介護施設への入所を考えている方には様々な身体状態の方がいます。
医療的ケアが必要な方もいるでしょう。
その中でも中心静脈栄養は専門的な知識や技術を要します。
本記事では中心静脈栄養を行っている人は介護施設に入所できるかについて以下の点を中心にご紹介します。
- 中心静脈栄養とは
- 中心静脈栄養のメリット
- 中心静脈栄養のデメリット
- 中心静脈栄養を行っている方の介護施設への入所
中心静脈栄養を行っている人が介護施設に入所できるかについて理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
一括りに老人ホーム・介護施設といっても、種類によって目的や入居条件はさまざまです。初めての老人ホーム・介護施設探しでは、分からないことばかりだと思います。どの施設がいいのか決められない人も多いのではないでしょうか?本記事では、老人[…]
スポンサーリンク
中心静脈栄養(TPN)とは
※画像はイメージです
中心静脈栄養とは、中心静脈にカテーテル先端を留置し、栄養、水分や薬剤などを投与する方法です。
TPNやIVHなどとも呼ばれています。
中心静脈は、心臓に繋がる太い静脈(上大静脈、下大静脈)を指します。
この静脈は、体中から集めた血液を心臓に戻す役割をしています。
中心静脈栄養は、経口摂取や経腸栄養が難しい場合に検討されます。
中心静脈栄養のメリットとデメリットについて解説していきます。
メリット
中心栄養静脈は経口摂取が困難な方のために用いられます。
中心静脈栄養のメリットは以下のように5つあります。
- 苦痛が少ない
- 高カロリー輸液の注入ができる
- 長期間使用できる
- 自宅で実施可能
- 入浴や外出ができる
順に、解説していきます。
苦痛が少ない
中心静脈カテーテルを留置すれば、カテーテルを通して血管内に輸液を投与できます。
最初に留置すれば、その後、針を穿刺することがありません。
したがって、苦痛を感じることが少ないです。
CVポートの場合は穿刺が必要ですが、そこまで痛みは感じないといわれています。
高カロリー輸液の注入ができる
末梢静脈栄養と比べ、中心静脈栄養は投与可能な薬剤や栄養剤の選択肢が増えます。
高カロリー輸液には、粘度や濃度が高い輸液製剤が多いです。
そのため末梢静脈の細い血管から投与すると、血管炎症や詰まるリスクがあります。
中心静脈は血液量が多く、血流も早いです。
薬剤や高カロリー輸液を注入しても希釈され、炎症や詰まる可能性は少なくなります。
長期間使用できる
中心静脈栄養を使用できる期間は決まっていません。
感染や自己抜去を予防すれば、数ヶ月以上使用できるといわれています。
胃腸に負担を与えることもないため、カテーテルを留置し直すことも少ないです。
感染や自己抜去を起こさないために、カテーテル管理が重要です。
自宅で実施可能
中心静脈栄養は自宅で行うことが可能です。
自宅で実施するために、介護者が以下のことを行います。
- 輸液バッグの交換
- カテーテルの管理
- 穿刺(CVポートの場合のみ)
入浴や外出ができる
カテーテル挿入部に防水の保護フィルムを貼ることで、入浴ができます。
CVポートの場合は、入浴の数時間前に針を抜きます。
そして、穿刺部分を消毒すれば、いつも通り入浴ができます。
また、輸液バッグの交換を正しく行っていれば、外出することも可能です。
デメリット
上記のようにメリットもありますが、デメリットもあります。
以下のようなデメリットを理解することでリスクを軽減できます。
- カテーテル留置に処置や手術が必要
- 感染症・合併症のリスクがある
- 消化管機能の低下
- カテーテルの管理が必要
カテーテル留置に処置や手術が必要
中心静脈にカテーテルを挿入する際、外科的な処置や手術が必要になることがあります。
そのため、稀ではありますが合併症のリスクがあります。
挿入したばかりは、違和感を感じるかもしれません。
しかし、日々の点滴や管理が容易になります。
感染症・合併症のリスクがある
中心静脈栄養を行っている時に、最も起こりやすいトラブルが感染症です。
カテーテル挿入部や輸液製剤の汚染など、様々な原因で感染症を起こす恐れがあります。
