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健達ねっと>健康お役立ち記事>パーキンソン病>パーキンソン病で見られる筋固縮って何?リハビリ方法も解説!

パーキンソン病で見られる筋固縮って何?リハビリ方法も解説!

パーキンソン病の4大症状に含まれる筋固縮は進行に伴い日常生活に支障をきたします。
特に「手足が動かしにくい」「歩きにくい」「顔の表情がこわばる」といった症状が自立した生活を困難にします。

パーキンソン病の診断を受けた方、筋固縮の症状出現や進行を予防したい方にとって発症メカニズム、治療方法やリハビリ方法はとても気になることです。

そこで今回は以下について解説していきます。

  • パーキンソン病における筋固縮
  • パーキンソン病における筋固縮のリハビリ方法

筋固縮が症状として表れても暮らしやすい環境についても解説していきます。
ぜひ最後までお読みください。

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パーキンソン病とは

パーキンソン病とは、中脳にある黒質が変性することでドパミン産生能力が低下する進行性の神経変性疾患です。

脳の大脳基底核は、神経活動を適切に抑制することで身体をスムーズに運動させる役割を担っています。
ドパミンが欠乏することで大脳基底核の働きが低下し、神経活動の抑制が過剰になります。
このことから、4大症状として筋固縮、安静時振戦、無動(寡動)、姿勢反射障害が生じます。

好発年齢は40歳以後、特に50~60歳代が多いです。
40歳以上ではおよそ250人に1人、65歳以上ではおよそ100人に1人で、日本での有病率は人口10万人当たり約100名の割合で存在します。

パーキンソン病について詳しく知りたい方は下記の記事も併せてお読み下さい。

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筋固縮とは

筋固縮とは、筋緊張が亢進(こうしん)することで、関節の受動運動に対して抵抗が生じることを指します。
黒質の変性によって大脳基底核での運動の制御が障害され、筋肉の収縮と弛緩のバランスが崩れることで生じます。

筋固縮は脳卒中の後遺症である痙性とは違います。
どちらも筋緊張の亢進によって生じる症状ですが、痙性は関節運動の速度によって筋緊張が変化します。

それに比較して筋固縮は関節運動の速度に依存せず、関節の曲げ初めから終わりまで筋緊張の亢進が生じています。
筋固縮によって体の関節が固くなったり、動きが鈍くなったりすることで、歩行障害や嚥下障害など、日常生活に様々な支障をきたしてしまいます。

鉛管様固縮と歯車様固縮の違い

筋固縮には鉛管様固縮と歯車様固縮があります。

鉛管様固縮は筋肉に持続的なこわばり、抵抗を感じる症状です。
文字通り、鉛のパイプを曲げるときに似た抵抗感を生じることが由来となっており、関節の曲げ初めから終わりまで一定の筋緊張亢進を伴う筋固縮です。

 歯車様固縮とは、関節運動によって断続的に抵抗を感じる症状です。
関節運動の際にガクガクとまるで歯車のように動くことが由来となっています。

パーキンソン病ではどちらの固縮も生じますが、歯車様固縮を生じる方が多いです。

筋固縮が起こる部位

筋固縮は手足、体幹、表情筋など全ての筋肉において生じます。

筋固縮が手に出現することで、歩行時の腕の振りが減少し、歩行速度低下に影響します。
足に出現すると、バランスの低下によって転倒リスクが高まります。
体幹に出現することで、骨盤の運動が制限され、小刻み歩行になります。
舌の筋肉に出現することで嚥下障害が生じ、誤嚥性肺炎のリスクが増加します。

表情筋に出現することで、顔面の表情筋を動かす事が困難となり、仮面様顔貌となります。
仮面様顔貌とは、仮面を被っているかのように表情の変化が乏しくなる症状のことをいい、パーキンソン病に特徴的な症状です。
しかし、仮面様顔貌は筋固縮だけが原因ではなく、パーキンソン病によって精神機能が低下し、抑うつや気力の低下が生じることによっても見られます。

筋固縮は左右のどちらか一側性で始まることが多いですが、進行に伴い両側に生じます。
筋固縮は受動運動に対する筋緊張亢進のため、パーキンソン病の発症初期では気付きにくく、受診による検査で初めて気付く場合があります。

