療養通所介護は、看護師が管理者で、重度の要介護者を対象とするデイサービスです。
実際に療養通所介護ではどのようなサービスが提供されていて、どのような心身状況や傷病を持っている方に利用されているのでしょうか。
本記事では療養通所介護について以下の点を中心にご紹介します。
- 療養通所介護で実際に提供されているサービス
- 療養通所介護利用者の要介護度
- 療養通所介護の料金
療養通所介護について理解するためにご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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療養通所介護のサービス内容
療養通所介護で提供されるサービス内容について説明します。
令和2年(2020年)7月20日の介護給付費分科会の資料に、療養通所介護における利用者へのサービス提供状況に関するデータが掲載されています。
このデータは、平成30年度老人保健健康増進等事業「看護小規模多機能型居宅介護及び療養通所介護の特性に関する調査研究事業」報告書(三菱UFJリサーチ&コンサルティング)をもとに厚生労働省が作成したものです。
このデータを参考にしながら説明します。
看護師による観察
利用者の観察や心身状況の把握は、療養通所介護における基本のサービスです。
「指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準」では、療養通所介護に関して「サービス提供に当たり常時看護師による観察が必要な利用者を対象者とする」と記されています。
療養通所介護では、利用者の主治医や利用している訪問看護事業者との密接な連携を図りながら、利用者の心身状況を把握することが求められます。
日常生活の補助(ケア)
上記の介護給付費分科会の資料より、療養通所介護利用者の30%以上に提供されているケア内容(家族へのサービスも含む)を紹介します。
- 入浴介助(86.6%)
- 口腔ケア(83.4%)
- 排泄の援助(66.0%)
- 身体機能維持を目的とした付き添いや見守り(56.3%)
- 本人の精神的な状態の変化への対応(46.6%)
- 清拭浴・陰部洗浄(35.1%)
- 家族等への介護に関する技術的な指導(33.2%)
入浴介助、口腔ケア、排泄の援助等は介護ニーズに対応したサービスです。
医療ケア
療養通所介護利用者の20%以上に提供されている医療ケアを紹介します。
- 四肢の自動運動及び関節可動域維持のリハビリテーション(57.8%)
- 摘便(47.8%)
- 服薬指導、服薬管理(44.6%)
- 胃ろう、腸ろうによる栄養管理(40.3%)
- 喀痰吸引(39.0%)
- 浣腸(34.0%)
- 創傷処置(27.2%)
- 褥瘡(じょくそう)処置(22.4%)
こちらは医療ニーズに対応したサービスです。
利用者の20%以上とまでは言えませんが、14.2%の利用者に気管切開のケアも行っています。
療養通所介護では、幅広い医療ニーズに対応したサービスを提供していると言えるでしょう。
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療養通所介護の対象者
ここでは療養通所介護の対象者について説明します。
基本事項
療養通所介護の対象者について、まず理解しておきたい点が2点あります。
- 要介護1以上の認定を受けており、常に看護師の観察が必要である
- 療養通所介護の事業所と同じ市区町村に住んでいる
1点目に関して言えば、療養通所介護では要支援や自立の高齢者は受け入れておりません。
2点目に関して言えば、療養通所介護が介護保険制度上、地域密着型サービスに分類されていることによる対象者に関するルールです。
在宅の中重度の要介護高齢者向けのサービス
これらの基本事項を踏まえ、対象者について少し掘り下げてみましょう。
平成18年度(2006年度)に療養通所介護は、医療ニーズと介護ニーズを併せ持つ在宅の中重度の要介護高齢者向けのサービスとして創設されました。
在宅の中重度の要介護高齢者に自宅から日帰りで通ってもらい、サービスを提供するという点に特徴があります。
施設(デイサービス)側が利用者の自宅から施設までの送迎も行います。
実際に、他の通所系の介護保険のサービスと比べて療養通所介護では介護度の重い利用者の割合が高いです。
通所介護、通所リハビリテーション、地域密着型通所介護、認知症対応型通所介護での要介護5である利用者の割合は10%前後です。
しかし療養通所介護では要介護5である利用者の割合が6割も占めます。
同様に、身体状況としては座位が保てず、1日中ベッド上で過ごしている状態の方が6割を占めます。
令和2年(2020年)7月20日の介護給付費分科会の資料では、療養通所介護の利用者がどのような傷病を抱えているかについてのデータが掲載されていますので紹介します。
- 脳血管疾患(30.8%)
- 神経難病(12.5%)
- パーキンソン病(9.5%)
- 認知症(8.8%)
- 呼吸器疾患(4.3%)
- 末期以外のがん(4.3%)
