近年では、働きながら要介護状態の家族の介護を行っている方も多いと思います。
さらに、介護休暇は会社で6ヶ月以上働いている方が利用できる制度であるため、休暇の取得を検討されている方も多いのではないでしょうか。
しかし、実際に利用するとなると、やはり「介護休暇中の給与」について気になる方が多いと思います。
そこで本記事では、介護休暇中の給与について以下の点を中心にご紹介します。
- 介護休暇の取得を申請する方法
- 介護休暇中の給与を会社が支払う義務の有無
- 介護休暇中の給与を国が補償する義務の有無
その他にも介護休業中に受けられる給付金や給与、そして介護休暇の取得率の推移などにも触れているため、参考にしていただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。 高齢化が進み、要介護者の増加や介護期間の長期化などがみられるようになりました。また、老老介護という言葉もあるように介護する家族も高齢化しています。そういった現状を踏まえ、介護の負担を減らすために作られた制度が介護保険です。[…]
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介護休暇とは
「介護休暇」とは、要介護者が家族にいる方が取得できる介護を行うための一時的な休暇のことです。
介護休暇は、対象となる要介護者1人に対して、1年間(年度末でカウントリセット)に5日まで取得することができます。
(対象となる要介護者が2人以上いる場合には、1年間に10日まで取得可能)
また、介護休暇は「育児介護休業法」などの法律で守られている制度です。
「労働者の権利」の1つであるため、6ヶ月以上働いている方であれば雇用形態に関わらず取得できます。
しかし、以下の場合には対象外となります。
- 日雇いで働いている方
- 1週間の労働日数が2日以下の方
- 半日単位で介護休暇を取得することが難しい業務に従事している方(半日単位で取得希望の場合)
ちなみに介護休暇は、労働者からみて要介護者の方が以下の立場にある場合に取得することができます。
- 配偶者(内縁である場合も含む)
- 親(配偶者の親も含む)
- 兄弟・姉妹(戸籍上の証明があれば血縁上の関係がなくても含まれる)
- 子(養子も含む)
- 孫
- 祖父・祖母
要介護者の身体介助だけでなく、介護に関連している手続きや相談のために介護休暇を取得・利用することもできます。
中には「介護休暇の取得を会社が認めてくれない」とお悩みの方もいるかもしれません。
しかし「育児介護休業法第16条」で、会社は業務の繁忙等を理由として、従業員からの申し出(介護休暇等)を拒むことはできないと定められています。
そのため、介護休暇は会社の認否に関わらず、取得することができます。
さらに、介護休暇を取得したことを理由に、会社が取得者のボーナスを不当にカットしたり、降格したりできないと定められています。
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介護休暇中の給与について
「介護休暇」は、労働者の権利として法律で守られていますが、一体どのようにしたら取得できるのでしょうか。
介護休暇の申請方法
介護休暇を取得したい方は、まず会社に申請しましょう。
「口頭で申請するだけでOK」という会社もありますが、会社が独自で準備している申請書を提出する必要となる場合もあります。
当日に申請を行っても介護休暇を取得できますが、可能であれば事前に確認しておくことをおすすめします。
給与支払い義務の制度の有無
介護休暇中の給与についても気になる方が多いと思います。
そこで、次は「国や会社に給与を支払う義務が制度としてあるのか」についてご紹介します。
勤め先の会社
結論からいうと、勤め先の会社には介護休暇中の給与を支払う義務はありません。
そのため、介護休暇は原則として「無給」であるといえます。
しかし、勤め先によっては、就業規則で介護休暇中の給与を「有給」としている場合もあります。
就業規則は会社ごとに定められていますので、取得前に必ず確認するようにしましょう。
国の給与補償の有無
また、介護休暇を取得したことを理由として、国からお金が支給されることもありません。
しかし、介護休暇ではなく介護休業を取得する場合には、国から介護休業給付金が支給されます。
高齢化が進み、要介護者の増加や介護期間の長期化などがみられるようになりました。また、老老介護という言葉もあるように介護する家族も高齢化しています。そういった現状を踏まえ、介護の負担を減らすために作られた制度が介護保険です。[…]
介護休業給付金とは
介護休暇と似ている名前ですが、介護休暇と介護休業は全く違う制度です。
ちなみに、介護休業は「雇用保険」から介護休業給付金を受け取ることができます。
では、介護休業を取得する場合の給与については、一体どのように定められているのでしょうか。
また、介護休業給付金の金額の目安や申請方法についても解説していきます。
介護休業給付金の給与は?
