介護の現場では、前にかがみながら持ち上げるといった作業が多くどうしても腰に負担がかかります。
腰痛は、一度発症すると完治までに時間がかかる症状の一つです。
「腰痛になるのは仕方がない」「腰痛を抱えて介護職は続けられない」と諦めている方も多いのではないでしょうか?
本記事では、介護で腰痛になる原因や予防策について以下の点を中心にご紹介します。
- 介護の現場で腰痛を発症しやすい原因
- 介護の現場で腰痛を防ぐ方法
- 介護職での腰痛と労災について
- 腰痛を抱えている方の介護職
腰痛を予防、もしくは悪化させないためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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腰痛の原因になる介護の姿勢
介護するときの独特の姿勢によって腰痛を発症する危険性が高まります。
具体的には、どのような姿勢に注意したらいいのでしょうか?
前かがみ・中腰
介護で腰痛を引き起こしやすい姿勢は、前かがみや中腰です。
この姿勢は、おむつ交換や入浴・トイレ介助、体位交換といった作業中に多く、腰に負担がかかりやすくなります。
腰のひねり
腰をひねることも腰痛の原因となります。
とくに食事をサポートするとき、介護される方の隣に座って身体を向けるため腰をひねる姿勢が多くなります。
できるだけ腰をひねらない位置で食事をサポートできるようにしましょう。
このほかにも移乗介助、入浴介助でも腰をひねる動作が多く、腰に負担がかかります。
持ち上げる
介護では持ち上げるという動作も頻繁になります。
たとえば、ベッドから車いすへの移乗、入浴やトイレ介助です。
介護される方を持ち上げなければならない場面も多く、ぎっくり腰など急性の腰痛を発症することも多くなります。
長時間の同じ姿勢
介護される方は、動作が思ったようにスムーズにはいきません。
そのため身体を支えるときに長時間にわたって中腰のまま、立ったまま、座ったままなど同じ姿勢でいると腰への負担も大きくなります。
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腰痛を予防するには
腰痛を防ぐためには、介護するときの姿勢や動きに対して基本的な技術が必要になります。
介護動作別に腰を守る技術を紹介します。
介護するときの姿勢に気をつける
腰痛を防ぐためには、介護の姿勢を意識することが重要になります。
力任せに介護するのではなく、ボディメカニクスといった介護技術を身につけることによって腰痛を未然に防ぐことができます。
身体の重心を垂直に落とす
介護するときには、身体の重心を垂直に落とすことがポイントです。
具体的には足を肩幅くらいに広げ、膝を軽く曲げて作業をします。
重心を低く垂直に落とすことによって前かがみにならず、腰に余分な負担がかかりにくくなります。
移乗するときはスライドさせる
介護では移乗することが多くなります。
移乗では下から上に持ち上げるのではなく、横にスライドさせるというイメージが大切です。
たとえば、ベッドから車いすへの移乗は車いすをできるだけベッドに近づけ、介護される方の体をスライドさせると腰に負担がかからず、腰痛の予防になります。
環境を整える
介護の現場では、持ち上げる、中腰になるといった動作が多くなるため介護技術だけでは腰痛を予防できないケースも出てきます。
腰への負担を減らすためにはまわりの環境を整え、サポート用品を活用するという手段も取り入れると安心です。
ベッドの高さを調整する
ほとんどの介護ベッドは高さを調節できます。
ベッドの高さが介護する方の身長に比べて低すぎると、腰に負担がかかってしまいます。
腰痛予防のためにもベッドの高さを調整しておくことが必要です。
腰痛対策ベルト・コルセットをつける
すでに腰に違和感や痛みがある場合には、応急処置ではありますが「腰痛対策ベルト」や「コルセット」を使って悪化を防ぎましょう。
病院で自分に合うものを処方してもらい、正しい装着方法を教えてもらうと安心です。
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腰痛予防のストレッチをする