また以下のような合併症を発症することもあります。
- 血管内に血栓が形成される血栓症
- 輸液製剤による高トリグリセリド血症
- 消化管機能の低下による合併症
長期に渡って同じカテーテルを使用すると、感染症・合併症のリスクを高めます。
消化管機能の低下
消化管を使わないため、消化管機能の低下による合併症を引き起こすことがあります。
例えば、以下のようなものです。
- 胃腸が弱ることによる感染症の発症
- 肝機能の低下
- 胆石
消化管が使えるのであれば、胃腸から栄養を摂取することが推奨されています。
カテーテルの管理が必要
感染症や合併症を予防するために、カテーテルの管理が必要です。
点滴の前後にカテーテルの消毒や洗浄するなど、管理法を徹底しましょう。
また、自己抜去や物理的なカテーテル閉塞を防ぐ必要があります。
そのために点滴チューブやカテーテルを日頃から整えるように意識しましょう。
スポンサーリンク
カテーテルの種類
※画像はイメージです
中心静脈カテーテルには、挿入部や対象者によって種類があります。
以下のように大きく分けて3つです。
- CVカテーテル(体外式カテーテル)
- PICC(末梢挿入型中心静脈カテーテル)
- CVポート(皮下埋め込み型カテーテル)
CVカテーテル(体外式カテーテル)
CVカテーテルは、中心静脈栄養で最も多く使用されているカテーテルです。
CVとはCentral Veinの略で、中心静脈のことをいいます。
CVカテーテルは、首や鎖骨、鼠径部(太ももの付け根)から挿入します。
輸液バッグとの接続部が挿入部から体外に出ているカテーテルです。
PICC(末梢挿入型中心静脈カテーテル)
PICC(ピック)とは、主に上腕から接続部が体外に出ているカテーテルです。
CVカテーテルを留置するよりも、合併症を起こすリスクが少ないといわれています。
また留置後の感染症リスクも少ないようです。
PICCはCVカテーテルより挿入技術が必要です。
したがって、PICCの挿入を行っている医療機関は限られています。
CVポート(皮下埋め込み型カテーテル)
CVポートとは、100円玉程度のポート本体を胸部などの皮下に埋め込むカテーテルです。
点滴の際は、CVポート本体直上の皮膚から専用の針で穿刺します。
そして針を輸液バッグに繫げることで点滴が行えます。
CVポートは体内に留置されているので、外気に触れることが少ないです。
そのため感染症や合併症が起こる可能性が低いといわれています。
1年以上使用している方もいます。
しかし、以下のようなトラブルが起こることが考えられます。
- カテーテルの断裂
- カテーテルの折れ曲がり
- CVポート本体の反転
トラブルを防ぐためにも、定期的にカテーテルの確認が必要です。
注入方法
高カロリー輸液や薬剤は中心静脈を介して注入されます。
その際の輸液注入の方法は以下のように2つあります。
- 持続注入法
- 間欠注入法
順に説明します。
持続注入法
持続注入法とは、24時間持続して点滴することです。
高カロリー輸液投与の基本的な注入方法です。
点滴ルートの交換が週1〜2回のため、間欠注入法より管理は簡単です。
間欠注入法
間欠注入法とは、数時間点滴することです。
薬剤投与や、投与量が少ない場合に行われる注入方法です。
点滴ルートの交換は毎日行う必要があります。
日本では少子高齢化が社会問題となっており、高齢者の割合が年々増加しています。そんな中、認知症の高齢者を専門にケアする施設も増えてきました。その施設の一つが「グループホーム」です。今回の記事では、「家族が認知症になって自宅で介護を続[…]
介護施設の種類
※画像はイメージです
中心静脈栄養に対応できる介護施設は限られています。
介護施設には様々な種類がありますので、種類別に紹介します。
大きく分けて、公的な施設と民間の施設があります。
公的な施設
公的な介護施設は国や地方自治体、社会福祉法人などが運営する施設・医療機関です。
公的施設なので、要介護度が高い場合や低所得の方も入所しやすいといわれています。
特別養護老人ホーム
特別養護老人ホームは、常時介護が必要となった要介護高齢者が入居できる施設です。