実は、介護休業中の給与の支払い義務について定めている法律や制度はありません。
そのため、介護休暇と同じで勤め先の会社から給与を受け取れないことも多いです。
しかし、介護休業の場合は申請することで「介護休業給付金」を受け取ることができます。
ちなみに、介護休業給付金の金額は、基本的に以下の公式で計算することができます。
- (介護休業開始時の日額賃金)×(支給対象となる日数)×(67%)
しかし、介護休業の期間中に月額賃金の13%以上の給与を受け取っている場合には、上記の式では計算できないため注意して下さい。
備考ですが、介護休業は1人の人に対して最大で93日まで取得できます(分割は3回まで可能)
しかし、介護休業は1人の要介護者に取得できる日数が決まっています。
取得できる日数が、介護休暇のように回復することはないため注意してください。
介護休業給付金の申請
まず、介護休業給付金を申請するには、介護休業を取得する必要があります。
しかし、以下の方は介護休業を取得できないので注意してください。
- 雇用期間が1年に満たない方
- 有期の契約で働いていて、介護休業期間が終了しても6ヶ月以内に契約が満了する方(もしくは契約が更新されないことが分かっている方)
- 日雇いで働いている方
- 半日単位で介護休暇を取得することが難しい業務に従事している方
ちなみに、介護休業を取得したり、介護休業給付金を受給したりするには「申請」が必要です。
申請の流れを具体的にまとめたので、以下をご覧ください。
- 介護休業を開始する日と終了する日を決める
- 介護休業を開始する日の2週間前までに会社(事業主)に申請を行う
- 介護休業が終了したら給付金の申請に必要となる書類を提出する
- 会社(事業主)がハローワークに介護休業給付金の申請を行う
しかし、介護休業給付金を受給するには、介護休業給付金の申請だけでなく「受給資格の確認」も行う必要があります。
それぞれに必要となる書類は以下の通りです。
【受給資格を確認するために必要となる書類】
- 雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書
- 賃金の金額や支払い状況が分かる書類(賃金台帳やタイムカードなど)
【介護休業給付金の支給申請のために必要となる書類】
- 申請をする人が会社に提出する書類(介護休業申出書と介護休業給付金支給申請書)
- 対象の要介護者の名前や生年月日・性別、介護休業を申請する人と要介護者との関係性等が確認できる書類(住民票記載事項証明書など)
- 介護休業が開始した日や終了した日、介護休業を取得した日数などが把握できる書類(タイムカードなど)
- 介護休業中に支払われた賃金の金額や支払い状況などが分かる書類(賃金台帳など)
その他にも、介護休業中に介護をしていた要介護者が亡くなった場合には、以下のような書類が必要となる場合もあります。
- 戸籍抄本
- 医師の診断書や死亡診断書 など
必要となる書類や書式などは会社によって異なるケースもありますので、会社と相談しながら準備されることをおすすめします。
ご不明な点がある場合などは、ハローワークのお問い合わせされることをおすすめします。
介護休暇の取得率の推移
ここまで介護休暇について紹介していきましたが、実際のところどのくらいの方が取得しているのでしょうか。
まずは「就業規則に介護休暇に関する規定がある会社(事業所)の割合」を知っていただくために、以下の表にまとめたのでご覧ください。
平成26年 | 平成29年 | |
従業員が5~29人の会社や事業所の場合 | 58.4% | 60.9% |
従業員が30~99人の会社や事業所の場合 | 77.1% | 81.2% |
従業員が100~499人の会社や事業所の場合 | 93.5% | 92.7% |
従業員が500人以上の会社や事業所の場合 | 97.9% | 96.7% |
上記の表から、従業員の人数が少ない会社よりも従業員が多い会社の方が、介護休暇を取得できるような規定が整っているといえます。
また、平成26~29年にかけて、従業員が5~99人の会社に介護休暇の規定が整っている割合が2.5~4.1%増加しています。
介護休暇の規定が整っている会社全体の割合も、平成26年の約81.7%から平成29年の約82.9%となっているため、増加傾向にあることが分かりました。
では、介護休暇を取得できる会社の規定は、実際のところどのような内容となっているのでしょうか。
まず、日数の制限ありで介護休暇を取得できる会社は、全体の95%前後となっています。
平成26年 | 平成29年 | |
日数の制限なしで介護休暇を取得できる会社 | 5.5% | 4.4% |
日数の制限ありで介護休暇を取得できる会社 | 94.5% | 95.6 % |
ちなみに、介護休暇の日数に制限がある会社で、実際に取得できる日数を以下の表にまとめたのでご覧ください。
【介護休暇の対象となる家族が1人の場合】
5日まで取得可能 | 6~10日まで取得可能 | 11~20日まで取得可能 | 21日以上取得可能 | |
平成26年 | 93.5% | 2.4% | 0.8% | 3.4% |
平成29年 | 93.5% | 1.5% | 0.7% | 4.3% |
【介護休暇の対象となる家族が2人の場合】
10日まで取得 | 10~20日まで取得可能 | 21~40日まで取得可能 | 41日以上取得可能 | |
平成26年 | 94.2% | 1.5% | 0.4% | 3.9% |
平成29年 | 94.3% | 1.3% | 0.3% | 4.1% |
このように、介護休暇の対象となる家族が1人の場合は5日、そして2人の場合は10日取得できる割合が1番多くなっています。
また、介護休暇を取得できる単位は法改正前までは「1日または半日」となっていましたが、2021年1月1日の法改正によって半日の部分が削除され、時間単位でとることが義務付けられました
介護離職の現状と課題
介護休暇を取得できる会社は増加傾向にありますが、実は現代では「介護離職」が問題視されています。
ちなみに、介護離職の原因として以下を挙げることができます。
- 介護休暇などの利用率が低いこと
- 介護休暇などを利用しにくい雰囲気であること
- 特養などの施設の入居条件に満たない要介護者が増加していること(例:特養なら要介護3未満)
- 介護離職の割合が10年間で2倍に増えていること
- 介護によって継続して会社で働く意欲が低下してしまうことなど
このような問題を解消すべく「介護離職ゼロ」を目指した政策が行われています。
さらに、介護離職された方の再就職率が低いことや働く人手が減っていることも、同時に問題視されています。
働き方を見直すことで介護離職を防ぐことができる可能性があるため、政府だけでなく会社や個人としても考え、取り組んでいく必要があります。
介護休暇中の給与のまとめ
ここまで、介護休暇中の給与についての情報を中心にお伝えしました。
要点を以下にまとめます。
- 会社(事業主)に口頭や申請書などで申請すると、介護休暇の取得ができる
- 介護休暇中の給与を会社が支払う義務はないが、会社によっては支給される場合もある
- 介護休暇中の給与を国が補償する義務はない
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までご覧いただきありがとうございました。