介護の必要度を表す要介護。
要介護1~5に加え、要支援1、要支援2の7段階に分けられています。
中でも要介護5はもっとも症状が重度な状態であるため、手厚いケアを必要とします。
では、要介護5の具体的な状態とは、どのようなものなのでしょうか。
今回は要介護5の状態をご紹介した上で、受けられるサービスについてもご紹介します。
- 要介護5の状態
- 要介護5で受けられるサービス
ぜひ最後までご覧いただき、要介護5の状態について理解を深めるための参考にしてください。
介護保険サービスを利用している方、またはこれから利用しようと思っている方々は、「日常生活自立度」という言葉を聞いたことがありますか?日常生活自立度は要介護認定を受ける際、参考にされる評価尺度であり、関係する書類でよく記載されています。[…]
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要介護5の状態
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介護認定には要支援と要介護の2種類があります。
ここからは、要支援と要介護についてご紹介した上で、要介護5の状態をご紹介します。
要支援とは
要支援とは、基本的な日常動作は可能なものの、部分的な支援を必要とする状態のことです。
要支援1では、日常動作のほとんどを一人で行うことができますが、家事などの部分的な支援を必要とします。
要支援2は、要支援1と比較すると一人でできることが減り、支援に加えて一部介助が必要です。
たとえば、「入浴時に浴槽をまたげない」「立ち上がるときや歩行時に支えが必要」などといった状態です。
要支援1・2のいずれも介護予防サービスを利用できます。
介護予防サービスとは、要介護状態になること、もしくは状態の悪化を防ぐことを目的としたサービスです。
要介護とは
要介護とは、日常動作を自分で行うことが困難であり、何らかの介護を必要とする状態のことです。
介護度は1~5に区分されており、数字が大きいほど、より多くの介護を必要とします。
要介護では、運動機能に加えて、理解力や思考力の低下もみられるようになります。
また、徘徊や暴言・暴力、介護拒否などの問題行動がみられる場合もあります。
要介護認定を受けると、介護サービスの利用が可能です。
介護サービスには在宅をはじめ、施設に通ったり入居したりするものなど、様々な種類があります。
要介護5の状態
要介護5は、要介護度が最も高く、介護なしで生活するのが困難な状態です。
食事や入浴、排泄などの日常生活全般に介護を必要とします。
自力で立ち上がって歩くことが困難であり、一日中寝たきりの上に、意思疎通ができない場合がほとんどです。
また、自力で寝返りをうつこともできないため、介護者が定期的に体位変換を行う必要があります。
さらに、噛む・飲み込むなどの嚥下機能が低下していることも多く、流動食や経管栄養などの対応が必要になる場合もあります。
経管栄養とは、チューブやカテーテルを用いて胃腸に直接栄養を注入することです。
口から食事を摂れる場合でも、飲食物が気管に入ってしまう誤嚥(ごえん)に繋がるリスクがあり、誤嚥性肺炎によって命を落とすケースも少なくありません。
要介護5になる原因
厚生労働省の調査の結果では、要介護5の状態になる原因には
- 脳卒中
- 認知症
- 骨折・転倒
などがあります。
脳卒中と骨折・転倒は、寝たきりになるリスクが高くなります。
また、認知症も重症化すると寝たきりの状態になる可能性があります。
そのため、寝たきりになると要介護5と認定される可能性が高くなります。
認知症の場合は、寝たきりの状態にならなくても理解力の低下や意思の疎通が難しいため、要介護5となる場合もあります。
高齢化社会のため、今後も認知症になる高齢者は増えていくとされています。
そのため、認知症または介護について準備しておくことが大切です。
要介護5の方の寿命
厚生労働省のデータによると、平成28年の平均寿命と健康寿命は以下のとおりです。
平均寿命 | 健康寿命 | |
男性 | 80.98歳 | 72.14歳 |
女性 | 87.14歳 | 74.79歳 |
出典:厚生労働省【第11回健康日本21(第二次)推進専門委員会】
表のとおり平均寿命と健康寿命の間には差があり、平均寿命と健康寿命の間は介護が必要になります。
従って、男性は8.84年、女性は12.35年の介護期間の目安となります。
介護期間は、ひとりひとりの状況によって大きく異なります。
そのため、介護期間はひとつの目安としましょう。
また、超高齢社会のなかでは介護を担う方は増加傾向にあり、介護は大きな社会問題となっています。
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要介護5で受けられるサービス
