もしも、ご自分の家族が要介護状態になったら、真っ先に施設を探しますか?
それとも、なるべくご自宅で日常に近い生活を送ってほしいでしょうか?
もしご家族が要介護状態になったら、自宅で日常生活が続けられるようなサービスがあります。
本記事では居宅療養管理指導についてご紹介します。
- 「居宅療養管理指導」とは?
- 居宅療養管理指導は、どんな場合に受けられるのか
- 居宅療養管理指導において、どんなサービスが受けられるのか
- 居宅療養管理指導を有効に利用するためには?
ぜひ最後までご覧いただき、悩みや不安を抱えることのないよう参考にしていただければ幸いです。
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居宅療養管理指導とは
居宅療養管理指導は、ケアマネージャーから相談を受けた主治医が、必要と判断した際に利用できる介護給付のサービスです。
薬剤師、管理栄養士、歯科衛生士も、医師や歯科医師の指導に基づいてサービスを提供できます。
居宅療養管理指導は、厚生労働省により、次のように定義されています。
要介護状態となった場合でも、利用者が可能な限り居宅で、有する能力に応じ自立した日常生活を営むことのできるよう、医師、歯科医師、薬剤師、管理栄養士又は歯科衛生士等が、通院が困難な利用者の居宅を訪問し、心身の状況、置かれている環境等を把握し、それらを踏まえ療養上の管理及び指導を行うことにより、その者の療養生活の質の向上を図るもの。
出典:厚生労働省「居宅療養管理指導」
医師または歯科医師の居宅療養管理指導
医師や歯科医師が実際に利用者宅を訪問し、身体的、精神的な状況および療養環境を確認します。
ケアマネージャーがケアプランを作成する上で必要な情報やアドバイスを提供すること、また本人やご家族に在宅サービスの利用上の留意点などを指導してもらえます。
医師および歯科医師の指導は、月2回まで利用可能です。
薬剤師の居宅療養管理指導
薬剤師は医師や歯科医師の指示をもとに、服薬を管理・指導します。
利用者が複数の医療機関を受診している場合など、処方された複数の薬を自宅まで届けたり、本人が服用しやすいように工夫したり、内服薬を服用するタイミングなどを説明したりします。
また、処方された薬の飲み忘れなどで残った分をチェックし、処方通りの服用ができているかを管理します。
複数の医師に処方した薬を確かめ、重複のチェックや飲み合わせ禁止の組み合わせが無いかなど、薬物治療のトラブルが起こらないよう配慮します。
そして、薬剤師もケアマネージャーなど居宅介護支援事業者に対するケアプランの策定に必要な情報を提供します。
医療機関に勤務する薬剤師の指導は月2回まで、薬局に勤務する薬剤師の場合は月4回まで利用可能です。
ただし、がん末期および中心静脈栄養法の対象者の場合に限り、週2回かつ月8回まで可能です。
管理栄養士の居宅療養管理指導
医師の指示に基づいて、栄養管理についてアドバイスします。
健康状態についてヒアリングし、栄養ケア計画の作成、食事内容や量の相談、食事メニューや調理方法、食事の姿勢などを指導します。
例えば、むせ込みがある方には飲み込みやすくなるよう、食物をムース状に工夫するなど具体的な説明がなされます。
また、低栄養の方には栄養指導も行うことがあります。
低栄養は肺炎の原因にもなり、褥瘡(床ずれ)の発生リスクにもつながるからです。
場合によっては、介護者の負担軽減のため、市販されている商品を紹介する場合もあります。
そして、利用者の疾患に合わせて、糖尿病患者に対するカロリー制限や、慢性腎臓病患者に対する減塩やタンパク質制限などの指導も行います。
管理栄養士の指導は、月2回まで利用可能です。
歯科衛生士等の居宅療養管理指導
歯科医師の指示に基づいて、口腔内や入れ歯の掃除、および摂食や嚥下についてアドバイスします。
歯科衛生士は、「口から食べる楽しみ」を維持することが目的で、口腔のケアや機能の維持・向上など自宅でもできるケア方法や、用品のアドバイスなども行います。
食事や嚥下機能に関する指導として、食事時の姿勢、食事環境の改善について指導することもあります。
