小さいお子さんがいるご家庭の場合、お便り等でマイコプラズマについて注意を促されることもあるでしょう。
しかし、実際のところマイコプラズマについてよく分からないため、具体的な注意点や対策について知りたいのではないでしょうか。
そこで本記事では、以下の点を中心に詳しくご紹介します。
- マイコプラズマの主な症状
- マイコプラズマの潜伏期間
- マイコプラズマに感染した場合の学校や仕事について
マイコプラズマについて知りたいとお考えの方は、ぜひ最後までご覧ください。
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マイコプラズマとは
まずはじめに、マイコプラズマ肺炎についてご紹介します。
マイコプラズマとは風邪や肺炎、気管支炎等を引き起こす細菌の1種です。
マイコプラズマは一般の細菌と少し構造が異なる点が特徴です。
一般の細菌の構造は、細胞膜と細胞壁と呼ばれる2つの組織で囲まれていますが、マイコプラズマには細胞壁がなく、細胞膜のみで組織が囲まれています。
この構造の違いにより他の細菌と差別化され、効果のある抗生剤も限られてしまい、特別なものが必要です。
また、マイコプラズマは細菌のため、増殖する際に他の生物の細胞の力を借りずに自己増殖します。
そのため、こまめな手洗いやうがい等の感染予防策が重要であり、菌の自己増殖を防ぐ健康管理も大切です。
マイコプラズマの感染の原因
本項目では、マイコプラズマの主な感染経路についてご紹介します。
マイコプラズマの主な感染経路は、飛沫感染と接触感染の2種類です。
飛沫感染とは、ウイルスや細菌が咳、くしゃみ等によって空気中に飛び出し、人に感染させることです。
一方接触感染は、皮膚や粘膜の直接的な接触、手すりやタオル等を経路とした間接的な接触により病原体が付着し、感染することです。
マイコプラズマの感染力は風邪ほど強くはありませんが、保育園や幼稚園、学校等の集団生活の場で感染が流行するため注意しましょう。
また、大人も感染する可能性があるため、家庭内での感染拡大にも注意が必要です。
日々の手洗いやうがい等、細かいことから実践しましょう。
マイコプラズマの主な症状
本項目では、マイコプラズマの主な症状についてご紹介します。
マイコプラズマの主な症状は以下の通りです。
- 発熱
- 頭痛
- 倦怠感
- のどの痛み
- 筋肉痛や関節痛
- 咳症状
上記が主な症状です。
その他の特徴的な症状としては長引く咳で、解熱後も3~4週間は続きます。
マイコプラズマの治療法
本項目では、マイコプラズマの治療法について紹介します。
マイコプラズマ感染症は症状が軽度であればほとんどの場合、自然に軽快します。
症状がひどい場合や、マイコプラズマ肺炎と診断された場合は、薬剤による治療が必要です。
また、脱水症状の併発や、全身状態が悪いと判断された場合は、点滴や1週間前後の入院治療が必要になる場合もあります。
マイコプラズマ感染症には一般的な抗生物質は効果が見込めません。
マイコプラズマの場合、マクロライド系の抗生物質が第一選択で使用されるのが一般的ですが、近年では耐性菌も出現しているため注意が必要です。
耐性菌に対しては別の薬剤を使用する必要があります。
以下の記事では、感染症の種類について詳しく紹介しています。
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マイコプラズマの潜伏期間について
続いて、マイコプラズマの潜伏期間についてです。
潜伏期間は2~3週間と比較的長めです。
また、季節による発症率の違いは特になく、1年を通じて発症します。
その他、初発症状が出た後、3~5日後に咳が出始めることが多いのが特徴で、咳症状は解熱後も3~4週間程度は継続するため注意が必要です。
マイコプラズマの検査
本項目では、マイコプラズマの検査/診断の方法についてご紹介します。
- 血液中のマイコプラズマに対する抗体を調べる方法
- 痰や喉をぬぐった液からマイコプラズマのDNAを増やして調べる方法
1つ目の方法は、lgMと呼ばれる感染後初めに上昇する抗体を検出し、検査・診断します。
抗体とは、自分自身の身体が作る病原体をやっつける物質です。
2つ目の方法は、体の中にあるマイコプラズマのDNAの数を増やして検査・診断します。
迅速検査
1つ目は、迅速検査についてです。
迅速検査には、マイコプラズマの有無を確認するものと、lgMと呼ばれる抗体を検出するものがあります。
マイコプラズマの有無を確認するものは1〜3日程度、lgM抗体を検出するものは当日結果が分かります。
そのほか、マイコプラズマのDNAを増やす検査法網もあり、こちらは2~3日で結果が分かります。
ただし、いずれの方法も精度としてはあまり高くはないため注意が必要です。
