介護をしていると、バルーンカテーテルを留置している人を目にすることもあるのではないでしょうか。
一方で、バルーンカテーテルのことについてよくわからず、ケアの際に不安だという方も多いはずです。
そこで今回はバルーンカテーテルについて以下の点を中心に解説していきます。
- バルーンカテーテルとは
- バルーンカテーテルが必要な人とは?
- バルーンカテーテル使用のメリット・デメリット
- バルーンカテーテルの使用時の注意点
ぜひ最後まで読んで今後のケアに役立ててください。
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バルーンカテーテルとは?
バルーンカテーテルは、膀胱留置カテーテルともいわれます。
膀胱に管を入れて管を通して、尿を出していきます。
バルーンカテーテルが必要な方は排尿障害を持っている方や寝たきりでトイレに行くのが困難な方などが多いです。
排尿障害は、「畜尿障害」と「尿排出障害」に分けられます。
「畜尿障害」は尿を膀胱に貯めておくことができない障害で、「尿排出障害」は膀胱に溜まった尿を外に出すことができない障害です。
それ以外にも、安静を保たなくてはいけない場合や尿量を管理したい場合にもバルーンカテーテルを入れることがあります。
管の先の風船を膨らませて、膀胱から抜けないようにすることからバルーンカテーテルと呼ばれています。
医療従事者の中では、カテーテルを取って「バルーン」といわれることも多いです。
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バルーンカテーテルが必要な場合は?
具体的にどのような人が必要となってくるのかについて解説していきます。
尿道が閉塞している状態
まず、尿道が閉塞している場合です。
例えば前立腺肥大などで物理的に膀胱から尿を外へ出す尿道が閉塞してしまっている場合です。
尿が溜まっていて出したいのに出ないと、苦しむことが多いです。
また女性でも、骨盤臓器脱(膀胱瘤や子宮脱など)で尿道を圧迫してしまい、尿が出にくくなってしまうこともあります。
排尿障害が起きている状態
次に排尿障害が起きている場合です。
上記の尿道が閉塞してしまっているものも排尿障害のひとつですが、ここでは神経因性膀胱での排尿障害について、触れていきます。
神経因性膀胱は、脊髄疾患、脳血管疾患、糖尿病などで起きる神経の損傷による膀胱機能障害のことです。
神経因性膀胱になると、尿をうまく溜めたり出したりすることができなくなります。
排尿のメカニズムはまだ解明されていない部分が多く、排尿障害も原因不明なものがあります。
このように、原因不明の排尿障害の場合にも神経因性膀胱との診断をされることが多いです。
麻酔や薬剤により排尿が出来ない状態
麻酔や薬剤などで排尿ができない状態にもバルーンカテーテルは使われます。
まず、麻酔についてです。
麻酔を使うというのは、手術のときが多いです。
手術の場合、手術中に排尿ができないのはもちろんのこと、点滴などをたくさんすることもあります。
また、手術後は安静にして状態管理のための尿量の測定も必要になるため、バルーンカテーテルを挿入することがほとんどです。
薬剤により排尿できなくなる場合は、膀胱排尿筋収縮障害を引き起こしてしまうことがあります。
使用した薬剤により膀胱筋の収縮が低下してしまうことによって起こると考えられています。
この場合、早期発見が必要になるため医療従事者は膀胱排尿筋収縮障害を引き起こしそうな病気を持っていないか、きちんとした確認が必要です。
尿量管理を要する状態
次に尿量を管理する場合です。
腎臓の疾患を持っている場合や循環器系の疾患を持っている場合は、特にきちんと尿が出ているかの確認のため尿量測定が大切になります。
特に点滴を1日500mlを3本したりする場合、尿として出なければそれだけ体にたまってしまうことになります。
それは、心臓への負担にもつながります。
また、終末期(亡くなる前)になると尿量が減ってきます。
このように尿量は、状態の良し悪しの判断にもつなげることができるため、尿量の測定をして状態の把握をしていきたい場合にも使われます。
寝たきりの状態
最後に寝たきりの場合です。
寝たきりの場合、トイレに行くのが困難です。
そんなとき、バルーンカテーテルを挿入することで排泄介助がやりやすくなり、被介護者や介護者の負担を減らすことが可能です。
ただ、バルーンカテーテルを入れることで、オムツ対応時よりも尿路感染症を引き起こしやすくなり、かえって身体への負担をかけてしまう可能性があります。
したがって、寝たきりの場合は排泄介助による身体への負担での状態悪化が懸念されるなど、医師など医療従事者の判断が必要です。
寝たきりで大変だからといった理由で、安易にバルーンカテーテルの挿入は避けた方がいいでしょう。
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バルーンカテーテルの使用は医療行為?