脳卒中後遺症の筋緊張亢進では痙性が生じますが、痙性の場合は左右どちらか一側性に生じ、両側に生じることはありません。
また、脳卒中では表情筋や体幹筋の筋緊張亢進は見られません。

このように体幹筋や表情筋の筋固縮はパーキンソン病に特徴的な症状であると言えます。

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筋固縮のリハビリ方法

パーキンソン病は進行性の神経変性疾患であり現在の医療水準で根本治療は困難です。

しかし、治療やリハビリは必要です。
なぜなら適切な薬物療法はパーキンソン病の症状を和らげたり、自立した動作能力を維持するのに効果的だからです。

また、運動療法はパーキンソン病によって生じる運動機能の低下を予防したり、安静状態が続くことによって生じる廃用症候群を予防することに効果的です。

今回は治療法を薬物療法と運動療法に分類し、詳しく説明します。

薬物療法

パーキンソン病治療でまず挙げられるのは薬物療法です。

主要薬物としてはL-ドパ(レボドパ)とドパミンアゴニストのどちらかとなります。

中でもL-ドパは臨床医学において最も強力な抗パーキンソン病薬です。
L-ドパとは薬品名であり、種類としてはドパミン前駆物質に含まれます。
L-ドパは脳内に移行してドパミンへ変化し、パーキンソン病における手足の震えや筋肉のこわばりなどを改善する役割があります。

つまり、パーキンソン病によって欠乏したドパミンを補充する薬で、筋固縮に対して効果的な薬です。

L-ドパは生活や仕事に支障があり、高齢、又は認知機能障害や精神機能障害のいずれかを合併している場合に処方されます。
生活や仕事に支障がない場合は定期的な診察、教育、リハビリテーションが実施されます。
なぜパーキンソン病に罹患した方全員に対してL-ドパを処方しないかというと、副作用や特徴的な症状が生じやすい薬だからです。

L-ドパの副作用として、ジスキネジアが挙げられます。
ジスキネジアとはドパミン過剰により不随意運動(自分の意思とは関係なく手足や顔が動く現象)が生じることをいいます。

また、L-ドパの長期服用によってウェアリングオフ現象やオンオフ現象が生じます。
ウェアリングオフ現象とは薬効持続時間が短縮し、次の服用までに効果が切れてしまい、症状に日内変動(悪化)が生じる現象です。
オンオフ現象とは本来なら薬の効果が効いている時間帯でも急激に症状が悪くなったり、良くなったりする現象をいいます。

L-ドパは単体で使用する事は少なく、基本的には他の薬物と併用します。
例えば、ドパミンの欠乏により相対的に過剰になったアセチルコリンの作用を抑えるための抗コリン薬、L-ドパの作用を高めたり、副作用を抑えるためのMAO-B阻害薬、COMT阻害薬、L-ドパ賦活薬が併用されます。

次にドパミンアゴニストです。
L-ドパは高齢者に対して処方されるのに対して、ドパミンアゴニストは70歳以下で認知症のない早期パーキンソン病の方に対して処方されます。
ドパミンアゴニストはL-ドパに比較して効果は小さいです。
効果が小さいということは副作用も小さいため、長期服用によって生じる副作用のリスクを抑えることができます。

これら薬物療法は容量、服薬時間が一人一人違うため、個人の判断で服薬量を変えたり、勝手に服薬を中断したりしないようにしましょう。

運動療法

運動療法はパーキンソン病の初期から後期、全病期にわたって効果的です。
運動療法において大切なことは、進行度や症状に合わせたリハビリを行うこと、二次的な障害の発生を予防することです。

以下は、病期別のリハビリ目的と具体的方法です。 

初期(身辺動作自立期)では、職業や主婦業といった社会生活の継続を目的としてリハビリテーションプログラムが組まれます。
具体的には歩行時の方向転換や後ろ歩き、歩容修正といった応用歩行練習、パーキンソン体操などの自主運動メニュー(ホームエクササイズ)が効果的です。 

中期(要介助期)では、介助量軽減や廃用症候群の予防を目的としたリハビリテーションが行われます。
筋固縮に対してはリラクゼーション、関節可動域運動、LSVT®BIG等が効果的です。

