認知症や障害などで判断能力が低下した際、本人に代わって財産管理や施設契約を行うのが「成年後見制度」です。
「成年後見人を頼むと毎月いくらかかるの?」「どんな手続きや仕事をしてくれるの?」と疑問をお持ちの方も多いでしょう。
本記事では、成年後見人の報酬相場(基本報酬・付加報酬)、具体的な仕事内容、申立手続きの流れ、費用が払えない場合の助成制度までわかりやすく解説します。
- 成年後見制度の概要と成年後見人に選ばれる人
- 成年後見人の報酬相場(月額基本報酬・付加報酬・親族の場合)
- 成年後見人の具体的な2つの仕事(財産管理・身上保護)
- 申立費用・申立手順と選任までの流れ
- 報酬が払えない場合の助成制度(成年後見制度利用支援事業)
ご本人やご家族が安心して制度を活用できるよう、ぜひ参考にしてください。

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成年後見人とは?制度の目的と選ばれる人
成年後見制度とは、認知症、知的障害、精神障害などにより判断能力が不十分な方が、不利益を被らないよう法律面や生活面で保護・支援する公的な制度です。
介護保険サービスの契約や預貯金の管理、不動産の処分など、本人が一人で行うことが困難な手続きを、家庭裁判所から選任された「成年後見人」が代行・支援します。
成年後見制度の2つの分類(法定後見・任意後見)
成年後見制度には、大きく分けて以下の2つの種類があります。
- 法定後見制度:すでに判断能力が低下している場合に、家庭裁判所に申し立てて後見人を選任してもらう制度(判断能力の程度に応じて「後見」「保佐」「補助」の3段階に分かれます)。
- 任意後見制度:将来、判断能力が低下したときに備え、十分な判断能力があるうちに自分で後見人(任意後見人)と支援内容をあらかじめ契約しておく制度。
成年後見人に選ばれるのはどんな人?
法定後見の場合、成年後見人は本人の生活状況や資産状況などを総合的に判断し、家庭裁判所が選任します。
申立書に希望する候補者(親族など)を記載することも可能ですが、最終決定権は家庭裁判所にあります。資産額が多い場合や親族間で意見対立がある場合などは、専門職が選任される傾向があります。
- 専門職:弁護士、司法書士、社会福祉士など
- 親族:配偶者、子、兄弟姉妹など
- 法人:社会福祉協議会、NPO法人、権利擁護センターなど
現在では、全体の7割以上で専門職や法人などの第三者(親族以外)が選任されています。

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成年後見人の報酬相場と費用の仕組み
専門職などが成年後見人に選任された場合、業務への対価として「報酬」が発生します。報酬額は当事者同士の話し合いではなく、家庭裁判所が審判によって確定します。
1. 月額の基本報酬相場
基本報酬は、本人の管理財産額(預貯金や不動産などの合計額)に応じて目安が定められています。
| 管理財産額(目安) | 月額基本報酬(目安) | 1年あたりの目安 |
|---|---|---|
| 2,000万円以下 | 月額 20,000円 | 約24万円 |
| 2,000万円超〜5,000万円以下 | 月額 30,000円〜40,000円 | 約36万〜48万円 |
| 5,000万円超 | 月額 50,000円〜60,000円 | 約60万〜72万円 |
※本人が施設に入所しているなど、在宅生活に比べて後見人の事務負担が少ない場合は、基準額の範囲内で低い金額に調整されることがあります。
2. 付加報酬(特別な業務を行った場合)
通常の後見事務を超えて、特別な業務や非常に困難な対応を行った場合、基本報酬にプラスして「付加報酬」が認められることがあります。
- 特別に困難な事情がある場合:親族間の意見対立の調整、前任者の不正追及対応、著しく困難な身上保護対応など(基本報酬の50%以内の範囲で加算)
- 特別な行為を行った場合:不動産の売却手続き、老人ホーム等の入居契約、遺産分割協議・訴訟対応により本人の財産を増やした場合など(事務内容や得られた利益に応じて裁判所が判断)
3. 親族が成年後見人になった場合の報酬
親族が成年後見人に選任された場合も、家庭裁判所に「報酬付与の申立て」を行うことで専門職と同額程度の報酬を受け取ることが可能です。
ただし、ご家族・ご親族が後見人の場合は「本人の財産を減らしたくない」という理由から、報酬請求を行わず無償で後見業務を行うケースも少なくありません。
4. 報酬付与申立ての手続きと必要書類
後見人が報酬を受け取るには、年に1回、業務報告書とともに「報酬付与申立書」を家庭裁判所へ提出します。裁判所が認めた金額が、本人の口座・財産から直接支払われます。
- 申立に必要な費用例:収入印紙800円、連絡用切手代(自治体・裁判所による)など
- 提出書類:報酬付与申立書、後見等事務報告書、財産目録、年間収支状況報告書、通帳コピー等の証明資料

成年後見人の報酬が払えない場合の助成制度
「本人の年金収入や預貯金が少なく、後見人の報酬を払うと生活が立ち行かない」という場合でも、成年後見制度の利用を諦める必要はありません。
公的な支援策として「成年後見制度利用支援事業」が用意されています。

成年後見制度利用支援事業とは?