一般的には「特養」とも呼ばれています。
24時間の看護体制は義務付けられていません。
そのため常時医療行為が必要な場合は事前確認が必要です。
食事、入浴、排泄などの介護サービスが提供されています。
原則、終身まで入所できるため、看取りにも対応しています。
被介護者を抱える方の中に介護施設への入所を考える方は多いのではないでしょうか。一方で、一口に介護施設といっても種類はもとより、特徴や入所条件などは様々です。今回は、数多くある介護施設の中でも特別養護老人ホームについてご紹介します[…]
介護老人保健施設
介護老人保健施設は、要介護高齢者にリハビリテーション等を提供して自立を支援し、在宅復帰を目指す介護施設です。
「老健」とも呼ばれています。
介護老人保健施設では手厚い医療ケアを受けられます。
入所者100人につき医師1人以上を配置することが義務付けられています。
また、看護師が24時間常駐している施設も多いです。
食事、入浴、排泄などの介護サービスとリハビリテーションが主なサービスです。
介護老人保健施設と聞いて、すぐにどのような施設か分かる方は少ないでしょう。介護を必要とする方が入る施設であることは分かっても、どのような状態の方を対象としているのか、入所した場合にはどのようなことができるか分からない方も多いと思いま[…]
介護療養型医療施設
介護療養型医療施設は、療養病床を有する病院や診療所のことです。
重度の要介護高齢者に対して、充実した医療処置やリハビリを提供しています。
「介護療養病床」とも呼ばれています。
介護療養型医療施設は、2023年度末に完全廃止が決定しています。
療養型病院との違いがあまり見られないことと、看護職員等の人員不足のためです。
特別養護老人ホームのような終身制ではなく、心身の状態が改善したら退所します。
医療的ケアを中心に食事や入浴、排泄などの介護サービスがあります。
しかし掃除や洗濯、レクリエーションなどの生活支援はあまり行われていないようです。
出典:厚生労働省「介護療養型医療施設及び介護医療院 (参考資料)」
近年少子高齢化が進み、介護施設の果たす役割が日に日に増しています。介護療養型医療施設も介護施設の1つです。介護療養型医療施設とはどのような施設なのでしょうか?本記事では、介護療養型医療施設について以下の点を中心にご紹介し[…]
介護医療院
介護医療院は、要介護高齢者に医療的ケアを施して長期療養・生活ができる施設です。
医学的管理、看取りやターミナルケアなど、医療機能が充実しています。
2023年度末に廃止が決定している介護療養型医療施設に代わり創設されました。
介護医療院は、Ⅰ型とⅡ型に分かれています。
Ⅰ型の対象者は、重篤な身体疾患もしくは身体合併症を有する認知症高齢者などです。
Ⅱ型の対象者は、Ⅰ型より容体が安定している高齢者です。
高齢者を対象とした介護福祉施設にはいろいろなタイプがあります。そのなかでも介護医療院は、医療と介護が同時に受けられる施設としてニーズが高まっています。介護施設への入所を検討している方の中には、介護医療院の特徴は何なのか気になって[…]
軽費老人ホーム(A・B型)
軽費老人ホームは、60歳以上で身寄りがなく、家庭環境や経済状況などの理由により、自立した生活が困難な方を対象とした施設です。
軽費老人ホームには、A型、B型とC型があります。
A型は食事提供と、見守りや外出サポートといった生活援助を行っています。
B型は生活援助のみを行い、自炊が必要です。
C型はケアハウスと呼ばれています。
A型とB型は、食事や排泄といった介護サービスは基本的に提供されません。
軽費老人ホームは初めて聞くけれど、ケアハウスという言葉は耳にしたことがあるという方もいらっしゃると思います。今後、ご両親やご自身が入所する可能性は誰にでもあり、安心して選ぶには基本的知識が必要だと思いませんか? ここでは、軽費老人ホ[…]
ケアハウス(軽費老人ホームC型)
ケアハウスは、自立して生活することが難しい高齢者の方が入所できる施設です。
ケアハウスには自立型と介護型があります。
自立型は、自立して生活することが不安な60歳以上の方が対象です。
