人が生きていくのに、必要な水分摂取量は決まっています。
高齢者も同様ですが、水分摂取量が低いと体調を崩してしまいます。
では高齢者が1日に必要な水分摂取量とはどのぐらいなのでしょうか?
本記事では高齢者の水分摂取量について以下の点を中心にご紹介します。
- 水分のもつ役割とは
- 高齢者の水分摂取量の注意点
- 高齢者の水分摂取に適した飲み物とは
- 熱中症の危険性
高齢者の水分摂取量について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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水分は人間に必要不可欠!
水分は生きていく上で重要な役割があります。
- 水分の役割
- 水分は体から排出されてしまう
- 人間の身体は半分以上が水分
- 必要な水分量は人によって違う
以上4つについて、それぞれ解説します。
水分の役割
水分の主な役割には、
- 食事をした時の栄養を水分にして代謝をしやすくする
- 水分や血液を体中の細胞に運び、不要になったら尿として排泄する
- 体温を一定の温度に保つ
以上の3つの効果があります。
水分は体から排出されてしまう
水分は普段の生活で体から排出されてしまいます。
尿や便などの排泄だけでなく、皮膚や呼吸から蒸発していく不感蒸泄でも排出されます。
仮に体重が70kgの人では、1日に尿や便などで1.6ℓ、呼吸や汗などで0.9ℓを排出しています。
出典:環境省熱中症環境保険マニュアル【熱中症を防ぐためには】スライド6P
人間の体は半分以上が水分
人間の体は半分以上が水分でできています。
年齢や性別ごとの体重あたりの水分量は以下のとおりです。
水分割合 | |
新生児 | 80% |
乳児 | 70% |
幼児 | 65% |
成人男性 | 60% |
成人女性 | 55% |
高齢者 | 50〜55% |
出典:環境省熱中症環境保険マニュアル【熱中症を防ぐためには】スライド6P
年齢が上がるにつれて、体の水分量は下がっています。
必要な水分量は人によって違う
必要な水分量は人によって違います。
体内の代謝によって水分を作ることもできますが、それだけでは足りません。
その方の体重に応じて必要な摂取量があります。
計算方法として以下の計算式があります。
体重×30ml=必要水分 |
仮に体重50kgの方ですと以下の結果になります。
50kg×30m=1500ml |
最低でも1日に1500mlの水分摂取量が必要になります。
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高齢者は水分量に注意が必要?
高齢者は若い方よりも水分量に注意が必要です。
- 身体の水分量減少
- 口渇中枢の減退
- 食欲不振・嚥下障害
- 病気の合併症や薬による尿量増加
- 夜間頻尿に伴う水分制限
それぞれ解説します。
身体の水分量減少
成人男性や成人女性の水分量が55〜60%だったのに対して、高齢者は50%と少なくなっています。
高齢者は細胞や筋肉に蓄えられる水分量が低下してしまいます。
従って、基礎代謝が若い方と比較すると落ちてしまいます。
口渇中枢の減退
高齢者は口渇中枢が減退してしまい、喉の渇きを感じにくくなっています。
若い人であれば喉の渇きを感じやすいため、こまめに水分補給できます。
しかし高齢者は喉の渇きを感じにくく、こまめな水分補給が難しいです。
喉が渇いていなくても、こまめな水分補給は重要です。
食欲不振・嚥下障害
食欲不振や嚥下障害により、水分摂取量が不足する場合があります。
食べ物の中には、豆腐やトマトなど水分を多く含んでいる食材があります。
スープや味噌汁などバランスの良い食事であれば、1日に1000mlの水分を摂取できます。
しかし食欲不振や嚥下障害などで食事が進まない場合があります。
従って食事量が少ないと、1日に摂れる水分摂取量も少なくなります。
病気の合併症や薬による尿量増加
病気の合併症や薬による尿量増加によって脱水になりやすい場合があります。
糖尿病になると、体に含まれている糖分を排泄しようとするため尿量が増えます。
腎臓病になると、体に水分を保持する機能が低下してしまいます。
高血圧の方が使う降圧剤には種類によって利尿作用があるため、尿量が増えてしまいます。
これらの症状になってしまうと、脱水のリスクが高まってしまいます。
夜間頻尿に伴う水分制限
夜間頻尿のため、水分制限すると脱水になってしまう場合があります。
夜中にトイレで何回も起きたくないため、水分を控える方がいます。
寝る前の水分摂取量を減らすだけでしたら問題ありませんが、夕方から水分を控えるのは良くありません。
寝ている間に汗や呼吸で500mlほどの水分を排出しています。
夜間に熱中症になってしまう恐れがあるため、寝る前の水分補給は重要です。
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水分摂取に適した飲み物とは?