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では、要介護5では、どのような介護サービスが受けられるのでしょうか。
ここからは、要介護5で受けられる具体的なサービスをご紹介します。
訪問型サービス
訪問型サービスとは、在宅で利用できる介護サービスのことです。
要介護5で受けられる訪問型サービスには以下の4つが挙げられます。
訪問介護
訪問介護とは、介護福祉士やホームヘルパーなどが自宅を訪問し、食事・入浴などの身体介護や、洗濯・掃除などの生活支援を行うサービスです。
また、いわゆる「介護タクシー」における通院時の乗車・降車等介助も、訪問介護のサービスの一つです。
訪問介護では、各個人に合ったサービスを、必要な時に必要な分だけ受けることができます。
たとえば、「食事の準備と介護を毎日利用する」「日用品などの買い物代行を一週間に一度利用する」などのような受け方が可能です。
ただし、サービスを一日2回以上利用する場合は、原則として2時間以上の間隔を設ける必要があります。
また、訪問介護では医療行為のサービスを受けることはできません。
訪問入浴介護
訪問入浴介護とは、介護スタッフ2名と看護師一名が、専用の浴槽を使用して入浴の介護を行うサービスです。
訪問入浴介護では、入浴前に血圧や脈拍、体温を測定して健康チェックを行います。
健康状態に問題がなければ、介護スタッフが利用者の脱衣と入浴準備を行い、入浴を開始します。
入浴は全身浴が基本ですが、利用者の体調によっては、部分浴や清拭に切り替えて行う場合もあります。
入浴後は着衣に加えて再度健康チェックを行い、体調の変化がないかを確認します。
必要があれば、軟膏の塗布や褥瘡(じょくそう)のケアを行います。
着衣や健康チェックと同時進行で片づけを行い、サービスの提供は終了です。
訪問看護
訪問看護とは、看護師などが自宅を訪問して、利用者の健康状態に応じた看護ケアを行うサービスです。
訪問看護で受けられる主なサービスは、脈拍や体温測定などの健康チェック、医療機器の管理、点滴などの医療処置、服薬管理などです。
また、利用者の家族への介護指導や相談なども行います。
訪問看護サービスを受ける場合、主治医の訪問看護指示書が必要です。
医療行為が受けられない訪問介護と組み合わせて、訪問看護を利用する方が多くいます。
訪問リハビリテーション
訪問リハビリテーションとは、リハビリを専門とする理学療法士や作業療法士が自宅を訪問し、リハビリを行うサービスです。
訪問リハビリテーションで受けられる主なサービスは、立つ・座るなどの機能訓練や、食事・入浴などの日常生活動作訓練です。
また、利用者の家族への介護指導や住宅改修のアドバイスなども行います。
訪問リハビリテーションは個別で行うため、利用者の状況に応じた手厚く丁寧なリハビリを受けられるのがメリットです。
通所型サービス
通所型サービスとは、自宅外の施設に通って何らかのサービスを受けるものです。
要介護5で受けられる通所型サービスには、以下の2つが挙げられます。
通所介護(デイサービス)
通所介護はデイサービスとも呼ばれており、施設に通って日帰りで介護サービスを受けることができます。
受けられる主なサービスは、食事や入浴などの介護、歩行訓練や関節可動域訓練などの機能訓練です。
また、書道や陶芸、ゲームなどのレクリエーションも用意されており、利用者が楽しめるような工夫がされています。
通所介護を利用する際は、施設のスタッフが送迎を行ってくれるため、安心かつ安全に施設へ通うことが可能です。
通所リハビリテーション(デイケア)
通所リハビリテーションとは、介護老人保健施設や病院などに通って、作業療法士や理学療法士による機能訓練などを受けるサービスです。
受けられる主なサービスは、食事や入浴などの介護、歩行訓練、看護師による健康チェックなどです。
通所リハビリテーションには、作業療法士や理学療法士に加え、医師や看護師が配置されています。
そのため、通所介護と比較すると、医療やリハビリに特化しているといえます。
施設型サービス
要介護5の方が受けられる介護サービスと介護施設は、以下の表のとおりです。
自宅で家事の世話や介護を受ける | 訪問介護(ホームヘルプ)、訪問入浴、訪問看護、訪問リハビリ、夜間対応型訪問介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護 |
施設に通って介護サービスやリハビリを受ける | 通所介護(デイサービス)、通所リハビリ、地域密着型通所介護、療養通所介護、認知症対応型通所介護 |
訪問・通い・宿泊サービスを組み合わせて利用する | 小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス) |
施設に入居する | 特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)、介護老人保健施設(老健)、介護療養型医療施設、特定施設入居者生活介護(有料老人ホーム、軽費老人ホーム等)、介護医療院 |
