高齢化に伴い、ご自身やご家族が介護の問題に直面しているという方もいらっしゃるのではないしょうか?
その中で介護老人保健施設の利用は、介護負担を解消する方法の一つです。
一方、「利用したいが費用が気になる」「費用を抑える方法はないのだろうか」といった疑問を抱えている方も多いと思います。
本記事では、介護老人保健施設の費用について以下の点を中心にご紹介します。
- 介護老人保健施設について
- 介護老人保健施設の費用
- 介護老人保健施設のメリット
- 介護老人保健施設のデメリット
介護老人保健施設を利用するときのためにも、ご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
介護老人保健施設について知りたい方はこちらもお読みください。
介護老人保健施設と聞いて、すぐにどのような施設か分かる方は少ないでしょう。介護を必要とする方が入る施設であることは分かっても、どのような状態の方を対象としているのか、入所した場合にはどのようなことができるか分からない方も多いと思いま[…]
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介護老人保健施設とは?
そもそも介護老人保健施設とはどのようなものでしょうか?
現在ご自身やご家族の方が利用されていても、その特徴や入居者条件などについて詳しく聞いたことはないかもしれません。
ここでは介護老人保健施設について説明していきます。
介護老人保健施設とは、いわゆる「老人ホーム」の一種です。
要介護となった高齢者に対し、医療処置やリハビリ、日常生活のサポートといった快適に過ごすためのサービスを提供しながら、利用者の方が家庭へ復帰することを目指す施設です。
入所できる対象者は、要介護1~5の認定を受けた方、かつ入院治療の必要が無いもののリハビリテーションを必要とする方です。
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介護老人保健施設にはどんな部屋がある?
上記で介護老人保健施設について説明しました。
医療面だけではなく、リハビリや生活面のサポートを夜間も含めて行う施設なので、快適である一方で費用も気になります。
まずは費用について記載する前に、介護老人保健施設の部屋タイプを解説していきます。
従来型個室(従来型・在宅強化型)
個室の病棟をイメージしてください。
完全な個室が並んでいて、前に廊下が続いている造りです。
食堂などの共有スペースは別に独立した場所にあります。
多床室(従来型・在宅強化型)
もっとも古くからあるスタイルの個室です。
従来型個室と似ていますが、病院の大部屋を思い浮かべてください。
2~4人の大部屋があり、その前に廊下が続いているような造りです。
スタッフが効率よく利用者の方の様子を見ることができるというメリットがあります。
なお、食堂などの共有スペースは別に独立した場所にあります。
ユニット型個室(従来型・在宅強化型)
利用者自身の部屋は個室となっています。
その個室が9人程度で1ユニットという単位に分けられます。
1ユニットにはそれぞれの個室の中央あたりに、共有スペースが設置されています。
共有スペースに集まることで、各利用者やスタッフが交流を図ることができ、個室ではプライバシーを確保できる点が特徴です。
ユニット型個室的多床室(従来型・在宅強化型)
ユニット型個室と似ていますが、ユニット型個室的多床室は完全な個室ではなく、簡易的な壁で仕切られている個室です。
視覚的にはプライバシーを守れますが、音が漏れる可能性が高いので、完璧な個人の空間ではないという特徴があります。
ユニット型個室と同様に、個室以外に共有スペースもあります。
介護老人保健施設の入居について知りたい方は以下の記事もお読みください。
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介護老人保健施設はいくらかかる?
