ホーム

認知症を学ぶ

down compression

介護を学ぶ

down compression

専門家から学ぶ

down compression

書籍から学ぶ

down compression

健康を学ぶ

down compression
トップページ>専門家から学ぶ>ドクターズコラム>【3】認知症の権威と語る「40代からの認知症予防」

【3】認知症の権威と語る「40代からの認知症予防」

本記事は、【3】認知症の権威と語る「40代からの認知症予防」です。今回のインタビューは【1】【2】【3】の3部構成となっております。【1】と【2】の記事も併せてご覧ください。

【2】では、認知症治療に関する嘘と真実について、新井先生自らお話しいただきました。実際に新井先生のクリニックで実施している治療方法も含まれているため、認知症に不安を感じている方には必見の内容となっています。

【3】では、情報発信や認知症治療、介護施設の捉え方についてお話しいただきました。認知症に限らず医療分野においては、私たち自身の捉え方次第で良くも悪くも状況が変わっていくことを実感できる内容になっています。医療に対する不安を解消するためにも、参考にしていただけると幸いです。

関連記事

健達ねっとは、正しい情報を分かりやすく届けることをテーマにしています。高齢化が進む日本において、年々増加している認知症。認知症に限らず医療に関する情報に不安を感じている人は多いのではないでしょうか?今回は、厚生労働省“介護のしごと魅力発信[…]

関連記事

本記事は、【2】認知症の権威と語る「40代からの認知症予防」です。今回のインタビューは【1】【2】【3】の3部構成となっております。【1】と【3】の記事も合わせてご覧ください。【1】では、私たちが向き合うべき認知症予防について、医療側と[…]

スポンサーリンク

情報発信の意味

山本: 健達ねっとでは、できる限り本質的な情報を伝えていきたいです。最新の知見を分かりやすく、実生活に役立つ形で。こうして新井先生とお話させていただいているのは、まさしくそこにあります。世の中を見たときに、様々な情報が発信されていますが、何を選択すれば良いのか分かりにくくなっていると感じます。できれば我々が目利きとなって、「認知症の情報はここを見ればいい」という、安心して選べる場所にしていきたいですね。

健達ねっとで集めた情報が、認知症や介護に不安を抱えているご本人・ご家族に届けば、その人なりに知って、備えることができます。認知症への理解や予防の活動は国民活動にしなければなりません。ここでの発信がその起点になればという思いを込めて、健達ねっとをオープンしました。

新井先生: とりあえずそこは大事ですね。子供の世代が親を認知症で悪くさせたくないということで、特に娘さんの方が熱心だったりもします。

山本: 検索履歴のデータを見ると、女性の検索割合が圧倒的に多いです。やはり、現役で働いている男性は自身や家族の健康について、後回しになりがちなところがあるようです。一方で、女性は現実的に自分の生活への影響を分かっているわけです。女性の方がとてもリアルですね。受け止める度量もあって、ある意味強いと感じます。

新井先生: 男は逃げるからでしょうか。自分も含めてだけどよく先延ばしにする(笑)男は先延ばししながら、自分が直面することから逃げたがるものです。そのために、妻でも女でも女性の方が直面せざるを得ないので、だいたい必死になってきます。

スポンサーリンク

認知症治療のステップ

ー山本: 新井先生、認知症予防では、「早く知ることの怖さ」もあると思います。そこについてはどうお考えですか?

新井先生: いい質問です。そこも、人生の生き方ですね。毎年調べておきたいという人と、病気になったらなったでよいという人の生き方があって、それはその人の生き様なんですね。だけど、知りたい人に対してしっかりと正しいことを知るシステムがないということが問題点と思うわけです。予防に関心があった人が、脳ドッグを受けているのに認知症になるというのが一番辛いわけですよ。まあ〇〇法とかで何百万もかかり、最後はもっと早く来たら良かったのにとか言われる人もいます。昨日も、たくさん本を出している先生のクリニックで、物忘れの検査と治療に年間で500万近くをかけていたが一向に良くならないので、頼みこんで通院を止めたという方が初診されましたね。熱心な人ほどそういうのにはまりやすいのかもしれません。

