介護福祉士として働きながら、保育士の資格取得も検討している方が多くいます。
その際、介護福祉士と保育士の仕事内容などの違いを把握することが大切です。
一方で、詳細な違いは分からないという方も多いのではないでしょうか?
本記事では、介護福祉士と保育士の違いについて以下の点を中心に解説します。
- 介護福祉士と保育士の仕事内容の違い
- 介護福祉士が保育士の資格を取得しやすい理由
- 両方の資格を取得するメリット
介護福祉士として保育士資格取得を目指すべきか否かについて考える際に、参考にしていただけると幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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介護福祉士と保育士の違い
介護福祉士は介護に関する知識や技術を習得していることを証明する国家資格です。
一方、保育士は保育に関する知識や技術を習得していることを証明する国家資格です。
ここでは介護福祉士と保育士の仕事内容、勤務先、待遇の違いについて説明します。
仕事内容の違い
まず、介護福祉士と保育士の仕事内容について確認しましょう。
介護福祉士 | 保育士 |
・入浴、排泄、食事等の介助 ・高齢者の生活サポートがメイン ・多職種との連携 | ・0〜18歳が対象 ・未就学児、学齢児童、障がいをもった児童の対応 |
介護福祉士の仕事内容
介護福祉士は、さまざまな現場で介護業務に従事しています。
訪問介護員として利用者の自宅に訪問して介護業務を担う方もいますし、特別養護老人ホームなどの施設の介護職として介護業務を担う方もいます。
介護の仕事は入浴、排泄、食事等の介助行為でイメージされることが多いです。
しかし、介助行為だけが介護の仕事ではありません。
介護の仕事はこれらの介助を行いながら、利用者の生活に向き合い、その人らしい生活の継続の支援を行うことです。
利用者の生活上の課題を分析して、課題解決のために最適な介護について検討し、多職種と連携しながら介護の実践をしていくことが求められます。
保育士の仕事内容
保育士の資格は0~18歳を対象としています。
ですので、保育士は乳幼児の世話をしているだけではありません。
未就学児、学齢児童、障がいをもった児童の対応など幅広く仕事のフィールドがあります。
保育士には一人ひとりの子どもの最善の利益を考え、健全な育ちを支えていくことが求められます。
勤務先の違い
次に、介護福祉士と保育士の勤務先について説明します。
介護福祉士の勤務先
令和2年度に公益財団法人社会福祉振興・試験センターが実施した就労状況調査(58万人の介護福祉士が回答)によれば、回答者のうち76.3%の方が福祉・介護・医療の分野で働いています。
0.2%と少数ですが、福祉・介護・医療の資格者を養成する高校・専門学校・大学等で仕事をしている人もいます。
福祉・介護・医療の分野で働いている人では、高齢者介護の現場で働いている人が81.8%と大半を占めます。
高齢者介護の領域も広いですが、サービス別に見ると、特別養護老人ホームで働いている人が最も多いです(福祉・介護・医療の分野で働いている人のうちの14.6%)。
また、訪問介護で働いている人も13.5%います。
介護施設は特養に限られませんし、在宅介護も訪問介護に限られません。
介護保険のさまざまなサービスがあり、それぞれ高齢者介護の勤務先として選ばれています。
高齢者介護の現場以外では、障害者・障害児施設で働いている人(9.4%)、病院などの医療関係で働いている人(6.1%)もいます。
保育士の勤務先
保育士の勤務先もさまざまあります。
「保育士試験合格者の就職状況等に関する調査研究」では、保育士として働きたい職場について複数回答で尋ねています。
回答結果は以下の通りです。
認可保育所 | 65.5% |
小規模保育所 | 48.7% |
事業所内保育所 | 39.8% |
保育所以外の児童福祉施設 | 36.7% |
認定こども園 | 36.5% |
認可保育所は、国が定めた設置基準(施設の広さ、保育士等の職員数等)をクリアして都道府県知事に認可された施設です。
児童福祉法に基づく児童福祉施設で、公費により運営されています。
小規模保育所は「0~2歳を対象」「定員は6~19名」と少人数で運営される保育所です。
認可保育所の定員は20名以上なので、それより定員が少ないということが特徴です。
2015年4月に施行された「子ども・子育て支援新制度」により、市区町村による認可事業となりました。
事業所内保育所は、企業が事業所の従業員の子どもに加えて、自治体の認可を受けて地域住民の子どもも対象として運営される保育所です。
保育所以外の児童福祉施設とは家庭環境や心身発達などにさまざまな事情のある子どもや保護者を支援・保護・養護する施設です。
一例を挙げれば、乳児院は、保護者と生活ができない状況に置かれた0~2歳の乳児を預かり養育する施設です。
認定保育園は幼稚園の機能と、保育園の機能を併せ持っている施設です。
就学前の子どもを対象に幼児教育・保育を提供しています。
職員資格や学級編成等の基準を満たすことで都道府県から認定を受けられます。
その他、保育士の勤務先としては、「放課後児童クラブ(学童クラブ)」「家庭的保育(保育ママ)」「居宅訪問型保育(ベビーシッター)」等があります。
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介護福祉士は保育士の資格が取りやすい?