食事や掃除、洗濯などの生活支援が行われています。
介護型は、生活支援以外にも介護サービスを提供しています。
65歳以上の要介護者の方が対象です。
看護職員や介護職員、機能訓練指導員が駐在しています。
民間の施設
民間企業によって運営されている介護施設です。
介護事業を行っている企業や医療法人が運営しているケースがあります。
介護付有料老人ホーム
介護付有料老人ホームは、生活支援と介護サービスを提供する介護施設です。
24時間介護職員が常駐しています。
主に要介護の高齢者が対象です。
入居条件は施設によって異なります。
要介護度の軽い方から重い方、看取り対応を行っている介護施設もあります。
看護職員や介護職員、機能訓練指導員が駐在しています。
住宅型有料老人ホーム
住宅型有料老人ホームは、介護サービスを外部と契約することが可能な施設です。
自立している方から要介護者までが対象です。
介護サービスを個々で契約できるので、必要な分だけ利用できます。
そのため費用を抑えることが可能です。
グループホーム
グループホームは、5〜9人の少人数制の介護施設です。
認知症が認められた高齢者が対象です。
少人数で生活することで、慣れ親しんだ関係を構築します。
そして認知症により発生するストレスやトラブルを少なくすることが期待できます。
また、認知症の方向けのリハビリやレクリエーションも取り入れられています。
生活支援や介護サービスも提供しており、介護職員、機能訓練指導員が駐在しています。
サービス付き高齢者向け住宅
サービス付き高齢者向け住宅は、要介護度の低い高齢者が対象のバリアフリー住宅です。
「サ高住」とも呼ばれています。
自宅のように自由度の高い生活をしながら、見守りや生活相談などを受けられます。
基本的に介護サービスはついていません。
しかし介護施設が併設したサ高住もあり、介護サービスを受けることもできます。
シニア向け分譲マンション
シニア向け分譲マンションは、高齢者向けのバリアフリー分譲マンションです。
老後生活を楽しむ娯楽設備やサービスが充実しており、富裕層向けになっています。
介護や医療ケアを実施できる人員配置は義務付けられていません。
したがって基本的に生活支援サービスのみの提供となっています。
介護施設での医療行為の範囲とは?
※画像はイメージです
医療行為は、基本的に医師と看護師が行います。
自宅で家族等が行う医療行為を「医療的ケア」と呼んでいます。
「医療的ケア」には、介護福祉士が実施できるものもあります。
ここでは「医療的ケア」について、種類別に紹介します。
看護師でなければ出来ない医療的ケア
介護福祉士が行うことのできない医療的ケアについて紹介します。
これらの医療的ケアを実施できる介護施設は限られています。
インスリン注射
インスリン注射は糖尿病の治療法です。
血糖を下げるためのホルモン「インスリン」を補います。
血糖値のコントロールが正常に行えなかった場合、緊急を要することがあります。
インスリンが効きすぎて低血糖になるリスクがあるため、看護師による対応が必要です。
人工呼吸器の管理
人工呼吸器は呼吸のサポートを行うために使用します。
主に肺や筋肉の病気により、自発的な呼吸が困難な方に用いられます。
自宅や介護施設などで使用する人工呼吸器を在宅人工呼吸器といいます。
HMVとも呼ばれています。
人工呼吸器の管理は、患者の生命に直結する医療的ケアです。
在宅酸素療法
在宅酸素療法は、「HOT」とも呼ばれており、呼吸不全や心不全の方が行います。
酸素ボンベから専用の機械と鼻にチューブを装着します。
そして、濃度調整した酸素を送ります。
酸素濃度のコントロールを誤ると、生命にかかわるため看護師が対応します。
中心静脈栄養
中心静脈栄養は、中心静脈に留置したカテーテルを通して輸液する方法です。
輸液製剤の混注、輸液バッグの交換、カテーテルの管理など専門的な技術が必要です。
感染症や合併症、カテーテルの詰まり、自己抜去などのトラブルの可能性もあります。
褥瘡ケア
褥瘡とは、床ずれのことです。
皮膚、皮下組織、筋肉に長時間圧がかかることで、うっ血し、壊死した状態をいいます。
