ケアプランの長期目標は、「将来思い描く送りたい生活」を表したものです。
長期目標を実現するためには、利用者の生活に対する意向が聴取され、長期目標に反映されている必要があります。
今回は、ケアプランの長期目標について以下の項目を中心に説明していきます。
- 長期目標はケアプランに必要なものか
- 長期目標・短期目標をたてる際に大切なこと
記事後半では、長期目標の期限が切れた場合に行う手続きの省略可否についても説明しています。
ぜひ最後までお読みください。
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ケアプランとは
ケアプランとは、要介護や要支援の認定を受けた方が、これからしていきたい生活をどのような手段で叶えていくかを記載した計画書です。
その方がその方らしく自立した生活を送れるようにするための計画書といえます。
ケアプランには、サービスの種類、内容、課題を解決するまでの期間が記載されており、介護支援専門員が作成します。
ケアプランの種類
介護保険には施設サービス、居宅サービス、介護予防サービスなどのようにいくつか種類があり、ケアプランは対象となる方やサービスの種類によって以下のように分類されています。
- 施設サービス計画書
- 居宅サービス計画書
- 介護予防サービス計画書
施設サービス計画書
施設サービス計画書は、介護老人保健施設、介護老人福祉施設、介護医療院でサービスを提供する際に作成されるケアプランのことです。
施設ケアマネといわれる介護支援専門員が作成します。
サービスを受けられるのは、要介護1から要介護5の方です。
居宅サービス計画書
居宅サービス計画書は、居宅で暮らす要介護者のためのケアプランです。
居宅サービス計画に位置付けられるサービスの種類としては、通所介護、訪問介護、短期入所生活介護、福祉用具貸与などがあります。
計画を作成するのは、居宅介護支援事業所の介護支援専門員です。
施設サービス同様、サービスを受けられるのは要介護1から要介護5の方です。
介護予防サービス計画書
介護予防サービス計画書は、要支援の方が対象となる介護予防に関するケアプランです。
計画を作成するのは、地域包括支援センターの職員です。
なおサービスを受けられるのは、要支援1と2の方です。
ケアプランでは、利用者の生活に対する意向をもとにして、長期目標と短期目標が設定されます。
達成する期間によって長期と短期に分け、それぞれの達成状況を確認していきます。
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ケアプランの長期目標とは
ケアプランの長期目標とは、「将来思い描く送りたい生活」を表したもので、長い期間をかけて達成していく目標です。
長期目標は最終的なゴールを意味しており、長期目標を達成するためには、達成すべき様々な諸条件が満たされる必要があります。
その諸条件が短期目標です。
短期目標を複数設定し、全ての短期目標が達成されることで、長期目標が達成されるという考え方です。
そのため、仮に長期目標の期間を1年と設定すれば、短期目標はそれよりも短い6ヶ月などの期間で設定されます。
長期目標・短期目標それぞれの期間をどの程度にするのかは、利用者の状況により様々です。
ケアプランの長期目標を作成する際には、どのような生活が送れているか、その描写が浮かぶような記載をするのがポイントです。
そのため、「~をしている、できている」といった表記が望ましいでしょう。
なぜなら、「転ばない」や「病気をしない」など、「~をしない」という表現をしてしまうと、望む暮らしを想像することが難しいからです。
もし「転ばない」という表現するのであれば、「転ばないで近くの公園に散歩に行ける」というように、「転ばない」結果どんなことができているのかを詳細に示すと、描写が浮かびやすく具体的な目標になります。
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長期目標の必要性
長期目標は、利用者だけでなく家族、サービス提供者、介護支援専門員などにとって必要なものです。
なぜなら、長期目標が設定されていなければ、利用者が送りたい生活を知らずに支援していくことになってしまうからです。
利用者に関わるサービス提供者や家族がゴールの見えない支援をしていては、支援の効果や方向性がわからず、利用者の意向と大きくずれた関わりになってしまいます。
