在宅介護だけではなく、施設での介護を検討されている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
しかし、介護施設といっても種類はさまざまです。
今回は、介護施設の中の介護老人保健施設(老健)について以下の点を中心にご紹介します。
- 介護老人保健施設とは
- 介護老人保健施設の特徴
- 介護老人保健施設の入所条件
介護老人保健施設の知識を付けるためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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介護老人保健施設(老健)とは?
この記事をご覧になっている方は、既にさまざまな介護施設について調べているかもしれません。
施設によって特徴や費用などに違いがありますが、今回は介護老人保健施設(老健)について記載していきます。
そもそも老健とは何かについて説明します。
老健の目的
自宅と病院の中間的な役割があります。
入院をしていた方が、退院して家庭に戻るまでの間に利用されることが多い施設です。
入所条件は要介護1以上で65歳以上の方が対象です。
医学的なサービスを提供し、利用者の方の在宅復帰を目的としています。
老健の特徴
老健の特徴は、介護保険が適用される公的な施設であることです。
以下では、費用、サービス内容、入所期間について解説していきます。
費用の特徴
一般的には、老健は費用が安いといわれています。
月額費用は、施設サービス費+居住費+食費+その他日常生活費の合計額になります。
公的な施設であることに加えて、入所時の費用(初期費用)が不要であるため、入所のハードルが他の施設に比べると低いです。
また、所得が低い場合には減免制度も設けられています。
サービスの特徴
生活面、医療面どちらのサービスも提供しています。
医師の常勤が義務付けられているため、医療ケアや緊急時の対応も行なっています。
食事や入浴、排せつといった日常生活のケアに加えて、作業療法士や理学療法士などによる歩行器や車椅子を使ったリハビリサービスを行っています。
さまざまな専門家が利用者一人一人に合わせてサービスを提供するという特徴もあります。
入所期間の特徴
利用者の方の在宅復帰が目的であるため、3~6か月ほどの短期間で退所の審査が入ります。
そのため、老健の利用者の入退所の入れ替わりは頻繁に行われます。
老健の費用
上記で老健の費用は比較的安いということを記載しました。
初期費用がかからないことだけではなく部屋タイプによって費用が異なるため、費用を抑えたい場合は部屋を選ぶこともできます。
部屋のタイプと費用は以下の通りです。
同じ部屋でも要介護のレベルが高いほど費用も上がるので注意が必要です。
従来型個室
共同スペースはなく、ベッドが一つの個室で個人が過ごすタイプの部屋となっています。
ユニット型と比較すると安価な点が特徴です。
1か月の費用目安は以下の通りです。
部屋代 | 4万9,200円 |
トータル | 11万1,630円~11万7,930円 |
多床室
共同スペースはなく、ベッドが複数の大部屋で数人が過ごすタイプの部屋です。
全部屋タイプの中で一番リーズナブルです。
1か月の費用目安は以下の通りです。
部屋代 | 1万2,600円 |
トータル | 7万7,250円~8万3,670円 |
ユニット型個室
ユニットといわれる単位で生活するタイプの施設です。
キッチンやトイレは共同で使い、ベッドは一つの個室で過ごすタイプの部屋となっています。
部屋タイプの中で一番費用はかかりますが、少人数単位で快適に生活できる点が特徴です。
1ヶ月の費用目安は以下の通りです。
部屋代 | 5万9,100円 |
トータル | 12万3,930円~13万290円 |
ユニット型準個室
ユニット型個室と同じで共同スペースがありますが、個室ではなく大部屋になるという点が異なります。
完全な個室ではない分、ユニット型個室より割安な点が特徴です。
1ヶ月の費用目安は以下の通りです。
部屋代 | 4万9,200円 |
トータル | 11万4,030円~12万390円 |
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老健の入所条件とは?
