高齢化時代において、介護予防が注目されています。
介護予防は、要介護の状態になることを防ぐための対策のことです。
また、要介護になってしまった人でも、訓練で回復に向けた支援を行います。
その中でも「介護予防ケアマネジメント」の意味と仕事の内容をご存知ですか?
この記事では、次の内容を解説しています。
- 介護予防ケアマネジメントの対象範囲と仕事内容
- 介護予防ケアマネジメントの手順と担当できる専門職
- 介護予防活動範囲の予防給付と総合事業での違い
介護予防サービスを受ける機会がある場合などに参考にしていただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
介護予防についてより詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせて参考にしてください。
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介護予防ケアマネジメントとは?
介護予防サービスは
- 国が担当している予防給付の要支援1・2対象の介護予防サービス
- 各市町村が担当している総合事業の介護予防サービス
があります。
介護予防ケアマネジメントは、市町村が担当している総合事業の介護サービスに当たります。
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介護予防ケアマネジメントの基本
介護予防ケアマネジメントは、2015年度の介護保険法の改正によりはじまった総合事業に含まれています。
介護サービスの運用についての目的、サービス、担当できる人をそれぞれ解説します。
目的
介護予防ケアマネジメントの目的は大きく分けて以下の3つです。
- 利用者が、自立した生活を住み慣れた地域で送れるように支援する
- 利用者が自分で目標を立てて、目標に沿ったケアプランを提案し支援する
- 介護予防ケアマネジメント終了後に、自分で介護予防が行えるように支援する
介護予防ケアマネジメントでは、利用者自身が要介護状態にならないように努力を促すことが大切です。
サービス
介護予防ケアマネジメントは高齢者の自立を目標に、介護予防に向けた支援を行います。
以下のサービスを組み合わせ、利用者に合ったサービスが提供されます。
事業 | 内容 |
訪問型サービス | 要支援者等に対し、掃除、洗濯等の日常生活上の支援を提供 |
通所型サービス | 要支援者等に対し、機能訓練や集いの場など日常生活上の支援を提供 |
その他の生活支援サービス | 要支援者等に対し、栄養改善を目的とした配食や一人暮らし高齢者等への見守りを提供 |
介護予防ケアマネジメント | 要支援者等に対し、総合事業によるサービス等が適切に提供できるようケアマネジメント |
出典:厚生労働省【介護予防・日常生活支援総合事業 ガイドライン(概要)】
介護予防ケアマネジメントを担当できる人
介護予防ケアマネジメントは地域包括支援センター、または指定居宅支援事業所が主体となって行っています。
その中で、介護予防ケアマネジメントを担当するのは、
- 保健師
- 社会福祉士
- 主任ケアマネージャー
- ケアマネージャー
の資格を持った方々です。
介護保険の総合事業についても解説していますので、こちらもあわせて参考にしてください。
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介護予防ケアマネジメントの種類
総合事業に属する介護予防ケアマネジメントのサービスには3種類があります。
それぞれが違った内容となっているため、見ていきましょう。
ケアマネジメントA
国の予防給付と同等の内容で介護予防サービスのケアマネジメントを実施します。
- 地域包括支援センターのケアマネージャーがケアプランを作成
- 利用者と毎月または3ヶ月に1回の面接のモニタリングにて評価
- 担当者会議の実施
ケアマネジメントB
ケアマネジメントAを簡略化した介護予防サービスのケアマネジメントを実施します。
- 地域包括支援センターのケアマネージャーがケアプランを作成
- 利用者と必要に応じて、または3ヶ月に1回の面接のモニタリングにて評価
- 担当者会議は省略可能
ケアマネジメントC
初回一度のみ簡略した介護予防ケアマネジメントを実施します。
- 面接のモニタリングと評価なども実施しない
- 担当者会議は実施しない
介護予防ケアマネジメントの業務の流れ
介護予防ケアマネジメント業務の詳細と流れを説明します。
①アセスメント (課題分析)
介護予防ケアの最初のステップは、利用者のアセスメントの実施です。
アセスメントとは、利用者の心身の機能や家族環境などの課題について面接を実施します。
実施内容から介護予防ケア内容を明確にします。
②ケアプラン作成
アセスメント結果から以下のケアプランを決めていきます。
- 目標内容、支援内容、段階的達成計画
- 達成できる目標設定(期限:3か月~6か月)
- 自立生活の目標設定(期限:3か月~1年)
- 効果的なサポートとアプローチ方法、実施期間
③サービス担当者会議
ケアマネジメントAのサービスで実施する担当者会議です。
ケアマネジメントBのサービスでは担当者会議は省略が可能です。
会議の内容は以下のとおりです。
- ケアプランのサービス事業者の役割を共有
- 地域の公的サービスの情報を共有
- 利用者とその家族の状況を共有
④利用者への説明と同意
サービス担当者会議で決まった具体的なケアプランについて説明を実施します。
利用者に同意を取って押し印をもらいます。
⑤ケアプラン確定、交付
①~④の対応でケアプランは確定となって利用者とサービス事業者に交付されます。
⑥サービス利用開始
交付が出ると、サービス事業者よりサービスが開始となります。
⑦モニタリング
サービスが開始されるとケアの目標に対してどうであるかなどの確認を行います。
ケアマネジメントAではモニタリングが定期的に開始されます。
ケアマネジメントBは期間をあけて実施されます。
ケアマネジメントCはモニタリングの実施が当初よりありません。
モニタリングの内容は以下のとおりです。
- ケアの目標と内容が合っているか