2020年度(令和2年度)に公益財団法人社会福祉振興・試験センターが実施した就労状況調査では、介護福祉士資格保有者に他の資格の保有状況を尋ねています。
それによれば、6.1%の方が保育士の資格を持っています。
また、「保育士試験合格者の就職状況等に関する調査研究」では、現在保有している資格について尋ねています。
それによれば、8.0%の方が介護福祉士の資格を持っています。
上記の8.0%の方々は介護福祉士の資格を持っていたうえで、保育士試験を受験し合格しています。
ここで重要なことが、介護福祉士の資格保有者は、受験申請の際に登録証のコピーを提出することにより、筆記試験科目のうち「社会的養護」・「子ども家庭福祉」・「社会福祉」の3科目が免除になるという点です。
上記の3科目が免除になるのは社会福祉士、精神保健福祉士においても同様です。
保育士の筆記試験科目は9科目あるので、3科目免除になるのはとても大きいです。
その分、試験勉強の負担は少なくなるとは言え、介護福祉士は保育士の資格を取得しやすくなっているといえます。
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両方の資格を取得するメリット
介護福祉士と保育士の両方の資格を取得するメリットについて説明します。
福祉の総合的視点が身に付く
これまで見てきたように、介護福祉士と保育士では仕事内容も勤務先も異なります。
資格取得のために勉強する内容にも違いがあります。
2つの資格を取得するために勉強することは介護の視点と保育の視点の双方を身につけるということであり、視野が広がることにつながります。
2つの資格を取得することは実は国の施策の方向性とも重なっています。
国が目指す「地域共生社会」というコンセプトでは、従来型の高齢者、障害者、子どもなどの対象者ごとに整備された公的支援の限界を踏まえています。
対象者ごとの福祉という考え方・視点を乗り越えようとする動きが見られます。
専門人材の機能強化という観点から、保健医療福祉の各資格の間での基礎教育内容の共通化や単位互換などが検討されています。
平たくいえば、高齢者を見る人、障害者を見る人、子どもを見る人と専門分化せずに、高齢者を見る専門家であっても、障がい者や子どもを見ることができるということが望まれています。
介護福祉士、社会福祉士、精神保健福祉士の福祉系国家資格保有者が保育士試験を受験する際に全9科目のうち3科目免除になるというのも、上記の観点からすれば(福祉系国家資格保有者は)保育のプロも目指し、保育にも対応できる人材になってくださいという施策上の後押しとも捉えられます。
働き方の選択肢が広がる
働き方の選択肢が広がるというのは分かりやすいメリットです。
介護福祉士も、保育士もさまざまな勤務先があることを確認してきました。
2つの資格を保有すれば、介護福祉士として選ぶことができる勤務先と、保育士として選ぶことができる勤務先の双方を選択肢にすることができます。
両方の資格を取得するデメリット
介護福祉士も保育士も、対人サービスとして相手にとっての最善、最適な関わりを追求するという点では違いはありません。
しかし、実際の関わりでは、相手が高齢者か、障がい者か、子どもかでコミュニケーション方法や留意点等で違いがでてきます。
向き不向きもあり、介護か保育のいずれかのスペシャリストを目指すことが合っているという人もいるかもしれません。
そのような違いがあるということは踏まえたうえで、双方の資格をダブルで取得するか検討しましょう。
介護職のダブルワークは可能?
2つの仕事や職場を掛け持ちして働くことをダブルワークといいます。
ステップアップや収入アップの観点では、複数の資格を取得することを目指す以外に、ダブルワークという選択もあります。
介護職(介護福祉士)のダブルワークについて説明します。
介護職のダブルワークについては、介護業界に関わらず、会社の就業規則によります。
ダブルワークが可能な場合も、ノウハウの流出を恐れて、同業他社での副業を禁止している事例もあります。
ダブルワークをしてみようか検討している場合は、就業規則を確認する必要があります。
就業規則でダブルワークが問題ない場合でも、仕事を始める前に双方の職場に対してダブルワークを始めることを伝えて、理解を得ることが大切です。
ダブルワークで始めた職場で年間20万円以上の収入があった場合は確定申告が必要になります。
収入が増えれば住民税が増えることになり、その税金額を見て、ダブルワークをしていることがもともと働いていた職場に知られてしまう可能性が出てきます。
そのため、職場に隠してダブルワークを行うのは望ましくありません。
また、ダブルワークを始めて、もともとの職場での業務が疎かになってしまうのは本末転倒なので、気をつけなくてはなりません。
介護福祉士と保育士のまとめ
これまで、介護福祉士と保育士について解説してきました。
記事のポイントをおさらいすると以下の通りです。
- 介護福祉士は主に高齢者介護のさまざまな現場で働いていて、保育士は0~18歳の児童を対象にさまざまな現場で働いている
- 介護福祉士の資格保有者は、保育士の筆記試験科目全9科目のうち3科目が免除になるので、保育士の資格取得がしやすい
- 国が進める「地域共生社会」というコンセプトから、介護福祉士と保育士の両方の資格を取得することは国の施策の方向性と重なっている
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。