2018年から新たに創設された介護医療院。
あくまでも介護施設の位置づけとされる介護医療院ですが、どのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか?
今回、介護医療院に関するメリット・デメリットについてご紹介したうえで、人員基準や施設基準についてもご紹介します。
- 介護医療院とは
- 介護医療院のメリット・デメリット
- 介護医療院で受けられるサービス
介護医療院のメリット・デメリットに関する理解や入所を検討される際の参考にしてください。
是非最後までご覧ください。
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介護医療院とは?
介護医療院のメリット・デメリットについて知るためには、介護医療院が創設された背景やその目的を理解しておく必要があります。
ここからは介護医療院の概要についてご紹介していきます。
介護医療院とは?
介護医療院は2017年に廃止が決定した介護療養型医療施設に代わる施設として、2018年4月に創設された介護施設です。
位置づけとしては、介護老人保健施設や介護老人福祉施設と同様に介護保険施設となります。
また、介護施設の位置づけでありながらも医療ケアに特化しており、介護医療院では長期的な療養管理と介護の両面が必要な方を対象としています。
介護医療院の目的
前述のとおり介護医療院で提供されるのは日常生活における介護サービスだけではありません。
長期的な医療管理が必要な方への日常的な医療ケアや、看取りを目的としたターミナルケアも行われます。
介護医療院の入居条件
介護医療院は介護保険施設の位置づけとなるため、介護保険制度の枠組みの中で運営される施設となります。
そのため、介護保険制度による要介護1~5の要介護認定を受けていることが条件として必須になります。
介護医療院の種類
介護医療院には2種類の機能があり、Ⅰ型とⅡ型に大別されます。
ここからは、介護医療院の種類ごとの機能について説明します。
Ⅰ型
介護医療院におけるⅠ型は、医療重要度の高い要介護者の療養管理と身体介護を目的としています。
厚生労働省の定めによると、「重篤な身体疾患を有する者及び身体合併症を有する認知症高齢者等」とされています。
24時間の看取りやターミナルケアも可能です。
医療の必要性が高い方の受け入れを対象としているため、Ⅱ型よりも医師の配置人数は多くなります。
Ⅱ型
Ⅱ型はⅠ型に比べ、医療の必要性が低く容体が比較的安定した方を対象としています。
看取りやターミナルケアに関しては、オンコール体制での対応になります。
オンコール体制とは、看護師や医師が緊急時にすぐに駆けつけられるように待機しておく仕組みのことです。
介護老人保健施設相当のサービス提供が行われますが、介護老人保健施設のように入居期間に制限はありません。
医療外付け型
また、介護医療院には居住スペースと医療機関を併設した形態の医療外付け型があります。
イメージとしては医療機関と有料老人ホームが合わさったような形式です。
日常生活介護における身体介護を提供する特定入居者生活介護を、医療機関が包括した介護サービスになります。
介護医療院について詳しく知りたい方は以下の記事も併せてお読みください。
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介護医療院のメリット・デメリット
介護医療院への入居を検討されるうえで気になるのがメリット・デメリットです。
結論からいえば、介護医療院への入居には多くのメリットがありますが、同時にデメリットもあります。
とくに金銭面でのデメリットを感じる場合も少なくありませんので、入居を検討される際には事前確認が必要です。
ここからは、介護医療院のメリット・デメリットについて説明します。
介護医療院のメリット
介護医療院のメリットとしては、介護保険施設という位置づけでありながら充実した医療体制が整っている点です。
適宜喀痰(かくたん)吸引が必要な方や経管栄養を行っている方、24時間の酸素投与が必要な方の場合にも、医療管理体制が整っているため安心して入居できます。
さらに、理学療法士や作業療法士によるリハビリテーションも受けられるため、身体機能の維持向上を図りながら入居生活を送れます。
また、施設での看取りが可能な点もメリットの一つです。
看取りやターミナルケア体制も整っているので、病状が悪化しても施設を退去させられることはありません。
介護医療院のデメリット
介護医療院におけるデメリットの一つは費用面です。
介護保険制度上の施設となるため、介護サービス費用は介護保険負担割合に応じた保険適用となりますが、そのほかに食費や居住費が発生します。
医療機関の療養病棟と比較した場合、療養病棟では居住費がかからないため、その分介護医療院の費用は高く感じ、デメリットと思われるかもしれません。
さらに別のデメリット面として、プライバシーの問題があげられます。
介護医療院の場合、完全個室ではなく多床室を個室化させている施設も少なくありません。
施設基準では、プライバシーに配慮した環境にすることを努力義務とされていますが、元々多床室だった居室をパーテーションなどで仕切っている構造の場合もあります。
このようにプライバシー確保の面でデメリットを感じてしまう可能性もあります。
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介護医療院のサービス
ここからは介護医療院が行う医療ケア、介護サービス、日常生活の支援サービスについて説明します。
医療ケア
介護医療院で行われる医療ケアについては、喀痰吸引、経管栄養、点滴管理、インスリン管理、酸素投与、褥瘡ケア、ターミナルケアなどがあげられます。
