ADHD(注意欠如・多動性障害)は、子どもだけでなく大人にも影響を及ぼす発達障害の一つであり、その存在は広く認知されています。
大人のADHDは、日常生活や職場でのパフォーマンス、対人関係に影響を及ぼす可能性があります。
これらの問題に直面している方々は、自分がADHDである可能性に気づかないまま、困難を抱え続けていることがあります。
この記事では、大人のADHDについて以下の項目を中心に詳しく解説します。
- 大人のADHDの特性とタイプ
- 大人のADHDの特性による生活への影響
- 大人のADHDの診断方法
最後までお読みいただくことで、大人のADHDについての理解が深まり、自身や周囲の人々への理解と支援に役立つ情報を得ることができます。
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大人のADHDの基本的な理解
ADHD(注意欠如多動症)は、子どもだけでなく大人にも影響を及ぼす発達障害の一つです。
以下では、大人のADHDについて、特性やそれぞれのタイプの特徴を詳しく説明します。
大人のADHDとは何か
ADHDは「Attention-Deficit Hyperactivity Disorder」の略称で、日本語に訳すと「注意欠如多動症」です。
ADHDは生まれつきの性質としての特性であり、その特性は「病気」ではなく、「個性」や「性格」に近いものと考えられています。
そんなADHDは子供に多く見られますが、大人も例外ではありません。
ADHDの特性は、子どもなら学校での学習やクラスメイトとの関わり、大人なら仕事の進め方や職場の人間関係、といった、ライフステージに応じて抱える問題が変わってくるという特徴があります。
ADHDの主な特性とその影響
ADHDの主な特性は、以下の3つです。
- 不注意:物事に長時間集中し続けることが難しい
- 多動性:じっとしていられない、頭に浮かんだことをすぐに行動に移す
- 衝動性:思いついたことや外部からの刺激に対して、衝動的に反応や行動をしてしまう
これらの特性は、個々の行動や思考に影響を与え、日常生活や職場での機能に影響を及ぼす可能性があります。
ADHDのタイプとそれぞれの特徴
ADHDの特性は人によって現れ方の傾向が異なります。
「不注意優勢型」「多動性/衝動性優勢型」「混合型」と、大きく3つのタイプに分けることができます。
不注意優勢型 | 「不注意」による症状が目立ち、「多動性」や「衝動性」の症状はあまり強くないタイプ |
多動性/衝動性優勢型 | 「多動性」や「衝動性」による症状が目立ち、「不注意」の症状はあまり強くないタイプ |
混合型 | 「不注意」と「多動性・衝動性」の特徴をあわせ持っている |
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大人のADHDの主な特性とは
ADHDは、日常生活、職場でのパフォーマンス、そして対人関係に影響を及ぼす可能性があります。
以下では、それぞれの影響について詳しく説明します。
ADHDの特性と日常生活への影響
ADHDの特性は、日常生活に様々な影響を及ぼす可能性があります。
不注意
「一つのことに注意を持続するのが難しい」ということを意味します。
これは日常生活において物をなくしたり、整理整頓ができなくなったりすることにつながります。
多動性
「じっとしていられない」「頭に浮かんだことをすぐに行動に移す」ということを意味します。
これは授業中や会議中など座っていなくてはいけない場面でつい立ちあがってしまうことにつながります。
衝動性
「思いついたことや、外部からの刺激に対して、衝動的に反応や行動をしてしまう」ということを意味します。
日常生活の中で、場に合わせた発言や行動、感情をコントロールすることが苦手なため、周囲の人に無神経、
短気などの印象を与えてしまうことにつながります。
ADHDの特性と職場でのパフォーマンスへの影響
ADHDの特性は、職場でのパフォーマンスにも影響を及ぼす可能性があります。
不注意や多動性により、ケアレスミスが多く、業務を先送りにして締め切りに間に合わない、という経験のある方も多いようです。
また、一度に多くの指示やタスクを与えられたり、長い説明をされたり、作業中に指示を出されると混乱してしまうこともあります。
ですが、ADHDの特性自体が悪いのではなく、仕事の内容や職場環境とのミスマッチを減らしていくことで様々な問題も軽減できるといわれています。
ADHDの特性と対人関係への影響
ADHDの特性は、対人関係にも影響を及ぼす可能性があります。
ADHDの特性により、人間関係が続かない理由として、
- 管理や継続することが苦手である
- 同じことを続けると退屈しやすい傾向がある
- 一度に多くの情報を取り入れるのが苦手なので、一度に多くの指示や長い説明をされると混乱する
などが挙げられます。
しかし、これらの困難は、自分自身の特性を理解し、それに合わせた対策を講じることで改善することが可能です。
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大人のADHDの診断方法
以下では、ADHDの診断プロセス、そして診断における重要なポイントについて詳しく説明します。
ADHDの診断方法
ADHDの診断プロセスは、医師や精神保健専門家による詳細な問診や観察に基づいて行われます。
医師は詳細な医療面接、行動観察、そして場合によっては心理テストや注意力テストを用いて、全体的な診断を下します。
また、多くの成人は子どもの頃からの症状を振り返りつつ、その影響を現在の生活に関連付けて考察します。
ADHDの診断における重要なポイント
ADHDの診断における重要なポイントは、ADHDの症状が他の精神疾患や発達障害と重なることがあるため、
他の疾患との鑑別が必要であるということです。
