介護保険による施設サービスは、在宅介護が困難になった方の助けとなります。
ただ、種類も多く、申し込み先に迷ってしまう方もおられると思います。
介護保険による施設サービスには、どのような種類、特徴があるのでしょうか?
今回は、介護保険による施設サービスについてご紹介した上で、その条件や料金についてもご紹介します。
- 介護保険で利用できる施設サービスとは
- 施設サービスにかかる費用
- 介護保険を適用できない施設
介護保険による施設サービスに関する理解や申し込み・入所を行うときのためにも、参考にしていただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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介護保険サービスとは?
介護保険サービスとは、要介護・要支援状態にある方が受けられる介護サービスです。
介護保険サービスは、「65歳以上の高齢者」と「40歳~64歳までの特定疾患の患者」が対象です。
介護保険料と国または自治体からの財源により、1~3割の自己負担で介護サービスを受けられます。
自己負担割合は、収入により1~3割負担に分けられます。
介護保険サービスは、大きく分けて以下の3つに分類されます。
- 居宅サービス
- 施設サービス
- 地域密着型サービス
中でも施設サービスは、
- 特別養護老人ホーム
- 介護老人保健施設
- 介護療養型医療施設
- 介護医療院
に入所した要介護の方に介護サービスを提供します。
特別養護老人ホームでは、主に食事・排泄・入浴介助などの介護保険サービスが提供されています。
介護老人保健施設、介護療養型医療施設、介護医療院では、医学管理の下、介護や療養上の看護サービスが提供されています。
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介護保険で利用できる施設サービスとは?
介護保険で利用できる施設サービスは主に4つあります。
- 特別養護老人ホーム
- 介護老人保健施設
- 介護療養型医療施設
- 介護医療院
しかし、介護保険の被保険者だとしても、施設サービスを必ずしも利用できるわけではありません。
以下では、介護保険で利用できる施設の利用条件や施設で受けられるサービスについて説明します。
特別養護老人ホーム
特別養護老人ホームは、介護保険法により介護老人福祉施設と規定されており、通称「特養(とくよう)」とも呼ばれている施設です。
特別養護老人ホームは、一度入所したら亡くなるまで介護を受けられる施設となります。
基本的には、介護士と看護師が配置されています。
看護師の人数や勤務体制によっては、対応できる医療処置に違いがあるため注意が必要です。
また、入所費用が比較的安価であり長期的な入所が可能というメリットがある反面、すぐに入所できないといったデメリットもあります。
要介護認定の度合いや緊急性によっては、年単位で入所待機を必要とするケースも少なくありません。
利用条件
利用条件としては、介護保険における要介護認定が原則要介護3以上でなければ入所することができません。
ただし、生活状況が本人の生命や身体に危険が及ぶ可能性がある場合などは、市区町村の判断により入所措置がはかられるケースもあります。
サービス内容
特別養護老人ホームは在宅介護が困難になった方を対象とし、日常生活全般における介護を提供する施設サービスです。
提供サービスとしては、身体状況に合わせて食事、入浴、排泄、更衣など日常生活動作全般の介護が行われます。
施設により異なりますが、看護体制が整っていたり医療機関と提携していたりすれば、看取り対応までしている施設もあります。
特別養護老人ホームについてより詳しく知りたい方は、ぜひこちらをご覧ください。
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介護老人保健施設
介護老人保健施設は、通称「老健(ろうけん)」とも呼ばれる施設です。
介護老人保健施設には、医師、看護師、介護士、リハビリスタッフ(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)などの専門職が配置されています。
