超高齢社会の現在、介護の仕事は需要が高まっています。
介護の資格の中でも、介護福祉士は唯一の国家資格であり、資格取得を目指す方も増えています。
しかし、介護福祉士の受験資格は、目指すルートや実務経験などによって取得方法が異なるため、とても複雑です。
「介護福祉士試験を受験予定だけれど、受験資格を満たしているか心配だ」という方もいらっしゃるのではないでしょうか?
本記事では、介護福祉士試験の受験資格について以下の内容を中心にご紹介します。
- 介護福祉士試験の概要
- 介護福祉士試験に必要な受験資格
- 介護福祉士試験の実技免除について
- 実務経験証明書が必要な場合
看護助手の経験が介護福祉士試験の実務経験に入るのかについても解説しています。
ぜひ最後までお読みください。
介護福祉士は介護が必要な人の生活を支える専門家です。そんな介護福祉士ですが、「なるためにはどうしたらいいのか」「仕事内容はどんな感じか」という疑問を持たれる方も多いかと思います。本記事では、介護福祉士について以下の内容を中心にお[…]
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国家試験の介護福祉士試験とは?
介護福祉士になるためには、国家試験である介護福祉士試験に合格しなければなりません。
試験の概要について解説していきます。
13超高齢社会となった現在、介護の現場では人手不足が深刻な問題となっています。そのような中で、介護福祉士は介護のプロとして、今後もさらに需要が見込まれると考えられます。介護福祉士について興味があり、試験の内容や、目指す方法が知り[…]
試験内容
試験は年に一回行われ、実技試験と筆記試験があります。
例年、8月上旬から9月上旬が申し込み期間となっています。
試験は、筆記試験が1月下旬、実技試験が3月上旬に行われることが多いです。
受験の申し込みは、社会福祉振興・試験センターで受け付けています。
2回目からの申し込みの方は、社会福祉振興・試験センターのWEBサイトからインターネットで受験の申し込みが出来ます。
しかし、初めて申し込む方は、郵送またはインターネットで「受験の手引き」を取り寄せ、期日までに受験に必要な書類を郵送しなければなりません。
手引きの取り寄せは、例年7月中旬頃から始まることが多いです。
取り寄せや、書類の郵送に時間がかかるので、余裕を持って準備に取り掛かる必要があります。
筆記試験
筆記試験は、五肢択一のマークシート形式です。
出題範囲は、以下の11科目です。
- 人間の尊厳と自立、介護の基本
- 人間関係とコミュニケーション、コミュニケーション技術
- 社会の理解
- 生活支援技術
- 介護過程
- 発達と老化の理解
- 認知症の理解
- 障害の理解
- こころとからだのしくみ
- 医療的ケア
- 総合問題
配点は、1問1点の125点満点で、合格基準は60%程度とされています。
さらに、上記の試験範囲の11科目群全てで、基準を満たしていることが条件です。
午前と午後に分けて行われ、試験時間はそれぞれ110分ずつです。
実技試験
実技試験は、実際の介護現場で想定されるシチュエーションに、適切に対応できるのかを判断するテストです。
試験管の前で、提示された課題に対し、5分以内で対応を行います。
実技試験の合格基準も、総得点の60%程度とされます。
令和5年度(第35回)介護福祉士国家試験日程
令和5年度の介護福祉士国家試験の実施日程は、以下のようになっています。
- 筆記試験:令和5年度1月29日(日)
- 実技試験:令和5年度3月5日(日)
試験の正確なスケジュールや受験料、試験会場など、年によって違うこともあるので、早めに確認しておくことが大切です。
介護福祉士試験に興味のある方は、こちらからお申し込みください。
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介護福祉士試験の受験資格は?
