近年、高齢化に伴い老人ホームを利用する方が増え続けています。
公的な老人ホームである特別養護老人ホームでも居住費などの費用がかかります。
そのような費用を減免する制度はあるのでしょうか?
本記事では特別養護老人ホームの費用の減免について以下の点を中心にご紹介します。
- 特別養護老人ホームの費用を減免する4つの制度
- 特別養護老人ホームの費用の相場
- 費用を減免する制度の利用方法
特別養護老人ホームの費用を減免する制度について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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特別養護老人ホームの費用とは
公的な老人ホームである特別養護老人ホームでは、居住費・食費・日常生活費などの費用がかかります。
特別養護老人ホームの居室のタイプにより、居住費が決まります。
また、食費は厚生労働省によって一日の基準費用額が1,445円と定められています。
日常生活費は、医療費や理髪や美容にかかる費用、被服にかかる費用や嗜好品などにかかる費用です。
その他、介護サービスの一割負担(一定の所得者の場合は2割負担または3割負担)が必要です。
特別養護老人ホームの費用について詳しく知りたい方は下記の記事も併せてお読み下さい。
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特別養護老人ホームの費用を減免する制度
特別養護老人ホームなどの公的な老人ホーム施設では、収入などの状況によって費用を減免する制度を適用できる場合があります。
費用を減免する制度としてどのようなものがあるのでしょうか?
対象者や制度内容を具体的に紹介していきます。
特定入所者介護サービス費
まず、特定入所者介護サービス費の概要や対象者について紹介します。
費用がどのくらい減免される制度なのかについても解説します。
概要
特定入所者介護サービス費とは食費や居住費などの費用を減免する制度です。
所得によって対象者を4段階に分け、それぞれの段階ごとに負担限度額が設けられます。
対象者の費用が負担限度額を超えた場合、費用が支給される仕組みになっています。
対象者
特定入所者介護サービス費の対象者は第1段階から第3段階の人です。
第4段階の方には、特定入所者介護サービス費は適用されません。
預貯金の基準を満たさない場合、対象者とならないので注意が必要です。
また、一人で暮らしているのか夫婦で暮らしているのかで預貯金の基準が変わります。
対象者は以下の通りです。
段階 | 対象者 | 預貯金の基準(夫婦の場合) |
第1段階 | 生活保護を受給している方等 | 要件なし |
世帯全員が市町村民税非課税で、老齢福祉年金受給者 | 1,000万円(2,000万円) | |
第2段階 | 世帯全員が市町村民税非課税で、本人の公的年金収入額(※)+その他の合計所得金額が80万円以下 | 650万円(1,650万円) |
第3段階① | 世帯全員が市町村民税非課税で、本人の公的年金収入額(※)+その他の合計所得金額が80万円~120万円以下 | 550万円(1,550万円) |
第3段階② | 世帯全員が市町村民税非課税で、本人の公的年金収入額(※)+その他の合計所得金額が120万円超 | 500万円(1,500万円) |
第4段階 | 市区町村民税課税世帯 | なし |
※非課税年金を含みます。(参考:厚生労働省)
費用
第4段階の人には基準費用額が適用されます。
第1段階から第3段階の方の負担限度額は以下の通りです。
基準費用額 | 第1段階 | 第2段階 | 第3段階① | 第3段階② | |
食費 | 1,445円 | 300円 | 390円 | 650円 | 1,360円 |
居住費(従来型個室) | 1,171円 | 320円 | 420円 | 820円 | 820円 |
*食費・居住費は日額(参考:厚生労働省)
第1段階の方が支払う食費は一日最大300円となり、超えた分の費用が特定入所者介護サービス費として支給されます。
居住費についても、第1段階の方は一日最大320円となります。
高額介護サービス費
特定入所者介護サービス費と同様に高額介護サービス費でも対象者と負担限度額が設けられています。
高額介護サービス費とはどの費用を減免する制度なのでしょうか?
