最近、ロコモティブシンドロームという言葉をよく耳にしませんか?
ロコモティブシンドロームになってしまうと、要介護の可能性も高くなります。
健康的に年齢を重ねるためには、ロコモティブシンドロームの治療が必要です。
本記事ではロコモティブシンドロームの治療について以下の点を中心にご紹介します。
- ロコモティブシンドロームかどうかチェックする方法とは
- ロコモティブシンドロームの原因となる病気とは
- ロコモティブシンドロームの治療方法とは
ロコモティブシンドロームの治療について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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ロコモティブシンドロームとは
ロコモティブシンドロームの「ロコモティブ」とは移動する能力のことです。
「シンドローム」は症候群という意味で、この2つを合わせた造語となっています。
ロコモティブシンドロームは日本語にすると「運動器症候群」となります。
運動器というのは、人間の基本的な動作である「立つ」「歩く」などを司ります。
筋肉や骨だけでなく、関節や神経などで成り立っています。
これらに障害が起こり、移動機能が低下した状態をロコモティブシンドロームといいます。
ロコモが進行すると、要支援や要介護になるリスクが高まります。
将来寝たきりにならないためにも、ロコモの治療が必要になります。
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ロコモかどうかをチェック!
ロコモかどうかをチェックする方法があります。
実際に動く方法と日常生活をチェックする方法です。
「立ち上がりテスト」と「2ステップテスト」
立ち上がりテスト
40cm、30cm、20cm、10cmの高さの台に座った状態から立ち上がります。
両脚または片脚で反動をつけずに立ち上がります。
このとき、両足は肩幅、両腕は組んでおきます。
立ち上がった状態で3秒間姿勢を保持できた一番低い台の高さが測定結果です。
2ステップテスト
2歩分の最大歩幅を測定します。
それを身長で割った数値が測定結果です。
下肢の筋力やバランス能力、柔軟性などの観点から歩行能力を評価するテストです。
2歩分の最大歩幅(cm)を測定し、身長(cm)で割った値を「2ステップ値」とします。
この2つのテストの判定結果が以下のような基準となります。
【ロコモ度1】の判定結果
- 片脚で40㎝の高さの台から立ち上がれない。
- 2ステップ値が1.3未満。
ロコモが始まっている状態です。
【ロコモ度2】の判定結果
- 両脚で20㎝の高さの台から立ち上がれない。
- 2ステップ値が1.1未満。
ロコモが進んでいる状態です。
【ロコモ度3】の判定結果
- 両脚で30㎝の高さの台から立ち上がれない。
- 2ステップ値が0.9未満。
ロコモが進行し、生活に支障をきたしている状態です。
日常生活でのロコモティブシンドロームのサイン
チェック | ロコモのサイン |
片脚立ちで靴下がはけない | |
家の中でつまずいたりすべったりする | |
階段を上がるのに手すりが必要である | |
家のやや重い仕事が困難である(掃除機の使用、布団の上げ下ろしなど) | |
2kg程度の買い物をして持ち帰るのが困難である(1リットルの牛乳パック2個程度) | |
15分くらい続けて歩くことができない | |
横断歩道を青信号で渡りきれない |
ひとつでも当てはまれば、ロコモの疑いがあります。
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ロコモの原因となる3つの病気
ロコモ度テストを行った結果はいかがだったでしょうか。
もしロコモが疑われたら、病院で詳しく診てもらいましょう。
とくに痛みを伴う場合には、以下のような病気が隠れているかもしれません。
骨粗鬆症
骨密度の低下によって、骨がもろくなってしまう病気です。
閉経後の女性や過激なダイエットなどによっておこります。
つまずいたり、転んだ拍子に骨折してしまうリスクが高い病気です。
変形型膝関節症
膝関節の軟骨がすり減ったりすることで、慢性的な膝痛を抱えてしまう病気です。
脚の筋肉の衰えや肥満によって膝関節に大きな負担がかかることによって発症します。
脊柱管狭窄症
年齢とともに背骨が変形して起こる病気です。
脊柱管が狭くなって、背骨の中を通っている神経を圧迫します。
神経を圧迫されることにより、脚や腰が痛んだり、しびれたりします。
ロコモティブシンドロームの治療方法
ロコモの治療は、人それぞれ程度や症状によって異なります。
痛みがない場合
痛みがない場合のロコモの治療は、理学療法士による運動療法を行います。
「ロコトレ」と呼ばれる「片脚立ち」と「スクワット」です。
家でも簡単にできるので、毎日続けることが大切です。
また、筋肉の材料となるたんぱく質や、骨の材料となるカルシウムの摂取も大切です。
食事やサプリメントなどで、積極的に摂りましょう。
痛みがある場合
痛みがある場合には、整形外科専門医による治療を最優先にします。
痛みを和らげる治療をしてから、運動療法に移ります。
無理に運動療法を始めてしまうと、かえって痛みが増幅する可能性があります。
その結果、痛みを避けるために体を動かさなくなってしまいます。
治療方法としては、下半身の筋肉量などを調べます。