褥瘡ケアには医療用ドレッシング材の使用や患部の湿潤管理などが必要です。
ストーマの貼り替え
ストーマとは、人工膀胱、人工肛門のことをいいます。
膀胱や大腸を摘出した方が尿管や腸を代用して、体外までの排泄ルートを造ります。
体表には排泄物を貯留するパウチが装着され、テープや専用の装具を使用します。
排泄物による感染症、ヘルニア、装具かぶれなどのリスクがあります。
従って看護師が管理する必要があります。
導尿・バルーンカテーテルの管理
導尿とは、尿路が閉塞している方の尿路を開通して排尿することをいいます。
カテーテルを尿道から膀胱にかけて挿入して行います。
バルーンカテーテルは、膀胱内で固定するためのバルーンがついたカテーテルです。
カテーテルが挿入された状態で固定できます。
感染症や挿入の際に尿路を傷つける可能性があるため、医師、看護師が対応します。
研修を受けた介護福祉士が行える医療的ケア
研修を修了した介護福祉士であれば、実施できる医療的ケアについて紹介します。
喀痰吸引
喀痰(かくたん)吸引とは、自力で痰を排出できない方の痰を吸引することです。
専用のポータブル吸引機とカテーテルを使って行います。
痰を排出せずに放置すると、痰が詰まって呼吸困難になりかねません。
専門知識を持った看護師や研修を受けた介護福祉士が対応します。
経管栄養
経管栄養は、胃瘻や腸瘻など、腹部のカテーテルを通して栄養剤を投与することです。
胃腸や腹部カテーテルの定期的な観察が重要です。
また自己抜去、皮膚トラブルなどが起こりやすいため、専門的な知識と技術が必要です。
介護福祉士でもできる医療的行為
専門的な知識や技術が無くても、介護福祉士が行える医療的ケアがあります。
例えば以下のようなケアです。
- 体温・血圧測定
- パルスオキシメーターによる動脈血酸素飽和度の測定
- 軽微な傷、火傷などの処置
- つめ切り
- オーラルケア
- 耳垢の除去
- ストーマ装具のパウチに溜まった排泄物の廃棄(パウチの貼り替えを除く)
- 市販品使用の浣腸
中心静脈栄養を行っている人は介護施設に入所できる?
※画像はイメージです
中心静脈栄養を行っている方の介護施設への入所は可能です。
しかし、施設によっては受け入れが限られています。
入所可能であっても条件や注意点がある可能性が高いです。
入居の条件
中心静脈栄養は、正しく実施しなければ、感染症や合併症のリスクが高まります。
そのため受け入れ可能でも、以下のような入居の条件を設けている介護施設もあります。
CVカテーテルではなくCVポートを造設していること
中心静脈栄養を行っている方の入居可能な介護施設は限られています。
入居が可能な場合も、リスクの低いCVポートの方に限定している施設もあるようです。
患者本人が自己抜去をしないこと
認知症などにより、カテーテルを自己抜去する可能性のある方は入所に制限があります。
施設によっては入居できるかもしれませんので、確認してみましょう。
看護師の人数によっては断られることも
中心静脈栄養は輸液バックの定期的な交換、トラブル時の対応が求められます。
したがって看護師配置が必要となります。
看護師の人数、入居者の状況によっては、看護師の手が回らないこともあります。
その場合は断られる可能性が高いでしょう。
入居時に注意すること
安全に中心静脈栄養を続けるには、医師や看護師による管理が必要です。
受け入れ可能施設であっても、事前に下記を確認する方がいいでしょう。
看護師が24時間常駐しているか
中心静脈栄養は、感染症、合併症のリスクがあります。
トラブルが起きたときに、すぐに医療的対応を行う必要があります。
医師や看護師が24時間常駐している施設が良いでしょう。
往診医や働いている看護師が中心静脈栄養の扱いに慣れているか
往診医や看護師が中心静脈栄養に熟練しているか事前に確認した方がいいでしょう。
CVポートの穿刺やCVカテーテルの交換には技術が必要です。
血流確認やカテーテル管理が正しくされないと、感染症や合併症のリスクが高まります。
安心して中心静脈栄養を実施できる環境か、事前確認するようにしましょう。
自宅で中心静脈栄養を行う際の注意点は?