高額介護サービス費について解説していきます。
概要
高額介護サービス費とは介護サービス費の費用を減免する制度です。
対象者を4段階に分け、それぞれの段階ごとに負担限度額が設けられます。
対象者の費用が負担限度額を超えた場合、費用が支給される仕組みになっています。
特定入所者介護サービス費では食費・居住費の減免でしたが、高額介護サービス費は介護サービス費を減免する制度となります。
対象者と費用
対象者は第1段階から第4段階に分けられます。
条件や負担上限額は以下の通りです。
段階 | 条件 | 負担上限額 |
第1段階 | 生活保護を受給している方等 | 15,000円(個人) |
第2段階 | 市町村民税世帯非課税で公的年金等収入金額+その他の合計所得金額の合計が80万円以下 | 24,600円(世帯) |
15,000円(個人) | ||
第3段階 | 市町村民税世帯非課税で第1段階及び第2段階に該当しない方 | 24,600円(世帯) |
第4段階① | 市区町村民税課税世帯~課税所得380万円(年収約770万円)未満 | 44,400円(世帯) |
第4段階② | 課税所得380万円(年収約770万円)~690万円(年収約1,160万円)未満 | 93,000円(世帯) |
第4段階③ | 課税所得690万円(年収約1,160万円)以上 | 140,100円(世帯) |
※「世帯」とは住民基本台帳上の世帯員で、介護サービスを利用した方全員の負担の合計の上限額を指し、「個人」とは介護サービスを利用したご本人の負担の上限額を指します。
※第4段階における課税所得による判定は、同一世帯内の65歳以上の方の課税所得により判定します。(参考:厚生労働省)
高額医療・高額介護合算療養費制度
医療保険と介護保険の両方を使用している方に向けた減免制度として高額医療・高額介護合算療養費制度があります。
高額医療・高額介護合算療養費制度とは具体的にどのような制度なのかご紹介します。
概要
高額医療・高額介護合算療養費制度とは、一年間の医療保険と介護保険の自己負担の金額が高額な場合に、費用を軽減する制度です。
所得によって限度額を設定し、医療保険と介護保険の自己負担の合計金額が限度額を超えた場合支給されます。
対象者と費用
同じ医療保険の世帯内で、医療保険と介護保険の自己負担分の合算が、下記に示す限度額(年額)を500円以上超えた場合に適用されます。
対象者や限度額は以下の通りです。
基準 | 75歳以上 | 70~74歳 | 70歳未満 | |
介護保険+後期高齢者医療 | 介護保険+被用者保険または国民健康保険 | |||
年収約1,160万円 | 212万円 | |||
年収約770~約1,160万円 | 141万円 | |||
年収約370~約770万円 | 67万円 | |||
~年収約370万円 | 56万円 | 60万円 | ||
市町村民税世帯非課税等 | 31万円 | 34万円 | ||
市町村民税世帯非課税 かつ年金収入80万円以下等 | 本人のみ | 19万円 | ||
介護利用者が複数 | 31万円 |
参考:厚生労働省
社会福祉法人などの利用者負担軽減制度
社会福祉法人などの利用者負担軽減制度は市区町村が実施主体となり行われる制度です。
概要
低所得で、特に生活が困難である方に、介護保険サービスの提供を行う社会福祉法人等が、利用者負担を減免する制度です。
対象となるサービスは特別養護老人ホームの施設サービスだけでなく、訪問介護、通所介護も含まれます。
対象者
対象者は市町村民税非課税世帯の方です。
加えて、以下の要件をすべて満たす方のうち、収入や世帯の状況、利用負担等を総合的に勘案し、市町村が生活困難と認めた方です。
- 年間収入が単身世帯で150万円、世帯員が一人増えるごとに50万円を加算した額以下であること。
- 預貯金等の額が単身世帯で350万円、世帯員が一人増えるごとに100万円を加算した額以下であること。
- 日常生活に供する資産以外に活用できる資産がないこと。
- 負担能力のある親族等に扶養されていないこと。
- 介護保険料を滞納していないこと。
参考:厚生労働省
費用
軽減の金額は、利用者負担の1/4(老齢福祉年金受給者は1/2)です。
利用者負担とは、介護サービスの利用者負担額(一割負担分)、食費、居住費等のことをいいます。
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特別養護老人ホームの一ヶ月あたりの費用相場
様々な制度を紹介してきましたが、減免制度を利用しない場合と減免制度を利用した場合の費用はどのくらい違うのでしょうか?