そのため、長期目標は利用者だけでなく家族、サービス提供者、介護支援専門員など利用者に関わる全ての人にとって、必要なものといえます。
長期目標・短期目標のたてかた
ここからは長期目標・短期目標のたてかたの視点と手順について説明していきます。
目標を立てる順序
ケアプランに記載される項目は以下のものがあり、下記の順序で作成されていきます。
- 生活に対する意向の記載
- 課題の設定
- 長期目標の設定
- 短期目標の設定
- 短期目標を達成するためのサービス内容の設定
- サービスを提供する事業者、実施者の選定
- サービスを提供する事業者、実施者が、どういう考え方で行っていくのか、総合的な援助の方針を示す
長期目標をたてるためには、生活に対する意向を正確に聴取する必要があります。
なぜなら、意向がケアプランに反映されていなければ、誰のために作成したのかがわからなくなってしまうからです。
どのような暮らしができると満足するのかを把握したら、意向の実現のために必要な課題を設定していきます。
課題に取り組んでいくことで、「どんな暮らしが実現できるか」を示したものが長期目標となります。
また短期目標は長期目標を達成するために満たされる諸条件です。
長期目標は、将来思い描く送りたい生活を表しているので、長期目標ひとつに対して短期目標がひとつというわけではなく、複数の短期目標を達成する事で長期目標が実現するという考え方で作成していきます。
そして、ケアプランを作成して支援が始まったら、支援の内容が目標達成のために適切であったか、方向性が間違っていないかどうか、見直しをする必要があります。
以上のような手順で長期目標・短期目標をたてていきます。
長期目標・短期目標の具体例
次に、長期目標・短期目標の具体例を記載します。
例えば、夫婦で長年食堂を営んできた妻が、足の骨折によって歩くことが難しくなり、食堂で働けなくなってしまったという設定で考えます。
この方の生活に対する意向を「また食堂で働きたい」とし、長期目標を「食堂に来てくれた常連客に笑顔で配膳している」と設定してみました。
そして、短期目標を「一人で歩けるようになる」、「物をもって運べる」などにしておくと、それぞれの短期目標が達成する事で、長期目標が達成できるようなイメージが湧くと思います。
利用者によって、それぞれ持っている生活背景が異なるので、元のように歩けるようになって食堂に出て行くのか、それとも車椅子などの移動手段を使うのかによっても、短期目標は変わってきます。
そのため、個々の生活背景に合わせ、個別性を重視した目標設定していくことがとても重要になります。
長期目標の期限が切れた場合の対処法
長期目標の期限が切れた場合、目標が達成されているかどうかを確認し、その後の支援方針を決定していくためにサービス担当者会議を開催します。
その後ケアプランを再作成することになります。
しかし、厚生労働省が定める「軽微な変更」に該当する事例は、この手順を省略できます。
軽微な変更に該当するのは以下のようなものです。
- サービス提供の曜日変更
- サービス提供の回数変更
- 利用者の住所変更
- 事業所の名称変更
- 目標期間の延長
- 福祉用具で同等の用具に変更するに際して単位数のみが異なる場合
- 目標もサービスも変わらない(利用者の状況以外の原因による)単なる事業所変更
- 目標を達成するためのサービス内容が変わるだけの場合
- 担当介護支援専門員の変更
長期目標の期限が切れた場合の対処法として、単に期限を延長するということであれば、上記の「目標期間の延長」が該当します。
その場合はサービス担当者会議やケアプラン再作成の手続きが省略できます。
一方で、例えば短期目標において新規のサービス事業による支援が追加になる場合や、担当介護支援専門員が変わらずとも、別の事業所に変更になった場合などは、上記9つの内容に該当しないため、手続きが必要となります。
ケアプランの長期目標まとめ
ここまで、ケアプランの長期目標の概要や長期目標・短期目標のたてかたなどについてお伝えしてきました。
要点を以下にまとめます。
- ケアプランの長期目標とは、「将来思い描く送りたい生活」を表したものであり、利用者にかかわる全ての人が支援の効果や方向性を確認するために必要なものである
- 長期目標・短期目標をたてる際、利用者の生活に対する意向が十分に反映されている必要がある
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。