特徴として、日常生活における介護のほか、医療的管理やリハビリを受けることができる施設サービスです。
特別養護老人ホーム同様、入所費用は比較的安価です。
さらにリハビリまで受けられるメリットもありますが、原則長期的な入所ができない施設になります。
長期的な施設入所をしたい方の場合、その後入所できる施設を探さなければなりません。
ただし、本人・家族の意向と施設の目的が合致すれば、金銭的負担が少なく入所できる数少ない施設の一つです。
利用条件
利用条件として、介護保険における要介護認定が要介護1以上となっています。
また、介護老人保健施設は長期的な入所介護を目的とした施設ではなく、3~6カ月程度の入所が一般的です。
施設入所後は自宅に戻るほか、数カ月後に入所できる見込みのある施設に申し込んでおかなければなりません。
サービス内容
食事、入浴、排泄、更衣などの日常生活介護のほか、医療的管理を行うことが可能です。
施設には医師がいますので、特別な理由がなければ施設内で診察をして薬を処方してもらえます。
そのほか、リハビリテーションによる身体機能の維持・向上をはかります。
また、施設によっては看取り対応をしているところもあり、ほとんどの施設で胃ろうやインスリンの管理、痰の吸引が必要な方の対応が可能です。
また介護老人保健施設についてより詳しく知りたい方は、以下の記事も合わせてご覧ください。
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介護療養型医療施設
介護療養型医療施設は、別名「介護療養病床」ともいわれており、医療機関の病棟の一つとしても運営されていることの多い施設です。
介護療養型医療施設は身体介護と医療的ケアを担う施設サービスを提供してきましたが、2023年度末での廃止が決まっており、2023年度末までが移行期間とされています。
その理由として、介護保険で運営される介護療養型医療施設と医療保険で運営される療養病院との違いが薄れてきたことがあげられています。
今後は後述する介護医療院が、その役割を引き継ぐ位置づけの施設サービスとなります。
利用条件
病院の中にある病棟として運営されていることも少なくありませんが、制度上は介護保険による施設サービスです。
要介護認定1以上の認定が必要になりますが、基本的に介護認定の度合いが高い方が優先となる傾向にあります。
サービス内容
介護療養型医療施設の目的は、重度の要介護者への身体介護と医療ケアを行うことです。
施設に配置されているのは医師、看護師、介護士、リハビリスタッフです。
病状の診察から医療処置や看護ケア、身体介護まで行います。
介護療養型医療施設についてより詳しく知りたい方は、こちらも合わせてご覧ください。
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介護医療院
介護医療院は2018年4月から新たに創設された施設です。
前述の介護療養型医療施設に代わる施設としての役割に期待されています。
介護医療院には二つの側面があり、長期的な医療ケアと日常生活上の介護があげられます。
今後増えていく可能性のある施設サービスです。
利用条件
介護保険における要介護認定を受けた方で重篤な身体疾患や合併症がある場合にはⅠ型、容体が比較的安定している方はⅡ型の利用となります。
サービス内容
介護医療院の目的は、長期的に医療ケアが必要な方への医療の提供と日常生活における介護の提供です。
Ⅰ型では長期的な療養管理が必要な方を対象とした医療ケアや看護が行われます。
24時間体制のターミナルケアも受けられます。
Ⅱ型は介護老人保健施設に相当する役割を担っており、リハビリを行うことで在宅復帰を目指せることが特徴です。
ただし、介護老人保健施設のように入所期間の規定はありません。
介護医療院についてより詳しく知りたい方は、こちらも合わせてご覧ください。
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施設サービス費はいくらかかる?
