介護に専念する場合、退職・介護休暇などの選択肢があります。
介護休暇では仕事を辞めずに、介護と仕事を両立することが可能です。
介護休暇とは具体的にどのような制度なのでしょうか?
本記事では介護休暇について以下の点を中心にご紹介します。
- 介護休暇は何日取得できるのか
- 介護休暇を取得できる条件はあるのか
- 介護休暇と介護休業の使い方とは
介護休暇について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
スポンサーリンク
介護休暇とは
介護休暇とは、家族がケガや病気で介護が必要になった際、短期の休みを取れる制度のことです。
仕事と介護の両立を目指し、育児休暇と同じように労働者の権利として法律で定められています。
つまり、雇い主は申請があれば拒否することはできません。
日本では、介護の需要が高まっているのが現状です。介護に関して不安ばかりという方も多いのではないでしょうか?介護保険制度を活用すれば、さまざまなサービスを利用できます。今回は、介護するときの流れについて以下の点を中心にご紹[…]
スポンサーリンク
介護休暇を取得する条件
介護休暇を取得するためには、一定の条件がそろっていなければなりません。
介護休暇に必要な条件は以下の通りです。
- 対象者の状況
- 対象者との関係
- 雇用期間
- 雇用形態
- 介護とみなされる範囲
それぞれ説明していきます。
対象者の状況
介護される方の状況が、2週間以上にわたり常に介護を必要とすることが条件になります。
要介護認定は必要ありません。
対象者との関係
介護される方との関係も介護休暇取得の条件になります。
認められる間柄は
- 父母(養父母)
- 配偶者(事実婚も含む)
- 子(養子)
- 配偶者の父母
- 祖父母
- 兄弟姉妹
- 孫
です。
叔父やいとこは対象外となるので注意しましょう。
雇用期間
雇用期間は6カ月以上であることが条件です。
雇用期間が半年未満の方は介護休暇を取ることができません。
また、1週間の所定労働日数が2日以下の方で労使協定で対象外と定められている場合、介護休暇を取ることができません。
雇用形態
雇用形態は、正社員だけでなく、
- アルバイト
- パート
- 派遣社員
- 契約社員
などすべての労働者が取得できます。
ただし雇用期間が6ヶ月以上が条件です。
また、日雇労働者は取得できないので注意しましょう。
介護とみなされる範囲
介護休暇を取得するためには、当然介護が目的でなくてはなりません。
食事や排泄といった直接的な介護だけでなく、下記のようなものも介護範囲とみなされます。
- 介護保険の手続き
- 介護施設への見学
- 病院への送迎
- 買い物
- ケアマネージャーとの面談など間接的な介護
高齢化が進み、要介護者の増加や介護期間の長期化などがみられるようになりました。また、老老介護という言葉もあるように介護する家族も高齢化しています。そういった現状を踏まえ、介護の負担を減らすために作られた制度が介護保険です。[…]
介護休暇の具体的な内容について
介護休暇には
- 申請方法
- 取得可能日数
- 所要時間
- 賃金
など様々なことが定められています。
それぞれについてご紹介します。
介護休暇の申請方法
介護休暇の申請方法は、会社によって違います。
当日、上司などに口頭での申請も可能です。
また、会社によっては申請書が用意されているケースもあります。
介護休暇は会社に申請するので、会社のルールに従いましょう。
介護休暇の取得可能日数
介護休暇の取得可能日数は、1年度で5日です。
介護する方が2人いる場合には10日まで取得できます。
ただ、3人以上の対象者がいても休暇を増やすことはできません。