バルーンカテーテルは、医療行為です。
看護師も医師の指示がなくては、勝手に入れることはできません。
また、男性の場合前立腺肥大がある方も多く、尿道も長いため傷つけて出血させてしまうリスクが高いです。
昔は看護師も男性のバルーンカテーテルの挿入をしていましたが、今は看護師は行わず医師が行う病院がほとんどです。
では、実際にどのように使用していくか解説していきます。
- 医師による指示
- 医師または看護師により挿入
- 2~4週間に1回交換
挿入に関しての簡単な流れは上記の通りです。
これに加えてバルーンカテーテルは、管理が大切になります。
管理を怠ると、尿路感染症や詰まりなどのトラブルに繋がります。
次に、バルーンカテーテルの管理について見ていきます。
- 毎日陰部洗浄を行い、陰部の清潔を保つ
- チューブの屈曲がないか、体位交換後チューブが体の下に入り込んでいないか確認する
- 尿の性状・尿量や漏れがないかなどを見て、カテーテル内につまりなどがないか確認する
- 定期的にミルキング(チューブをしごく)をして、詰まらないようにしていく
- 尿混濁・浮遊物が多い場合は、膀胱洗浄を行い膀胱内をキレイにする
介護職が管理を行う上で一番大切なのが、陰部を清潔に保つということです。
バルーンカテーテルの挿入周囲が汚れていると、カテーテルを通じて細菌などが膀胱内に入り、膀胱炎などの尿路感染症を起こしてしまいます。
特に、排便があったときには大変ですが、被介護者の身体を守るためには大切なケアになるので、清潔にしていく必要があります。
排泄ケア方法のメリット・デメリット
排尿障害時に行われる対応として、バルーンカテーテルの挿入以外に「自己導尿」「おむつ」という選択肢があります。
「バルーンカテーテル」「自己導尿」と「おむつ」の違いは、カテーテルを挿入して排尿するかどうかです。
また、「バルーンカテーテル」と「自己導尿」の違いは、カテーテル(管)をそのまま入れっぱなしにするか、カテーテルを入れて尿を出したら一旦外してまた膀胱に尿が溜まったらかカテーテルを入れて出す、ということを繰り返すかということです。
この方法の選択については、排尿障害の種類によって変わってくることが多いです。
例えば、「おむつ」での対応の場合、自分で排尿できることが前提となります。前立腺肥大や神経因性膀胱などで自力での排尿ができない場合は、必然的にカテーテルを使用することになります。
また、膀胱に尿を溜めることのできない畜尿障害の場合は、尿が垂れ流しの状態になります。
この場合、すぐにおむつは尿で汚染され皮膚トラブルの原因になりますし、おむつ交換の回数も増えるため、介護者・被介護者ともに負担が大きくなります。
したがって、その場合はバルーンカテーテルの挿入などの検討が必要になってくるでしょう。
ただ、どの方法にもメリット・デメリットがあります。
特に他に方法がなくカテーテルを挿入している場合、デメリットについては理解しておくことが大切です。
デメリットを理解しておくことで、被介護者の異変にも気づきやすく、看護師などの医療従事者へもその異変を速やかに伝えることができます。
バルーンカテーテルのメリット
バルーンカテーテルのメリットについては、以下のようになります。
- おむつ交換の回数が減る
- 導尿をする必要がない
- 尿失禁による皮膚へのダメージを減らすことができる(皮膚トラブルを避けることができる)
- 尿量を測定したいときに、速やかにかつ正確に測定することができる
バルーンカテーテルのデメリット
次にバルーンカテーテルのデメリットです。
- 他の排泄ケア方法に比べて、尿路感染症を起こしやすい
- 日頃、保清を努めたり詰まりがないかなどきちんとした管理が必要
- カテーテルを挿入したままのため、生活に不便さを感じることがある
- カテーテルの先にウロバックやレッグバックが付くため、見栄えが悪い
自己導尿のメリット
自己導尿についてのメリットは以下のようになります。
- 膀胱に尿を溜めてから、カテーテルを使って尿を出すため膀胱機能の維持や改善ができる
- カテーテルを入れっぱなしにしているわけではないので、生活に支障なくまた見栄えを気にする必要がない
