超高齢化社会といわれる現代、健康寿命を伸ばす観点からサルコペニアが注目されています。
ただし、まだ世の中にあまり浸透しているとはいえません。
サルコペニアとは、どのようなものなのでしょう?
また、サルコペニアの診断基準にはどういった内容があるのでしょうか?
本記事ではサルコペニアの診断基準について、以下の点を中心に解説しています。
- サルコペニアとは何か
- 診断基準「AWGS2019」について
- 余暇活動とサルコペニアの関係性
サルコペニアの診断基準について理解するためにも、ご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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サルコペニアって何?
そもそもサルコペニアとはどのような疾患なのでしょうか?
症状や分類について簡単に解説していきます。
サルコペニアの基本情報
サルコペニアとは「すべての原因に伴う筋力・筋肉量の低下、身体機能の低下」のことを指します。
特に高齢者では、筋たんぱく質の合成能力が減弱しているために、サルコペニアが起こりやすいと言われています。
サルコペニアには「原発性サルコペニア」と「二次性サルコペニア」があります。
原発性サルコペニア
原発性サルコペニアとは、加齢以外の原因が明らかになっていないものを指します。
二次性サルコペニア
二次性サルコペニアは、以下のように加齢以外の原因によるものを指します。
・活動性低下によるもの:ベッド上の安静や不動など、いわゆる廃用症候群
・疾患によるもの:感染症、がん、内分泌疾患、神経筋疾患
・栄養状態によるもの:吸収不良、消化器系疾患、摂取量不良
どんな影響がある?
急激な筋肉量の低下は生活にさまざまな影響を及ぼします。
日常生活に影響がある例を以下にまとめました。
・歩く速度が遅くなり、入浴などの日常生活動作が困難になる
・バランス能力が低下して転倒・骨折のリスクが高くなる
・感染症にかかりやすくなる
サルコペニアの症状について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
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サルコペニアの診断基準
サルコペニアの診断基準として、サルコペニアワーキンググループが発表したAsian Working Group for Sarcopenia 2019(AWGS2019)を用いることが推奨されています。
AWGS2019とは?
AWGS2019は、サルコペニアを「筋力」「身体機能」「骨格筋量」の3つの指標により診断する基準です。
基準となる評価項目は次の表の通りです。
【装備の整った種々の医療施設や研究を目的とした評価】
症例の抽出
・身体機能低下または制限、意図しない体重減少
・抑うつ気分、認知機能障害
・繰り返す転倒、栄養障害
・慢性疾患(心不全、COPD、糖尿病等)
・下肢周囲長(男性<34㎝ 女性<33㎝)
・SARC-F(サルコペニアスクリーニングツール)
↓
評価
筋力
基準握力 男性<28㎏ 女性<18㎏
身体機能
6m歩行速度 <1m/s
5回椅子立ち上がりテスト ≧12秒
SPPB(運動機能を簡易的に評価する基準)
骨格筋量
DXA(二重エネルギーX線吸収法)
BIA(生体電気インピーダンス法)
↓ または ↓
低骨格筋量+低筋力または低骨格筋量+低身体機能=サルコペニア | 低骨格筋量+低筋力+低身体機能=重度サルコペニア |
出典:日本サルコペニア・フレイル学会「サルコペニア診断基準の改定」
診断は骨格筋量、筋力、身体機能の評価結果により、「サルコペニア」と「重度サルコペニア」に分けられます。
サルコペニアと重度サルコペニアの分け方は、次の通りです。
- サルコペニア:「筋肉量の低下」の他に「筋力の低下」または「身体機能の低下」のいずれかが該当する
- 重症サルコペニア:「筋肉量の低下」「筋力の低下」「身体機能の低下」の全てに該当する
2019年の基準改定により、DXAやBIAなどの機械がない施設においても、症例の抽出・筋力・身体機能の評価項目を実施することで、サルコペニアと診断できるようになりました。
近年、サルコペニアという疾患の認識が広まりつつあります。サルコペニアは老化現象の1種で、進行すると歩行困難や寝たきりに発展します。老化自体は避けられないものの、サルコペニアの予防で健康寿命を延ばすことは可能です。それではサル[…]
自宅で簡単にサルコペニアをチェック!