そういう現状の中で、求める人にはきちんとした王道のものを提供したいという思いがあります。大学を辞めてこれからの10年、最後ライフワークでやろうと思ったのはそういう意味なんですよ。うちの健脳ドッグはアミロイドPETだけで検査薬が25万円もするんですよ。だから健脳ドッグが60万円という設定ですが、PET自体は何億とかする機械だから、その料金でもペイしないんですけれど、そういう高いのでもいいから、最先端かつきちんと確立したものを提供したい。アミロイドPETをやればアルツハイマー病については一発回答なのです。

今までは大学にいて基礎から臨床研究までいろいろ行ってきましたが、今後はそのような一連の研究の中でアンカーをやろうと思っています。つまり、研究の成果を臨床の現場にフィードバックしたいわけです。それが最後の私の生き様です。

もっと言うと、アルツクリニックのアルツってアルツハイマー病のアルツではないのですよ。

上条: えっっ!?違うのですか??

新井先生: 違います。ALZの意味はActive Life with ZealのALZで、「情熱的な人生のために」がクリニックのコンセプトです。

そして、人生という大きな流れを考えると、最後の住みかとして自宅以外の選択肢もあることは素晴らしいことです。やはり安心感がありますね。先ほど話したように毎日認知症ばかり意識していても毎日が楽しくないわけです。病気については医療者が心配しアドバイスすればいいので、当事者の方は人生をエンジョイする方がいいと思います。やはり人生を楽しむと脳が一番活性化します。楽しいことをやるのが一番いいですね。脳が活性化して結果的に予防になります。

山本: 楽しみは全部に関係してきますね。いいことでも楽しく感じながらやれなかったら効果は出てきません。エビデンスにも影響があると言われています。あと、当事者だけではなく、周りの環境を構成している人たちも重要ですよね。

新井先生: そうですよ。どんないい薬が出ても、環境とか人間関係が安定しないと薬の効果は出ませんそれはもう病気になる前もなってからもそうだし、一連のものですから。

上条: そうですね。ただ、そうは分かっていても、家族介護の方々はやはり自分の親が誰かに迷惑かけているのではないかとか、街に連れて行ってはいけないのではないかという不安が常にあると思います。そういうご家族に向けてなにかメッセージがありますか?

新井先生: うちはね、もう最初の段階から検査し全部告知するんですよ。家族だけ聞かせてくださいっていう人もいます。本人には言わないでくださいという人もいるのだけど、絶対その場で同席してもらい結果を伝えるのです。告知したらもう治療は始まっていて、ご家族も含めてその病気を受け入れることがとっても大事です。しかも、悪いことをして病気になったわけではないし、誰でもなりたくてなったわけではないので、そこをまず受け入れることが告知の段階から始まっています。

告知がショックなのは変わらないので、大事なポイントが二つあります。「一人で病気と闘うのではなく、家族も我々もみんな一緒になって闘うから大丈夫」「我々医療者は、全力を尽くすから大丈夫」。このような説明も告知とともに伝えると、患者さんも家族も安心できます。周りのことをいろいろ気にするよりも、近所の人にも打ち明けて自分たちの生活をどうしていくかというのを考えた方がいいです。手伝ってくれたり応援してくれたりして、人との絆がまた暖かく感じられたりするようになるので。その辺の意識改革を家族と一緒にやっていくわけです。そうしないとどんどん閉鎖して周りに迷惑をかけて介護保険をどうしようかとなってしまう。そうすると、自分たちだけでどんどんストレスをため込んでいってしまいます。日本には、認知症に関して多くの制度、熱心なケアスタッフもたくさんいるから、そういう人達と一緒にやるためにも、だんだん周りにオープンにしていくことです。

上条: なるほど。介護の現場も同じように、どうやって地域を巻き込むかというのが常に課題だと思います。最初の告知のところで、悪いことをしたからこの病気になったわけではないんだよって受け入れてもらって。ファーストステップがきちんとしていたら、介護の現場ももっとやりやすくなっていきますよね。

