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健達ねっと>専門家から学ぶ>ドクターズコラム>【ドクターズコラム】認知症の早期発見の大切さ

【ドクターズコラム】認知症の早期発見の大切さ

中村病院 脳神経内科・認知症疾患医療センター
北村 伸 先生

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早期の発見と治療開始が、その後の生活のサポートにつながる

高齢になるほど認知症の人は多く、誰もが認知症になる可能性があります。認知機能の低下により、社会生活や日常生活が障害された状態が認知症であり、早期に発見して対応することが大切です。
認知症の原因疾患は数多くあります。その中には、「慢性」や「甲状腺機能低下症」のように、早く診断をして治療することで治るものがあります。認知症性疾患の多くはまだ治すことはできませんが、アルツハイマー型認知症には進行を遅らせる薬があり、早く診断して治療を開始することが重要です。
また、アルツハイマー型認知症の病理(脳にβアミロイドというたんぱく質の一種が蓄積する)に作用する、新しい治療薬が開発され、日本でも早期のアルツハイマー型認知症の人に使用できるようになることが期待されています。
そして、早期に診断されれば、周囲の人も、認知症の人が今までと変わりなく生活や活動ができるような対応や、介護の準備をすることができます。

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“今までと違う”様子の変化に周りが気づき、早期発見につなげる

認知症を早く見つけるためには、その人が以前とは違ってきたということに、周りの人が気づくことが重要です。
たとえば、アルツハイマー型認知症では、もの忘れがいつとはなしに始まり、自分で言ったことを覚えていない、約束を忘れるなど、“記憶障害”に基づくエピソードが生活の中で出始めます。
前頭側頭型認知症では、記憶障害は早期にはありませんが、行動に抑制がきかなくなるような“行動の異常”から始まります。

ここで、Aさんを例に、認知症で見られる生活の変化を考えてみます。
80歳のAさんは、妻と生活をしていました。着替え、洗面、入浴、食事などの日常の生活は自立しており、高血圧と糖尿病があって、月に1回、家の近くの医院に通院をしています。Aさんの妻は、2年前から夫にもの忘れがあることに気づいていましたが、歳のせいと思っていました。
Aさんは、盆栽や花を育てることが趣味でしたが、1年前ぐらいから花の水やりをしなくなり、盆栽の手入れもしなくなってきました。そして眼鏡や財布などを置いた場所を忘れて、ものを探していることが増えてきました。また、毎年3月の確定申告の書類は、これまでAさん自身が作成していたのですが、今年は期日が近くなっても完成せず、妻が手伝うことになってしまいました。
そしてある日、Aさんの主治医から電話がありました。「最近、Aさんの糖尿病と血圧のコントロールがよくないので、薬をきちんと服用しているかどうか、確認をしてほしい」と言うのです。連絡を受けた妻が家の中を探してみると、Aさんが飲まずにそのままにしていた薬がたくさん見つかりました。その後、Aさんは、妻ともの忘れ外来を受診し、アルツハイマー型認知症と診断されました。

もの忘れはあるものの、Aさんは基本的な日常生活には手伝いが必要ではなく、自立しています。しかし、以前とは異なっていることとして、“趣味をしなくなってきたこと”があげられます。意欲や関心の低下によりしなくなったのか、あるいは実行機能(目標に向かって準備し、修正しながら物事を進めていく機能)の障害により、盆栽の世話をどのように進めていったらいいのかがわからなくなったのかもしれません。
そして、記憶障害により、ものの置き場所を忘れることが多くなってきています。確定申告の書類を完成できなかったように、少し複雑なことができなくなり、さらに、薬の飲み忘れがあるなどして、服薬管理が自分ではできなくなったことも、以前には見られなかったことです。

Aさんに見られたように、「意欲や関心の低下」、「記憶障害」、そして「実行機能障害」など、認知機能低下によって今までとは違ってきた生活の変化に周囲の人が気づくことが、認知症の早期発見につながります。

認知症がもたらす“生活の変化”の特徴を知ろう

認知症では、前述のAさんの例で示されたように、認知機能の障害によって生じる生活の中でのさまざまなエピソードを捉えることが、早期発見のポイントとなります。
たとえば、アルツハイマー型認知症では、次のようなエピソードが見られることがあります。

【エピソード1】

日時についての「障害」により、最初は日付や曜日があやふやになってくることが多いです。家族に「今日は何日か」と、何回も聞いてくることがあります。

【エピソード2】

記憶障害があり、少し前のことでもすっかり忘れてしまうため、大事な約束や予約を忘れてしまったり、何回も同じことを聞いてきたり、同じ内容の話を何度もするようになります。自分で忘れることを自覚している人は、今まではしなかったメモを細かく取るようになるかもしれません。

【エピソード3】

ものを置いた場所を忘れるので、探しものをしていることが多くなります。見つからないと、他人のせいにすることもあります。

【エピソード4】

薬を飲んでいる人の場合は飲み忘れが多くなるので、残薬がたくさん見つかるかもしれません。

【エピソード5】

「実行機能障害」により、料理の手順がわからず、料理をしなくなったり、部屋の片付けができなくなって、ものが散乱した状態になっていたり、今までしていた趣味をしなくなることもあります。

【エピソード6】

言葉を想起する機能も障害されるので、言葉が出にくくなり、会話の中で代名詞が多くなります。認知症ではない人でも、歳をとってくると「あれ」や「それ」といった代名詞が多くなりますが、認知症の人では、より頻回になってくると思います。

上記のようなエピソードがあったら、周囲の人は歳のせいにして様子を見るのではなく、受診を促して、認知症の早期診断につなげてほしいと思います。

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薬の使い方

仁寿会 中村病院 脳神経内科部長

北村 伸きたむら しん先生

仁寿会 中村病院 脳神経内科部長
日本認知症予防学会 理事
日本認知症予防学会 神奈川県支部顧問

  • 仁寿会 中村病院 脳神経内科部長
  • 日本認知症予防学会 理事
  • 日本認知症予防学会 神奈川県支部顧問

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