特別養護老人ホーム(通称:特養)への入居を検討しているけれど、ユニット型と従来型の違いが分からないという方も多いですよね。
また、ユニット型特養と従来型特養の働き方の違いについて、知りたいと感じている方も多いと思います。
そこで本記事では、ユニット型特養と従来型特養について以下の点を中心にご紹介します。
- ユニット型特養と従来型特養の違うところ
- ユニット型特養と従来型特養の共通しているところ
ユニット型特養を利用するメリットなどについても触れていますので、ご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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ユニット型特養って何だろう?
本題に入る前に、まずはユニット型特養についてご紹介します。
少人数のケアに特化している
ユニット型特養では、一つのユニット(グループの単位)の定員を約10人としてケアを提供しています。
ユニットごとに個別でケアを行うため、ユニット型特養は少人数のケアに特化しているといえます。
また、生活やケアはユニットごとに配置された介護スタッフが行います。
ユニットごとに介護を行うことで、入居者一人一人に寄り添ったケアの提供を実現しています。
自宅にいるような感覚で過ごせる
ユニット型特養が日本に導入されてから、作られた施設はほとんどの場合居室は個室タイプとなっています。
4人程度が同じ居室で生活をする「多床室」であった従来型特養と比べると、プライバシーを確保しやすいです。
プライバシーを守りながら生活するスタイルは、家族と過ごす日常生活と似ているため、落ち着いて生活を送ることができます。
居室はリビングなどの「共有スペース」と接するように配置されています。
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ユニット型と従来型の違いとは
ユニット型と従来型の大きな違いは「間取り」や「介護」にあります。
大まかな違いは以下の通りです。
間取り | 介護 | |
ユニット型特養 | 個室が多い | ユニットごとにスタッフを一人以上 |
従来型特養 | 多床室が多い | 大人数の入居者に大人数のスタッフ |
違いについて詳しく解説していきます。
間取り
ユニット型特養はプライバシー保護を重要視しているため、居室は個室となっています。
ちなみに、居室の個室面積は10.65㎡と決められています。
ユニット型特養の居室の特徴は、リビングを始めとした共有スペースを囲むように配置されていることです。
隣のユニットなどへ繋がる通路がリビングに作られていることも多いため、他のユニットの入居者の方とも気軽に交流することができます。
一方、従来型特養の居室は、4人で一部屋を使用する「多床室」であることが多いです。
個室を使用している従来型特養もありますが、個室面積はユニット型特養と同じ10.65㎡と決められています。
また、従来型特養の居室が一直線で隣り合っていたり、廊下に面していたりすることも多いです。
介護
まずユニット型特養と従来型特養の両方にいえることですが、3人の入所者の方に対して、介護スタッフもしくは看護職員を一人以上配置する必要があります。
上記に加えて、ユニット型特養の場合には、人員配置について厚生労働省が以下のように定めています。
- 日中:1つのユニットで勤務するスタッフ(介護もしくは看護)を常時一人以上配置する
- 夜間:2つのユニットで勤務するスタッフ(介護もしくは看護)を一人以上配置する
また、ユニット型特養では、ユニットごとに介護スタッフが配置されます。
そして介護スタッフは、配置されたユニットの専任スタッフとして働きます。
ちなみに、ユニット型特養の場合、ユニットケアに関する研修を受けた「ユニットリーダー」も、各ユニットに配置されます。
ユニット型では、入居者に合っているケアを個別で提供します。
一方、従来型特養にはユニットがないため、大人数の入居者に対して大人数のスタッフで介護を行います。
一人の入居者に対して介護を行うスタッフが決まっていないため、毎回介護を行うスタッフが違うこともあります。
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入居条件は従来型と同じ?
次は、入居条件についてです。
実は、ユニット型特養も従来型特養も入居条件は同じです。
以下の条件をどれか一つ満たす必要があります。
- 65歳以上の要介護3以上の方で、感染症などの医療的な処置が不要である
- 40歳以上64歳以下の方で、特定疾病によって要介護3以上と認定された
- 要介護1・要介護2の方で、特例による入居が認められた
しかし、入居条件をクリアしていても「入居待ち」となる可能性があるため、留意しておく必要があります。
居室が個室となっているユニット型の費用は、多床室の従来型と比べるとやや高額となるケースも多いです。
そのため、従来型よりもユニット型の方が、比較的入居待ちが少ない傾向にあります。
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従来型との料金の違いは?
