経管栄養で白湯から入れる理由について知っていますか?
なんとなく先輩のやり方を真似しているだけになっている方もいると思います。
そもそも経管栄養ってなに?なぜ白湯から入れるの?など、いろいろ知っておきたいことがありますよね。
本記事では、経管栄養全般についての解説や、栄養剤を注入するときに白湯から入れる理由など、以下の点を中心に解説します。
- 経口で栄養が摂取できないときに役立つ経管栄養
- 経管栄養で白湯から入れる理由
- 各経管栄養方法のメリットとデメリット
白湯から入れる理由だけでなく、経管栄養全般についての理解を深めるために、ぜひ最後までご覧ください。
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経口で栄養が摂取できない時に役立つ?
まずは経管栄養とは何か、そして経口で栄養が摂取できない時にどんな摂取方法があるのか見てみましょう。
経管栄養とは?
経管栄養とは、体外から消化管内に通したチューブを介して栄養剤を注入することです。
人は生きていくために、食べたものから栄養成分や水分を継続して消化吸収することが必要です。
健康な時は、当たり前のように口から食事を摂取し必要な栄養成分や水分を消化吸収しています。
しかし病気になったり、年齢を重ねていくと様々な機能障害が起こります。
病気や高齢化によって機能に障害が起こり、消化機能は十分であるものの経口摂取が不可能になったり、困難になった方に対して栄養成分や水分を消化吸収できるように経管栄養を行います。
経管栄養によって継続的な消化吸収の機能維持ができると消化管機能や腸管機能が促進し、免疫機能の改善につながります。
経管栄養は以下のような、腸管の機能障害による影響を改善することが期待できます。
- 活動量の低下
- 気力の低下
- 筋肉のやせ
- 筋力の低下
- 神経の伝導障害
- 頭がぼんやりする症状
- 免疫機構(腸管免疫系)の機能の低下による全身的な感染症の発生リスク
経管栄養はこのように、機能障害が起こっても継続して腸管から消化吸収を行うための大事な役割を担っているのです。
しかし経管栄養は、一人ひとりの病態や年齢などに応じた適正な量と種類の栄養剤が注入されなければ、肥満、高血糖、糖尿病、高脂血症や脂肪肝等の合併症を起こす原因になりかねません。
経管栄養が必要になる具体的な病態には、以下のようなものがあげられます。
- 嚥下困難な状態で、脳血管障害、認知症などにより自発的な摂食ができない
- 神経筋疾患で、嚥下・摂食困難がある
- 頭部、顔面外傷のために嚥下・摂食困難がある
- 食道穿孔
- 誤嚥性肺炎を繰り返す
- クローン病などの炎症性腸疾患
経管栄養の種類は?
経管栄養にはいろいろな方法があります。
少し前までは、細いチューブを鼻から胃や十二指腸まで入れて栄養剤を注入する経鼻経管栄養法が主流でした。
しかし最近は、腹部から胃あるいは腸へ貫通する穴を作って栄養剤を注入する方法や、チューブの装着を処置のときのみにする方法もあります。
どの経管栄養の方法を選択するかは、消化管の機能が十分かどうかで判断します。
それ以外にも、在宅介護者がいるかどうか、施設に入居しているかなどの生活環境の違いによっても、どの経管栄養が向いているかは異なります。
経鼻経管栄養
経鼻経管栄養とは、鼻から食道を通って胃まで経鼻チューブを挿入し栄養剤を送る方法です。
消化機能に問題はないが、嚥下障害が原因で、口から摂取できない方が対象になります。
短期間(4週間未満)に経口栄養摂取に戻ることが見込まれる場合に、採用されます。
経瘻孔法(けいろうこうほう)
経瘻孔法とは、胃瘻や腸瘻といって、腹壁から胃や腸に貫通する穴を作ってそこから栄養剤を注入する方法です。
消化機能に問題がなく、嚥下機能に問題のある方が対象になります。
長期間(4週間以上)の栄養管理が必要な場合に採用されます。
間歇的口腔食道経管栄養法(かんけつてきこうくうしょくどうけいかんえいようほう)
「第三の経管栄養」として注目されている間歇的口腔食道経管栄養法は栄養剤の注入時のみ口からチューブを食道まで挿入し注入が終われば抜去する方法です。
胃瘻や腸瘻に変わる方法として注目され始めています。
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経管栄養で白湯から入れる理由は?
