どうしても自宅にこもりきりになってしまい、体力維持が難しい介護生活。
日常生活を豊かにするために地域密着型通所介護というものが存在することをご存じでしょうか。
今回は地域密着型通所介護について、以下のような項目で詳しく解説していきます。
- 地域密着型通所介護とは
- 地域密着型通所介護と通所介護の違い
- 地域密着型通所介護のメリット
ぜひ最後までお読みいただき、地域密着型通所介護の利用を考える際の参考にしてください。
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地域密着型通所介護とは
まず、地域密着型通所介護とは、どのようなサービスのことをいうのか解説していきます。
役割
地域密着型通所介護は、利用者の生活の援助や身体機能の維持を目的に提供するサービスです。
それだけでなく、高齢になると家に閉じこもってしまうことが多くなり、社会との繋がりもなくなっていきます。
また、同居する家族は高齢者を自宅で1日中見守ることになり、介護負担も大きくなっていきます。
地域密着型通所介護は、そのような高齢者の社会的孤立感の軽減や、家族の介護負担軽減のために使われるサービスです。
地域密着型通所介護は、「通所介護」という名前のとおり、利用者が施設に通所してサービスを受けます。
利用対象者
地域密着型通所介護の対象者は、以下のとおりです。
- 事業所のある地域に居住地がある
- 65歳以上で要介護認定を受けている人
- 40歳~64歳で国の定める特定疾病によって要介護認定を受けている人
地域密着型通所介護は、介護保険サービスのため、65歳以上で要介護認定を受けている方、特定疾病にて要介護認定を受けている方が対象となります。
また、高齢者が住み慣れた環境でいつまでも過ごせるように事業所のある地域に住んでいる方を対象としています。
受けられるサービスの内容
受けられるサービスとしては、通所介護とほとんど変わりありません。
健康チェック、食事、入浴、機能訓練、レクリエーション、送迎などがあります。
後ほど詳しく解説しますが、地域密着型通所介護は一般的な通所介護よりも定員数が少ないです。
したがって、家庭的で手厚い介護や個別性を持った機能訓練やレクリエーションが可能な施設が多いです。
施設によっては、機能訓練やレクリエーションも生活に密着したものを提供しているところもあります。
認知症対応型のところでは、施設内で準備した商品の買いもので商品購入の体験をして、金銭授受の練習をしているところもあります。
利用者の負担費用
介護保険を適用した金額が、利用者の自己負担費用になります。
具体的には、以下のような費用です。
今回の場合は、7時間以上8時間未満でのサービス提供です。
サービス提供時間や介護保険の負担割合で費用も変わってくるので、実際に検討されている方はその施設で料金を再度きちんと確認することをおすすめします。
介護度 | 要介護1 | 要介護2 | 要介護3 | 要介護4 | 要介護5 |
利用者負担 (1割)1回につき | 735円 | 868円 | 1006円 | 1144円 | 1281円 |
表は、1割負担の方の例です。
年金収入やその他の収入により2割負担、3割負担の方もいらっしゃいます。
食事代やおむつ代などの日常生活費は、この料金に含まれていません。
ただし、昼食の時間を施設で過ごすことがほとんどのため、昼食代が発生する場合が多いです。
おむつは、基本的にご自宅から持参していただき、汚れた場合はそこから使います。
忘れたり足りなくなったときに施設のものを使用するので、おむつ代がかかる場合があります。
また、施設でおむつを使用したとしても代金を現金ではいただかず、あとから使った枚数を施設へ返却してもらうというところもあります。
施設によって代金を支払うのか、使用枚数の返却か異なるため、入所前に確認すると良いでしょう。
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地域密着型通所介護と通所介護の違い
地域密着型通所介護と通所介護の違いは、「定員の数」「管轄」「費用」の3つがあります。
定員の数
まず、定員の数の違いです。
地域密着型通所介護の定員は、18名以下となっています。
利用者の定員が19名以上の場合は、通所介護という名称になります。
管轄
次に、管轄の違いです。
通常、介護保険サービスは都道府県が管轄しています。
しかし、地域密着型通所介護の場合、事業所が所在する地域の方が対象であるため、市町村が管轄することになっています。
また、地域住民の方との交流や連携などを積極的におこなっていることが、地域密着型通所介護の特徴です。
市をまたぐ地域に事業所がある場合も、事業所の所属する市から許可がおりれば、例外として施設を利用することができます。
費用
最後は、費用の違いです。
地域密着型通所介護は、通所介護に比べて利用費用が少し値上がりします。
また、自己負担額は通常1割ですが、収入によって、2割、3割という方もいるため、注意が必要です。
出典:通所介護及び療養通所介護 (参考資料)
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地域密着型通所介護のメリット
次に、地域密着型通所介護のメリットについてみていきましょう。
さまざまな利用時間に対応してくれる
地域密着型通所介護の場合、利用者の人数が少人数のため大規模な通所介護に比べて利用時間の対応が柔軟です。
アットホームな雰囲気
一般的な通所介護では、広いフロアにたくさんの利用者がいらっしゃる光景をよく目にします。
しかし、地域密着型通所介護では、利用者が少人数のため、施設も一軒家を改装したような施設が多くあります。
