少子高齢化が進み、介護の重要度を年々増しています。
離れた場所で暮らす家族の介護が必要になった場合、遠距離介護をする必要があります。
遠距離介護とは具体的にどのようなものなのでしょうか?
また、遠距離介護では仕事の両立など可能なのでしょうか?
本記事では、遠距離介護について以下の点を中心にご紹介します。
- 遠距離介護の費用
- 遠距離介護の乗り切り方
- 遠距離介護をする際の介護者がおさえておくべきポイント
遠距離介護について知るためにもご参考いただけますと幸いです。 現在の日本は超高齢社会を迎え、在宅介護が増えてきました。在宅介護は、施設入居より費用の面では安いですが、介護者への負担は大きくなります。在宅介護する方、される方への負担を軽くするにはどうしたらいいでしょうか?本記事では在宅介[…]
ぜひ最後までお読みください。
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遠距離介護とは?
遠距離介護とは、けがや病気で介護が必要な親を離れた場所からサポートすることです。
『厚生労働省2019年国民生活基礎調査』によると、遠距離介護の割合は介護者全体の13.6%となっていて、その割合は年々増加傾向にあります。
遠距離介護を選ぶ主な事情は以下の点です。
- 介護者が仕事など社会的な役割を担っているため、生活の拠点住居の変更が難しい
- 介護者側の子供の教育や配偶者を含めた家族としての生活の変化を受け入れることが難しい
- 親が住み慣れた場所を離れ、新しい環境になじむことに不安がある
遠距離介護では、電話連絡や帰省訪問、介護サービスの利用などを通して、健康状態を保ちながら生活が継続できるサポートします。
離れて住んでいても、家族の症状悪化を防ぐ介護予防の役割もあります。
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遠距離介護のメリット・デメリット
遠距離介護には、どのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか?
遠距離介護のメリットとデメリットを紹介します。
メリット
メリットは以下の通りです。
どちらも転居しなくてよい
遠距離介護では、介護者・親のどちらも転居する必要がありません。
どちらも転居する必要がないことで以下のようなメリットがあります。
- 金銭面でのリスクを抑えられる
- 身体的・精神的負担を抑える
介護に専念するた介護離職する場合、収入が減ると金銭面でのリスクを伴います。
また、在宅介護の場合、身体的・精神的負担がかかります。
さらに、介護うつなどを引き起こす可能性があります。
一方遠距離介護の場合、介護のために退職・離職をする必要がありません。
そのため、遠距離介護では金銭面でのリスクを抑えられることがメリットとなります。
また、遠距離の介護になるので、介護ストレスを軽減することができます。
介護保険サービスが利用できる
遠距離介護をしている場合、介護保険のサービスが利用しやすくなります。
遠距離介護の場合、親だけで暮らす世帯のため、ホームヘルプサービスの「生活援助」として以下のような日常生活の援助のサービスが受けられます。
調理 | 掃除 | 選択 |
衣類の整理 | 生活必需品の買い物 | 薬の受け取り |
遠距離介護で症状が進行し、施設介護を利用する必要がある場合、介護保険で入れる特別養護老人ホームの入所の優先順位が高くなる傾向があります。
入所の優先順位は、申込み順ではなく、親だけで暮らす世帯として必要度が高いとみなされるからです。
デメリット
デメリットは以下の通りです。
費用がかさむ
遠距離介護では、介護者は新幹線や飛行機を利用して親元へ帰省するため、回数が増えると費用がかさみ、経済的負担が大きくなります。
遠距離介護には、主に以下のような費用がかかります。
- 帰省にかかる交通費
- 親やケアマネージャーとの連絡のための通信費
- 介護のための住宅改修費
- 介護サービス費
離れているので緊急対応ができない
遠距離介護では、急な容態の変化など緊急対応ができないデメリットがあります。
普段から、近隣の方やケアマネージャートなどと関係を構築しておくことが大切です。
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介護者がおさえておくべきポイント
介護者はどのような点に注意するべきでしょうか?