経済的な理由で制度利用が困難な低所得者や身寄りのない方に対し、各市区町村が申立費用や後見人報酬の全部または一部を助成する制度です。
- 申立費用の助成:裁判所に納める印紙代、切手代、鑑定費用などの助成
- 後見人報酬の助成:本人の財産から報酬を支払うことが難しい場合、市区町村が代わりに報酬額を補填
報酬助成額の基準(月額上限の目安)
助成上限額は自治体により異なりますが、多くの自治体で厚生労働省のガイドラインを参考に設定されています。
| 本人の生活状況 | 報酬助成額の上限(月額目安) |
|---|---|
| 施設入所者の場合 | 月額 18,000円まで |
| 在宅生活者の場合 | 月額 28,000円まで |
生活保護受給者でも成年後見制度は利用できる?
利用可能です。
生活保護受給者の場合、上記の成年後見制度利用支援事業により、申立費用および後見人報酬が自治体から全額助成対象となります。金銭的な余裕がないことを理由に拒否されることはありません。
また、申立を行う親族がいない一人暮らしの高齢者や障害者の場合、市区町村長が本人に代わって裁判所へ申立て(市区町村長申立)を行う仕組みも整っています。まずは地域包括支援センターや福祉事務所(ケースワーカー)へご相談ください。
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成年後見人の主な仕事内容:財産管理と身上保護(身上監護)
成年後見人の仕事は、大きく「財産管理」と「身上保護(身上監護)」の2つに分かれます。
1. 財産管理業務
本人の資産を守り、適切に維持・運用・手配する業務です。
- 預貯金・資産の管理:口座の記帳、生活費の出金管理、不用な口座の集約
- 不動産の管理・処分:自宅や所有不動産の維持管理、必要に応じた売却手続き(※居住用不動産の処分は家庭裁判所の許可が必要)
- 定期的な収支の管理・支払い:税金や社会保険料、医療費、介護施設費用の支払い
- 重要書類の保管:通帳、実印、権利証などの保管
※なお、日用品や食料品の購入など「日常の買い物」は本人が自由に行うことができます。
2. 身上保護(身上監護)業務
本人が安全かつ人間らしい生活を送れるよう、生活・医療・介護に関する契約や手続きを行う業務です。
- 介護保険サービスの契約:デイケア、訪問介護、ショートステイなどの利用契約
- 施設入所・病院入院の手続き:老人ホームや病院との契約・支払い
- 医療・要介護認定の手続き:要介護認定の申請や更新、医療費控除等の手続き
成年後見人は万能ではありません。法律上の限度があり、以下の行為は行えません。
- 実際の介護・世話:掃除や調理、送迎、排泄介助などの「事実行為」は行いません(介護ヘルパー等と契約して手配します)。
- 医療行為への同意:予防接種、手術、延命治療の選択などに関する親族としての身元同意・決定権はありません。
- 保証人・身元引受人になること:施設入所や病院入院の際、個人として連帯保証人になることは義務付けられていません。
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申立に必要な費用と申立手順・手続きの流れ
法定後見制度を利用する際の手続きの流れと、初期にかかる申立費用を解説します。
申立時にかかる初期費用の目安
家庭裁判所へ申し立てる際に必要な初期費用です(後見人報酬とは別にかかります)。
- 収入印紙代:申立手数料(800円)+登記手数料(2,600円分)= 計 3,400円