要介護5の方は、介護療養型医療施設、特別養護老人ホームの施設に入居している方が多い傾向にあります。
また、介護療養型医療施設は2017年の介護保険法の改正により廃止となりました。
介護療養型医療施設は、介護老人保健施設(老健)や介護医療院へ移行されます。
要介護5の方は、胃ろうや人工呼吸器などの日常的に医療ケアが必要な方がいます。
介護療養型医療施設、特別養護老人ホームの入居が難しい場合は、介護付き有料老人ホームの施設を探してみましょう。
その他のサービス
要介護5の方が受けられるその他のサービスは、以下の表のとおりです。
短期間のみ施設に宿泊する | 短期入所生活介護(ショートステイ)、短期入所療養介護 |
小規模な施設に入居する | 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護、地域密着型特定施設入居者生活介護 |
福祉用具を使う | 福祉用具貸与、特定福祉用具販売 |
要介護5の方は、要介護の中で最も症状が重くなります。
そのため、自宅での介護や施設入居の際に介護用具のレンタルができます。
要介護者は、要介護度別に「区分支給限度額」が決められています。
区分支給限度額とは、介護保険から給付される限度額です。
区分支給限度額は、要介護度により金額が異なります。
要介護5の方は、区分支給限度基準額は1ヶ月あたり36万2,170円となります。
自己負担額ごとの金額は以下のとおりです。
- 1割負担、3万6,217円
- 2割負担、7万2,434円
- 3割負担、10万8,651円
1ヶ月あたり36万2,170円までの介護サービスを利用する場合、1~3割の自己負担で利用できます。
しかし、限度額を超えて介護サービスを利用する場合は、全額、自己負担になるので注意しましょう。
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要介護5の費用に関するサービス制度
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ここからは、要介護5の費用に関するサービス制度についてご紹介します。
介護保険給付金
介護認定を受けた場合、介護保険給付金が支給されます。
介護保険給付金は要介護度に応じて上限が定められており、要介護5の支給限度額は、一ヶ月あたり362,170円です。
支給限度額を超えて介護サービスを利用した場合、超過分を全額自己負担しなければなりません。
介護保険の自己負担は、所得に応じて異なりますが、1~3割のいずれかです。
一単位を10円で計算すると、一割負担の場合の自己負担額は、36,217円です。
自己負担割合は、介護認定を受けた際に発行される介護保険割合証に記載されています。
高額介護サービス費
世帯収入ごとの利用負担額を以下の表にあらわしています。
利用者負担段階 | 利用負担上限額 | |
第1段階 | 生活保護を受給している方、世帯全員が市町村民税非課税で老齢福祉年金を受給している方 | 個人1万5,000円/月、世帯2万4,600円/月 |
第2段階 | 世帯全員が市町村民税非課税で、本人の公的年金収入額と合計所得金の合計が80万円以下の方 | |
第3段階 | 世帯全員が市町村民税非課税で利用者負担段階が第1・第2段階以外の方 | 2万4,600円/月 |
第4段階 | 市町村民税課税世帯で、第1~3段階及び第5~6段階以外の方 | 4万4,400円/月 |
第5段階 | 同一世帯内の第1号被保険者に課税所得が380万円~690万円未満(年収約770万円~約1,160万円未満)の方がいる世帯 | 9万3,000円/月 |
第6段階 | 同一世帯内の第1号被保険者に課税所得が690万円以上(年収約1,160万円以上)の方がいる世帯 | 14万,100円/月 |
高額介護サービス費とは、利用者負担が多くかかったときに払い戻しされる制度です。
介護サービスを利用したときに支払う負担額が上限額を超えたときに、申請することで超えた額が払い戻しされます。
また、利用者負担額には、食費、居住費、日常生活費、保険給付適用外のサービスにかかる費用には含まれません。
高額介護サービス費は、同一世帯に介護サービス利用者が複数いる場合、世帯全員分の負担額を合算できます。
要介護5は特養に入りやすい
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要介護5の方は最も介護度が高いため、特別養護老人ホームに入りやすい傾向にあります。
以下で具体的にご紹介します。
特養とは
特別養護老人ホームは、通称「特養」と呼ばれています。
特養は、有料老人ホームのように入所一時金も必要ありません。
また、月額利用料のみで入所ができるため、比較的低価格の施設です。