lgM検出迅速検査
2つ目は、lgM検出迅速検査についてです。
マイコプラズマは増殖するまで2~3週間の時間を必要とします。
マイコプラズマの増殖後に身体が認識し、免疫反応が始まり、lgMと呼ばれる抗体が上昇します。
そのため、感染初期の段階ではlgM抗体が検出されない場合もある点に注意が必要です。
また、小児の場合は抗体反応が長期的に持続するため、抗体が検出され続ける場合もあります。
そのため、感染していても感染していないという結果が出たり、感染していないのに感染しているという結果が出たりするため、正確性に欠けます。
マイコプラズマDNA検査
3つ目は、マイコプラズマDNA検査についてです。
マイコプラズマは唾液等を通し、気管支や肺まで到達し増殖し疾患を引き起こします。
基本的に、喉や扁桃等の上気道と呼ばれる場所でマイコプラズマは盛んに増殖するわけではありません。
喉や扁桃等で検出されるマイコプラズマは、たまたま痰や咳等によって運ばれてくるものであり、上気道にはそもそも存在する菌の量は少ないとされています。
マイコプラズマはその特徴として、早期診断が難しい疾患です。
臨床症状とレントゲン等を組み合わせた所見からの判断が重要です。
マイコプラズマ肺炎と一般的な風邪との違い
次に、マイコプラズマ肺炎と風邪の違いについてです。
マイコプラズマ肺炎と一般的な風邪は全く別の疾患であり、その違いは以下の通りです。
マイコプラズマ肺炎 | 一般的な風邪 | |
原因 | マイコプラズマ(細菌) | ライノウイルスやRSウイルス(ウイルス) |
主な症状 | 長引く咳や痰、発熱、だるさ、息苦しさや胸の痛み | 鼻水や鼻づまり、喉の痛み、発熱や頭痛 |
治療方法 | 抗菌薬による治療 | 本人の免疫力、出ている症状を抑える薬を飲む |
治るまでの目安 | 3~4週間 | 7~10日程度 |
マイコプラズマ肺炎と一般的な風邪は、原因や主な症状、治療方法や治るまでの目安が大きく異なります。
見極め方は、日にちが経過するほど咳が悪化したり、長期間持続したりするかどうかです。
マイコプラズマ以外の風邪の原因について詳しく知りたい方は、こちらの記事も合わせてお読みください。 夏場になると、突然の体調不良に見舞われることはありませんか?それは一般的に「夏風邪」と呼ばれ、意外にも多くの人が経験しています。夏風邪は、ただの風邪と侮ることなく、しっかりと対処する必要があります。特にエアコンによる温度差や不規[…]
マイコプラズマ肺炎と一般的な肺炎との違い
本項目では、マイコプラズマ肺炎と一般的な肺炎についてご紹介します。
マイコプラズマ肺炎と一般的な肺炎はどちらも肺炎ですが、以下のように特徴に差があります。
マイコプラズマ肺炎 | 一般的な肺炎 | |
肺炎の種類 | 非定型肺炎 | 定型肺炎 |
原因となる菌 | マイコプラズマ菌 | 肺炎球菌やインフルエンザ菌、レジオネラ菌等 |
治療方法 | マクロライド系抗菌薬、テトラサイクリン系抗菌薬、キノロン系抗菌薬 | セフェム系抗菌薬、ペニシリン系抗菌薬 |
マイコプラズマ肺炎と一般的な肺炎では、原因となる菌が異なります。
原因となる菌が異なるため、使用する薬剤も異なります。
症状としては一般的な肺炎の方が重篤になる可能性が高く、マイコプラズマ肺炎は症状が軽く済む場合が多いです。
医療機関を受診する目安について
続いて、医療機関を受診する目安についてです。
持続する咳は日常生活を営む上で様々な支障をきたします。
処方された薬を飲み終わっても咳が持続して収まらない場合は、再受診がおすすめです。
マイコプラズマ肺炎の場合は、原因となる菌をしっかりと処理しない限り症状が自然軽快しづらいです。
その他の症状は治まっているにもかかわらず、咳だけが長期間持続し続ける場合は早い段階で再受診し、検査等を受けましょう。
早く対処すればそれだけ症状が回復するまでの期間も短縮できます。
マイコプラズマ肺炎による咳について
本項目では、マイコプラズマ肺炎と咳の関係性についてご紹介します。
咳には大きく、急性咳嗽、遷延咳嗽、慢性咳嗽と3つの種類があります。
一般的な咳の持続期間 | 咳の原因 | |
急性咳嗽 | 3週間以内 | 一般的な風邪 |
遷延咳嗽 | 3~8週間 | マイコプラズマ肺炎、咳喘息、胃食道逆流症等 |
慢性咳嗽 | 8週間以上 | 副鼻腔気管支症候群、アトピー咳嗽、咳喘息等 |
マイコプラズマ肺炎を疑う基準としては、咳が3週間以上持続しているかどうかを目安にするとよいでしょう。
他の諸症状が収まっているにもかかわらず、咳だけが3週間以上持続している場合は再度病院を受診し、検査等を受けることをおすすめします。
再受診し、きちんと対処することで症状の悪化や長期化を防げます。