山本: そうだと思います。認知症高齢者の方が徘徊したなどと言われるのですが、町中の人たちがみんな味方だったら、散歩して帰って来ただけのことです。

社会受容こそが重要なんだと思います。社会が受け止めてくれると、認知症高齢者は自分らしく生きることができる。社会の中で活躍することもできるというわけです。我々ももっとそんな姿を見せていかなければいけないと思っています。

あと、介護が必要になって初めて介護施設を探し出す人が多いですが、できれば健康な時に介護施設を見に来てほしいですね。まだ親は元気だけど、70代だしちょっと見てみようかなぐらいの姿勢がいいと思います。グループホームに来てもらい、「あっこんな場所があるんだな」と。やはりゆとりや備えがあると、次の選択肢とか認知症自体への考え方が変わってくるんですよね。

認知症介護施設のハードル

上条: それは心強い!でも本当に行っていいのですか?家族からすると、グループホームはあんまり勝手に行っちゃいけない場所っていうか、神聖な場所って感じている方もいますよね。

山本: 全然大丈夫です。我々認知症の専門家がいますから、何か困ったことがあれば会社に電話してくれたって大丈夫です。「こういう場所がありますよ」とか、それこそ「新井先生がいますよ」とか。お話を伺ってその人に合った情報を提供できればと思います。

我々の施設はそれこそ、ウェブサイトを含めていつでもオープンです。「困ったらいつでも」という発信を通して、まずは地域の身近なところで繋がっていたいと思ってます。手前味噌で恐縮ですが、MCSには300近くのグループホームがありますから。

上条: そんなにあるのですね。全国ですか?それはフランチャイズじゃなくて直営で?

山本: 全国です。北海道から南は九州まで、すべて直営です。やはり命と生活を守る場所ですので。サービス品質や職業倫理の浸透は、直営でないと難しいと思っています。でも一つとして同じ場所なんてないわけです。人生の過ごし方や、これまでの経緯も一人ひとり違いますし。当たり前なんですけどね。まだまだ施設が足りていない地域があるのも実情です。少しでも各地にサービスを届けられたらと思っています。

ー新井先生: グループホームはどのくらいの要介護とか、どれくらいの人が入居しているの?

山本: 要介護2を超えている方が中心という感じですね。平均すると要介護2.6ぐらいです。終末期のお看取りまでグループホームで過ごしていただくこともあります。

ー新井先生: そこまでやっていたら大したものですね。なかなかそこまでやるところは少ないんじゃない?

山本: そうですね。これまでは、心配なので何かあったら病院へと考えられるご家族も多かったのですが。やはりご本人が「ホームを離れたくない」「ここが自分の家だ」というお気持ちがあるようで。ホームでのお看取りを選択される方も増えてきています。言わば第2の我が家ですね。

我々のやっている介護の仕事は、ただの生活援助ではないと、私自身思っています。認知症の周辺症状を抑えたり、日常生活動作を維持するにしても、体系的な知識とアプローチで接したり。介護にも理論や技法、専門職の考え方があります。最終的には、ご本人が笑顔で過ごせるかが最大の評価ですが。きちんと「プロのサービス」としてやっていく、それが我々の介護の仕事だと思っています。その結果、ご利用者さんはものすごくハッピーに過ごされ、スタッフはものすごく汗をかいているっていうことがよくあります。(笑)

でも、それをやっている時はスタッフも一番いい顔をしていますね。「おばあちゃんがこうなれた」「おじいちゃんがこうできた」って。我々の場所は3次予防ですが、そんな場所もあるんだということを、もっと発信していきたいですね。

上条: そうですね。開放して、情報やご利用者さんの姿を見せていくっていう形ですね。

新井先生: それいいね。だからこう、本当にオープンなグループホームというのは、なにかあったらちょっと相談に行ってみようっていう感じだね。

山本: のぼりを立てて、困ったらいつでもどうぞという風に。(笑)もちろん、困っていなくても大歓迎です。ちょっと覗いていけばいいんですよね。例えば、庭でメダカを飼っているグループホームなんかもありますが、小学生がワーッと帰りに寄ってくるんです。昔、帰りに駄菓子屋さんに寄っていた小学生のように。自分たちの通り道のように施設の中に入って、ああじゃない、こうじゃないと言いながら。おじいちゃん・おばあちゃんと触れ合って帰っていく。きっかけは何だって良いんだと思います。