特養には、ユニット型、従来型の2種類があります。
現在は、従来型はなくなり、29名定員ユニット型の特養が多くなっています。
特養は、終のすみ家として利用され、多くの施設は看取りまで対応しています。
医師の常駐義務はありませんが、最近では医療ケアに特化している特養が増えています。
さらに、社会福祉法人など大規模法人が運営しているため安心感があり、人気のある公的介護施設です。
要介護5は優先的に特養に入れる可能性がある
特養は、終のすみ家として安心して過ごすために、24時間体制で介護を手厚く受けて過ごすことができます。
そのため、最も介護度が高い要介護5は優先的に入れる可能性があります。
以前までは、医療度が高くなると退所しなければならない特養が多くありました。
しかし、近年は医療ケアを充実させて、看取りまで行う特養が増えています。
また特養では、週に数回、数時間程度の非常勤医師が配置している施設が多いですが、医療ケアには限界があります。
医療度の高い方は病院と同じような対応ができないため、入所できない可能性もあります。
どこまで医療の対応ができるかについては、入所前にしっかりと確認しましょう。
そのほか、リハビリテーションの対応も特養によって異なります。
たとえば、機能訓練指導員は配置されていても、理学療法士などの専門職ではない可能性があります。
要介護5と要介護3・4の違い
ここからは、要介護5と要介護3・4の違いをご紹介します。
要介護3
要介護3は、自力での歩行や立ち上がりが困難となり、日常生活全般に介護を必要とする状態です。
また、認知症を発症する方も多くいます。
そのため、徘徊や妄想などの問題行動がみられることも少なくありません。
要介護5は、自力で動くことが困難なため、認知症を患っていたとしても徘徊のリスクがなくなります。
要介護4
要介護4は、要介護5と同様、日常生活全般に重度の介護を必要とする状態です。
理解力や思考力の低下はみられるものの、意思疎通が全く不可能というわけではありません。
要介護5は、寝たきり状態になっている上に、意思疎通ができないことがほとんどです。
要介護認定の流れ
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要介護認定を受けるためには、まず市区町村の窓口に申請書の提出を行います。
申請後は、市区町村の職員や市区町村から委託を受けたケアマネージャーなどが自宅を訪問し、本人の心身状態や日常生活などについて聞き取りをします。
訪問調査の後は、市区町村の依頼を受けたかかりつけ医が、病気の状態をまとめた意見書を作成します。
かかりつけ医がいない場合は、市区町村が紹介する医師の診察を受けなければなりません。
そして、訪問調査の結果と医師の意見書をもとに、コンピューターによる一次判定を行います。
一次判定終了後は、保健や福祉、医療などの専門家による二次判定が行われ、認定結果が通知されます。
認定結果の通知は原則として申請から30日以内です。
要介護の方の相談窓口
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介護に関する相談をしたいと思っても、実際にはどこへ相談すれば良いのか分からないという方は少なくありません。
特に、初めての介護には不安や悩みが付きものです。
決して一人で抱え込むのではなく、専門の窓口へ相談するようにしましょう。
ここからは、要介護の方の相談窓口を2つご紹介します。
市区町村
市区町村には、高齢者福祉課や介護保険課などが設置されており、介護全般に関する相談が可能です。
また、相談内容に応じて、地域包括支援センターの紹介や、要介護認定における申請の案内なども行います。
直接窓口へ足を運んで相談するだけではなく、電話での問い合わせも可能です。
地域包括支援センター
地域包括支援センターとは、高齢者の生活をサポートする総合相談窓口です。
各市町村に設置されており、保健士や社会福祉士、主任ケアマネージャーなどが在籍しています。
地域包括支援センターでは、高齢者の困りごとに対する相談に応じるほか、介護予防のケアプラン作成や、成年後見制度のサポートなどを行っています。
また、虐待被害や振り込め詐欺に対する対応や防止を行い、高齢者の権利を守るサポートも担っています。
介護に加えて福祉や医療などの幅広い相談に応じているため、安心して相談することができます。
要介護5のまとめ
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ここまで要介護5の情報を中心にお伝えしてきました。
- 要介護5は寝たきりや意思疎通の困難などがみられ、日常生活全般に重度の介護を必要とする状態
- 要介護5では、訪問介護や訪問入浴介護、通所介護などの様々なサービスを受けることができる
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。