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マイコプラズマ肺炎の予防方法とは
本項目では、マイコプラズマ・マイコプラズマ肺炎の予防方法についてご紹介します。
マイコプラズマ・マイコプラズマ肺炎を周囲に広げないためには、マイコプラズマを含む唾液や痰等を他の人に触れさせないことが重要です。
自身がマイコプラズマに感染した場合は、マスクを着用し、手洗い・うがいを頻繁に実施する等基本的な感染対策を実践しましょう。
また、マイコプラズマにはアルコール消毒が有効なため、市販のアルコール消毒等を積極的に活用するのがおすすめです。
マイコプラズマには予防のためのワクチンがありません。
感染し免疫ができた場合でも徐々に免疫は薄れます。
そのため、十分な睡眠、栄養バランスの良い食事、基本的な感染対策の実施が重要な予防方法といえるでしょう。
感染症の予防方法について、以下の記事で詳しく解説しています。
感染症予防について感染症は、私たちの日常生活や社会活動に深刻な影響を及ぼす可能性があります。その影響を最小限に抑えるためには、感染症の予防が不可欠です。しかし、具体的にどのような予防方法があるのか分からない場合は対応が難しいです[…]
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マイコプラズマ肺炎の合併症
続いて、マイコプラズマ肺炎の合併症についてです。
マイコプラズマの感染で引き起こされるのは、マイコプラズマ肺炎だけではありません。
マイコプラズマに感染することで引き起こされる合併症には、以下が挙げられます。
- 髄膜炎
- 脳炎
- 末梢性神経炎
- 心筋炎
- 心膜炎
- 蕁麻疹
- 肝機能障害
- 膵炎
- 関節炎
- 腎炎
マイコプラズマによる感染で、上記の合併症が引き起こされる可能性はまれではありますが、リスクがある以上は注意が必要です。
マイコプラズマの感染を契機とし、様々な合併症に発展する可能性があるため、少しでも不安を感じた場合は放置したり、自己判断したりせず、医療機関を受診しましょう。
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マイコプラズマ肺炎って繰り返すの?
本項目では、マイコプラズマ肺炎が再発するかどうかについてご紹介します。
マイコプラズマには、インフルエンザウイルスのようなワクチンは現状開発されていません。
また、マイコプラズマに感染することで菌に対する免疫は生まれますが、時間の経過とともに徐々に免疫は薄まるため、再感染のリスクはゼロではないです。
免疫の持続期間は個人差が非常に大きく、免疫の持続期間が短い人の場合は1年経過しない状態で再感染することもあります。
マイコプラズマは子どもがかかりやすい疾患ではありますが、大人がかからないわけではありません。
子どもがマイコプラズマに感染し、家庭内感染する場合もあるため、日々の感染予防対策が重要です。
マイコプラズマにかかったら学校や仕事はどうする?
最後に、マイコプラズマに感染した場合、登校/登園、出社に影響するかどうかについてご紹介します。
マイコプラズマに感染した場合の、休まなくてはならない期間の目安は以下の通りです。
学校・保育園・幼稚園 | 会社 | |
法律上の出席停止/出社停止 | 学校保健安全法に規定あり | 感染症法による明確な規定はない |
休む期間の目安 | 感染の恐れがないと医師が認めるまで | 症状がひどい期間 |
治癒証明証の要否 | 学校・保育園・幼稚園の規定に従う | 会社の規定による |
マイコプラズマ肺炎は、学校保健安全法という法律で、第3種:その他の感染症に分類されており、医師の許可が出るまでは登校・登園はできません。
インフルエンザのように解熱後〇日間という指定はありませんが、症状が治まるまでは出席停止となります。
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マイコプラズマの潜伏期間まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は、マイコプラズマの潜伏期間や症状等についてご紹介しました。
要点を以下にまとめます。
- マイコプラズマの主な症状として、発熱、頭痛、倦怠感、のどの痛み、筋肉痛や関節痛、咳症状などが挙げられる
- マイコプラズマの潜伏期間は、2~3週間と比較的長め
- マイコプラズマに感染した場合の学校や仕事を休む期間は、解熱後〇日間という指定はないが、症状が治まるまでは出席停止とする場合が多い
この記事の内容を参考にし、マイコプラズマ肺炎についての理解を深め、正しく対応いただければと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。