水分摂取に適した飲み物と注意点があります。
- 水
- お茶
- コーヒー
- ジュース
- 高齢者に適した水分は?
それぞれ解説します。
水
水は水分補給に適した水分です。
しかし、高齢者の場合注意が必要です。
水には塩分や糖分などの栄養素は含まれていません。
水を飲みすぎると体液が薄くなってしまいます。
体液が薄くなると、熱中症のリスクが上がるため注意が必要です。
お茶
お茶は夏場であれば冷たくして、冬場は熱くして飲むなど1年を通して飲まれています。
しかし、水と同じく塩分や糖分は含まれていません。
緑茶にはカフェインが含まれているため、利尿作用から脱水の恐れがあります。
麦茶などのカフェインが含まれていないお茶や、昆布茶など塩分が含まれているお茶であれば水分補給に適しているといえます。
コーヒー
気分転換や眠気覚ましにコーヒーを飲まれる方がいます。
高齢者でも嗜好品として楽しまれていますが、注意点があります。
コーヒーにはカフェインが含まれているため、利尿作用があります。
コーヒーを飲むときは適量にして、ミルクや砂糖などを入れて栄養補給を兼ねて飲むと良いです。
ジュース
果物のジュースには糖分やカリウムが含まれており、栄養摂取もできます。
ですがジュースのみでの水分摂取には、糖分過多のリスクがあります。
清涼飲料水では更に糖分が多くなるため、肥満や糖尿病のリスクもあります。
ジュースだけを飲むのは避けて、他にも水分を摂ると良いです。
高齢者に適した水分は?
毎日の水分補給は、水やお茶が適しています。
好みの飲み物を選んで飲めるような工夫や環境も大切です。
高齢者には嚥下能力が低く、むせ込みやすい方がいます。
猫背や寝ながらの姿勢で水分摂取するのは、誤嚥のリスクがあります。
水分にとろみをつけて飲み込みやすくし、姿勢を正しくして水分を摂ると良いです。
また高齢者には栄養が足りていない方が多いので、水分からの栄養摂取も必要です。
ゼリーやポタージュ状のスープなどで飲みやすくして、水分と栄養も摂取できると良いでしょう。
高齢者が摂るべき栄養は?
高齢者は栄養障害になりやすく、注意点が4点あります。
- 高齢者は水分だけでなく食事にも注意が必要
- 高齢者は1日にどれぐらいの栄養が必要?
- 高齢者に不足しやすい栄養素は?
- 栄養障害を防ぐための食事の工夫とは?
それぞれ解説します。
高齢者は水分だけでなく食事にも注意が必要
高齢者は水分だけでなく食事にも注意が必要になります。
歯が抜けてしまう、味覚の低下などの理由で食事に対する興味が下がる場合があります。
唾液の分泌量が減るため、パサパサした飲み込みにくい食べ物を避けてしまいます。
さっぱりした食べ物や柔らかい食べ物など特定の食事のみ食べてしまうため、栄養バランスが偏ってしまいます。
従って食事の面でも、偏食にならないよう注意が必要です。
高齢者は1日にどれくらいの栄養が必要?