- バルーンカテーテルほど感染リスクが少ない
自己導尿のデメリット
次に自己導尿のデメリットです。
- 自分でできるように訓練が必要。また、自分でできるようになるまでには個人差がある
- 一日数回、行う必要がある
- 外出時には必要物品を持っていく必要がある
- 毎回行うたびに交換するためコストがかかる
おむつのメリット
そして、介護現場では多く見られるおむつのメリットについてです。
- バルーンカテーテル、自己導尿に比べて一番感染リスクが少ない
- 膀胱にカテーテルを入れる必要がなく、被介護者の身体への負担が少ない
- カテーテル管理が必要ない
おむつのデメリット
最後に、おむつのデメリットについてです。
- 失禁した場合、速やかに交換が必要。皮膚トラブルの原因になる
- 失禁後、臭いが出る
- おむつだけでなくパットを使用することも多く、厚みが出るため座位が不安定になる可能性がある
- 家庭では、失禁したごみの処理が大変
バルーンカテーテルの使用上の注意点
次に、バルーンカテーテルの使用時の注意点について簡単に解説していきます。
注意点は以下の通りです。
- 感染を避ける
- 皮膚トラブルのリスクがあることを理解する
- 尿量・尿の性状をチェックする
それぞれ解説していきます。
感染を避ける
まず、感染を避けるということです。
バルーンカテーテルを挿入していると、おむつより尿路感染症にかかるリスクが高いです。
したがって、より感染を避けるような対策をしていかなくてはいけません。
感染を避ける方法は以下のとおりです。
- バルーンカテーテル挿入時は、清潔におこなう
- バルーンカテーテルの挿入部位は、できるだけ清潔を保つようにする
- バルーンカテーテルを定期的に交換する
特に、介護職の方が意識していかなくてはいけないのが、陰部の清潔さを保つことです。
日ごろから、気を付けてケアは実施しているかと思いますが、改めてバルーンカテーテルの方は感染リスクが高いことを理解して、行っていくことが大切です。
皮膚トラブルのリスクを理解する
バルーンカテーテルの方は、尿失禁によるかぶれなどはほとんどありません。
もちろん、バルーンカテーテルをしていても多量に漏れてしまい、赤くなってしまう方もいますが、バルーンカテーテルから尿が漏れてかぶれなど赤くなってしまうことは稀な話です。
ただ、バルーンカテーテルの場合に皮膚トラブルがないわけではありません。
よくあるのが、固定テープによるかぶれです。
固定テープは、ほとんどの間付けておきます。
したがって、どうしても赤くなってしまう方が多いです。
固定位置をずらして、なるべく同じところに貼らないようにすることやテープの種類を肌に優しいものに変えるなど工夫が必要です。
また、男性では亀頭部が傷ついてしまったり、出血してしまうことがあります。
これは、バルーンカテーテルが引っ張られるのが原因なことが多いです。
バルーンカテーテルが引っ張られないように、管理していく必要があります。
尿量・尿性をチェックする
最後に、尿量・尿の状態のチェックです。
尿量が昨日はきちんと出ていたのに、今日はかなり少ないといった場合、詰まっている可能性が高いです。
看護師など医療従事者には、尿が少なかったことをきちんと伝えることが必要です。
介護職の報告で、しばらく様子を見るのか、いますぐ処置が必要かの判断の指標にしたり、今後繰り返した際には対応策を考えていくときの参考にしていきます。
また、尿量に加えて、尿の状態についても確認が大切です。
尿に浮遊物や混濁がある場合、バルーンカテーテルが浮遊物などで閉塞してしまう可能性や尿路感染症を起こしている可能性があります。
早期発見のためにも確認が必要です。
また尿の浮遊物や混濁は、カテーテルが詰まりやすくなるため、必要に応じては詰まらないように対応策を考えていく必要があります。
このように、介護・看護していく上で、尿量、尿の状態はカテーテル管理をしていく上でとても大切な情報ということが分かります。
介護職、医療職双方で情報共有し、連携を取ってバルーンカテーテルの閉塞の予防、閉塞しても速やかな対応ができるようにしていくことが大切です。
バルーンカテーテルの洗浄と交換は?
