漢方の中には、自律神経を整える効果のあるものがあります。
自律神経障害による不調を抱えている方は、漢方を試してみるのも一つの手段として有効です。
本記事では自律神経と漢方について、以下の点を中心にご紹介します。
- 自律神経に効果のある漢方
- 漢方以外で自律神経を整える方法
- 漢方の歴史
自律神経を整えるためにも、本記事をご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
自律神経について詳しく知りたい方は下記の記事も併せてお読み下さい。
自律神経とは、内臓や代謝、体温といった体の機能を24時間体制でコントロールする神経のことです。心と体を活発にする交感神経と、休ませる副交感神経がバランスを取りながら、私たちの体を支えています。自律神経が不調をきたしたり乱れたりす[…]
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自律神経とは
自律神経とは、全身の器官をコントロールする神経系です。
たとえば、内臓機能の調節や各種ホルモンの分泌を司ります。
自律神経系は、交感神経と副交感神経から成り立ちます。
交感神経はアクセルの役割を果たす神経系です。
具体的には、心拍・血圧・体温を上昇させて、身体に活動性を生み出します。
一方、副交感神経はブレーキの役目を担います。
活動性を低下させることで、心身をリラックスさせ、休息モードに切り替えます。
交感神経は昼間に優位になり、副交感神経は夜間に活性化します。
昼夜で自律神経が自然に切り替わることで、心身は健康を維持できます。
自律神経のリズムが崩れると、さまざまな不調があらわれます。
自律神経失調症について詳しく知りたい方は下記の記事も併せてお読み下さい。
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自律神経を整える漢方
自律神経を整える方法の一つに、漢方の利用があります。
自律神経の改善に役立つ漢方について、代表的な種類を紹介します。
半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)
半夏厚朴湯は、神経の興奮を沈めることによって咳や痰を防ぐ作用がある漢方です。
疲れやストレスがたまると、のどに違和感を感じやすいという方におすすめです。
のどが詰まるような感覚がある場合や、せき払い・痰がある場合があてはまります。
半夏厚朴湯には、不安感・緊張を和らげる効果もあります。
胃腸薬としての側面もあり、ストレスによる胃痛や吐き気、食欲不振の改善にも有効です。
【向いている方】
- ストレスを感じやすい
- 冷え性
- 体力は中程度
【対象となる症状】
- のどの詰まり・違和感
- 痰・せき・気管支炎・喘息
- 胃痛・吐き気・食欲不振
- 不安・緊張・気分の落ち込み
- イライラ
抑肝散(よくかんさん)
神経の興奮を鎮め、気分を穏やかにする効果があります。
怒りっぽい方・イライラしやすい方のほか、「疳(かん)の虫」の治療にも役立ちます。
抑肝散には、筋肉のこわばりを緩める作用もあります。
ストレスによって無意識に緊張した筋肉をほぐすことで、心身のリラックスが期待できます。
自律神経障害のほか、認知症・統合失調症・パーキンソン病などの精神症状の治療にもよく用いられる漢方です。
【向いている方】
- イライラしやすい・怒りっぽい
- 更年期障害などの女性特有の症状がある
- 認知症・統合失調症等の方
- 体力は中程度
【対象となる症状】
- 興奮
- イライラ
- 不眠
- ノイローゼ・不安障害
- 神経過敏(かんしゃく)
- 更年期障害・月経などに伴う不快な症状
加味逍遙散(かみしょうようさん)
血流を整えて冷え性・のぼせを改善するほか、ホルモンバランスを整えるのに役立つ漢方です。
更年期障害や月経・ホルモンにまつわる不調を抱えている女性に役立ちます。
不安やイライラを鎮める効果のほか、肩こりや頭痛の軽減も期待できます。
「血(けつ)」を補う作用があるため、貧血症状や疲れやすい方に有効な漢方でもあります。
【向いている方】
- 女性
- 更年期障害や月経に伴う不快な症状がある
- 虚弱体質
【対象となる症状】
- 月経前症候群・生理不順・生理痛
- 更年期障害
- イライラ・興奮
- 不眠
- 冷え・のぼせ
- 頭痛・肩こり
- 倦怠感・疲れやすい
桂枝加龍骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)