上条: 介護施設って要介護認定を受けた方のケアがメインであり本質なんですけど、地域の予防も役割としてあるってことですよね。

山本: そうですね。情報発信しながら、一緒に備えていくような時代だと思います。

また、見ることで多くを知ることができます。いつでも気軽に来てほしいですね。

上条: そうですね。そう言ってくださると、家族も安心ですね。一回相談できる場所が見つかるとどこかに繋がるので、第一ステップが大事ですね。

スポンサーリンク

まとめ

上条: 新井先生、山本社長ありがとうございました。いかがだったでしょうか?

山本: ありがとうございます。先生が色々な情報サイトで発信してくださっていることは、とても大切なことだと思います。それぞれが情報発信をしっかり行うことで、相乗効果も出てくる。学研もその中の一つに入って頑張っていきたいですね。

新井先生: とっても良いと思います。でね、結局は若い人が日本の国を信用できるかどうかなんですね。「しっかり仕事をして頑張れば歳をとった段階で最後は国が面倒見てくれる」という安心感がなければ、産んだ子供が将来苦労することが見えるわけなので、この国で子供を育もうなんて気持ちになかなかなれないですよ。なので、高齢社会の対策という長期的な対策が、短期的な子育て対策よりも長い目で見て重要なんじゃないかなと思います。

上条: 本当にそう思います。

新井先生: 大事な動きですよね。

山本: 古岡秀人という創業者が学研を作りましたが、古岡が晩年、事あるごとに言っていたのが、「学研は子どもに対する教育で大きく成長してきた会社だが、これからは少子高齢化の時代。高齢社会に対する社会的責任も担っていかなければならない」ということでした。この意思を受けて、立ち上がったのが学研の高齢者福祉サービスです。その中でも、この『認知症』という社会課題に対して本気で向き合っていこうと、新たな挑戦のテーマになっています。

新井先生: そうそう。そういう特化した方が絶対いいですよ。中途半端にやるよりも、認知症ならここのグループホームと言われるようになればいいですね。

上条: 第二回もやって欲しいですね(笑)

山本: そうですね、是非やりましょう。今日は本当に貴重なお話ができました。いつまででも話していたいですね。先生、長時間ありがとうございました。

新井先生: いやいや、とんでもない。ご期待に添えたかどうか、、、でも私も勉強になりました。ありがとうございました。

上条: 本当は、もっと医療と介護と連携の話とかもお聞ききしたいです。

新井先生: いやそうか、そっちが専門なんだよね。(笑)

 

いかがでしたでしょうか?
健達ねっとは、社会が思い描く遥かな理想を実現するために、これからも正しい情報を分かりやすく発信し続けます。私たちの活動が少しでも皆様のお力添えとなれば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。

関連記事

健達ねっとは、正しい情報を分かりやすく届けることをテーマにしています。高齢化が進む日本において、年々増加している認知症。認知症に限らず医療に関する情報に不安を感じている人は多いのではないでしょうか?今回は、厚生労働省“介護のしごと魅力発信[…]

関連記事

本記事は、【2】認知症の権威と語る「40代からの認知症予防」です。今回のインタビューは【1】【2】【3】の3部構成となっております。【1】と【3】の記事も合わせてご覧ください。【1】では、私たちが向き合うべき認知症予防について、医療側と[…]

健達ねっとECサイト
薬の使い方

アルツ・クリニック東京・順天堂大学医学部名誉教授

新井 平伊あらい へいい先生

日本老年精神医学会専門医・指導医
日本精神神経学会専門医・指導医
日本認知症学会専門医・指導医

  • 日本老年精神医学会専門医・指導医
  • 日本精神神経学会専門医・指導医
  • 日本認知症学会専門医・指導医

スポンサーリンク