所要時間
介護休暇は1日単位だけではなく、用途に合わせて1時間単位で休暇を取ることができます。
以前は1日、あるいは半日単位でしか認められていませんでした。
しかし、改正によって1時間単位での取得が認められるようになりました。
たとえば、ケアマネージャーとの面談のため1時間、施設見学のため3時間だけ休むことが可能です。
法改正によって各々のスケジュールに合わせることができ、融通の利く制度になりました。
介護休暇中の賃金
介護休暇中の賃金については、法的な規定はありません。
そのため、勤めている会社の規定によって、有給・無給が決められています。
事前に会社のルールを確認しておきましょう。
介護休暇と介護休業の違い
介護休暇と同じように、介護と仕事を両立させるための制度として介護休業があります。
休暇と休業で意味が異なる制度なのでよく理解しておきましょう。
介護休業の申請方法
介護休業は休業開始予定日時と終了日時をハッキリとさせたうえで、開始日の2週間前に申請しなくてはなりません。
介護休業は、「介護休業申出書」として書面で提出する必要があります。
一方、介護休暇はとくに書面を用意する必要もなく、口頭でも申請できます。
介護休業は、書類がないと介護休業給付金を申請できなくなるので注意しましょう。
介護休業の取得可能日数
介護休業は対象の要介護者1人につき通算で93日まで休みを取ることができます。
取得する回数は3回までで、93日通して休業してもいいですし、3分割して休業してもいいことになります。
ただし93日の上限は、介護休暇のように年度が替わってもリセットされるわけではありません。
あくまでも通算ですから、93日を使い切ってしまえば介護休業を取得することができなくなります。
所要時間
介護休業は日単位でしか取得できません。
介護休暇では日単位、時間単位でも休暇が取れます。
しかし、介護休業の場合には日単位での休業取得となるので注意しましょう。
介護休業中の賃金
介護休業中は、ほとんどの会社で原則無休になります。
しかし、雇用保険の介護休業給付金制度を利用することで、一定の金額を受給できます。
支給額は最大で賃金の67%が支払われます。
介護休業は介護休暇と異なり、長期間仕事を休むため、金銭面の負担が大きいです。
必ず申請をするようにしましょう。
介護休暇と介護休業の使い分け方
介護と仕事を両立するため「介護休暇」と「介護休業」があります。
それぞれの特徴を活用して使い分けすることで、介護も仕事もやりやすくなります。
介護休暇は短時間の用事や突発的な通院などにおすすめ
介護休暇は1年度で5回と使える場面は限られていますが、時間単位で取得できます。
1日休まなくても、
- 病院に連れて行く
- 要介護認定のため面接をする
など2〜3時間の休暇が取りやすくなっています。
また、年度が過ぎればリセットし、再び5日の休暇が取れます。
介護休業はまとまった日数を要する介護が必要な時におすすめ
介護休業は、通算93日と長期にわたる休業を取ることができます。
ただし、介護休暇と違って年度を過ぎても93日を使い切ってしまうとリセットされません。
介護休暇で用件が済んでしまうことを介護休業で使ってしまうと、長期休業が少なくなります。
そこで、短期的・突発的なことは「介護休暇」を使い、長期的に介護体制を整えたいときなどは「介護休業」を使うなど、使い分けをすることが大切です。
一括りに老人ホーム・介護施設といっても、種類によって目的や入居条件はさまざまです。初めての老人ホーム・介護施設探しでは、分からないことばかりだと思います。どの施設がいいのか決められない人も多いのではないでしょうか?本記事では、老人[…]