施設サービスを受けるうえで課題となるのが金銭面です。
自宅での介護が困難になり、いざ施設サービスを受けようと思っても施設費用を支払えなければ入所できません。
施設サービスの種類については先に説明した通り、特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)、介護老人保健施設、介護療養型医療施設、介護医療院があります。
施設利用費の内訳は、施設サービス費や食費、居住費、そのほか日用品費や光熱費などです。
食費については、所得によって決められた負担段階によって、一日300円~1,445円となります。
居住費も負担段階と部屋のタイプによって、一日0円~2,006円と幅があります。
以下では、施設利用費の中の施設サービス費についてご紹介します。
また、金額については長崎市のホームページを参考にしています。
特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)の施設サービス費
多床室を例にとり、以下の表にまとめました。30日分の目安です。
要介護度 | サービス費 | 利用者負担額 |
要介護1 | 169,439円 | 16,944円 |
要介護2 | 190,125円 | 19,013円 |
要介護3 | 211,419円 | 21,142円 |
要介護4 | 232,104円 | 23,211円 |
要介護5 | 252,181円 | 25,219円 |
介護老人保健施設の施設サービス費
介護老人保健施設の施設サービス費の例を以下に挙げます。なお、従来型個室の30日分の費用です。
居室タイプに分けて、要介護1〜5の施設サービス費を以下の表にまとめました。
在宅強化型とは、介護制度で定められた基準を満たした在宅復帰・在宅支援機能が高いと認められた施設のことをいいます。
要介護度 | サービス費 | 利用者負担額 |
要介護1 | 212,331円 | 21,234円 |
要介護2 | 226,020円 | 22,602円 |
要介護3 | 244,576円 | 24,458円 |
要介護4 | 260,395円 | 26,040円 |
要介護5 | 275,909円 | 27,591円 |
介護療養型医療施設の施設サービス費
介護療養型医療施設の施設サービス費の例は以下の通りです。また、入居者:介護職員=4:1の場合の30日分の費用例です。
居室タイプに分けて、要介護1〜5の施設サービス費を以下の表にまとめました。
要介護度 | サービス費 | 利用者負担額 |
要介護1 | 194,992円 | 19,500円 |
要介護2 | 226,324円 | 22,633円 |
要介護3 | 294,161円 | 29,417円 |
要介護4 | 323,060円 | 32,306円 |
要介護5 | 348,917円 | 34,892円 |
介護医療院の施設サービス費
介護医療院の費用は以下の通りです。
居室タイプに分けて、要介護1〜5の施設介護サービス費を以下の表にまとめました。
要介護度 | 従来型個室 | 多床室 | ユニット型個室 ユニット型個室的多床室 |
要介護1 | 21,112円 | 24,428円 | 24,945円 |
要介護2 | 24,397円 | 27,713円 | 28,230円 |
要介護3 | 31,485円 | 34,801円 | 35,318円 |
要介護4 | 34,497円 | 37,813円 | 38,330円 |
要介護5 | 37,204円 | 40,520円 | 41,037円 |
より詳しい費用が知りたい方は、以下の記事も合わせてご覧ください。
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介護保険が適用される施設サービス利用までの流れ
施設サービス利用までの流れには以下の4つがあります。
- 要介護認定の申請(更新する)
- 施設サービスを選ぶ
- 施設を見学する
- 申し込み
それぞれみていきましょう。
要介護認定の申請(更新)
施設サービスを利用するためには、まず要介護認定の申請が必要です。
施設サービスの利用を考えている方は、すでに居宅・通所サービスなどを利用しているかと思います。
すでに居宅サービスなどの介護サービスを利用している方は、要介護認定の更新手続きが必要です。
要介護認定の更新手続きには、申請期間が決められています。
申請期間は、要介護認定の有効期間最終日の60日前~有効期間最終日までとなります。
更新手続きには、以下の書類が必要です。
- 要介護(要支援)認定更新申請書
- 介護保険被保険者証 (万が一紛失していても問題ない)
- 健康保険証 (40~64歳の方)
書類の準備ができたら、住民票が登録されている自治体で更新手続きをしましょう。
申請書を提出した後は、再度要介護認定調査を受けます。
要介護認定調査を受けた後に自宅に新しい介護保険被保険者証が届きます。
施設サービスを選ぶ
要介護認定の更新が終わったら、現在の介護度で入居できる施設サービスを選びます。
特別養護老人ホームは、要介護3以上の方が対象です。
また、老人保健施設なども要介護1以上の方が対象など要介護度により入居制限があります。
そのほか、費用や入居期間を想定し、施設サービスを絞ります。
長期間の入居を考えている方は、老人保健施設などは長期間の入居はできないので注意しましょう。
施設を見学する
利用を希望する施設サービスが決まったら、実際に施設の見学をしましょう。
見学する施設は、希望している地域や入居待ちの状況などを確認し、検討することが大切です。
施設の見学では、施設長やケアマネージャーの考え方を参考にしてみましょう。
そのほか、入居者やスタッフの表情や、食事のメニューなどを確認することが大切です。
チェックするポイントには、以下があります。
- 第一印象
- 医療・介護の充実度
- 食事
- 居室や共用スペース
- 外出・面会
- 退去
入居者の立場になり、住みやすい施設かイメージしましょう。
申し込み
入居を希望する施設が見つかったら、申し込みをします。
公的な施設サービスは、直接施設に申し込みをするため、施設の方に申込書を提出します。
また、特別養護老人ホームの場合、待ち時間が生じる可能性があります。
その際は、待ち時間について事前に確認しておきましょう。
どの施設が最も良い?
