老人ホームを選ぶ時、契約形態は大事な確認ポイントのうちの1つです。
多くある契約形態の1つに、終身建物賃貸借方式というものがあります。
終身建物賃貸借方式とは、どんな契約形態なのでしょうか?
その他の契約形態との違いや相続についてなど、気になることも多いと思います。
本記事では終身建物賃貸借方式の老人ホームについて以下の点を中心にご紹介します。
- 終身建物賃貸借方式について
- 終身建物賃貸借方式の相続権について
- 終身建物賃貸借方式老人ホームの認可について
終身建物賃貸借方式について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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終身建物賃貸借方式とは?
※画像はイメージです
終身建物賃貸借方式は、入居される方が存命の間は居住することができる契約形態です。
内容は以下の通りです。
【契約内容】
契約者が老人ホームに居住する権利を保証するものである(介護サービスは別契約)。
【基本的な入居条件】
- 高齢者(60歳以上)であること
- 単身または同居される方が高齢者親族であること(配偶者は60歳未満でも可能である)
【契約の終了】
入居者の死亡により、契約終了となる。
【解約】
- 賃貸人(事業者・貸主)からの解約申し入れは住宅老朽等の場合に限定される。
- 借家人(入居者)からの解約申し入れは以下の通り。
- 他老人ホーム等への入所、親族との同居等の理由の場合は、申し入れ1か月後に契約が終了される
- 上記以外の理由の場合は、申し込みから6か月後に契約が終了される
【その他の配慮】
借家人が希望した場合は、終身建物賃貸借契約の前に定期借家により1年以内で仮入居することが可能。
入居者が終身建物賃貸借契約を使うメリットは、以下の2つがあります。
- 生涯同じ場所で暮らすことができる安心感
- 契約終了後の手続きがスムーズ
では、終身建物賃貸借方式と他方式との違いは何でしょうか。
建物賃貸借方式との違いと、利用権方式との違いを考えることにしましょう。
建物賃貸借方式との違い
建物賃貸借方式は、一般的な賃貸借方式と同様の契約です。
権利内容は、老人ホームに居住する権利と介護サービスを受ける権利に分かれます。
終身建物賃貸借方式は、建物賃貸借方式の特別な契約方式になります。
以下に、終身建物賃貸借方式と建物賃貸借方式の違いを比較します。
- 根拠となる法律
(終身):高齢者の居住の安定確保に関する法律
(一般):借地借家法 - 契約の方法
(終身):建物の賃貸借契約は書面に限る
(一般):書面、口頭どちらの契約でも可 - 期間または期限
(終身):賃借人の死亡まで
(一般):当事者間の定めた期間(1年以上)または定めなし - 契約の更新
(終身):なし
(一般):正当な事由がない限り更新 - 借賃増減請求権
(終身):借賃額の増減請求権あり(ただし特約のある場合は別)
(一般):借賃額の増減請求権あり(ただし特約のある場合は別) - 中途解約の可否
(終身):以下の場合は解約の申し入れ可
・療養、老人ホーム等への入所
・親族との同居
・賃貸人の改善命令違反 - 6か月以前の解約申し入れ
(一般):期間の定めがない場合に限る - 相続権の有無
(終身):なし
(一般):あり
利用権方式との違い
利用権方式は、老人ホームの入居の際によく使われる契約形態です。
入居する施設の介護サービスを含む利用権を前払いで購入する方式です。
終身建物賃貸借方式と比べて、利用権方式には以下の違いがあります。
- 入居一時金を払い、ホームの居住権利とサービス利用(介護サービスを含む)の権利を得る
- 利用期間は終身
- 利用者死亡の場合、利用権は終了し親族に相続権はなし
- 利用料金は、入居時の入居一時金(前払い)と月額費用がある
- 根拠となる法律がない
- 入居者に要介護度の変化などがあった場合に退去処置の可能性がある
建物賃貸借方式についてより詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
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終身建物賃貸借方式の相続権