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療養通所介護の料金
ここでは療養通所介護の料金について説明します。
利用回数、時間によらず、1月あたり12,691円(1割自己負担、1単位=10円で計算した場合)という定額の料金設定となります。
定額料金になったのは、利用回数や時間にとらわれず、必要な回数、必要な利用時間のサービス計画を柔軟に組むことが望ましいという考え方からです。この料金設定は、2名体制での個別送迎や入浴介助による加算も含まれた料金とされています。
一方、利用者1人当たりの平均回数が月5回に満たない場合は、サービス提供回数が過少とみなされ、70%の額(8,884円)の料金になります。
上記は基本料金であり、この他にも食事代やおむつ代などが加わります。
さらに、施設の規模や看護・介護職員の人数、サービスの内容により料金が加算・減算される場合があるので、療養通所介護を利用する前に必ず料金体系を確認するようにしましょう。
療養通所介護の人員基準
療養通所介護の人員基準について説明します。
サービス提供時間中(すべての時間)、利用者1.5名に対して1名以上の看護職員または介護職員を配置するシフトが組める人員体制でなければなりません。
さらに、このシフトを組む人員のうち1名以上は常勤の看護師が必要とされます。
管理者は、専らその職務に従事する常勤の看護師でなければならないと定められています。
ただし、療養通所介護事業所の管理業務に支障がない場合は、療養通所介護内の他の職務に従事したり、同一敷地内にある他の事業所の職務に従事したりすることが可能です。
療養通所介護のメリット・デメリット
療養通所介護のメリット、デメリットについて解説します。
療養通所介護のメリット
サービスを提供している時間帯を通じて、利用者1.5名に対して常時1名以上の看護職員または介護職員を配置、というのはマンツーマンに近い配置と言えます。
手厚い人員配置であり、利用者ひとりひとりに目が届きやすいというメリットがあります。
また、療養通所介護は、要介護5の方や座位を保てず1日中ベッド上で過ごす方が利用者の6割を占めるサービスです。
サービス利用日は、なかなか家から出られない中重度の利用者に外出の機会を与え、家族以外の方とコミュニケーションを取る機会となります。
これは利用者本人にとっての大きなメリットと考えられます。
そして、事業所では必要に応じて複数人対応で入浴介助を提供しています。
自宅での入浴が難しくなっているわけですから、これは利用者本人にとってばかりでなく、家で介護役割を担う家族にとっても助かるサービスでしょう。
本人が事業所に行ってサービス提供を受けている間は、家族にとっては介護役割の休息時間になります。
療養通所介護の利用には、家族の介護負担軽減効果があるというメリットもあります。
療養通所介護のデメリット
療養通所介護は、介護保険制度上では地域密着型サービスに分類されます。
しかし、制度の理念のとおり、利用者の日常生活圏域内に事業所があるかというと、とてもそうとは言えない状況です。
2019年時点では、全国で約90の事業所数でした。
都道府県によっては事業所がない地域もあります。
療養通所介護という介護保険のサービスを知り利用したいと思った方がいても、身近にはない可能性が高いというのがデメリットです。
また、療養通所介護と同様の形態の看護小規模多機能型居宅介護との制度上の整合性について検討が必要、という指摘もあります。
つまり、看護小規模多機能型居宅介護とは違う役割と機能を持ったものとして周知できなければ、療養通所介護を選ばずに看護小規模多機能型居宅介護を利用すれば済むという話になってしまいます。
この点は事業所数の少なさも含めて、療養通所介護という制度の課題と言えます。
療養通所介護のレクリエーションとは
1日中ベッドで過ごしているというレベルの身体状況である利用者が、家から出て人と接するというだけでも、社会的孤立感の解消という制度上の方針に沿っているのではないでしょうか。
事業所に来て、フロアにある大きな画面のテレビを、他の利用者の皆さんと一緒に見るというのも1つのレクリエーションと考えられます。
利用者本人にとっては、家での生活の中では味わうことのできない気分転換の機会になっていると言えるでしょう。
他にも、折り紙、工作、体操、カラオケなど様々なレクリエーションがそれぞれの施設で実施されています。
看護職員または介護職員の支援を必要に応じて受けながら、本人のできる範囲でレクリエーションに参加しています。
療養通所介護のまとめ
ここまで、療養通所介護で提供されているサービスや料金、人員配置の特徴についての情報を中心にご紹介しました。
この記事のポイントをおさらいすると以下の通りです
- 療養通所介護では入浴や排泄の介助などの介護サービスのほか、喀痰吸引、気管切開のケアなど、医療ケアも幅広く提供している。
- 療養通所介護では要介護5の利用者の割合が6割も占める。
- 利用料金は1か月単位の定額料金で、1月あたりの基本料金は12,691円である。
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。