介護福祉士試験の受験には、受験資格を満たしていることが必須です。
受験資格は、それぞれのルートによって変わってきます。
実務経験ルートの受験資格
介護施設などの介護現場で働きながら、介護福祉士を目指すルートです。
収入を確保しながら資格取得を目指すので、他のルートより費用が抑えられる傾向にあります。
実務経験ルートは、すでに介護現場などで働いており、キャリアアップや仕事の幅を広げるために介護福祉士を目指す、という方に適しています。
実務経験ルートからの受験資格は、実務経験が3年以上であることが必須で、かつ「実務者研修」または「介護職員基礎研修」と「喀痰吸引等研修」を修了しなければなりません。
「介護職員基礎研修」は廃止されているので、研修済みの方が対象です。
これから研修を受ける方は、「実務者研修」を受けることになります。
実務経験が3年以上であることから、未経験から目指す場合には、最低でも3年はかかります。
また、仕事をしながら「実務者研修」の講座を受けることになるので、時間の確保など、大変な面もあると言えます。
養成施設ルートの受験資格
養成施設ルートは、厚生労働省が指定する「介護福祉士養成施設」を卒業し、資格取得を目指すルートです。
養成施設は、4年制大学や短期大学、専門学校などがあります。
養成施設ルートは最長でも2年で受験資格を得ることができるので、早く受験資格を得たい方に適しています。
一方で、費用面で負担になることもあります。
養成施設ルートでは、養成施設に2年、もしくは福祉系の大学や短大などを卒業された方であれば、1年通うことで受験資格を得ることができます。
2026年度末までに養成施設を卒業する方は、卒業後の5年間は国家試験を受験しない、受験しても不合格だった、という場合でも介護福祉士と認定されます。
5年間の間に国家試験に合格するか、5年以上介護等の仕事に携わることで、卒業後の5年を過ぎても介護福祉士の資格を維持することができます。
しかし、2027年度以降の卒業生は、国家試験に合格しなければ介護福祉士とは認定されないので注意が必要です。
福祉系高校ルートの受験資格
福祉系の高校や福祉系特例高等学校で専門の教育を受け、介護福祉士を目指すルートです。
中学卒業後、福祉系高校を卒業すれば国家試験を受験できるので、若くして介護福祉士になることが可能です。
福祉系高校の場合は修了と同時に、国家試験が受験できます。
福祉系特例高等学校の場合は、9ヶ月以上の実務経験を積んだ上で、国家試験の受験資格が得られます。
経済連携協定(EPA)ルートの受験資格
経済連携協定(EPA)ルートは、インドネシア、フィリピン、ベトナムのEPA介護福祉候補者が日本で就労や研修をしながら、介護福祉士を目指すルートです。
介護福祉士試験では、試験時間が1.5倍になるといった特例措置がなされます。
まず、国ごとの条件をクリアし、EPA介護福祉候補者になります。
その後、来日前の日本語研修、来日後の日本語研修、日本語能力検定試験の合格、3年以上の実務経験などを経て、国家試験の受験資格を得ることができます。
日本語研修の期間などは国によって異なるので、注意が必要です。
各ルートによって、受験資格は大きく異なるので、最適なものを選び、介護福祉士を目指すことが大切です。
介護福祉士試験に興味のある方は、こちらからお申し込みください。
介護福祉士試験の一部が免除されることも?
介護福祉士試験は、「筆記試験」と「実技試験」の2つに合格する必要があります。
しかし、「実技試験」は必要条件を満たせば免除されるため、ほとんどの受験生の方が免除される傾向にあります。
免除されるかどうかは各ルートで異なる上に、同じルートの中でも違いがあるので注意が必要です。
実務経験ルート
実務経験ルートで受験資格を得た方は、全員実技試験が免除されます。
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養成施設ルート
養成施設ルートで受験資格を得た方は、全員実技試験が免除されます。
福祉系高校ルート
2009年度以降の入学者の方で、新カリキュラムを履修した方は、実技試験が免除されます。
2008年度以前の入学者の方で、旧カリキュラムを履修した方は、実技試験が必要ですが「介護技術講習」「介護過程」「介護過程Ⅲ」のいずれかを履修することで免除されます。
福祉系特例高等学校を卒業した方は、実技試験が必要ですが「介護技術講習」「介護過程」「介護過程Ⅲ」のいずれかを履修することで実技試験が免除されます。
経済連携協定ルート
実技試験を受けなければなりませんが「介護技術講習」「介護過程」「介護過程Ⅲ」「実務者研修」のいずれかを履修すれば、実技試験が免除になります。
実技試験が免除されるかどうかということは、試験結果にもつながる重要なことです。
そのため、社会福祉振興・試験センターのサイトなどで、正確に確認しておくことが大切です。
受験資格に必要な実務経験証明書とは?