腰痛を予防する際はストレッチが効果的です。
とくに長時間同じ姿勢や無理な体勢が続く介護では、筋肉が固まりやすくなっています。
筋肉が固まると、血行が悪くなり疲労も蓄積されやすくなります。
腰痛予防のストレッチは、腰だけをストレッチするわけではありません。
腰の筋肉をサポートするための太ももや体側の筋肉をストレッチするとより効果があります。
介護の前後や腰に疲労を感じたときなどに行うといいでしょう。
太ももの前方ストレッチ
太ももの前方の筋肉は「大腿四頭筋」といい、骨盤の前側についています。
大腿四頭筋が固まった状態になってしまうと骨盤が前に引っ張られてしまうため反り腰となりやすく、腰痛の原因になります。
ストレッチの流れは以下の通りです。
- 立って片方の手を壁などに置いて身体を安定させる
- もう片方の手で足の甲をつかみ、膝を曲げる
- 足のつま先がお尻に付くようなイメージで持ち上げる
体側のストレッチ
体側は、普段あまり使わない筋肉のため固くこわばりやすい部分です。
腰回りが重く感じたときに体側をストレッチすると血行が良くなって腰も楽になります。
以下の流れに沿って、左右2~3回ストレッチしましょう。
- 両手を頭の上で組む
- 息を吐きながら体を真横に倒す
- 脇の下から体の側面が伸びているのを感じながら30秒キープする
- ゆっくりと元に戻す
腰痛で仕事を欠勤できる?
では、腰痛で仕事を欠勤できるのでしょうか。
介護職は人手が足りないため、腰痛を我慢したりコルセットなどを使用したりして働いている方もいます。
しかし、実は我慢せずに休んだ方がよい危険な腰痛もあります。
ちなみに、休んだ方が良い腰痛の症状は以下をご覧ください。
- 安静にしていても激しい痛みを感じる
- 腰に激痛が突然現れる
- 痛みを感じる部分が赤く腫れている
- 足に力が入らない
- 発熱している(高熱)
上記に該当する腰痛の場合は、危険である可能性があるため注意しましょう。
職場に相談して欠勤したら、早めに医療機関を受診することをおすすめします。
労災はおりる?
介護と腰痛は深く関わっており、「介護での腰痛は職業病のようだ」ともいわれています。
では、介護職の方が勤務中に腰痛を発症し休職や離職せざるを得なくなってしまった場合は労災認定されるのでしょうか?
腰痛に関しては急性のものか慢性のものかで判断が難しくなります。
もともと腰痛持ちである方もいらっしゃるなかで、ポイントとなるのが腰痛の発症原因を証明できるかどうかです。
たとえば、「介護中に転倒して腰を痛めてしまった」「入浴介護中に腰に大きな負担がかかって腰痛を発症してしまった」といった場合には労災と認定されます。
正しく判断してもらうためにも、腰痛になった経緯を医師に詳しく説明することが大切です。
腰痛持ちでも介護職につける?
介護職を続けていくなかで、避けることができない腰痛の悩み。
寝たきりの方を介護するのは腰痛持ちの方にとって負担が大きいものです。
せっかく介護職に就いても、腰痛持ちになってしまったら途中で諦めなければならないのでしょうか?
そこで、腰痛に悩んでいる方には比較的介護度の低いグループホームやリハビリデイサービスなどがおすすめです。
グループホームでは利用者さんと一緒にレクリエーションをやったり、声掛けをしたりする業務が多く、身体への負担が少なくて済みます。
それでも腰痛が辛いという場合は、社会福祉士や相談員を目指してみてはいかがでしょうか?
介護の現場で日常生活を直接支援するのではなく、間接的にサポートできる職も多くあります。
ご自身が無理せず続けられるような介護職を見つけることが大切です。
介護現場での腰痛のまとめ
ここまで、介護現場での腰痛について解説しました。
要点を以下にまとめます。
- 介護では、無理な姿勢や長時間同じ姿勢を続けることで腰痛の原因となる
- 介護で腰痛を防ぐためには、ボディメカニクスで基本の姿勢を覚えることが大切
- 介護職での腰痛は、介護が原因だと明確に分かれば労災が適用される
- 腰痛を抱えていても、職によっては介護従事者として仕事を継続できる
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。