介護保険による施設サービスとして入所介護が受けられる施設は、いずれも所得に応じて負担段階が決められるため、費用的負担は大きくありません。
施設を決める基準として、必要な介護の量や医療処置の有無から候補を決めていく必要があります。
たとえば、リハビリをして在宅介護を継続したい場合には介護老人保健施設または介護医療院、介護量が多い場合には特別養護老人ホームが候補になります。
また、介護量に加え長期的医療ケアが必要な場合には、介護医療院や介護療養型医療施設への申し込みが適切です。
介護保険を適用できない施設もある?
ここまで介護保険による施設入居サービスについて説明してきましたが、中には介護保険を適用できない施設もあります。
以下、介護保険適用外施設について説明します。
施設の中には障害者支援施設などの介護保険適用外施設があります。
本来、40~64歳の第2号被保険者と、65歳以上の第1号被保険者は介護保険料を納めなくてはなりません。
しかし、上記の被保険者が介護保険適用外施設へ入所した場合は介護保険サービスを利用しなくても日常生活支援が受けられるため、介護保険料を納める必要がなくなります。
ただし、介護保険適用外施設を退去した場合には保険料を納める必要があり、要介護認定を受けて介護保険サービスを利用することができます。
仮に第2号被保険者の方が介護保険適用外施設へ入所もしくは退所する場合には、加入されている医療保険の保険者に届け出が必要です。
居宅サービスや地域密着型サービスとの違い
介護保険サービスには施設サービスのほか、居宅サービスや地域密着型サービスがあります。
居宅サービス
居宅サービスは主に在宅介護を行う際に利用できる介護保険サービスです。
介護保険認定が要支援の方は介護予防サービスとして利用できます。
訪問介護、訪問看護、通所介護、通所リハビリ、短期入所生活介護、福祉用具貸与などが代表的なサービスです。
居宅サービスについてより詳しく知りたいという方は、以下の記事も合わせてご覧ください。
在宅介護を行ううえで欠かすことのできない介護保険による居宅サービス。種類が多く利用に迷ってしまうこともある居宅サービスですが、どのような種類や違いがあるのでしょうか?今回、介護保険で利用できる居宅サービスについて以下の点を中[…]
地域密着型サービス
地域密着型サービスは居住地と事業所が同一の市町村の場合に利用できる介護保険サービスです。
小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)などがあります。
地域密着型サービスについてより詳しく知りたい方は、ぜひ以下の記事もご覧ください。
高齢化が進む日本。高齢化に伴い介護を必要としている方も増加し、介護の対策も多様化しています。介護はプロや施設に任せたいと思う一方で、「なるべく自身の住む地域での介護を希望する」「居宅サービスを利用していたが、施設サービスや地域密[…]
サービスはどう違う?
施設サービスは原則要支援認定の方が利用できるサービスはありません。
対して居宅サービスや地域密着型サービスについては要支援認定の方でも利用できるサービスが多く、基本的に在宅介護を行うためのサービスとなります。
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介護保険と施設サービスのまとめ
ここまで介護保険による施設サービスの特徴や、その条件・費用などを中心にお伝えしてきました。
要点を以下にまとめます。
- 施設サービスには特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院がある
- 施設を決める基準は、介護量や医療処置の有無から候補を決めていく
- 介護保険が適用できない施設は、介護保険適用外施設
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。