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終身建物賃貸借方式は、入居者の死亡により賃貸借契約が終了する契約です。
従って、賃借権は相続されません。
同居人の継続居住については、以下にご紹介します。
同居人の継続居住について
入居者が死亡した場合、継続居住を以下の同居者に認めています。
- 同居していた配偶者
- 同居していた60歳以上の親族
同居者が継続居住を希望する場合は、死亡を知った日から1か月以内に事業者に申し出ることが必要です。
申し出た同居者の居住可能期間は、終身となります。
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終身建物賃貸借方式老人ホームの認可
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ある物件を終身建物賃貸借方式の老人ホームとするには、都道府県知事の認可を受ける必要があります。
終身建物賃貸借方式老人ホームの認可を受けるために必要な準備は、以下の通りです。
- 事業認可申請書の作成
- 老人ホームの位置や規模、賃貸の条件等を記載したもの
- 間取り図等の必要資料の添付
- 都道府県知事へ申請
認可を受けるには、国土交通省が定める一定の基準に適合することが必要です。
終身建物賃貸借方式の活用促進のため、認可基準や申請書類の緩和がされています。
主な認可基準や申請書に係る基準は、以下の通りです。
【床面積】
- 25㎡以上であること
- 同等以上の居住環境が確保される場合は18㎡以上
- ただし、居間、食堂、台所その他の住宅の部分を高齢者が共同して利用する場合にあっては、国土交通大臣が定める基準
【新築の場合のバリアフリー基準】
- 床は段差のない構造であること
- 廊下の幅は78㎝以上、浴室出入口幅は60㎝以上
- 浴室の短辺は130㎝以上、面積は2㎡以上
- 住戸内の階段の各部の寸法は、次の各式 T19.5 R/T22/21 55T+2R65
- 共用階段の各部の寸法は、次の各式 T24 55T+2R65
- 便所、浴室および住戸内階段には、手すりを設けること
- 階数3以上である共同住宅はエレベータを設置
- その他国土交通大臣の定める基準に適合すること
【既存の場合のバリアフリー基準】
- 便所、浴室および住戸内の階段には、手すりを設けること
- その他国土交通大臣の定める基準に適合すること
【申請に係る添付資料】
- 縮尺、方位、間取り、設備の概要を表示した各階平面図(新築の場合)
賃貸住宅の規模および設備の概要を表示した間取り図(既存の場合) - 整備する場合にあっては、工事が完了する前に敷金を受領せず、かつ、終身にわたって受領すべき家賃の全部又は一部を前払金として一括して受領しないことを誓約する書面
- その他都道府県知事が必要と認める書類
事業者・貸主にとってのメリット
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終身建物賃貸借方式は、賃借権が相続されないことで事業者・貸主にメリットがあります。
普通賃貸借契約の場合、相続権があるため、「入居者の死亡=契約終了」になりません。
直ちに入居者との契約終了にならないことで、事業者・貸主には以下のような不都合が起こります。
- 入居者死亡時に部屋への立ち入りができない
- 入居者の相続人の有無確認
- 相続関係未確定の場合、相続人全員への契約解除の申入れ
終身建物賃貸借方式の契約では、入居者死亡時に契約終了が確定します。
従って、普通賃貸借契約における事業者・貸主への不都合は起こることがありません。
事業者・貸主には、新規契約への移行手続きも速やかに行えるメリットがあります。
終身建物賃貸借方式老人ホームのまとめ
ここまで終身建物賃貸借方式の老人ホームについてお伝えしてきました。
終身建物賃貸借方式老人ホームの要件を以下にまとめます。
- 終身建物賃貸借方式は、契約者が終身住み続ける事ができる契約である
- 終身建物賃貸借方式の契約は、入居者死亡で契約終了となり賃借権は相続されない
- 終身建物賃貸借方式老人ホーム事業は、都道府県知事の認可が必要であり、手すり、バリアフリー整備等、国土交通省が定める基準に適合することが必要
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。