バルーンカテーテルは定期的な交換が必要になります。
また、尿が汚い場合は詰まりや尿路感染症予防に洗浄が必要なことがあります。
次に、バルーンカテーテルの洗浄と交換について解説していきます。
洗浄の方法は?
バルーンカテーテルの洗浄は、生理食塩水とシリンジを使って行うのが一般的です。
ウロバックという尿を溜める袋との接続部位を外し、生理食塩水をいれたシリンジでカテーテル内に注入し、抜いて行くというのを繰り返します。
これを続けていくうちに注入した生理食塩水が、抜いたときに徐々にきれいになっていきます。
ある程度きれいになったところで終了です。
生理食塩水が入っていかないときは、詰まっている可能性が高いです。
カテーテルが詰まらないように、尿に浮遊物や混濁がある場合は洗浄し、カテーテル内をキレイにしていく必要があります。
また、これは膀胱洗浄と言われ、膀胱内をきれいにしていくのが本来の目的です。
ただ、本来中から外に出ていくものを外から中に入れていきます。
少しの菌であれば、尿と一緒に流れてしまうので、影響はありませんがこの行為も感染のリスクがあるのは知っておくといいでしょう。
交換の方法は?
バルーンカテーテルの交換は3~4週間に一回行われます。
女性の場合は、看護師が行うことが多いですが、男性の場合は尿道が長いことや前立腺肥大などがあるため、医師が行うことが多いです。
以下の手順で行われます。
- 物品の準備
- 尿道口の消毒
- バルーンカテーテルの先端はなるべく触らないようにして、尿道口から入れていく
- 入ったら尿の流出を確認。尿の流出を確認出来たら、固定水を入れバルーンを膨らませる(この際、抵抗がないか確認)
- 固定される位置まで引き抜く
- 固定テープで尿道口に負担がないところで固定する
尿廃棄の方法は?
尿の廃棄は、畜尿器などを使ってウロバックの下部についている尿を破棄するところから、取り出します。
取り出した尿は、そのままトイレに流します。
その際、尿量を確認しておくことで、詰まりが起きているかどうかの指標になるので、確認しましょう。
また、取り出し口には垂れ流しにならないように、ストッパーが付いています。
ストッパーがしっかり閉まっていないと、床に尿が流れてしまい掃除など仕事が増えて、大変なことになります。
尿を破棄した際には、しっかりストッパーが閉まっているか確認しましょう。
尿漏れがあったらどう対応する?
尿漏れが起きたときには、バルーンカテーテル内が何らかの原因で詰まっている可能性があります。
この原因としては、尿路感染症による膿や膀胱内にできた結石があります。
尿漏れがあった場合には、まず尿の浮遊物や混濁について確認します。
そして、尿の色や臭いも確認し、尿路感染症の可能性がないかを確認しましょう。
ただ漏れているから詰まっているとも限りません。
カテーテルが体動時にねじれてしまったり、身体の下に入ってしまい踏んづけて閉塞させてしまっている可能性もあります。
漏れている場合は合わせて確認が必要です。
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介護におけるバルーンカテーテルのまとめ
ここまでバルーンカテーテルについてお伝えしてきました。
この記事のポイントをおさらいすると以下の通りです。
- バルーンカテーテルとは、膀胱に管を入れて尿を出す方法
- バルーンカテーテルは排尿障害のある方が必要となる
- バルーンカテーテルのメリットは、おむつ交換の負担が減ることや尿量をきちんと測定できること
- バルーンカテーテルのデメリットは、尿路感染症のリスクがあること
- バルーンカテーテルの使用時は、感染を避ける、皮膚トラブルのリスクを理解する、尿量・尿の性状を確認すること
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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