関節可動域運動を効果的に行うためには以下のポイントに注意しましょう。

  • 少し痛みが出る程度に筋肉を伸張する
  • 反動や弾みをつけない
  • 伸張中は呼吸を止めない
  • 筋肉の最大伸張の手前から時間をかけてゆっくり伸張していく

LSVT®BIGとはパーキンソン病に特化したリハビリプログラムで、動作の大きさの低下と動きの遅さの治療をターゲットとしています。
リハビリ方法は一対一の個別訓練を一回60分、週4回連続、4週間にわたって実施します。
身体全体を大きく使った動き、日常生活動作や歩行の反復練習によって、動きの遅さや動作の大きさに代表される運動障害を改善することを目的としています。
LSVT®BIGは認定セラピストの下で指導を受けますが、どこのリハビリ施設にも在籍しているわけではないので、実際にLSVT®BIGを受けたい方は、事前に確認を取る必要があります。 

末期(全介助期)では廃用症候群の予防や介護負担軽減を目的として関節可動域運動、座位保持、呼吸運動等を実施します。 

以上が、パーキンソン病の方への運動療法となります。

パーキンソン病の固縮に対しては関節可動域運動や筋力練習が効果的です。
筋肉を伸張することで筋緊張の軽減を図ったり、筋肉の収縮弛緩によって血流量を確保し筋肉の柔軟性を維持します。

筋固縮症状のある方が暮らしやすい生活環境

パーキンソン病は進行性疾患のため、どれだけ薬物療法や運動療法を行ったとしても、徐々に自宅内での自立した生活が困難になる可能性があります。
その際に必要となってくるのが生活環境の調整です。

以下は場所別に必要な福祉用具や住宅改修です。

玄関

玄関では段差解消のためのスロープ、又は踏み台によってつまずきを防止できます。
玄関入り口に椅子を設置することで靴の着脱時に座って靴を履くことが出来ます。

廊下

手すりを設置することで転倒を予防できます。
また、床に横断歩道のような線をテープを用いて等間隔で引くことで、小刻み歩行が軽減しやすくなります。
足元にはダウンライトをつけて床が見やすいようにすることで安心して移動することができます。

寝室

ベッド柵を設置することで起き上がりや立ち上がりがスムーズになります。
自分で起き上がることが困難な方に対しては電動ベッドをレンタルすることで家族の介護負担軽減に繋がります。
衣服は前開きで伸縮性のあるものが着脱しやすいです。

食卓

椅子は肘掛けのある非回転式のものが安全です。
また、食事の際に細かい動作が困難な方は、柄付きスプーンやフォーク等の福祉用具を使用することで、自立した食事の維持に繋がります。 

筋固縮に合わせた環境調整は大切ですが、最も大切にすべきは本人の気持ちです。
家そのものにたくさんの思い出が詰まっています。
それを傷つけたくない方は当然いらっしゃいます。
衣服も前開きが着脱しやすいですが、オシャレをしたい方もおられます。

だからこそ、治療法や環境調整は十人十色なのです。
その人その人に合わせた方法を必要十分に検討していきましょう。

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パーキンソン病で見られる筋固縮のまとめ

ここまでパーキンソン病における筋固縮の情報や、その治療法などを中心にお伝えしてきました。

この記事のポイントをおさらいすると以下の通りです。

  • 筋固縮とは筋緊張亢進により筋肉が固くなり動かしにくくなる症状
  • 手足、体幹、表情筋など全てにおいて生じ、固縮部位によって歩行障害や嚥下障害など様々な障害が生じる
  • 筋固縮に対する治療法は薬物療法と運動療法がある
  • 筋固縮の症状がある方が暮らしやすい生活を送るためには段差解消、手すり、ベッドのレンタル等、生活環境調整が必要

これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

薬の使い方

監修者 メディカル・ケア・サービス

  • 認知症高齢者対応のグループホーム運営
  • 自立支援ケア
  • 学研グループと融合したメディア
  • 出版事業
  • 社名: メディカル・ケア・サービス株式会社
  • 設立: 1999年11月24日
  • 代表取締役社長: 山本 教雄
  • 本社: 〒330-6029埼玉県さいたま市中央区新都心11-2ランド·アクシス·タワー29F
  • グループホーム展開
  • 介護付有料老人ホーム展開
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