介護者がおさえておくべきポイントについてご紹介します。
一人で悩まずに相談する
親の近くに住む方たちのサポートが不可欠です。
離れたところに暮らしながらの遠距離介護では、1人でできることに限度があります。
近隣住民やケアマネージャーと協力し、良好な関係作りをすることが大切です。
さらに、親の健康状態を知っているかかりつけ医と連携が取れるようにしておけば、健康に不安なことがあったときに、いつでも相談できます。
かかりつけ医には、遠距離介護であることを伝え、いつでも相談にのってもらえる環境を作りましょう。
職場に遠距離介護の許可を取る
事前に会社の介護休暇や介護休業など、仕事と介護の両立支援制度を確認しましょう。
介護休暇とは、要介護状態にある家族の介護や世話をするための休暇です。
介護休暇取得の対象家族は、配偶者 (事実婚を含む) 、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫です。
取得できる日数は、上記の対象家族1人につき1年度に5日までです。
介護休業とは、要介護状態にある家族を介護するための休業です。
介護休業取得の対象となる家族は、介護休暇と同じく配偶者 (事実婚を含む) 、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫です。
取得できる日数は介護休暇と違い、対象家族1人につき通算93日、最大3回まで分割が可能です。
多くの会社で診断書等の書類の提出が求められます。
一度、会社規定を確認してみましょう。
介護に必要な費用を見積もっておく
遠距離介護にはどのような費用がかかるのでしょうか?
遠距離介護にかかる費用の種類と負担軽減の例を以下に示します。
交通費
遠距離介護では帰省にかかる新幹線や飛行機の交通費がかかります。
航空会社の「介護割引」やJRの会員割引・セット割、高速バス等を活用して負担軽減の工夫をしましょう。
通信費
親やかかりつけ医と連絡を取るために電話代やインターネットの費用等の通信費もかかります。
無料通話アプリ利用や家族間の通話が無料になるファミリー割引など、通信費の軽減の工夫をしましょう。
住宅リフォーム費
住宅リフォーム費は、転倒防止のための手すりや玄関スロープの設置などのバリアフリー化にかかる費用です。
20万円までの改修工事は、介護保険制度の適用で自己負担額が低減(原則1割、所得に応じ2~3割負担)されます。
自治体によっては、改修費用の助成金制度もあるので確認しておきましょう。
介護サービス費
介護サービス(デイサービス・訪問介護など)の自己負担費用や介護用品・福祉用具などのレンタル費用です。
介護保険制度では、サービスにかかった費用の1割(一定以上の所得者は2~3割)が利用者負担になります。
施設の入居を検討する
入居する施設を検討する時は、介護施設に詳しいプロに相談するのがおすすめです。
地域包括支援センターは、無料で幅広い利用者に対応してくれます。
介護保険のサービスをすでに受けている方は、事情がよくわかっている担当のケアマネージャーに相談するのが良いでしょう。
ケアマネージャーは近隣の介護施設の情報にも詳しいので、適切な施設提案が得られる可能性が高いです。
介護者のチェック項目
遠距離介護において、介護者がおさえておくべきポイントは以下の点です。
- 早めの相談で親のためにできることを見つける前向きな努力
- 介護を受ける親が安全で快適に暮らしていける家族の体制作り
- 近隣住民やケアマネージャーとの良好な信頼関係の構築
- 親との密なコミュニケーション
- 親の「かかりつけ医」との連携
- 介護サービスや仕事と介護の両立支援制度の積極的な利用
- 遠距離介護にかかる費用
遠距離介護のために今日からできること
遠距離介護をする上でコミュニケーションや金銭管理をすることが大切です。
遠距離介護ですべきことをご紹介します。
親と常にコミュニケーションを心がける
遠距離介護は、準備段階からコミュニケーションを密に取ることが重要です。
会う回数が少ない分、お互いの気持ちにずれが出ないようにしましょう。