上記で介護老人保健施設(老健)の概要、特徴、費用について解説しました。
部屋も選べて初期費用もかからないという点から入所したいと思っても、入所条件が設けられています。
入所条件とは何か、それぞれ見ていきましょう。
65歳以上で要介護1以上の認定を受けていること
老健の入所条件は、要介護1以上の要介護認定を受けている65歳以上であることです。
ただし、40~64歳の人でも若年性認知症や、関節リウマチなどの特定疾病によって要介護認定を受けている場合は、入所の対象になります。
リハビリや医療ケアが必要であること
スタッフの人員配置を最低限にしているうえ、生活面をサポートしながら医療サービスを提供しているため、リハビリや医療ケアを必要としている方に入所条件が限られます。
また、重い医療行為を必要としている場合も受け入れが難しい場合があります。
支払い能力に問題がないこと
入所後、支払い能力が無いことが判明しても、すぐに退所を促すことはできません。
そのため、入所前に支払い能力の有無も入所条件で、収入の確認作業があります。
ここでいう収入とは資産なども含まれており、利用料を払えるかどうかは施設側が判断します。
今月分を翌月に支払う場合が多く、3か月以上の滞納で退所勧告をされるケースがあります。
支払いは長期にわたるものなので、無理のない範囲の施設を選ぶように気を付けましょう。
保証人・身元引受人がいること
利用料の支払い、緊急時の連絡先、施設サービス計画書(ケアプラン)や治療方針の承諾、入院や死亡時の対応の点から、保証人や身元引受人も入所条件となります。
感染症にかかっていないこと
他の利用者の方との共同生活となるため、集団感染を予防する目的で感染症にかかっていないことが入所条件になります。
病状が安定していること
老健は在宅復帰を目指すための医療ケアを提供しています。
重い症状の方や病状が不安定な方は入所を断られる可能性があります。
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その他施設の入所条件とは?
ここまで介護老人保健施設(老健)について解説しました。
しかし、他の施設と比較してから入所を検討したいと考えている方もいらっしゃると思います。
ここでは介護老人保健施設以外の施設について特徴や入所条件について説明します。
特別養護老人ホーム(特養)
特別養護老人ホームは、社会福祉法人や地方自治体が運営している介護施設の一つです。
低価格でサービスが充実していることから人気があります。
介護老人保健施設(老健)が3か月ほどのサイクルで退所する可能性がある一方で、特別養護老人ホームは一度入所すると基本的には一生涯いることができます。
人気なゆえに入所の難易度が高いです。
特別養護老人ホームには、以下の3種類があります。
広域型特別養護老人ホーム
定員が30人以上で、どこに住んでいても入居申し込みが可能です。
地域密着型特別養護老人ホーム
定員が30人未満で、原則として施設が所在している地域に住んでいる方だけが申し込めます。
本体施設から通常の交通手段で20分以内に設置されているサテライト型と、通常の特別養護老人ホームと同等の設備や介護サービスを単独で提供する小規模な施設の単独型があります。
地域サポート型特別養護老人ホーム
在宅介護をしている方を対象に、見守りなどのサービスを提供する施設です。
介護療養型医療施設
比較的重度の要介護者に対し、充実した医療処置とリハビリを提供する施設です。
医療法人が運営する施設で、他の施設より医療スタッフが手厚く、インスリン注射や、痰の吸引、経管栄養などの専門的な医療処置に対応しています。
また、多床室もあることから比較的少ない費用負担で利用できます。
あくまでも医療機関という位置付けなので、生活面のケアより医療に重きを置いています。
そのため、体調が回復したら退所を促されることもあります。
基本的な入所条件は以下の通りです。
- 医学的管理が必要な要介護1以上の65歳以上
- 感染症など治療が必要な疾患がない
詳細は施設に問い合わせる必要があるので気を付けてください。
介護医療院
日常的な医学管理や看取り、ターミナルケアなどの医療機能、生活施設としての機能を提供できる施設です。
長期的な医療と介護の両方を必要とする高齢者を対象にしています。