実務経験ルートのように、受験資格を得るために実務経験が必要である場合は、受験の申し込み時に「実務経験証明書」を提出する必要があります。
実務経験証明書について、詳しく解説していきます。
実務経験証明書とは?
対象となる施設や事業所などで、実際に規定の期間、従事したことを示す書類のことです。
実務経験証明書には、施設の名称や従事期間などが記載されます。
様式は決まっており、受験の手引きや社会福祉振興・試験センターのサイトからダウンロードできます。
複数の事業所を掛け持ちしていた場合には「従事日数内訳証明書」を提出しなければならないので注意が必要です。
どこで実務経験証明書が貰える?
実務経験証明書は、働いている、もしくは働いていた施設や事業所で発行してもらえます。
また、実務経験証明書を発行できるのは、施設や事業所などの代表者だけです。
自分で申請しなければ発行されないので、介護福祉士試験を受験する方は、早めに証明書の発行を依頼しておきましょう。
実務経験見込みで申し込めることも?
試験を受験する年の3月末までに、実務経験の条件を満たしていれば、実務経験見込みでの受験申し込みが可能です。
しかし、見込みで受験した場合は、条件を満たしたらすぐに正式な実務経験証明書を再度作成、提出しなければなりません。
提出しない場合は、受験が無効となるので注意が必要です。
介護福祉士試験に興味のある方は、こちらからお申し込みください。
受験する際に準備するものは?
介護福祉士試験に必要な書類は受験ルートにより異なるので注意が必要です。
受験ルートに関係なく、全員に必要な書類は以下の3点で、申し込みの手引きを請求することで入手できます。
- 受験申込書
- 受験手数料振替払込受付証明書貼付用紙受験
- 受験用写真等確認票
その他の書類についてはルートにより違いますが、実務経験ルートの場合は、「実務経験証明書」「従事日数内訳証明書(掛け持ちの場合)」「実務者研修終了証明書」が必要です。
また、「戸籍抄本」や「証明書提出済申請書」が必要な場合もあります。
同じルートでも、実技免除を受けるかどうかなどによって必要な書類が異なるので、申し込みの手引きをよく参照し、各自でしっかりと確認しましょう。
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看護助手の経験は実務経験に入る?
介護福祉士の受験資格を得るために必要な実務経験ですが、どのような職種や事業が実務経験に入るのか、疑問に思う方もいらっしゃると思います。
実は、病院での看護助手の経験も実務経験に入るなど、実務経験と認められるものは多数あります。
実務経験には主に、以下のような施設や事業があります。
- 児童福祉法関係の施設・事業
- 障害者総合支援法関係の施設・事業
- 老人福祉法・介護保険法関係の施設・事業
- 社会保護法関係の施設
- その他の社会福祉施設等
- 病院または診療所
- 介護等の便宜を供与する事業
以上の施設や事業が対象となり、例に挙げた施設以外にも多数の施設や事業が含まれます。
職種としては、看護助手や看護補助者、介護職員、介護員、介助者、保育士などが挙げられます。
その他にも対象となる職種が多数あるので、社会福祉振興・試験センターのサイトなどで確認しておきましょう。
医療の現場では慢性的な看護師不足が続いています。看護師の資格は持っていないけれど、医療現場で活躍したいと考えている人もいるでしょう。また、介護士として働いているけれど、医療関連の経験を積みたいと考えている人もいると思います。[…]
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介護福祉士国家試験の合格率
過去5年における介護福祉士国家試験の合格率は約70%前後で大きく変動はありません。
受験者数は9万人台から8万人台と徐々に減っている傾向にあります。
合格者数は毎年6万人程度となっています。
詳細は以下の表の通りです。
受験回 | 受験者数(人) | 合格者数(人) | 合格率(%) |
第34回 | 8万3082 | 6万99 | 72.3 |
第33回 | 8万4483 | 5万9975 | 71.0 |
第32回 | 8万4032 | 5万8745 | 69.9 |
第31回 | 9万4610 | 6万9736 | 73.7 |
第30回 | 9万2654 | 6万5574 | 70.8 |
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介護福祉試験の対策・過去問について
介護福祉士試験の合格率は、直近5年は70%前後となっています。
介護福祉士試験は、出題範囲が広く専門的な試験内容になります。