帰省して直接話し合ったり、webツール(zoomやLINE)を活用して、
- 親の率直な気持ちや望んでいること
- 生活状況
- 健康状態
などを把握して準備を進めるようにしましょう。
また、家族や配偶者と遠距離介護について話すことも大切です。
いざという時の役割分担などは、今後の介護を円滑に進めるうえで大切です。
親のおおよその生活を把握する
親が日常的に困っていること、不安や不満、楽しみにしていることなどを把握しておきましょう。
例えば、以下のような日常の生活パターンを知ることは大事です。
起床や昼寝や就寝の時間 | 食事 | 家事 | 外出 |
かかりつけ医への通院日 | 利用している薬局 | 投薬の種類 | 友人や近隣の方との交友状況 |
生活パターンを把握することで介護についての相談や話し合いがスムーズになることも期待できます。
親の金銭的な状況を聞いておく
介護をする上で必ず費用が発生します。
金銭的な状況を聞いておくことで今後どのように介護生活を送るべきか考える必要があります。
金銭的な状況を考える上で以下のことを考慮に入れましょう。
- 年金額
- 預貯金
- 借金の有無
- 加入している各種保険
あわせて以下の保管場所も確認しておきましょう。
- 介護保険証
- 銀行の通帳や印鑑
- 生命保険証書
住宅リフォームについて話し合う
親が転倒の危険なく、安心して日々を過ごせる住環境を整えることも重要です。
老朽化した箇所の修繕や安全性のチェック、手すりの取りつけ、玄関スロープの設置などのバリアフリー化など、住宅リフォームについても話し合っておきましょう。
住宅リフォームの費用は、介護保険サービスで20万円までの助成金が利用可能です。
また、自治体の助成金制度もあるので、活用できるか確認してみましょう。
遠距離介護におすすめのサービス
遠距離介護で事故負担を軽減するサービスをご紹介します。
民間企業の介護サービス
遠距離介護に役立つ民間企業のサービスには以下のようなものがあります。
- 警備会社の提供する見守りサポート
- 電化製品やガスメーターの使用状況のお知らせサービス(パソコンやスマホに通知)
- 人感センサーによる見守りサービス
- 1人暮らしを癒すコミュニケーションロボット
公共のサービスだけでなく民間のサービスを利用することも視野に入れておくと良いでしょう。
各自治体の見守りサービス
自治体の見守りサービスは、介護認定の有無にかかわらず利用できます。
民間の見守りサービスと比較して、安価であるという特徴があります。
自治体の見守りサービスとは、高齢者が急病や発作などを起こし際、ボタンを押すと自動で受信センターに通報し対応する「緊急通報システム」です。
必要に応じて救急車の手配も行います。
近所の協力員による安否確認の電話サービスや、看護師等の資格を持ったスタッフの24時間体制をとる自治体もあります。
宅配サービス
各自治体には食事を届けてくれるサービスがあります。
「1人暮らしの高齢者」や「高齢者だけの世帯」が対象者となります。
自治体が選んだ配食弁当事業者が、朝食、昼食、夕食を自宅まで配達します。
その際、合わせて安否確認も行います。
地域によって利用条件やサービスの内容が変わります。
地域包括支援センターやケアマネージャーに相談して確認しましょう。
家事代行
日常的な家事、洗濯、料理、掃除、整理整頓のような一般的な家事から、必要なものを近くのスーパーで買い物をしたり、話し相手になったりする民間家事代行サービスがあります。
ヘルパー経験のあるスタッフが対応するようなサービス会社もあります。
遠距離介護のまとめ
今回は遠距離介護についてご紹介しました。
遠距離介護についての要点を以下にまとめます。
- 遠距離介護は、介護離職を避け仕事と介護の両立を可能にする
- 遠距離介護には交通費、通信費等がかかる
- 遠距離介護をする際は、1人で抱え込まない
- 介護が必要となった時ではなく、事前に各種介護サービスを調べておく
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。