特別養護老人ホームの一ヶ月あたりの費用相場を紹介します。
減免制度を利用しない場合
下表は、特別養護老人ホームで従来型個室に入居し、減免制度を利用しなかった場合の費用です。
費用 | 一ヶ月あたり |
食費 | 43,350円 |
居住費(従来型個室) | 35,130円 |
介護サービス費(要介護1) | 17,190円 |
日常生活費 | 30,000円 |
合計 | 125,670円 |
※食費・居住費に関しては厚生労働省の基準費用額を参考にしています。
※介護サービス費に関しては1単位10円として計算しています。
減免制度を利用しない場合、食費は1,445円(日額)×30(日)=43,350となります。
居住費(従来型個室)に関しては、1,171円(日額)×30(日)=35,130円となります。
介護サービス費(要介護1)に関しては573円(日額)×30(日)=17,190円となります。
日常生活費は1ヶ月3万円として計算しました。
要介護1の方が特別養護老人ホームの従来型個室で過ごす際の費用の目安は一ヶ月125,670円となります。
減免制度を利用する場合
下表は、特別養護老人ホームの従来型居室に入居した時に、減免制度を利用した時の費用の算出をしたものです。
費用 | 一ヶ月あたり(第3段階①) |
食費 | 19,500円 |
居住費(従来型個室) | 24,600円 |
介護サービス費(要介護1) | 17,190円 |
日常生活費 | 30,000円 |
合計 | 91,290円 |
※介護サービス費に関しては1単位10円として計算しています。
減免制度を利用する場合、食費は650円(日額)×30(日)=19,500円となります。
居住費(従来型個室)に関しては、820円(日額)×30(日)=24,600円となります。
介護サービス費(要介護1)に関しては573円(日額)×30(日)=17,190円となります。
日常生活費は一ヶ月3万円として計算しました。
今回の場合、食費、居住費に関しては特定入所者介護サービス費が適用されます。
介護サービス費については、高額介護サービス費の限度額を下回るため、今回の場合、適用されません。
要介護1で減免制度を利用した第3段階①の方が、特別養護老人ホームの従来型個室で過ごす際の費用の目安は一ヶ月91,290円となります。
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特別養護老人ホームの費用減免制度の申し込み方法
特別養護老人ホームの費用減免制度を4つほど紹介しましたが、それぞれどのように利用するのでしょうか?
それぞれの申し込み方法を紹介します。
特定入所者介護サービス費
特定入所者介護サービス費の制度を利用する時は、お住まいの市町村に本人または代理人が申請してください。
必要な書類を提出し、受理されることで利用できます。
高額介護サービス費
高額介護サービス費は、お住まいの市町村から申請書が送られる場合や、自ら申請しなければならない場合があります。
高額介護サービスを利用する場合、市町村ごとに確認する必要があります。
高額医療・高額介護合算療養費制度
支給を受ける場合は、まず介護保険者(市町村)に申請します。
申請が受理されると介護保険者(市町村)から介護自己負担額証明書が送られてきます。
次に、介護自己負担額証明書を添えて医療保険者に申請書を提出します。
手続きを終えると、高額医療・高額介護合算療養費の受給が可能になります。
社会福祉法人などの利用者負担軽減制度
軽減制度を利用する場合は、まず市町村に軽減申請をしてください。
要件を満たしていれば市町村から確認証が交付されます。
確認証を社会福祉法人等に提示することで、利用費の減免が受けられます。
特別養護老人ホームの費用が払えなくなったら?
収入状況が変わり、老人ホームの費用が払えない場合、どのように対処すれば良いのでしょうか?
まず、支払いができない状況になってしまった場合は、施設のケアマネージャーなどに相談し、具体的なアドバイスをもらいましょう。
また、今後も引き続いて費用が払えないのであれば、猶予期間の間に料金が安い施設に転居するようにしましょう。
費用がどうしても払えない場合は、生活保護の受給も検討する必要があります。
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特別養護老人ホームの費用の減免まとめ
今回は特別養護老人ホームの費用の減免制度についてご紹介しました。
特別養護老人ホームの費用の減免制度についての要点を以下にまとめます。
- 費用を減免する制度は、特定入所者介護サービス費、高額介護サービス費など
- 費用を減免する制度の対象者となれば食費や居住費などを抑えることができる
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。