嚥下機能が低下した方の為に嚥下食があります。
嚥下食は嚥下機能のレベルに応じて食事の分類がされています。
そもそも嚥下食とはどのようなものでしょうか?
嚥下訓練食とはどのようなレベルのものでしょうか?
本記事では嚥下訓練食について以下の点を中心にご紹介します。
- 嚥下訓練食とは
- 嚥下食の分類について
- 嚥下食を作る際のポイントについて
嚥下訓練食について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
嚥下訓練食とは
嚥下訓練食とは嚥下食のレベルのうち最も難易度の低いものをいいます。
最も難易度の低い食事とは重度の機能障害に対応するものを意味します。
嚥下訓練食は食事としての利用よりもリハビリを主目的としたものになります。
嚥下訓練食はゼリー状やとろみ状の食品です。
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嚥下訓練食の分類
嚥下食レベルは嚥下食ピラミッドで5段階に分けられています。
嚥下食のレベルは「日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2021(学会分類2021)」でも5段階に分類されています。
以下の分類を「学会分類2021」と対比してそれぞれの特徴を説明します。
なお、「学会分類2021」は「学会分類2013」の改訂版です。
出典:【日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類 2021】
嚥下開始食
嚥下開始食は「学会分類2021」の嚥下訓練食品0jに相当します。
嚥下訓練食0jの特徴は以下のようになります。
- 重度の症例に対する評価・訓練用のレベルとする
- 少量をすくってそのまま丸吞みが可能なもの
- 残留した場合でも吸引が容易なもの
- タンパク質の含有量が少ないもの
嚥下食1
嚥下食1は「学会分類2021」の嚥下調整食1jに相当します。
嚥下調整食1jの特徴は以下のようになります。
- 口腔外で既に適切な食塊状となっているもの(少量をすくってそのまま呑み込みが可能なもの)
- 送り込む際に多少意識して口蓋に舌を押しつける必要があるもの
- 0jに対して表面にざらつきのあるもの
嚥下食2
嚥下食2は「学会分類2021」の嚥下調整食1jに相当し特徴も同様です。
嚥下食3
嚥下食3は「学会分類2021」の嚥下訓練食0tと嚥下調整食2-1及び2-2に相当します。
嚥下訓練食0tの特徴は以下のようになります。
- 重度の症例に対する評価・訓練用で少量ずつ飲むことを想定したもの
- ゼリー丸呑みで誤嚥したりゼリーが口中で溶けてしまう場合を想定したもの
- タンパク質の含有量が少ないもの
嚥下調整食2-1及び2-2の特徴は以下の通りです。
- 口腔内の簡単な操作で食塊状となるもの
- 咽頭では残留、誤嚥をしにくいように配慮したもの
嚥下食4
嚥下食4は嚥下調整食3及び4に相当します。
嚥下調整食3の特徴は以下の通りです。
- 舌と口蓋で押しつぶしが可能なもの
- 押しつぶしや送り込みの口腔操作を要するもの
- 押しつぶしや口腔操作を活かし、かつ誤嚥のリスク軽減に配慮されたもの
嚥下調整食4の特徴は以下の通りです。
- 誤嚥と窒息のリスクを配慮して素材と調理方法を選んだもの
- 歯がなくても対応可能だが、上下の歯槽提間で押しつぶすあるいはすりつぶすことが必要で舌と口蓋間で押しつぶすことは困難なもの
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嚥下訓練食を作る際のポイント
嚥下食を作る際のポイントを以下に挙げます。
- 低栄養を防ぐため毎食、主食・主菜・副菜をそろえる
- QOLの低下を防ぐため野菜などは歯茎でつぶして自分で食べれるやわらかさにする
- 誤嚥を防ぐため食塊はひと口大(スプーン1個にのる程度)にする
- 誤嚥を防ぐため肉、魚、卵などはミキサーにかけペースト状にしたのち増粘剤で固める
- 口中に張り付いたり残留しないようほうれん草など葉っぱ類は必ずミキサーにかける
- 水分量に気を付け、パサつくものはあんかけにするなど水分を加える
嚥下訓練食の作り方の紹介
嚥下食の作り方を以下にご紹介します。
- 肉や魚を使う場合は煮ものにして材料をやわらかくする
- 肉や魚をミキサーにかけてペースト状にする
- 肉や魚は繊維が残らないようミキサーをかける時間を長めにする
- ミキサーが終わったら裏ごしをして残った繊維を除く
- 裏ごししたものの重量を計量し、1~1.2%の増粘剤を加える
- 鍋に移し焦げ付きに注意しながら弱火から中火程度で加熱する
- 沸騰してから1分間80度以上で加熱する
- 器にあけて常温もしくは冷蔵庫で40度以下になるまで冷ます
- 最後に型抜きをして器に盛り付ける
嚥下訓練食のレシピ
嚥下食の「シャケの照り焼き」レシピをご紹介します。
【材料】
- シャケの照り焼き 適量
- だし汁 (シャケの照り焼きの50%)
- ゲル化剤(増粘剤) (シャケの照り焼きの1%)
- 照り焼きのたれ 適量
【作り方】
- シャケの照り焼きの食材を計量する
- だし汁とゲル化剤を計算し計量しておく
- シャケにだし汁を加えてミキサーにかける
- ミキサーしたものを鍋に移す
- 鍋に移したものにゲル化剤を加えて沸騰するまでかき混ぜながら煮る(85度以上)
- ラップの上に工程5のものをのせる
- ラップで包んで成形し、冷蔵庫で冷やして固める
- 包丁でそぎ切りにしたものをフライパンにのせバーナーで焼き目をつける
- 器に盛りつけて加熱する
- 仕上げに照り焼きのたれをかける
【コツ・ポイント】
形は好みの形に成形できます。
そぎ切りで仕上げを工夫すれば魚らしい形を再現できます。
嚥下訓練食が分類されている理由
嚥下食が分類されている理由は、嚥下食の共通情報を使用できるようにするためです。
嚥下食の情報が地域の病院や施設によって違いがあって混乱する実態があるからです。
地域で嚥下食の情報は以下のようなところで共有されます。
- 病院で入院中の食事
- 老健など入所中の食事
- 特養での食事
- 在宅での食事指導
嚥下食の情報を共有することを目的として、「日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2013(学会分類2013)」が作られました。
現在は改訂版の「学会分類2021」ができています。
嚥下訓練食のまとめ
ここまで嚥下訓練食についてお伝えしてきました。
嚥下訓練食の要点を以下にまとめます。
- 嚥下訓練食は重度の機能障害に対応する嚥下食でゼリー状やとろみ状の食品
- 嚥下食の分類は「学会分類2021」で5段階に分けられ嚥下訓練食は最も難易度の低いものになる
- 嚥下食を作る際のポイントは低栄養、QOLの低下、誤嚥などを防ぐことにある
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。