歯科衛生士の指導は、月4回まで利用可能です。
看護職員(看護師および保健師)による居宅療養管理指導は廃止
居宅療養管理指導における看護職員の訪問は、算定実績より平成30年度の改定で廃止されました。
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居宅療養管理指導の対象者
居宅療養管理指導は、自宅で生活を続けながら、療養についてのアドバイスを受けられるサービスです。
例えば、
- 身体が不自由で、通院が難しい
- 認知症などの理由で、服薬管理が難しい
- 体調を維持するために、栄養管理を希望している
- 義歯の手入れ方法など、アドバイスがほしい
- 在宅介護全般についてアドバイスがほしい
などの場合に、利用できます。
身体の状態にあったサービスを在宅で受けられる為、在宅介護にあたる方にとって心強いサービスです。
なお、居宅療養管理指導は、要介護1以上の認定を受けた方が対象のサービスになります。
要支援の方は、「介護予防居宅療養管理指導」によるサービスを受けられます。
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居宅療養管理指導の費用
職種 | 単一建物居住者(1人) | 単一建物居住者(2~9人) | 単一建物居住者(10人以上) |
医師(居宅療養管理指導Ⅰ) | 514円 | 486円 | 445円 |
医師(居宅療養管理指導Ⅱ) | 298円 | 286円 | 259円 |
歯科医師 | 516円 | 486円 | 440円 |
薬剤師(病院、診療所勤務) | 565円 | 416円 | 379円 |
薬剤師(薬局勤務) | 517円 | 378円 | 341円 |
管理栄養士(当該事業所) | 544円 | 486円 | 443円 |
管理栄養士(当該事業所以外) | 524円 | 466円 | 423円 |
歯科衛生士 | 361円 | 325円 | 294円 |
*自己負担割合1割 1単位=10円として計算
出典:厚生労働省【介護報酬の算定構造】
利用料の負担は原則として1割ですが、一定以上の所得がある方は、2割または3割負担になります。
2018年の介護報酬改定で、訪問した建物内で当該月に利用した人数(単一建物居住者の人数)に応じて報酬が設定されました。
なお、居宅療養管理指導は、介護保険の支給限度基準額の対象にはなりません。
他の介護保険サービスを限度額いっぱい利用していても、利用回数の制限を守れば、自己負担1~3割で居宅療養管理指導を利用できます。
ただし、薬代などの医療費や交通費は別に必要となります。
医療費は介護保険ではなく医療保険で、介護保険と医療保険を併用する形になります。
交通費は実費負担が必要になります。
居宅療養管理指導のメリット・デメリット
居宅療養管理指導のメリットとデメリットをまとめておきます。
メリット
家族の負担の軽減
一人暮らしで通院が難しい方や、ご家族による介護を受けていても通院介助が大変な方にとって、通院はとても体力が必要な行動になります。
居宅療養管理指導を利用すれば、在宅で健康上の指導を受けられる為、介護の負担を軽減できます。
通院する負担を減らせる
居宅療養管理指導では医師や歯科医師の訪問で医療行為を受けることはできません。
医療行為を受けるには、往診や訪問診療を受けるか通院する必要がありますが、通院の頻度を減らせることは、ご本人にもご家族にも負担軽減につながります。
適した介護サービス
栄養管理や口腔管理など、介護する方が自ら学ばなければならず、負担が大きくなります。
しかし、居宅療養管理指導を受けることにより、自宅で専門家のアドバイスを得られる為、看護の負担軽減に適しています。
デメリット
利用回数の制限
居宅療養管理指導は、月2回程度しか利用できません。
貴重な訪問を無駄にしないよう、相談したい内容などを事前にまとめておくと良いでしょう。
医療行為が受けられない
居宅療養管理指導はあくまで指導なので、医師や歯科医師の訪問でも医療行為を受けることはできません。
ケアマネージャーと相談して、必要に応じて往診や訪問診療、または通院を組み合わせて利用する必要があります。