※画像はイメージです
中心静脈栄養を介護職員は実施できませんが、家族や本人は実施できることがあります。
従って、在宅での介護も可能です。
輸液製剤の取り扱い
輸液製剤は、使用する1時間前に取り出し常温にします。
基本的に輸液製剤は病院や薬局で調剤されています。
しかし、場合によっては直前に調剤するものもあり、家族や本人が行う場合があります。
輸液バックの交換
輸液バックが空になると交換が必要です。
交換の際は、点滴チューブにあるストッパーの開閉、点滴チューブの充填が必要です。
医師や看護師に指導してもらいましょう。
カテーテルの接続・穿刺・交換は?
間欠注入や点滴を長時間外した場合、新しい輸液バックに交換しなければいけません。
また、カテーテルとの接続が必要です。
CVカテーテルやPICCの場合は点滴に接続します。
CVポートの場合は、専用の穿刺針を点滴に接続します。
輸液バックを長時間外すときの処置
輸液バックを長時間外すと、カテーテル内の血液が固まり使用できなくなります。
血液が固まるのを防ぐために、ヘパリン製剤を注射器でカテーテル内に注入します。
入浴時の対応
CVカテーテルかPICCの場合、防水作用のあるフィルムを貼り付けます。
入浴時に保護テープや挿入部が濡れるのを防ぐためです。
濡れてしまったときは保護テープを剝がして消毒を行いましょう。
挿入部が濡れることで感染リスクが高まります。
CVポートの場合、入浴する数時間前に針を抜き、皮膚を消毒するだけで入浴可能です。
保護フィルムや保護テープを貼る必要はありません。
中心静脈カテーテルはいずれ抜去できるの?
※画像はイメージです
嚥下機能や消化機能が改善し、経口摂取ができるようになると中心静脈カテーテルを抜去できます。
そのためには、嚥下機能のリハビリが大切です。
しかし、中心静脈栄養を行っている全ての医療機関が、嚥下機能のリハビリや嚥下機能評価を実施しているわけではありません。
嚥下機能評価とは、検査用の食べ物を飲み込み、X線でその様子を観察することです。
この嚥下機能評価を実施している施設では、実施していない施設より抜去見込みが、5%高いことがわかっています。
しかし近日中〜半年以内の抜去見込みは、実施している施設でも8%と低いです。
さらに実施していない施設では3%と、中心静脈栄養カテーテルを抜去することは少ないようです。
抜去を希望する方は、嚥下のリハビリがある施設を選ぶと抜去に繋がるかもしれません。
出典:厚生労働省「入院(その4)」
スポンサーリンク
介護施設での中心静脈栄養についてまとめ
ここまで中心静脈栄養を行っている人が介護施設に入所できるかについてお伝えしてきました。
要点をまとめると、以下の通りです。
- 中心静脈栄養とは中心静脈を通して栄養や水分、薬剤などを投与すること
- 中心静脈栄養のメリットは、比較的自由で苦痛が少なく長期間使用できること
- 中心静脈栄養のデメリットは、外科的処置が必要で感染症や合併症のリスクが伴うこと
- 中心静脈栄養を行っている方の介護施設への入所は可能だが、制限がある
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。