スタッフも利用者と顔なじみになりやすく、アットホームな雰囲気でサービスを受けることが可能です。
少人数制である
最後のメリットは、たびたび先述していますが、少人数で利用できる点です。
少人数のため、個別性を持った機能訓練やレクリエーションが可能になっています。
また、入浴は通所介護の大きな施設では大人数の為ゆっくりと入浴介助をする時間がとれない場合もありますが、少人数のためゆっくり個別に向き合いながら介助がおこなわれます。
地域密着型通所介護は、少人数であるからこそ、行き届いた痒いところに手が届くサービスを提供したり、受けたりできることが一番のメリットといえるでしょう。
地域密着型通所介護の仕事内容と必要な人員
地域密着型通所介護には、必要なスタッフとさまざまな仕事内容があります。
主な仕事内容
主な仕事としては、以下のようなものがあります。
- 身体介護(食事、入浴、排泄介助など)
- レクリエーション
- 機能訓練
- 記録
- 施設内の環境整備
- 利用者の送迎
これに加えて、スタッフが調理をして食事を提供している施設もあります。
必要な職種と資格
次に、必要な職種の人員と資格について解説していきます。
生活相談員
専従で1名以上が必要です。
必要資格:社会福祉士、精神保健福祉士、社会福祉主事任用資格、介護福祉士、介護支援専門員など
看護職員
単位ごとに専従で1名(ただし、サービス提供時間帯に常時ではなく、訪問看護ステーションからの派遣での対応も可能)
必要資格:看護師、准看護師
介護職員
利用者人数によって、サービス提供時間に必要な専従配置が異なります。
- 利用者数が15人以下の場合:1名以上
- 利用者数が16人以上の場合:利用者が1名増すごとに0.2を加えた数以上
特に資格要件はなく、無資格の人でも働くことは可能ですが、介護福祉士などの資格を持っている方のほうが給与も高く、利用者も安心して施設を利用することができます。
機能訓練指導員
1名以上
必要資格:理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護師・准看護師、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師のいずれかの資格
(ただし、はり師、きゅう師については、はり、きゅう師以外の機能訓練指導員がいる場所で半年以上の実務経験をした方となっています)
管理者
原則、専従で常勤1名となっています。
地域密着型通所介護のデメリットと課題
地域密着型通所介護に限らず、小規模多機能型居宅介護や夜間対応型訪問介護といったさまざまな地域密着型サービスに共通するデメリットや課題をご紹介します。
所在の市町村でないと利用できない
地域密着型通所介護のデメリットとしては、原則、所在の市町村でないと利用できないという点です。
例外として、事業所が所在する市の同意があれば利用できる場合もありますが、判断は該当する市町村によって異なります。
したがって、評判の良い地域密着型通所介護でも施設が異なる市に在住している場合は、原則利用できない点がデメリットとなります。
居宅サービスの一部が受けられなくなる
地域密着型サービスを使うと、一部の居宅サービス(訪問介護、デイサービス、ショートステイ)が受けられなくなる場合があります。
したがって、すぐに利用したいときに利用できるように、サービスを開始する前に、きちんと確認しておきましょう。
担当のケアマネージャーが変わる
地域密着型サービスの内容によっては、小規模多機能の居宅を使うことになります。
その場合、担当のケアマネージャーが変更になる場合があります。
前任のケアマネージャーとの信頼関係ができていた場合、担当者が変更になることで不安になる可能性もあります。
地域密着型通所介護での要介護認定の割合は?
地域密着型通所介護を利用している方の要介護認定の割合について、気になる方もいらっしゃるでしょう。
地域密着型通所介護の要介護認定の割合は、以下のようになります。
要介護度 | 要介護1 | 要介護2 | 要介護3 | 要介護4 | 要介護5 |
割合 | 38.9% | 31.2% | 16.6% | 8.8% | 4.5% |
また、介護給付費実態調査では、以下のような統計が出されています。
要介護度 | 要介護1 | 要介護2 | 要介護3 | 要介護4 | 要介護5 |
費用 (100万円単位) | 38,164(27.5%) | 40,213(29.0%) | 29,633(21.3%) | 19,407(14.0%) | 11,430(8.2%) |
このように見ていくと要介護1、要介護2の方が半数以上を占めているのが分かります。
この結果から、地域密着型通所介護を利用されている方は、日常生活動作は自分でできる方が多いといっていいでしょう。
地域密着型通所介護のまとめ
ここまで地域密着型通所介護の役割や、地域密着型通所介護のメリット・デメリットなどを中心にお伝えしてきました。
要点を以下にまとめます。
- 地域密着型通所介護とは、その地域に住んでいる利用者が生活の援助や身体機能の維持などの目的で通所される施設
- 地域密着型通所介護と通所介護では、定員人数、管轄、かかる費用が違う
- 地域密着型通所介護のメリットとしては、少人数なため柔軟な対応が可能、アットホームな雰囲気、少人数だからこそ手厚いサービスが受けられる
地域密着型通所介護は、利用する施設によってさまざまな特徴があります。
同じ地域密着型通所介護でも施設によって、多少違う部分もあります。
これらの情報が、少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。