介護老人保健施設には部屋タイプがいくつかあることを説明しました。
施設の利用料金には、それぞれの部屋タイプによる居住費だけではなく、食費や介護サービス費なども含まれます。
それぞれ詳しく解説していきます。
居住費
居住費は費用のうち高い割合を占めるため、所得が低い場合は支払いが難しい可能性もあります。
そこで、部屋によって金額は異なりますが5段階の「自己負担上限額」を定めています。
上限額を踏まえて、それぞれの費用について見ていきます。
部屋タイプ | 自己負担上限額/月 | 本来の居住費/月 |
従来型個室(従来型) | 1万4,700円 | 5万40円 |
従来型個室(在宅強化型) | 1万4,700円 | 5万40円 |
多床室(従来型) | 0円 | 1万1,310円 |
多床室(在宅強化型) | 0円 | 1万1,310円 |
ユニット型個室(従来型) | 1万4,700円 | 5万40円 |
ユニット型個室(在宅強化型) | 2万4,600円 | 6万180円 |
ユニット型個室的多床室(従来型) | 0円 | 5万40円 |
ユニット型個室的多床室(在宅強化型) | 0円 | 5万40円 |
食費
食費は部屋タイプにかかわらず、一律で月43,350円(1日あたり1,445円)です。
食費も自己負担上限額の適用対象となり、月9,000円から利用できます。
介護サービス費
介護サービス費は、部屋タイプや要介護度によって異なります。
1番低いのは要介護1で多床室を利用した場合であるのに対し、要介護5でユニット型個室を利用した場合が最も費用がかかります。
介護サービス費にはおむつ代も含まれており、家族負担にならないというメリットもあります。
その他費用
病院でいう「差額ベッド」のように、2人部屋・個室などの特別室に対して加算される居室の利用料金です。
料金は設備の充実度などに応じて施設ごとに異なります。
サービスによっては加算されることも?
ここまで基本的な介護老人保健施設のサービスや費用について解説してきました。
しかし、サービスによっては加算されるものもあります。
それぞれどんなものがあるのか、以下で記載していきます。
初期加算
介護保険施設や事業所の利用を開始した当初は、施設・事業所の生活に慣れる為にさまざまな支援が必要となります。
初期加算とは、利用開始時に行う取り組みを評価する加算のことです。
ただし、入所から30日の外泊日分は加算対象外になることや、過去に入所したことがある場合加算の計算が異なることには注意が必要です。
短期集中リハビリテーション実施加算
訪問や通所の短期集中(個別)リハビリテーション実施加算とは、身体機能を回復させるための集中的なリハビリテーションを個別に実施することを評価する加算のことです。
退院、退所日等から3月以内の利用者を対象としています。
リハビリは1週につきおおむね3日以上、1日あたり20分以上といった時間の指定もあるので注意しましょう。
在宅復帰・在宅療養支援機能加算
介護老人保健施設は、「在宅復帰支援施設」としての役割を担っています。
この役割に向けた取り組みを評価する加算として、介護老人保健施設、介護老人保健施設における短期入所療養介護に在宅復帰・在宅療養支援機能加算が設けられています。
事業者は創意工夫をこらした地域に貢献することを前提とされています。
ターミナルケア加算
ターミナルケア(終末期医療)を行う体制を整え、ターミナル期の利用者にターミナルケアを実施することを評価する加算です。
24時間サポートできる体制ができていることや、ターミナルケアのプランが整っていることが求められます。
栄養マネジメント加算
施設利用者の栄養面の健康維持、改善に栄養士が努めた場合の加算です。
栄養ケアの計画が整っていることや、見直し計画も見通しがあることが前提とされています。
排泄支援加算
施設利用者の失禁などの排せつに関する問題を、病院や専門家が連携して解決する際にかかる加算です。
おむつの使用「あり」から「なし」に変化していることなどが求められます。
再入所時栄養連携加算
介護老人保健施設などの入所者が一度入院などで退所した後、再び入所した際の栄養面に関するサポートに対する加算です。
前回の入所時と、入院後の再入所で必要な栄養や咀嚼に関して栄養士と病院が連携するサービスです。
その他のサービス
その他のサービスとしては主に以下の2点があります。
- かかりつけ医連携薬剤調整加算
- 認知症加算
かかりつけ医連携薬剤調整加算とは、施設とかかりつけ医が連携し、利用者の服用薬を減らすことに対する加算です。
また、認知症加算は、要件を満たし届出を行った通所介護事業所が認知症の要介護者に対してサービスを行った場合に算定される加算のことです。
いずれも利用者がより良い状態や環境になることを目的とした行動に対する加算です。
介護サービスについて知りたい方は以下の記事もお読みください。
介護老人保健施設のメリット・デメリットは?
