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【専門家インタビュー】エッセンシャイルを用いた認知機能改善効果の検証

兵庫医科大学 精神科神経科学講座 

助教 向井馨一郎様

アロマセラピーで使用されるエッセンシャルオイルは、認知機能を向上させる効果があると言われています。
兵庫医科大学 精神科神経科学講座 助教 向井馨一郎様らは、近赤外線スペクトロスコピーという脳画像検査を用いたアロマセラピーの認知機能向上の可能性への検証研究を行いました。そこで今回は向井様に研究内容や今後の目標についてお伺いしました。

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研究に至った経緯

編集部:この研究を行った経緯をお伺いしてもよろしいでしょうか。

向井様:はい。アロマセラピーが認知機能を向上するという研究があり、認知症の治療や支援においてアロマセラピーを使用できる可能性があるのではないかというのが当初の発想です。

これまでのアロマセラピーに関する研究では、いい香りや先入観などからの影響により認知機能が向上したのではないかということも考えられ、アロマセラピーの直接的な効果かどうかを検証しきれていないという部分がありました。

そこで、実際に中枢神経への直接的作用の有無を調べようと思い、近赤外線スペクトロスコピーという脳画像検査を用いてアロマセラピーの認知機能向上の可能性への検証研究を行おうと考えました。

まずは認知症の患者さんではなく、健常人において、あらゆる年齢層の方の認知機能への作用を検証しています。今回の研究は、まだまだ基礎的な研究ではありますが、将来的には対象を広げて健常者のみならず疾患を患う方にも活用できるようなエビデンスも蓄積していきたいと思っております。

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研究の概要

編集部:ありがとうございます。実際にどのような実験をされたのですか。

向井様:はい。認知機能向上を評価するために複数の認知機能検査を組み合わせて行っています。同時に、うつ病などの精神疾患の補助診断に使用されている、近赤外線を使用した光トポグラフィーという機器を用いて、課題施行中の脳血流変化を計測します。

さらに、これまでに認知機能を向上する可能性が指摘されている多様なエッセンシャルオイル(ラベンダーなど)を候補に挙げ、被験者を分けて比べています。

編集部:この研究に発展させて何か行っているものはありますか。

向井様:今後、脳に直接作用して認知機能を改善させる力があるエッセンシャルオイルを特定出来れば、次のステップとしてエッセンシャルオイルの種類により改善する認知機能の領域に違いも検討していきたいです。

認知機能の種類には、例えば、インプット(記銘)などに関与する記憶や、物事を順序だてる力に関与するプランニングなどがあります。

この展望は、認知機能が少し弱ってる、改善する必要がある患者さんにとって、臨床応用されていったら手助けとなる場合もあると思っております。

編集部:そうなんですね。向井様の認知症に関する研究において目標やゴールのようなものはありますか。

向井様:そうですね。幅広い話にはなるのですが、認知機能低下がみられる疾患というのは認知症の代表格であるアルツハイマー型認知症以外にも多くあります。それらの疾患も含めて、アロマセラピーの可能性を検証していけたらうれしいと思います。

また、精神科医療では薬物療法などエビデンスが蓄積している治療法はありますが、患者さんの視点からはどうしても頼りたくないという意見もあると思います。

民間療法とまでは言わないですが、普段の生活でも使用されるようなアロマセラピーは、介護する方や家族からお勧めしやすく、患者さんにとっても副作用などを過度に心配せずに容易に試しやすい方法として役立ててもらえたらと思います。

エッセンシャルオイルは、普通の量を使っていれば致命的な副作用もありませんし、薬局や医療機関を訪ねなくても手軽に手に入るし使いやすいものになっています。

患者さんの中には自分が病気と認識できてない方、認めたくない方もいらっしゃいます。自宅で間接的に家族みんなが使用すれば、自然的なサポートにもなりますのでそういう使い方もあるのかと思います。

編集部:他に何か認知症に関する研究は行っていますか。

向井様:そうですね。兵庫医科大学には認知症センターもあるのですが、研究もしながら臨床を通して地域支援にも力を入れております。今後も、臨床に多くの貢献ができるような研究をしていきたいと考えています。

健達ねっとをご覧いただいている方へのメッセージ

編集部:最後に健達ねっとのユーザー様に一言お願いします。

向井様:認知症を患っている方も、サポートをされる方々も想像以上にご負担があるかと思います。認知症は、薬物療法や診察など治療のみならず、環境や社会的なサポートも必要になってくる疾患です。その分、周囲の人々や地域の支援システムにも多くの支援をしてもらう必要があります。今後、少子高齢化においても社会的に大きな問題になってくると思います。

その点で、精神医学という狭い領域ではなく少しでも選択肢が広がるよう、臨床家として視野を広く持ち、あらゆる可能性を吟味して研究を行っていきたいとおもいます。自身の研究のみならず、多くの研究者が得た知見を、生活の中で柔軟に取り入れてもらえればと思います。

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薬の使い方

兵庫医科大学 精神科神経科学講座 助教

向井 一郎むかい けいいちろう先生

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