脳梗塞を起こすことで脳への血流が悪くなり、物忘れが多くなる見当識障害など様々な症状が起こります。
脳梗塞と見当識障害はどのように関係しているのでしょうか?
今回は、脳梗塞と見当識障害の関係について、以下の項目を中心に解説します。
- 見当識障害をはじめとする症状の解説
- 薬物療法と非薬物療法の詳しい解説
- 血管性認知症とアルツハイマー型認知症の違いについて
詳しく解説していきますので、ぜひ最後までご覧ください。
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脳梗塞と見当識障害の関係とは
脳梗塞は、脳の血管が何らかの原因で詰まってしまう病気です。
脳梗塞で血管が詰まることにより、酸素不足と栄養不足が生じ、詰まった先の脳細胞は壊死します。
壊死した部位により血管性認知症の症状が変わってくるのです。
その症状の一つに見当識障害があります。
また、記憶力が低下したり、計算ができなくても判断力や今まで培ってきた知識などは、維持している場合があります。
なぜなら、正常な組織は機能しているからです。
このように、障害される能力と残っている能力がある状態を「まだら認知症」と言います。
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血管性認知症の症状
血管性認知症とは、脳梗塞を含めた脳血管障害が生じることで起こります。
脳の血管が詰まったり出血したりすることで、周辺組織が壊死し、機能が低下するため、もの忘れや見当識障害が生じます。
見当識障害
見当識障害とは、自分が置かれている状況が、わからなくなることです。
時間がわからなくなる、場所がわからなくなる、人がわからなくなるといった症状があらわれます。
これらの理解能力が低下することを見当識障害と言います。
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感情失禁
脳梗塞を含めた脳血管障害後は、感情のコントロールが難しくなる感情失禁が現れることがあります。
突然前触れもなく怒り始めたり、泣いてしまったりと行った症状があらわれます。
歩行障害
脳梗塞などによる脳血管障害の部位によっては、小刻み歩行や片麻痺による歩行障害も現れます。
その場合は、リハビリなどの治療を行い、今ある機能を少しでも低下させないことが重要となってきます。
脳梗塞や脳出血など、脳の血管に障害が起こることで発症する脳血管性認知症。脳血管性認知症はどのような症状があるのかを知っていますか?今回は脳血管性認知症の原因や症状についてご紹介した上で、診断方法や治療法をご紹介します。[…]
血管性認知症における治療法
脳細胞は、再生することがありません。
そのため、脳梗塞による血管性認知症の症状が現れた場合、確実に完治させる治療法は現在ありません。
脳血管性認知症は、再発するたびに症状が悪化することが多いため、再発予防が特に重要になってきます。
脳血管性認知症の治療法は、大きく分けて薬物療法と非薬物療法があります。
非薬物療法には、リハビリテーションや心理療法などがあります。
薬物療法
薬物療法には、昔から使われているドネペジル塩酸や、水なしで飲めるガランタミンなどがあります。
また、ドネペシル塩酸と併用すると相乗効果があると言われるメマンチンという薬もあります。
ドネペジル塩酸やガランタミンは、アセチルコリンという神経伝達物質を分解する酵素の働きを抑え、脳内のアセチルコリンの濃度を高めるお薬です。
メマンチンは、脳内にあるグルタミン酸という、神経細胞を興奮させる働きのある神経伝達物質を抑える作用のお薬です。
記憶力を低下させるグルタミン酸を抑制し、進行を遅らせます。
副作用については十分に考慮する必要があるため、医師と慎重に話し合ってお薬を決めましょう。
非薬物療法
見当識訓練
記憶障害により低下している見当識障害を改善したり、これ以上悪化させないために見当識訓練を行います。
見当識障害を改善する主な訓練内容は、クラスルームリアリティ・オリエンテーション、24時間リアリティー・オリエンテーションなどの訓練があります。
ここで、各訓練内容を詳しくお伝えします。
①クラスルームリアリティ・オリエンテーション
小人数の高齢者が集まり、進行役のスタッフが「名前、日時、場所、時間、今日の予定」などを高齢者との会話のなかで教示し、見当識障害の改善をしていきます。
②24時間リアリティー・オリエンテーション
見当識障害のある高齢者とスタッフの日常生活における会話のなかで「自分が誰なのか」「今日の日時の確認」「今、どこにいるのか」と言った事柄に関する現実認識の機会を提供します。
アロマセラピー
アロマ療法は、精油そのものの香りを楽しんだり、精油で、手のひらや足、腕などのマッサージを行ったりします。
香りやマッサージによる刺激が脳へ伝わることで、ストレスが緩和したり、興奮を抑える効果もあるため非薬物療法の一つとして取り入れられることがあります。
回想法
回想法は、昔懐かしい写真を見ながら思い出を語ったり、懐かしい音楽を聴きながら昔のことを語ったりする非薬物療法です。
認知症の方は、最近の記憶を維持することは難しくても昔の記憶は保持されます。
昔の思い出を語ることで言葉を思い出すことや、場所を思い出すことで脳への刺激が活発になり、認知症の症状悪化を和らげる効果があります。
生活習慣の改善
生活習慣の改善は、認知症予防にもつながりますし、症状悪化を緩やかにしてくれる効果が期待されます。
①食生活
食生活では、栄養バランスの良い食事を規則正しく一日3食とり、食べ過ぎないようにしましょう。
また、抗酸化作用のある食事は、身体の組織の老化を防ぐと言われているため、「緑黄色野菜」や「果物」を意識して取るといいでしょう。
②運動
運動不足は肥満の原因になります。
肥満と生活習慣病が重なると、動脈硬化も進み、脳梗塞を含めた脳血管性疾患につながります。
一日30分程度の有酸素運動を週3~4回、習慣として取り入れると良いでしょう。
③コミュニケーション
人との交流が無くなってしまうと脳への刺激が低下し、認知症の症状がどんどん進行してしまいます。
家族や友人などの関わりを大切にし、家ばかりに引きこもるのではなく、地域のつどいやサークル活動に積極的に参加すると良いでしょう。
血管性認知症とアルツハイマー型認知症の違い
認知症は大きく分けて血管性認知症とアルツハイマー型認知症があります。
この2つは、原因がそれぞれ違います。
血管性認知症は、脳梗塞や脳出血などが原因で起こる認知症です。
アルツハイマー型認知症は、脳内にたんぱく質が溜まることにより、脳の萎縮が侵攻することで起こる認知症です。
また、血管性認知症の症状は特徴的です。
血管性認知症は、別名まだら認知症とも呼ばれます。
正常に機能する能力やしない能力がまだらである認知症です。
まとめ:脳梗塞と見当識障害
ここまで、脳梗塞と見当識障害の関係性や治療法、血管性認知症とアルツハイマー型認知症の違いを中心にお話してきました。
脳梗塞と見当識障害についての要点を以下にまとめます。
- 見当識障害や歩行障害は脳梗塞による血管性認知症が原因
- 認知症には、内服薬の治療や見当識訓練、アロマセラピー、回想法、生活習慣の改善などを行う
- 血管性認知症は脳梗塞、アルツハイマー型認知症は脳にタンパク質が溜まることが原因
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。