AWGS2019の診断基準では、医師による症例の抽出や筋肉量を測る精密機械が必要なため、気軽に診断できるとはいえません。
そこで、自分がサルコペニアの可能性があるか、自宅で簡単にチェックする方法についてご紹介します。
指輪っかテスト
指輪っかテストでは、筋肉量が低下しているかを簡単にチェックすることができます。
両手の人差し指と親指で輪っかを作り、利き足ではないほうのふくらはぎの一番太い部分を囲みます。
囲んだときに、指先がほとんど付かない場合はサルコペニアである可能性は低いです。
囲んでも隙間が目立つようであれば、筋肉量の低下に注意が必要な状態です。
イレブンテスト
食事や運動などに関する11項目の質問に答えることで、サルコペニアを簡易的に診断できる方法です。
イレブンテスト
食事
ほぼ同じ年齢の同性と比較して健康に気を付けた食事を心がけていますか
はい いいえ
野菜料理と主菜(お肉またはお魚)を両方とも毎日2回以上食べていますか
はい いいえ
「さきいか」「たくあん」くらいの硬さの食品を普通にかみきれますか
はい いいえ
お茶や汁物でむせることがありますか
いいえ はい
運動
1回30分以上の汗をかく運動を週2日以上、1年以上実施していますか
はい いいえ
日常生活において歩行または同等の身体活動を1日1時間以上実施していますか
はい いいえ
ほぼ同じ年齢の同性と比較して歩く速度が速いと思いますか
はい いいえ
社会性・こころ
昨年と比べて外出の回数が減っていますか
いいえ はい
1日に1回以上は誰かと一緒に食事をしますか
はい いいえ
自分が活気にあふれていると思いますか
はい いいえ
物忘れが気になりますか
いいえ はい
出典:東京医師会「やってみよう フレイルチェック」
右側の回答にチェックが付くほど、サルコペニアの可能性が高くなります。
充実した生活を送ればサルコペニアにならない?
現代の高齢者は昔に比べると若返っていると言われています。
運動機能を比較しても、加齢に伴う歩行速度は1992年のデータよりも飛躍的に向上しています。
通常歩行速度・男性(m/秒) | ||||
年齢 | 1992年 | 2002年 | 2007年 | 2017年 |
80~84 | 約0.8 | 約1.0 | 約1.1 | 約1.2 |
85~ | – | – | 約0.8 | 約1.1 |
通常歩行速度・女性(m/秒) | ||||
年齢 | 1992年 | 2002年 | 2007年 | 2017年 |
80~84 | 約0.8 | 約0.9 | 約1.0 | 約1.2 |
85~ | – | – | 約0.8 | 約1.1 |
出典:厚生労働省「人生100年時代に向けた高齢労働者の安全と健康に関する有識者会議」
しかし、現代の高齢化社会では高齢者の絶対数が多いため、サルコペニアになってしまう人が多いのが現状です。
下記のデータからは、加齢に伴いサルコペニア有症率が高くなっていることが分かります。
サルコペニアの有症率 男女別(%) | ||
年齢 | 男性 | 女性 |
65~69 | 0.3 | 1.8 |
70~74 | 3.4 | 7.6 |
75~79 | 5.4 | 8.7 |
80~ | 12.1 | 23.0 |
出典:厚生労働省「人生100年時代に向けた高齢労働者の安全と健康に関する有識者会議」
サルコペニアになる人は、1日に行う余暇活動や仕事時間が短い傾向にあるというデータもあります。
中強度以上の「余暇活動」時間(分/日) | |||
サルコ群 | サルコ予備群 | 非サルコ群 | |
男性 | 40.2 | 45.7 | 58.1 |
女性 | 27.0 | 36.2 | 48.0 |
中強度以上の「仕事」時間(分/日) | |||
サルコ群 | サルコ予備群 | 非サルコ群 | |
男性 | 31.6 | 33.6 | 42.9 |
女性 | 36.7 | 48.6 | 48.5 |
出典:厚生労働省「人生100年時代に向けた高齢労働者の安全と健康に関する有識者会議」
上記のデータから、活動的に生活することはサルコペニア予防に効果的であると判断できます。
サルコペニアについて不安に思う方は、まず何かできる趣味活動を探してみるのも良いかもしれません。
サルコペニアの診断基準まとめ
ここまでサルコペニアの診断基準についてご紹介してきました。
本記事のポイントをおさらいすると以下の通りです。
- サルコペニアは「すべての原因に伴う筋力・筋肉量の低下」のこと
- 診断基準として筋力・身体機能・骨格筋量を測定するAWGS2019が主に用いられる
- 余暇活動、仕事時間の少なさがサルコペニアに影響する
これらサルコペニアの診断基準についての情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。