入所条件は以下の通りです。
- 65歳以上もしくは40歳以上
- 特定疾患がある
- 要介護1以上の認定を受けている
介護医療院を利用する場合の費用は、施設サービス費のほかに居住費・食費・日常生活費などがかかります。
施設サービス費は要介護度や施設形態、居室の種類、職員の人数などで異なります。
利用者の負担割合は原則1割ですが、一定以上の所得がある場合は2割または3割を負担します。
認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
認知症を発症している要介護者に、家庭的な共同生活や地域の交流を通して生活面のサポートやリハビリのサービスを提供します。
利用者の方が自立した生活を営めるようになることを目的としています。
1つの共同生活住居に5~9人の少人数の利用者が、介護スタッフとともに共同生活を送るスタイルです。
認知症の進行予防の意味も含めて料理などの共同作業をすることもあります。
有料老人ホーム
利用者の方が心身の健康を維持しながら生活できるように配慮された住まいのことです。
食事サービス、家事援助、介護サービス、健康管理のいずれかのサービスを利用でき、タイプは以下の3つがあります。
介護付
原則として、入居対象は65歳以上です。
介護保険の要介護認定を受けている方専門の介護専用型、健康で自立して生活できる方、要介護状態の方のどちらでも入居できる混合型に分けられます。
住宅型
住宅型有料老人ホームは原則65歳以上かつ自立~要介護(主に軽度)の方が入居対象です。
食事の提供や洗濯、清掃といった生活上のサポートを行っています。
健康型
住宅型有料老人ホームよりも、元気で自立した高齢者に特化した施設です。
アクティブなシニアが第二の青春を送るための設備やサービスが充実しているという特徴があります。
日々のレクリエーションやイベント活動が盛んで、将棋や囲碁といった、入居者同士でつくるサークル・クラブがあります。
また、入居後は食事や掃除、洗濯など、生活上必要な家事はすべて施設側が行ってくれるので、自分のやりたいことに集中できます。
しかし、施設の数が少ないので探すことが困難という点もあります。
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老健の入退所の流れ
介護老人保健施設(老健)の入所や退所の流れはどのようなものでしょうか?
それぞれ工程を細かく分けて説明していきます。
具体的な行動に移すイメージですので、参考にしてみてください。
入所の流れ
入所を希望する方は以下の手順を行います。
- 希望条件を整理する
- ケアマネジャーと相談する
- パンフレットを請求する
- 施設見学や面談を行う
- 入所の申し込みを行う
- 医師の診察を受ける(医師の診察を受けて入所条件を満たしているか判断される)
- 契約する
- 入所する
退所の流れ
退所する場合には以下の手順を行います。
- 退所に向けた面談を行う
- 退所後の計画を考える
- 退所後の支援を検討する
- 退所
老健のリハビリ
介護老人保健施設に入所して受けられるリハビリサービスは、高齢者が早く在宅生活へ戻れるための支援です。在宅生活に必要な基本的動作が行えるように利用者個別にメニューが組まれます。
リハビリサービスの内容は以下のようになります。
- 対象 :要介護1以上の認定を受けた方
- 老健のリハビリ回数 :週2回以上(週1回は集団リハビリも可)
- 1回のリハビリ時間 :20~30分
- 主なリハビリ内容 :起き上がり、ベッドから車いすへの移乗、歩行訓練など
リハビリ回数は、施設によっては、入所3ヵ月間は週3回の短期集中リハビリを受けることができます
施設の人員体制などの問題がなければ、3ヵ月後も最低条件を満たすことを条件に、回数、時間の制限はありません。
なお、老健に通ってリハビリサービスを受けるデイケア(通所リハビリ)の利用も可能です。
デイケアの対象は、自宅で療養している要支援1・2、要介護1~5の認定を受けた高齢者の方になります。
老健のメリット・デメリット
老健のメリット・デメリットについて以下にまとめます。
老健のメリット
- 質の高いリハビリサービス
- 専門の有資格者スタッフ(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士)による指導が受けられる