施設には医師・看護師が常駐していますので、これら医療ケアを安心して受けられます。
介護サービス
介護医療院では医療ケアのみならず介護サービスも提供サービスの一つです。
施設には介護職員が常駐しており、食事、排泄、入浴、更衣など日常生活全般における介護サービスを行います。
また、理学療法士や作業療法士によるリハビリテーションも行われます。
日常生活支援サービス
介護医療院の位置づけとしては、医療や介護サービスを提供するための施設だけではなく、要介護者が安心して暮らせる住まいとしての役割も担っています。
施設によっては、地域住民やボランティアとの交流を通して地域社会との繋がりがもてるような取り組みを行っている場所もあります。
介護医療院の人員や設備
ここでは介護医療院の人員配置や設備基準について説明します。
人員配置
介護医療院の人員配置をまとめると以下の通りです。
Ⅰ型 | Ⅱ型 | |
医師 | 入居者48人に対し1名 | 入居者100人に対し1名 |
薬剤師 | 入居者150人に対し1名 | 入居者300人に対し1名 |
看護職員 | 入居者6人に対し1名 | 入居者6人に対し1名 |
介護職員 | 入居者5人に対し1名 | 入居者6人に対し1名 |
リハビリ専門職 | 適当数 | 適当数 |
栄養士 | 入所定員100人以上で1名 | 入所定員100人以上で1名 |
介護支援専門員 | 入所者100人に対し1名 | 入所者100人に対し1名 |
放射線技師 | 適当数 | 適当数 |
調理員・事務員 | 適当数 | 適当数 |
医師の当直 | あり | なし |
設備基準
介護医療院の設備基準をまとめると以下の通りです。
診察室 | 指定基準 |
療養室 | 定員4名以下、床面積8.0㎡/人以上 |
機能訓練室 | 40㎡ |
浴室 | 身体の不自由な者が入浴するに適したもの |
レクリエーションルーム | 十分な広さ |
その他医療設備 | 処置室、臨床検査施設、エックス線装置、調剤所 |
その他 | 洗面所、便所、サービスステーション、調理室、洗濯室又は洗濯場所、汚物処理室 |
談話室 | 談話を楽しむことができる広さ |
食堂 | 入所定員1人に対して1㎡以上 |
介護医療院の費用
デメリットの部分でもあげましたが、やはり介護医療院への入居費用は気になる点の一つでもあります。
ここからは、費用の内訳について説明します。
介護サービス費
Ⅰ型(多床室)
要介護1 | 808円 |
要介護2 | 916円 |
要介護3 | 1,151円 |
要介護4 | 1,250円 |
要介護5 | 1,340円 |
Ⅱ型(多床室)
要介護1 | 762円 |
要介護2 | 857円 |
要介護3 | 1,062円 |
要介護4 | 1,150円 |
要介護5 | 1,228円 |
Ⅰ型(ユニット型個室)
要介護1 | 825円 |
要介護2 | 933円 |
要介護3 | 1,168円 |
要介護4 | 1,267円 |
要介護5 | 1,357円 |
Ⅱ型(ユニット型個室)
要介護1 | 824円 |
要介護2 | 924円 |
要介護3 | 1,142円 |
要介護4 | 1,234円 |
要介護5 | 1,318円 |
食費・居住費
食費・居住費については施設ごとに異なり、介護保険制度上の負担段階により支払額が変動します。
一例ですが、1日の食費はもっとも支払う額の多い負担段階4の方で1,500円程度、もっとも支払う額の少ない負担段階1の方で300円程度となります。
居住費は個室か多床室で異なり数百円から数千円と幅があるため、事前確認が必要です。
その他雑費
雑費に関しては、施設毎に必要な日用品が異なりますが、一般的には3万円程度と考えておくとよいでしょう。
介護医療院の費用について詳しく知りたい方は下記の記事も合わせてお読みください。
介護医療院は最近創設された施設?
介護医療院は介護療養型医療施設に代わる施設として、2018年4月より創設された施設です。
介護療養型医療施設とは?
介護療養型医療施設とは、療養病床を有する病院又は診療所であり、要介護者に対して医療と介護の両方のサービスを提供する施設です。
介護療養型医療施設は廃止される?
厚生労働省は2017年末に介護療養型医療施設を廃止することを決定しました。
そのため、現在は移行期間となっており2023年3月末までに完全廃止となります。
廃止される理由は?
廃止理由として、医療保険によって運営される療養型病院(医療療養病床)との違いがあまりないことがあげられます。
介護医療院とは何が違う?
介護医療院はあくまでも介護施設の位置づけとなっており、生活の場としての機能重視が明確化されています。
対して介護療養型医療施設は病院や診療所などの医療機関が運営主体です。
とくに居室の基準に生活施設としての違いがみられ、介護医療院では1部屋4人以下で1人あたりの面積が8㎡以上が基準となっています。
また、努力義務としてプライバシーに配慮された居室でなければなりません。
このように、介護療養型医療施設とはプライバシー保護の面でも違いがみられます。
介護医療院のメリット・デメリットまとめ
介護医療院のメリット・デメリットに関する内容や、その人員基準・施設基準を中心にお伝えしてきました。
要点を以下にまとめます。
- 介護医療院とは医療ケアに特化した介護保険施設
- 介護医療院のメリットは、充実した医療体制が整っている点。デメリットは医療機関の療養病棟よりも金銭的負担が大きい点
- 介護医療院では医療ケア、介護サービス、日常生活の支援サービスといった幅広いサービスが受けられる
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。