高齢者が1日に必要な栄養は以下のとおりです。
男性 | 女性 | |
75歳以上 | 1800〜2100kcal | 1400〜1650kcal |
高齢になると代謝量が減ってしまうため、必要なカロリーは減っています。
高齢者に不足しやすい栄養素は?
高齢者に不足しやすい栄養素は、タンパク質です。
食事を軽く済ませてしまい肉などの食べ物を避けていると、タンパク質が不足してしまいます。
内臓や筋肉などを作るのにタンパク質は必要です。
不足してしまうと、体重が減少し怪我や病気になりやすくなるリスクがあります。
栄養障害を防ぐための食事の工夫とは?
栄養障害を防ぐための食事として、栄養バランスの良い食事を提供します。
1度に食べる量が少ない場合は、栄養補助食品や乳製品などで栄養を補います。
デイサービスや地域の繋がりに参加して、一緒に食事を楽しむのも良いです。
脱水によって引き起こされる熱中症
水分摂取量が少ないと熱中症になってしまう恐れがあります。
- 脱水は熱中症への入口?
- 熱中症は高齢者に起きやすい
- 熱中症になりやすい季節は?
- 熱中症はどこで起きる?
- 熱中症のリスクは?
それぞれ解説します。
脱水は熱中症への入口?
脱水状態では、熱中症になるリスクが高まります。
脱水は体の塩分やミネラルなどの電解質が低下した状態です。
電解質が低下すると、血圧が下がって血液循環が悪くなり足がつりやすくなります。
水分摂取ができれば症状は抑えられます。
ただ水を飲むだけですと電解質が取れないため、体液が薄くなり熱中症になりやすくなります。
電解質を含んだ飲み物も上手に摂取するのがおすすめです。
しかし高齢者は1度の摂取量が少ないので回復しづらいです。
脱水状態になってしまうと、熱中症になりやすくなります。
熱中症は高齢者に起きやすい
熱中症は、高齢者に起きやすい症状です。
高齢者は温度を感じにくいため、知らず知らずのうちに体温が上がってしまいます。
喉が渇きにくいため水分補給も遅れてしまい、汗も出にくいため体温が下がりにくいです。
暑さを我慢してしまう方もいるため、熱中症のリスクがあります。
熱中症になりやすい季節は?
熱中症になりやすい季節は、夏場です。
外気温が28℃を超えて、日差しが強くなる12時から15時までの間は熱中症になりやすいです。
夏場でなくても、日差しが強く気温が高い日は注意が必要です。
熱中症はどこで起こる?
熱中症の起きやすい場所は、住居の室内です。
外の気温が高いと、室温も同様に高くなります。
室内だと安心してしまい、気温の上昇に気づかない時があります。
室内では冷房や扇風機などを使い、室温の調節をすると良いです。
熱中症のリスクは?
高齢者の熱中症リスクについて解説します。
救急搬送者の内訳によると、高齢者が最も多く、次に成人、少年、乳幼児の順番となっています。
救急搬送された人の割合で、高齢者は50%以上と多いです。
従って高齢者の熱中症リスクは高いです。 高齢者や要介護者にとって水分補給はとても大切です。水分が不足していると、めまいや頭痛といった様々な症状を引き起こすことがあります。そこで今回は、高齢者・要介護者が水分をとらないとどうなるか、また水分補給を拒否された場合の対策など[…]
出典:総務省【令和3年(5月から9月)の熱中症による救急搬送状況」】
以下の記事も参考にしてください。
高齢者の水分摂取量まとめ
今回は高齢者の水分摂取量について書いてきました。
この記事のポイントをおさらいすると以下の通りです。
- 血液循環や体温調節の役割がある
- 高齢者は若い方より脱水になりやすいので、水分摂取量に気をつける
- 栄養が不足しがちのため、栄養価の高い水分が適している
- 夏場に高齢者に多く見られるため、涼しい部屋でこまめに水分を摂る
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。