神経の高ぶりを鎮めるとともに、気力を補うことで、精神を安定させる漢方です。
ストレスによる不眠症状を抱える方に有効です。
比較的虚弱体質で、疲れやすい方によく処方されます。
【向いている方】
- 神経質かつ興奮しやすい
- 虚弱体質・疲れやすい
- 夢見が悪い
- 比較的やせ型で顔色が悪い
【対象となる症状】
- 興奮・イライラ
- 不眠・夜尿症
- ストレスによる動悸
柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
神経を鎮め、心身をリラックスさせる漢方です。
ストレスや不安を感じやすく、不眠気味の方に有効です。
あるいは、高血圧の方の精神症状の治療に用いられることもあります。
便秘にも有効ですが、便が緩くなりやすいため、お腹が弱い方は注意してください。
【向いている方】
- 不安・ストレスを感じやすい
- 緊張すると眠れない
- 高血圧
- 体力は中程度
【対象となる症状】
- 不安・イライラ
- 不眠
- 動悸
- ノイローゼ・不安障害
- 更年期障害
- 便秘
漢方について詳しく知りたい方は下記の記事も併せてお読み下さい。
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漢方以外で自律神経を整える方法
自律神経を整えるには、漢方の利用以外にもさまざまな方法があります。
いずれの方法でも、意識すべきは、ストレスを解消して心身をリラックスさせることです。
以下に代表的なストレス解消法を紹介します。
ぜひ、自分に合った方法を試してください。
生活リズムの改善
生活リズムが整うと、体内時計が整いやすくなります。
自律神経のリズムは体内時計に左右されるため、生活のリズムを一定に保つことが大切です。
起床・食事・就寝の時間はなるべく毎日固定しましょう。
睡眠をよくとる
自律神経失調症は、交感神経が優位になりすぎたときに発症します。
良質な睡眠は副交感神経を活性化させるため、自律神経のバランスが整いやすくなります。
具体的には、起床・就寝時刻を一定にすると、睡眠リズムが整い、深い睡眠を得やすくなります。
食事は就寝の2~3時間前に済ませ、睡眠中の消化器官に負担をかけないようにしましょう。
また、就寝2~3時間前に軽い運動や入浴を済ませると、就寝時間帯に体温が下がるため、眠気をもよおしやすくなります。
一方、ブルーライトは交感神経を刺激するため、就寝前のスマホ・パソコンの使用は控えましょう。
音楽をきく
音楽には、脳のα波に働きかける作用があります。
α波は副交感神経を活性化させるため、心身のリラックス効果を期待できます。
α波の出現に有効なのは、クラシック音楽やヒーリング音楽です。
スポーツをする
適度なスポーツはストレスを解消させる効果があります。
ウォーキングや水泳などの有酸素運動がおすすめです。
お風呂に入る
身体を温めると、血行が促進されて、全身に血液が届きやすくなります。
血液と一緒に栄養も全身に行き渡るため、全身の疲労が回復しやすくなります。
自律神経を整えるには、ぬるめのお湯にゆっくり浸かるのがポイントです。
熱すぎるお湯は交感神経を刺激するため、かえって心身に負担をかけます。
漢方の歴史
漢方とは、中国から伝来した「中国医学」が、日本で独自の発展を遂げたものです。
漢方医学とも呼ばれ、いわゆる漢方薬のほか、鍼灸(しんきゅう)などを用いて、心身の治療を行います。
中国医学は、奈良時代ごろ、遣隋使や遣唐使によって中国から日本に伝えられました。
その後、中国医学は、日本の風土や日本人の体質にあわせて変容していきます。
伝来当初は貴族・富裕層のための医学でしたが、室町時代ごろには民間にも広く伝わります。
江戸時代になると鎖国によって中国との国交が断絶したため、中国医学はますます日本独自の発展を遂げます。
漢方医学という名称が用いられるようになったもの、江戸時代ごろです。
明治期の文明開化では西洋医学が重んじられたため、漢方医学は一時衰退します。
その後、昭和期とくに戦後にふたたび注目を集め、漢方は現在に至るまで幅広い治療に用いられています。
自律神経と漢方まとめ
ここまで、自律神経と漢方についてお伝えしてきました。
要点を以下にまとめます。
- 自律神経に効果がある漢方薬は、半夏厚朴湯、抑肝散、加味逍遙散、桂枝加龍骨牡蛎湯、柴胡加竜骨牡蛎湯など
- 自律神経失調症の原因の多くはストレスであるため、心身をリラックスさせるための対策が必要
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。