そして痛みの原因を明らかにし、薬などで痛みを抑えます。
痛みの程度は個人差があります。
筋肉の低下
筋肉は、一般的に40代くらいから低下してきます。
日常生活でほとんど運動をしていない方などは、とくに注意が必要です。
筋肉の低下治療では、毎日できる運動を続けることです。
たとえば、1日30分のウォーキングやラジオ体操でもよいでしょう。
関節や脊髄の痛み
関節や脊髄の痛みは、それぞれに負担がかかり筋肉や関節に炎症が起こるためです。
まずは、体重を減らすなど負担を軽減することが治療のスタートといえます。
また、無理をしない範囲でストレッチや筋力トレーニングを行います。
そのほかにも装具療法や内服・外用薬による治療などもあります。
頸椎や腰椎
頸椎や腰椎の痛みの治療には、安静、薬物、寝具療法などが考えられます。
とくに痛みが強い場合には、頸椎や腰椎を安静にするため装身具を装着します。
その上で、鎮痛剤などの投与も行います。
理学療法としては、頸椎・腰椎の牽引、温熱療法、物理療法などの治療が有効です。
このような治療を施しても改善しない場合、神経ブロック療法などの治療が行われます。
骨粗鬆症
骨粗鬆症の一般的な治療方法としては「食事」「運動」「薬物」があります。
食事はビタミンD、ビタミンK、カルシウムを積極的に摂取します。
運動療法は、有酸素運動や筋トレを中心に骨密度や筋力の向上を目指します。
薬物治療では、骨吸収を抑制する薬や骨形成を促進する薬などを投与します。
要介護(要支援)認定者数の実情
厚生労働省の調べによるとロコモは寝たきりなど要介護・要支援の3大要因のひとつです。
要支援の主な原因は
- 1位「関節疾患」
- 2位「高齢による衰弱」
- 3位「骨折・転倒」
となっています。
つまり運動器障害が1位と3位を占めているということです。
ロコモで関節疾患や骨折・転倒してしまうと「要支援」になります。
しかし、このことがきっかけで運動機能や体力の衰えが急に進んでしまうこともあります。
さらに、認知症の発症なども重なり、一気に要介護へと進んでしまうことが多いのです。
男女別にみる要介護状態の原因
介護が必要になった主な原因は、男性と女性とでは違いがみられます。
男性の場合
男性の場合の主な原因は
- 脳卒中 26.0%
- 認知症 13.8%
- 老衰 10.7%
男性の場合は、とくに脳血管疾患である脳卒中の割合が高くなっています。
生活習慣に気を付けて、血圧のコントロールが大切になってきます。
とくにメタボリックシンドロームにも注意が必要です。
女性の場合
女性の場合の主な原因は
- 認知症 19.5%
- 骨折・転倒 16.1%
- 関節疾患 14.1%
女性の場合は、認知症の割合が高いほか、骨折・転倒、関節疾患などが多くなっています。
これは、ロコモと大きく関係しています。
普段から筋力をつけ、骨を丈夫にするように、食事や運動に気を遣いましょう。
ロコモティブシンドロームとサルコペニア
ロコモは、運動器が障害を起こしたため、移動機能が低下してしまった状態です。
ロコモは筋肉の減少だけではありません。
運動器には、関節、骨、軟骨、椎間板などがあり、いずれかに障害が起こることです。
サルコペニアとはギリシャ語の「筋肉(sarco)」と「失う(penia)」の造語です。
日本語では「筋肉減弱症」といいます。
サルコペニアとは、加齢・病気などで筋肉量が減少して、身体的機能が低下することです。
サルコペニアになると、体が動かしにくくなるため運動量が少なくなります。
するとさらに筋肉の量が減り、そのためにさらに運動量が減るという悪循環になります。
ロコモもサルコペニアも、症状が進行すれば自分の意志で自由に動けなくなります。
将来的に寝たきりとなって、介護が必要になる可能性が高くなります。
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ロコモ予防に役立つ情報
厚生労働省では、健康づくりを推進するための施設を認定しました。
3種類の施設について、どのような施設なのかを紹介しましょう。
運動型健康推進施設
トレーニングジム、運動フロア、プールといった施設が完備されています。
健康増進のため、有酸素運動を行うことができる施設です。
健康運動指導士やそのほかの運動指導者がいます。
温泉利用型健康増進施設
運動施設、温泉利用施設などが整っています。
健康増進のための温泉利用と運動を行うことができる施設です。
温泉利用指導者資格を持ったスタッフが入浴指導を行います。
温泉利用プログラム型健康増進施設
温泉の利用を中心とした健康増進施設です。
温泉利用型健康増進施設の普及版という位置づけです。
病気を治すための温泉療養だけではなく、一般的な健康増進のためにも利用可能です。
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ロコモティブシンドロームの治療のまとめ
ここでは、ロコモティブシンドロームの治療について紹介してきました。
その要点を以下にまとめます。
- ロコモをチェックする方法は「立ち上がりテスト」と「2ステップテスト」
- ロコモの原因となる病気は「骨粗鬆症」「変形型膝関節症」「脊柱管狭窄症」
- ロコモの治療方法は「運動療法」「食事療法」「薬物療法」
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。