- 連絡用郵便切手代:約3,000円〜5,000円程度(※管轄の家庭裁判所により異なる)
- 本人の診断書作成費用:約5,000円〜10,000円程度(主治医による成年後見用診断書)
- 鑑定費用(必要な場合のみ):約5万〜10万円程度(判断能力の程度を専門医が医学的に判定する必要があると裁判所が判断した場合)
※弁護士や司法書士へ申立書類の作成代行を依頼する場合は、別途10万〜20万円程度の着手金・報酬が発生します。
選任手続きのステップ
- 相談・準備
地域包括支援センターや家庭裁判所、弁護士・司法書士等へ相談し、必要書類を収集します。主治医に「本人情報シート」や「診断書」の作成を依頼します。 - 家庭裁判所への申立て
本人の住所地を管轄する家庭裁判所へ「後見開始申立書」や財産目録、親族意見書などの書類一式を提出します。 - 家庭裁判所による審理・面談
裁判所の調査官が本人、申立人、後見人候補者と面談し、本人の意向や後見人の適格性を審査します(必要に応じて鑑定を実施)。 - 審判・審判書の送達
家庭裁判所が「後見開始」および「成年後見人の選任」を決定(審判)し、審判書が送達されます。 - 審判の確定・業務開始
送達から2週間以内に不服申し立てがなければ審判が確定します。法務局に成年後見登記事項が登記され、成年後見人による業務が正式に開始されます。
申立てから業務開始までの期間は、およそ2ヶ月〜4ヶ月程度が一般的です。
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成年後見人に関する主な相談窓口と探し方
「どこに相談すればいいのか分からない」「信頼できる専門職の後見人を探したい」という場合の相談窓口です。
- 地域包括支援センター:高齢者の福祉・介護に関する総合相談窓口。権利擁護や成年後見制度の利用相談を無料で受け付けています。
- 市区町村の成年後見センター(権利擁護センター):各自治体や社会福祉協議会内に設置されており、制度の詳しい説明、申立手続きの支援、法人後見の受付などを行っています。
- 専門職団体(弁護士会・司法書士会・社会福祉士会)
- リーガルサポート(公益社団法人成年後見センター・司法書士会)
- ぱあすねっと(公益社団法人日本社会福祉士会)
- 各都道府県の弁護士会(高齢者・障害者権利擁護センター)
- 家庭裁判所:管轄の家庭裁判所で申立書類の取得や書式・手続きに関する案内を行っています。
なお、特定の弁護士や司法書士をあらかじめ探して候補者として申請することもできますが、裁判所の判断で別の適任者が選ばれる場合もあります。ご自身で探さなくても、裁判所が名簿から適任者を選任してくれるため心配ありません。
まとめ
成年後見制度について重要なポイントをまとめます。
- 成年後見人は、判断能力が低下した本人に代わって財産管理や介護・施設契約を行う公的支援者
- 専門職後見人の基本報酬は月額約2万〜6万円(本人の管理財産額に応じて家庭裁判所が決定)
- 報酬や申立費用が払えない場合でも「成年後見制度利用支援事業」により自治体から助成が受けられる
- 仕事内容は「財産管理」と「身上保護」であり、実際の身体介護や保証人・医療同意は行わない
- 制度の利用や申立に悩んだら、まずは地域包括支援センターや社会福祉協議会(成年後見センター)に相談する
成年後見制度は、大切なご家族やご本人の財産と権利を守り、安心して自分らしい生活を継続するための心強い制度です。疑問や不安がある場合は、お近くの公的窓口へお早めにご相談ください。