また、往診や訪問診療と居宅療養管理指導を組み合わせてサービスを提供するケースもあるようです。
医師または歯科医師の指示がないと利用不可
居宅療養管理指導は、ケアマネージャーから主治医に相談し、医師や歯科医師が必要と判断した場合にサービスを受けられるものです。
薬剤師や管理栄養士、歯科衛生士についても、それぞれ医師や歯科医師の判断に基づいてサービスが提供されます。
はじめに、主治医またはケアマネージャーに相談しましょう。
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居宅療養管理指導の利用手順
居宅療養管理指導の利用を始める手順をまとめておきます。
医師またはケアマネージャーに相談
居宅療養管理指導は、医師または歯科医師がサービス利用の要否を判断します。
そのためには主治医に直接、またはケアマネージャーを通して主治医に相談することからスタートします。
薬剤師や管理栄養士、歯科衛生士による指導も、主治医の指示が元になるので、直接サービスを受けることはできません。
ケアプランの作成
医師と相談して、内容や利用頻度を決めていきます。
その際に、必要に応じて医師から薬剤師や管理栄養士に指示がされます。
なお、居宅療養管理指導は、ケアプランが無くても利用できるサービスですが、基本的には一般的な介護保険サービスと同様に、ケアプランを作成することが多いようです。
事業所探し・契約
ケアマネージャーは、居宅療養管理指導のサービスを提供できる事業所(医師など)を探し、事業所のサービス内容や注意事項を確かめて、サービスの提供を契約します。
契約が締結された後、サービスの利用を開始できます。
なお、健康保険法の保健医療機関、保険薬局は、介護保険法における医療系サービスの事業所として指定されたものと見なされます(みなし事業所)。
往診・訪問診療・訪問介護との違い
居宅療養管理指導と同様に、自宅を訪問してサービスを提供するものとして、往診や訪問診療、訪問介護といったサービスもあります。
それぞれについて、居宅療養管理指導との違いをまとめます。
なお、居宅療養管理指導はあくまで指導であるため、医療行為は受けられません。
往診
医師の訪問により医療行為が行われます。往診は、本人や家族からの依頼で不定期に訪問するものです。
訪問診療
訪問診療も医療行為が行われますが、あらかじめ定期的な訪問が予定されているものです。
訪問介護
訪問介護員(ホームヘルパー)などが自宅を訪問し、入浴や排泄、食事などの介助、調理や洗濯などのサービスを指します。
あくまで介護ですから医療行為を受けることはできません。
居宅療養管理指導は、自宅での生活についてのアドバイスを受けられます。
医療行為が必要な場合、往診や訪問診療と組み合わせて利用します。
また、ご家族だけでの介護が難しい場合は、訪問介護なども組み合わせて利用すると良いでしょう。
居宅療養管理指導の需要は増え続けている?
請求事業所数を比較すると、2015年を100として、2019年は154近く、受給者数は2015年を100として2019年では147近くまで増加しています。
このことから、これからも居宅療養管理指導の需要は増え続けていくものと推測できます。
出典:厚生労働省【居宅療養管理指導】
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居宅療養管理指導まとめ
今回は居宅療養管理指導についてご紹介しました。
居宅療養管理指導についての要点を以下にまとめます。
- 介護サービスの一つに「居宅療養管理指導」がある
- ケアマネージャーが医師または歯科医師に相談し、必要と認めた場合に利用できる
- 医師や歯科医師の判断により、薬剤師、管理栄養士、歯科衛生士もそれぞれの専門分野でアドバイスできる
- 居宅療養管理指導では医療行為を受けることはできない(必要に応じて往診や訪問診療、訪問介護を組み合わせて利用する)
これらの情報が少しでも皆様のお役に立つことができれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。