- その他、介護支援専門員、栄養士、支援相談員、薬剤師なども配置されている
- 質の高い器具や装置の利用が可能
- 個別のリハビリプランの利用が可能
- 民間施設と比べて安価
- 入所一時金が不要(介護保険法に基づく公的施設のため)
- 月額料金は食費・居住費込みで10~15万円程度で民間有料老人ホームより割安
- 収入によっては住居費や食費などに対する減額措置あり
- 手厚い医療ケア
- 医師の常勤体制あり
- 看護師配置が特別養護老人ホームより手厚い
- インシュリン注射や経管栄養のような医療措置に対応可能
- 施設内での医薬品の処方が可能
- 入所条件が要介護1
- 入所条件が要介護3以上の特別養護老人ホームに比べ入所チャンスが高い
老健のデメリット
- 入所中は医療保険の適用外
- 入所中は介護保険の範疇で医療サービスを利用するため、内服薬が制限される
- 生活支援サービスが充実していない
- 老健は身体介護サービスの充実に比べ生活支援サービス(洗濯や買い物代行など)はあまり充実していない
- レクリエーションやイベントが充実していない
- 有料老人ホームに比べ、機能訓練につながる内容に注力しているため楽しさを追求したものになっていない
- 多床室の場合はプライバシーの確保が難しい
- 入所期間の限定
- 入所期間は3~6ヵ月で終身利用はできない
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まだ要介護認定を受けていない場合
介護老人保健施設(老健)には入所条件があると説明しました。
そのうちの一つとして、要介護認定が必要となります。
要介護認定とは?
要支援には1と2、要介護には1~5で認定されます。
日常生活においてどれくらい介護が必要とされるのか、介護の必要度合いをあらわしています。
介護の必要がない場合、非該当(自立)と認定されることもあります。
要支援
要支援1:日常生活を営むうえで支障があると見込まれるが、基本的な日常生活はほぼ自分で行うことが可能
要支援2:要介護1相当とされた者のうち、新予防給付の適切な利用が見込まれる状態
要介護
要介護1:部分的な介護を必要とする状態
要介護2:軽度の介護を要する状態
要介護3:中等度の介護を要する状態
要介護4:重度の介護を要する状態
要介護5:最重度の介護を要する状態
要介護認定の流れ
要介護認定を受けるには以下の手順になります。
- 訪問調査
- 一次判断
- 二次判断
- 結果通知
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介護施設選びで失敗しないために
せっかくの施設に入所するからには、失敗しない施設選びをしたいですよね。
ここでは施設選びのポイントについて記載します。
施設選びを考える際、以下のポイントを抑えておくことがおすすめです。
・施設サービスは、本人と家族のため
実際入所する利用者の方だけではなく、家族の方も心身的な負担を減らせることも考慮しましょう。
・サービス内容や費用をしっかり見極める
利用者のために必要なサービスは何かを把握し、そのための費用を支払えるかという観点からも施設を決めましょう。
・介護施設の種類と特徴
医療ケアがメインなのか、生活面の充実がメインなのか、各施設の特徴を整理しておきましょう。
一口に介護施設といっても種類は様々であり、入居条件や費用などがそれぞれ異なります。そのため、いざ入居を考えても実際にどの介護施設を選べば良いのか分からないですよね。被介護者に合った介護施設を見つけるためには、それぞれの施設の特徴[…]
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老健の入所条件のまとめ
ここまで介護老人保健施設(老健)についてお伝えしました。
要点を以下にまとめます。
- 老健とは、利用者の方の在宅復帰を目的とする施設
- 老健の特徴は、生活面、医療面どちらのサポートも提供していること
- 老健の入所条件は、要介護認定1以上を受けていて65歳以上であること
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。