しかし、十分な勉強と実務試験を積んでいれば、合格できる試験です。
試験対策には、各種予備校などで介護福祉士試験の対策講座が用意されています。
講座には、通信制と通学制の2種類があります。
独学も可能ですが、講座を受けることで効率よく勉強をすることができます。
また、介護福祉士試験の勉強は、過去問を活用することが有効です。
以下から過去問を有効に活用するための方法をご紹介します。
過去問は少なくても3周は解くようにしましょう。
しかし、過去問を3周解くためには、とても時間がかかります。
時間がかかると集中力もなくなるため、回数ごとにルールを決めるのがおすすめです。
- 1週目:正解にこだわらず問題を解いて、わからない部分だけ解説を読みます。
- 2週目:本気で全問を解き、間違えた問題はチェックをつけておきます。解説を読み、深く理解できているところも印をつけます。
- 3週目:2週目で間違えた問題と全くわからなかった問題のみ解いていきます。間違えた問題には印をつけておくことで、自分の苦手な問題がわかります。
- 4週目以降:3週目を繰り返していきます。
自分の苦手な問題をみつけて理解していくことで、点数につながります。
そのほか、解説は丸写ししないようにしましょう。
なかなか合格できない方の特徴として、完璧主義が原因となることがあります。
完璧主義のため、解説を一字一句写す方がいます。
しかし、丸写しは避けるようにしましょう。
丸写しは時間がかかってしまい、知識として覚えられません。
そのため、間違えた問題文の解説を読み、正しい文章にするだけにします。
また、解説にはほかの問題にも役立つ情報があるため、しっかりと解説を読むことが大切です。
さらに、過去問と参考書を購入した方は、過去問と参考書をリンクさせるのがおすすめです。
また、過去問と参考書は同じ会社のものを買いましょう。
同じ会社にすることで、参照ページをすぐに開くことができるなど、効率よく勉強ができます。
介護福祉士試験は、実務経験を必要とするため試験を受けるまでの道のりは長い傾向にあります。
しかし、合格率は70%と国家資格としては高い合格率です。
しっかりと取り組むことで合格できる可能性は高くなります。
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介護福祉の資格を取るメリット
介護福祉の資格を取るメリットには
- 給料が上がる
- 全国で雇用機会が増える
- キャリアアップのきっかけになる
- 介護福祉への再就職でも活用できる
などがあります。
それぞれみていきましょう。
給料が上がる
介護福祉士の資格を取得すると、基本給が上がる可能性があります。
また、勤務する施設によっては資格手当を支給している場合があります。
キャリアアップし管理職につくと、さらに収入増加になります。
また、給与面で優遇がないため、介護福祉士の資格は意味がないと思っている方もいるかもしれません。
すでに介護福祉士の方で、給与面でほかのスタッフと差がなく不満がある場合は、給与交渉してみましょう。
給与交渉しても改善されない場合は、資格手当をつけてくれる施設への転職も考えるのがおすすめです。
全国で雇用機会が増える
介護職は人手不足のため、求人が豊富にあるといわれています。
介護福祉士は即戦力になるため、全国での雇用機会が増えるでしょう。
介護福祉士は国家資格として全国で通用する資格です。
そのため、引っ越しの際の転職でも有効な資格です。
キャリアアップのきっかけになる
介護福祉士は、管理職を目指している方には欠かせない資格です。
将来的にキャリアップし、責任者の立場から介護サービスの質を向上できるかもしれません。
また、介護福祉士として経験を積むことで「介護支援専門員」の資格取得にもチャレンジできます。
仕事の幅が広がり、将来の選択肢がさらに広がります。
介護福祉への再就職でも活用できる
介護福祉士は、資格手当がつくなど有利な条件で再就職できます。
介護職の求人は、未経験者でも応募でき、積極的に採用しています。
しかし、即戦力になる介護福祉士を優遇している求人が多くあります。
介護福祉士を優遇している施設に就職できれば、昇進や収入アップにもつながります。
介護福祉士と受験資格のまとめ
ここまで、介護福祉士試験の受験資格についてお伝えしました。
要点は以下の通りです。
- 介護福祉士試験は「筆記試験」と「実技試験」が行われる
- 介護福祉士試験に必要な受験資格は、目指すルートで異なるので注意が必要
- 介護福祉士試験では必要条件を満たせば、実技試験を免除される
- 受験資格を得るために実務が伴う場合は、実務経験証明書が必要
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。