経管栄養では、栄養剤に含まれる水分量以外に、追加水分として最初に白湯を投与します。
白湯から先に入れることで、腸内の動きを良くし栄養剤の消化を促すとともに、胃内容量の増加による逆流を防ぎます。
経管栄養適応の方は、腸の動きが悪い方が多く、胃の蠕動運動(ぜんどううんどう)の低下や栄養剤の胃の中での停滞ガスの滞留による栄養剤の嘔吐や下痢を起こしやすい状態です。
また経管栄養において、栄養剤の排出速度は白湯よりも約1/2と遅いため、栄養剤投入後に白湯を投入すると栄養剤に白湯が加わり胃内容量が増え逆流を起こしやすくなります。
このように嘔吐や下痢、さらには逆流を避けるために経管栄養は白湯から先に入れます。
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栄養剤注入後も白湯を入れる?
経管栄養は栄養剤注入後も、白湯を入れる必要があります。
これはチューブ内に残存した栄養剤の腐敗による感染症を防ぐ必要があるからです。
また、大量の白湯の注入は嘔吐の原因となるため、注意が必要です。
それぞれのやり方にどんなメリットが?
経管栄養の種類それぞれに、どんなメリット、デメリットがあるのか見てみましょう。
経鼻経管栄養のメリット
経鼻経管栄養のメリットは以下の通りです。
- チューブの挿入が容易
- 穴をあける手術が不要
- 在宅での治療が可能
経鼻経管栄養のデメリット
経鼻経管栄養のデメリットは以下の通りです。
- 挿入状態での違和感
- 外見上、重篤感がある
- 鼻孔から胃までの挿入が困難な人もいる
- 1~2週間毎の交換が必要
- チューブが細く栄養剤が詰まりやすい
- 抜けやすく誤嚥等の重大事故へつながる恐れがある
- 自己抜去する可能性がある
経瘻孔法のメリット
経瘻孔法のメリットは以下の通りです。
- 顔の外見がすっきりしている
- 肺炎や誤嚥のリスク軽減
- チューブが抜けにくく自己抜去が少ない
- 4~5か月の交換でよい
- 経鼻経管栄養よりも対応施設が多い
経瘻孔法のデメリット
経瘻孔法のデメリットは以下の通りです。
- 胃や腸に穴をあける手術が必要
- 皮膚のトラブルや腹膜炎等の合併症のリスクがある
- 口腔ケアが必要
- 胃食道逆流のリスクがある
間歇的口腔食道経管栄養法のメリット
間歇的口腔食道経管栄養法のメリットは以下の通りです。
- 胃や腸に穴をあける手術が必要ない
- チューブ留置の必要がない
- 嚥下訓練実施時に経管チューブが邪魔にならない
- 栄養剤投与の度にチューブを挿入するので嚥下訓練になる
間歇的口腔食道経管栄養法のデメリット
間歇的口腔食道経管栄養法のデメリットは以下の通りです。
- 毎回挿入抜去を繰り返すので、医療者側に負担がかかる
- 嘔吐反射が強い人は適応できない
経管栄養を中止しなくてはいけない場合は?
経管栄養を行っている時、いつもと違う状態が見られた場合は直ちに注入を中止し、利用者や家族、医療者に相談することが大事です。
注入を中止する主な要件は以下の通りです。
- いつもと違った意識障害がある場合
- 38℃以上の発熱(もしくは個人の通常体温以上の発熱)
- パルスオキシメーターで酸素飽和度90%以下
- 通常より明らかな血圧低下
- 嘔吐、腹痛、腹部違和感、腹部の張り、水様便、黒色便、血便など各種消化器の異常症状
- 胃瘻部からの胃内容物の大量の漏れ
- 利用者による経管栄養中止の希望
経管栄養で白湯から入れる理由まとめ
今回は経管栄養全般についての解説と経管栄養で先に白湯を入れる理由についてご紹介しました。
要点を以下にまとめます。
- 経管栄養法には経鼻経管栄養、経瘻孔法、間歇的口腔食道経管栄養法がある
- 経管栄養で白湯から入れる理由は、腸の動きを良くし、消化吸収を促すため
- 経鼻経管栄養法それぞれにメリット、デメリットがあり一人一人の状態に合わせて選択することが大切
これらの情報が少しでも皆様のお役に⽴てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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