介護休業給付金制度について
介護給付金は賃金月額の約67%となっています。
介護休業中は無給となることが多いです。
そのため、介護休業給付金が受けられると経済的にも大変助かります。
介護休業給付金が受けられる条件は、
- 雇用保険の受給資格者であること
- 介護に2週間以上の休みが必要であること
- 介護休業が終わったら職場復帰すること
です。
介護休業給付金が受けられるかどうか会社に確認しましょう。
介護休業の申請は、原則として会社が申請手続きを行います。
申請手続きには「介護休業申出書」「住民票記載事項証明書等」など自分で用意する必要のある書類もあります。
また、申請手続きは介護休業が終了してから2カ月以内に行い、その後給付金が支払われます。
介護休業中には給付金は支給されないので、経済的な計画を立てておきましょう。
介護で仕事を辞める前に
介護と仕事の板挟みとなり仕事を辞めざるを得なくなる人は、年間約10万人にも上るといわれています。
介護離職を少しでも減らそうと、各都道府県には「労働局雇用環境・均等部(室)」という窓口が設けられています。
介護休暇や介護休業はもちろんのこと、
- 残業の免除
- 時間外労働の制限
- 時短勤務制度
- フレックスタイム制度
- 時差出勤制度
などの制度を活用し、離職することなく介護と仕事のバランスを考えた働き方を相談できます。
また、介護休業などの制度の申請・取得を理由に不当な解雇・取扱い、ハラスメントに対する相談もできます。
「介護で仕事を辞めなければならないのでは」と悩んでいる方は、ぜひ一度相談してみてはいかがでしょう。
スポンサーリンク
介護休暇Q&A
介護休暇についてよくある疑問について、以下のQ&Aをご紹介します。
- 公務員も介護休暇制度を利用できるか
- 同居していない家族の介護でも取得できるか
- 要介護状態であることの証明書類はどんなものが必要か
- 介護休暇の申請書の書式はあるか
- 会社に申請を断られたらどうするか
Q. 公務員も介護休暇制度を利用できる?
国家公務員も介護休暇制度を利用することができます。
国家公務員の介護休暇制度の利用は以下の法律および条件に基づいて取得ができます。
- 準拠する法律:「一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律」
- 取得条件
- 職員の配偶者、父母等で要介護者の介護であること
- 3回を超えず、かつ、通算して6月を超えない範囲であること
- 各省各庁の長から休暇を認められること
地方公務員の場合は、自治体の条例によって定められるところによります。
概ね国家公務員に準じているところが多いようです。
Q. 同居していない家族の介護でも取得できる?
介護休暇は同居していない家族でも取得できます。
介護休暇の対象家族は以下のように定められており、同居・扶養要件はありません。
- 配偶者
- 父母
- 子
- 配偶者の父母
- 祖父母
- 兄弟姉妹
- 孫
Q. 要介護状態であることの証明書類はどんなものが必要?
介護休暇は口頭での申し出でも法的には可能で、書面での提出は義務付けられていません。
また、要介護状態の証明は「医師の診断書」に限定されていません。
労働者から介護休暇の申し出を受けた場合の法的対処の趣旨は以下の通りです。
- 介護をしている労働者個々の事情に合わせたものにすること
- なるべく労働者が仕事と介護の両立できるようにすること
- 事業主の柔軟な運用がされること
Q. 介護休暇の申請書の書式はある?
介護休暇の申請の手続き方法は以下のようになります。
- 書面の提出に限定されておらず、口頭の申し出も可能
- 社内規定で申請書様式が決まっている場合は社内様式を使用する
- 社内様式の規定がない場合は、厚生労働省の以下の様式が活用できる
様式:厚生労働省【通院の付添いなどで短時間の休みが必要な時は、 「介護休暇」を活用しましょう。(手続方法ー様式例)】
Q. 会社に申請を断られたらどうしたらいい?
介護休暇は、労働者が仕事と介護を両立して働けるように育児・介護休業法として定められたものです。
労働者の介護休暇申し出に対し申請を断ることは育児・介護休業法で禁止されています。
制度に関しては、都道府県労働局雇用環境・均等部(室)へ相談することができます。
スポンサーリンク
カエルジャパンの取り組み
カエルジャパンとは、内閣府が中心となって「仕事と生活の調和憲章」と「行動指針」を示したものです。
仕事は経済的に生活を支えるだけでなく、生きがいや喜びをもたらすものです。
しかし、実際には育児や介護といった生活との両立に悩み、問題を抱える人が多くなっています。
「仕事と生活の調和」を実現することでそんな悩みを解決できます。
カエルジャパンのキャンペーンを通して、個人、企業、各種団体、地方自治体、国がひとつとなって取り組もうとしています。
出典:内閣府【「仕事と生活の調和」推進サイト】
スポンサーリンク
介護休暇まとめ
今回は介護休暇についてご紹介しました。
介護休暇についての要点を以下にまとめます。
- 介護休暇は1年に5日取得できる
- 介護休暇を取得できる条件は、2週間以上にわたって常に介護を必要とすることや雇用期間が6カ月以上であることなど
- 短期・突発的な場合に介護休暇を使い、長期連続で休む場合は介護休業を使う
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。