介護老人保健施設は、老人ホームの一種です。
他の施設に比べて、メリットやデメリットもあります。
それぞれについて記載します。
メリット
介護老人保健施設の特徴は公的施設であるという点です。
介護医療院などの民間施設に比べて初期費用が抑えられるというメリットがあります。
その他にも、以下のようなメリットがあります。
- 要介護1から入所できる可能性がある
- 理学療法士・作業療法士・言語聴覚士など専門スタッフが利用者それぞれにプランを立ててくれる
- 器具が充実しているため、リハビリの環境が整っている
デメリット
上述した通り、民間施設に比べて費用が抑えられます。
一方で、介護保険で補える医療や居住費などは抑えられる分、ケアサービスを多く利用していると費用が重なってしまうというデメリットがあります。
メリットの部分とも表裏一体なので、どちらの要素も把握したうえで利用を検討してみてください。
その他にも、以下のようなデメリットがあります。
- 個室はあるが、キッチンやトイレなどは基本的に共有となっている
- 3~6か月単位で退所査定がなされ、入所できても退所しなければならないこともある
- 施設側が薬の費用をまかなうため、高額な薬を用意できない可能性がある
費用が高いなと感じたら?
ここまで、介護老人保健施設の費用についてお伝えしました。
「少しでも費用を抑えたい」と考えている方も多いと思います。
以下で、介護老人保健施設の費用を抑える方法をご紹介します。
特定入所者介護サービス費
介護老人保険施設入所者の方の所得や資産などが一定以下の方に対して、負担限度額を超えた居住費と食費の負担額が介護保険から支給される制度です。
負担限度額は所得段階、施設の種類、部屋のタイプによって異なります。
例えば、介護老人保健施設の食費が1番安いと日額300円、居住費は1番安くて多床室が0円になることもあります。
高額介護サービス費
月々または年間の自己負担額の合計額が所得に応じて区分された上限額を超えた場合、その超えた分が介護保険から支給されます。
支給を受けるためには、市区町村に申請することが必要です。
例えば生活保護を受給している場合は負担上限額が1万円となります。
高額医療・高額介護合算療養費制度
同じ医療保険の世帯内で、医療保険と介護保険両方に自己負担が生じた場合は、合算後の負担額が軽減されます。
決められた年間の限度額を500円以上超えた場合、市区町村に申請をすると超えた分が支給されます。
介護施設の費用について知りたい方は以下の記事もお読みください。
介護施設選びを失敗しないためには?
ここまで介護老人保健施設を中心にお話ししてきました。
しかし、老人ホームはなんと11種類もあるのです。
老人ホームを選ぶ際に、失敗しないようにするチェック項目についてご紹介します。
老人ホームを選ぶには、以下のように手順があります。
それぞれ詳しく書いていきます。
①希望条件を整理する
費用、立地、医療やリハビリ体制、介護サービスの有無など、叶えたい条件と妥協点を決めておくことが大切です。
全ての条件に見合った施設を見つけることは、なかなか難しいということを念頭に置いておいてください。
②フローチャートで希望の老人ホームを知る
「介護が必要」もしくは「医療も介護も必要」など、希望や条件を分岐させていくことで、どのような老人ホームを求めているかを知る作業です。
前者であれば「将来自宅へ戻りたいか」などの条件も併せて介護老人保健施設に、後者であれば介護療養型医療施設及び介護医療院にたどり着き、自分の理想に近づけるかもしれません。
③老人ホームの情報収集をする
上記で希望の老人ホームの種類を把握したら、その施設に焦点を合わせて情報を収集しましょう。
それぞれの施設の公式ホームページなどに詳細が載っているはずです。
④パンフレットなどで同じ施設を複数比較していく
同じ種類の老人ホームでも、アクセスや費用などから比較し、より納得のいく施設を選ぶことが大切です。
⑤見学・体験入所する
施設の空気や部屋の造りなどを実際に目で見て体験しておきましょう。
施設を調べる中でも、パンフレットだけでは分からない部分があります。
事前に、見学時にチェックしたい項目などをメモしておくと、希望と実際の施設の差が出るという事態を防げるはずです。
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介護老人保健施設の費用のまとめ
ここまで介護老人保健施設利用の費用についてお伝えしました。
要点を以下にまとめます。
- 介護老人保健施設とは、利用者の方が家庭へ復帰することを目指す施設
- 介護老人保健施設の費用は、部屋タイプによって異なり、自己負担限度額を減らす制度もある
- 介護老人保健施設のメリットは、初期費用などの金銭的負荷が少ないこと
- 介護老人保健施設のデメリットは、3か月ほどで退所の査定が入ってしまうこと
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。