また、診断過程では、ADHDに関連する他の状態、例えば学習障害や情緒障害、行動障害など他の発達障害との鑑別も重要です。
さらに、ADHDの診断は、子どもと成人で異なるアプローチを必要とします。
子どもの場合、主に保護者や教師からの報告や学校での観察に基づいて診断が進められます。
一方、成人の場合、自己報告が診断の主な手段となることが多く、医師は患者自身の記述と自己評価を元に診断を行います。
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大人のADHDの治療と管理のアプローチ
大人のADHDの治療と管理は、一般的に個々の症状や生活環境に合わせてカスタマイズされ、より良い結果を得るために薬物療法と非薬物療法の組み合わせが推奨されています。
ADHDの治療法とその効果
ADHDの治療法は主に2つ、薬物療法と非薬物療法があります。
これらの治療法は、ADHDの症状を緩和し、日常生活の質を向上させることを目指しています。
具体的には、注意力と集中力を高め、衝動的な行動を軽減し、社会的な関係を改善することが期待されています。
ADHDの薬物療法とその効果
ADHDの薬物療法は、主に中枢神経刺激薬と分類される薬を使用します。
これらの薬は、脳内の神経伝達物質であるドーパミンとノルアドレナリンの再取り込みを抑制し、神経伝達物質の不足を補うことで、ADHDの症状を改善します。
日本で承認されているADHDの治療薬には、
- コンサータ
- ストラテラ
- インチュニブ
があります。
これらの薬は不注意、多動性、衝動性それぞれに効果を発揮し、数回の服薬で効果を実感できます。
ADHDの非薬物療法とその効果
ADHDの非薬物療法には、
- カウンセリング
- 行動療法
- 環境調整
などがあります。
これらの方法は、ADHDの症状を緩和させるだけでなく、自己理解を深め、ストレスを軽減し、社会的な関わりを改善するのに役立ちます。
具体的には、
- わかりやすく指示を伝える
- 感情的な叱り方をしない
- 褒め方を工夫する
- 気が散りにくいように環境を整える
- 学習の課題を小分けにして休憩を挟む
といったような工夫が有効とされます。
大人のADHDの疑いがある場合の適切な相談先
大人のADHDの疑いがある場合、適切な受診先や相談先を知ることは、早期の診断と適切な支援を受けるために重要です。
ADHDの疑いがある場合の適切な受診先
大人のADHDの疑いがある場合、最初に受診すべきは精神科または心療内科です。
ADHDは脳の機能の偏りによるものであり、その診断と治療は専門的な知識と経験を持つ医師によって行われます。
また、都道府県や市によっては、発達障害の診断を行っている医療機関のリストや相談窓口を公開しているところもあります。
診断を受ける前に、医療機関に問い合わせて、発達障害の診断を行っているかどうかを確認することが重要です。
ADHDの可能性?困った時の相談先
ADHDの疑いがある場合や、ADHDによって日常生活に支障が出て困っている場合、適切な支援を受けるためには専門的な相談が必要です。
困った時は、以下の相談先に相談することを検討してみてください。
発達障害者支援センター
発達障害のある人への支援を総合的に行う専門機関で、日常生活や仕事、人間関係など、幅広い相談に応じています。
また、発達障害のある人とその家族が豊かな地域生活を送れるように、各分野の関係機関と連携し、地域における総合的な支援ネットワークを構築しながら活動を行っています。
地域の保健所や保健センター
不眠、うつ、こころの病気に関する不眠や悩みの相談などを受け付けています。
ここでは、専門家に相談することもできます。
精神保健福祉センター
こころの健康相談から精神医療に関わる相談などに応じています。
治療が必要かどうかも相談することができるだけでなく、近隣の医療機関を紹介してもらうことも可能です。
こころの健康相談統一ダイヤル
電話:0570-064-556
こころの問題について、本人や家族などが気軽に相談できる公的な窓口です。
電話をかけると、最寄りの公的な相談機関に接続します。
国や地方自治体などが運営しているので、相談は無料で秘密も守られます。
(フリーダイヤル以外の電話相談は通話料がかかります)
これらの相談先を利用することで、ADHDの疑いがある場合や、ADHDによって生活に支障が出ている場合でも、適切な支援を受けることが可能です。
自分一人で悩まず、適切な相談先を活用してください。
(出典:厚生労働省-困ったときの相談先)
ADHDの診断を受けるための準備
ADHDの診断を受けるためには、まず自身の生育歴や生活歴、既往歴などを詳細に医師に伝えることが重要です。
これには、自身の行動や感情、思考パターンなど、日常生活での困りごとや特徴を具体的に説明することが含まれます。
また、診断の精度を高めるために、子どもの頃の通知表や作文を持参する場合もあります。
これらの情報は、医師がADHDの診断を行う上で非常に重要な参考資料となります。
診断を受ける前に、これらの情報を整理しておくことがおすすめです。
大人のADHDとはについてのまとめ
ここまで大人のADHDについてご紹介しました。
要点を以下にまとめます。
- 大人のADHDの特性は「不注意優勢型」「多動性/衝動性優勢型」「混合型」の3つのタイプに分かれる
- 大人のADHDの特性は、職場でのパフォーマンスや対人関係にさまざまな影響を与えるが、自分自身の特性を理解し対策することで様々な問題を軽減することができる
- 大人のADHDの症状は他の精神疾患や発達障害と重なることがあるため、他の疾患との鑑別が重要で、医師や精神保健専門家による詳細な問診や観察に基づいて行われる
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。