評価に重点が置かれています。
また、CAM-ICUは12時間ごとに行われます。
CAM-ICUは、患者の協力によって実施されます。
言葉を口にできなくても指先で細かい動きなどができる場合には、テストを実施できる可能性があります。
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せん妄の予防について
高齢者の場合、脱水や便秘、睡眠不足がせん妄を引き起こす引き金になると考えられます。
そのため、昼間活動して、夜に眠る生活リズムをしっかりと整える事が、せん妄の予防につながります。
また、適切な栄養、水分の摂取もせん妄の予防において重要です。
そのため、バランスの良い食生活や、定期的な水分の摂取を行うようにしましょう。
さらにいうと、ストレスの軽減させる、コミュニケーションの充実をはかることも、せん妄の予防に効果的です。
そのため、転居の回数を減らす、家族や友人と積極的に会話を行うことが大切です。
これまで述べてきたことからも分かるように、せん妄は、薬物療法を始める時ややめる時に発症するリスクがあります。
そのため、服薬しなくても健康的に暮らせるように、健康的な体作りに努めることが大切です。
せん妄の予防について詳しく知りたい方は合わせてご覧ください。
せん妄は、一時的である場合が多いといわれていますが、死亡率を高めるというデータもあります。できることなら予防してせん妄を起こしたくないですよね。今回は、せん妄の予防法と、治療法についてご紹介します。 せん妄の予防法[…]
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せん妄のまとめ
ここまで、せん妄の症状、原因、治療法、予防方法について情報を中心にお伝えしました。
ここまでの情報をまとめると以下のようになります。
- せん妄の症状は認知症、うつ病と混同しやすいため、慎重な見極めが必要
- せん妄の原因は「準備因子」「直接因子」「促進因子」の3種類がある
- ストレスをできるだけ与えないことが、せん妄の治療につながる
- せん妄の予防には健康的な生活習慣、日々のストレスの緩和が重要
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。