- さらに新しい目標がある場合は追加する
- 利用者とサービス提供者にヒアリングを実施する
⑧評価
ケア目標への達成度を確認します。
以下の見直しも実施されます。
- 目標が達成できたかどうか評価する(期間:3か月~6か月に1回)
- 運動器機能向上と口腔機能向上も必要に応じて実施する(期間:3か月に1回)
利用者の現在の状態も含めて、ケアプランが適切かを確認します。
またケアマネジメントCは、評価の実施が当初よりありません。
出典:厚生労働省【運動器の機能向上マニュアル(改訂版)】
厚生労働省:【口腔機能向上マニュアル ~高齢者が一生おいしく、楽しく、安全な食生活を営むために~】
ケアマネージャーなるために必要な資格
ケアマネージャーの資格取得には、医療福祉系の国家資格を取得後に一定の実務経験が必要です。
また国家資格を持たない場合は、相談援助業務の実務経験を5年以上積む事が必要です。
以下の表を参考にしてください。
介護支援専門員(ケアマネージャー)
ケアマネージャーの資格取得方法をまとめました。
受験資格1、2のどちらかで実務業務や、相談援助業務を5年以上経験することが必要です。
さらに実務業務、相談援助業務に900日以上従事した人が資格取得の可能者になります。
- ケアマネージャー受験資格者(通算5年以上かつ900日以上の従事が必要)
受験資格1 | 国家資格が必要な資格保持者 | 医師、歯科医師、薬剤師、保健師、看護師、准看護師、理学療法士、作業療法士、社会福祉士、介護福祉士、視能訓練士、歯科衛生士、あん摩マッサージ指圧師、はり師、柔道整復師、管理栄養士、栄養士など | |
受験資格2 | 施設の相談援助業務 | 生活相談員 | 特定施設入居者生活介護(有料老人ホーム、軽費老人ホーム、養護老人ホーム、高齢者向け住宅)、地域密着型特定施設入居者生活介護、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、介護予防特定施設入居者生活介護 |
支援相談員 | 介護老人保健施設 | ||
相談支援専門員 | 計画相談支援、障害児相談支援 | ||
主任相談支援員 | 生活困窮者自立相談支援事業 |
- 受験資格を持った方が、介護支援専門員実務研修受講試験を受験できます。
- 試験合格後に、介護支援専門員実務研修を合計で87時間行います。
上記を終了すると、介護支援専門員名簿登録・介護支援専門員証が交付されます。介護支援専門員証が交付されると、晴れてケアマネージャーになれます。
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主任介護支援専門員(主任ケアマネージャー)
ケアマネージャーの上位資格が主任ケアマネージャーの資格です。
ケアマネージャーを一定期間経験することが必要です。
主任介護支援専門員研修を受講することにより取得できます。
主な役割は、以下の通りです。
- ケアマネージャーとして、ケアマネジメント業務を行う
- 他のケアマネージャーへの指導を行う
- 地域づくりや、地域包括ケアシステムの構築に携わる
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介護予防ケアマネジメントを受ける対象者
介護予防ケアマネジメントを受ける対象者のサービス内容を説明します。
対象者の分類によって、内容が異なります。
要支援1・2の方
要支援1・2認定者は、国の予防給付のサービスが受けられます。
要介護にならないように、身体機能の維持や改善を目指します。
特定高齢者
特定高齢者は、要介護や要支援まではいかないものの、介護予防が必要な人です。
機能が低下した部分を早い段階で発見し、予防することがメインになります。
要介護者と同等のケアプランですすめます。
一般高齢者
65歳以上の一般の人が対象のサービスです。
要支援認定者や特定高齢者とは異なり、介護予防のケアプランはありません。
介護予防をおこなう事業者の紹介情報の提供などを行う支援サービスです。
介護予防ケアマネジメントの総合事業と予防給付の違い
介護予防ケアマネジメントの総合事業と、介護予防給付サービスの違いを解説します。
どちらも介護予防を行うことに変わりありませんが、次のような特徴があります。
総合事業
介護ケアマネジメントの総合事業は、地方自治体の事業です。
要介護申請を行わなくても介護予防サービスを使用できることが特徴です。
要支援認定前の高齢者も対象で、地域に密着し利用者に沿った介護予防を目指しています。
特に、総合事業の介護予防サービスには3つのメニューを準備しています。
- ケアマネジメントAは従来の介護予防給付サービスと同じ内容の地域版です
- ケアマネジメントBはAを簡略化しており、気軽に介護予防サービスを受けられます
- ケアマネジメントCは、最初に1回だけ介護予防サービスをおこなうものです
予防給付
要支援者に対して行う、国の制度です。
要支援1・2の認定があった利用者のみ受けられるサービスです。
国の同一基準の介護予防サービスを受けたい場合はこれが良いでしょう。
出典:厚生労働省【介護予防・日常生活支援総合事業 ガイドライン(概要)】
介護予防サービスについても解説していますので、こちらもあわせてご参考ください。
介護予防サービスは、高齢者が住み慣れた地域で生活し続けられるように支援するサービスです。複数のサービスがあり、高齢者の状態やニーズによってさまざまなサービスを利用できます。では、どのように介護予防サービスを利用するのでしょうか?[…]
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介護予防ケアマネジメントのまとめ
ここまで、介護予防サービスの内容について解説してきました。
介護予防ケアマネジメントの要点を以下にまとめます。
- 介護予防ケアマネジメントでは要支援認定者から一般高齢者まで幅広い対象範囲で介護予防をおこなう
- 担当できるのは資格を取得したケアマネージャーや主任ケアマネージャー
- 予防給付では、対象者が要支援認定者のみである
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。