従来型よりもユニット型の方が高額となるケースも多いです。
料金の違いについて詳しく解説していきます。
初期費用
一般的に「初期費用」として入居一時金などを挙げることができますが、特養の場合には不要であるため、初期費用は0円となります。
月額費用
次に「月額費用」についてですが、内訳として以下のような項目を挙げることができます。
- 居住費
- 食費
- 施設介護サービス費
- 日常生活費
項目ごとに詳しく解説していきます。
居住費
分かりやすくいうと家賃のことです。
要介護5の方の居住費を例として挙げていますので、以下を見比べてみてください。
ユニット型特養 | 約6万円 |
従来型特養 | 約2万600円 |
従来型特養とユニット型特養を比べると、ユニット型特養の方が約3万9400円も高くなっています。
食費
食費は、ユニット型も従来型も約4万3300円となっています。
施設介護サービス費
「施設介護サービス費」は、特養で介護を受けるために必要となる費用です。
要介護度や要介護者の収入などから、自己負担する必要がある金額は変わってきます。
厚生労働省が発表した「令和3年度介護報酬改定における改定事項について」を元に、要介護5の方(一割負担)を想定して計算すると、以下の金額となりました。
ユニット型特養 | 約2万870円 |
従来型特養 | 約2万410円 |
大きな金額の差は見られませんが、ややユニット型特養の方が高い結果となりました。
ちなみに、利用した設備や処置、職員体制などに応じて施設介護サービス費に追加で加算されることもあります。
主な加算項目は以下の通りです。
加算項目 | 内容 |
初期加算 | 入居後30日間経過するまで加算される |
サービス提供体制強化加算 | 介護福祉士を配置している割合や勤続年数等に応じて加算される |
看護体制加算 | 配置している看護師の人数や体制等によって加算される |
介護職員処遇改善加算 | 介護職員の処遇改善を目的とする加算 |
外泊時費用 | 1か月に6日を限度として外泊する際に加算される |
日常生活費
最後に「日常生活費」とは、日常生活を送るにあたり必要となる生活費のことです。
施設ごとに金額は異なりますが、こちらもユニット型・従来型どちらも同じ金額の約一万円が目安となっています。
日常生活費は、例えば理容室・美容室を利用するときや、服やお菓子を買うとき、レクリエーションなどで出かけて入場料を支払うときなどに使います。
日常生活費は、主にレクリエーション費や嗜好品の購入などのときに使いますが、以下のものは日常生活費には含まれないので注意しましょう。
- クリーニング不要で私服を洗濯
- 尿とりパッドも含めたおむつの代金
ちなみに、上記のものは施設側が負担します。
ここまでの月ごとの金額をまとめると以下の通りです。
ユニット型特養 | 従来型特養 | |
居住費(要介護度5) | 6万円 | 約2万600円 |
食費 | 4万3300円 | 約4万3300円 |
介護施設サービス費(要介護度5) | 2万870円 | 約2万410円 |
日常生活費 | 1万円 | 約1万円 |
合計 | 13万4170円 | 約9万310円 |
上の表を見ても、やはり住居費の差額が、ユニット型と従来型の月額費用の差額であるといえるでしょう。
また、ユニット型の費用の方が高いのは、施設が従来型からユニット型へ改築された際にかかった費用を、施設が負担していることも関係しています。
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受けられるサービスにも違いはある?
ユニット型も従来型も同じ条件で入居できる「特養」であるため、基本的に利用できるサービスは同じです。
以下のようなサービスが提供されます。
- 食事や入浴、排泄など介助
- 日常生活を送る上でのサポート(生活支援)
- 機能訓練やリハビリの指導
- 介護と看護(医師や看護師等)が連携して健康を管理
- アクティビティ(レクリエーションなど)
- 理容室や美容室の利用
- 退去する際やその後の訪問などに関する相談
- 認知症による行動や心理的な症状に対する緊急対応
- 入居者に居室(個室もしくは多床室等)を提供
ユニット型特養では、ユニットごとに個別ケアを行います。
また、ユニット型は居室が個室であり、ユニットごとに働く介護スタッフが固定されているため、入居者に寄り添っている介護を受けることができます。
ユニット型と従来型のメリット・デメリットは?
ここまで様々な視点で解説してきましたが、やはり気になるのはユニット型と従来型のメリット・デメリットだと思います。
分かりやすくまとめていきますので、ぜひチェックしてみてください。
ユニット型のメリット
ユニット型の最大のメリットは、一人一人に合わせた個別ケアを受けることができることです。
ユニットは少人数で形成されるため、入居者は目の行き届いた環境で適切なサポートを受けることができます。
加えて、ユニットに配置される介護スタッフは専任であるため、入居者と介護スタッフの間に信頼関係を築きやすくなります。
また、専任の介護スタッフが入居者の希望や意向に沿った介護を提供するため、入居者は過ごしやすい環境で安心して生活することができます。
ユニット内にある共有スペースは、入居者同士が自然と交流できるように居室のすぐ近くなどに設けられています。
入居者同士でコミュニケーションを取りやすい環境であるため、介護スタッフとも他の入居者とも良好な人間関係を築きやすいともいえます。
医療経済研究機構の研究によると、従来型からユニット型に建て替えることで、入居者のベッド上滞在率を下げることが分かりました。
また、同時に入居者や介護スタッフの「リビング滞在率」や入居者の「食事時間」や「摂取カロリー」も増加傾向にあります。
入居者の日中の活動量が増えたことに伴い、ポータブルトイレの設置台数も29台から14台へと減ったそうです。
このことから、従来型よりもユニット型の施設の方が、より健康的な生活に繋がると考えられます。
ユニット型のデメリット
では、ユニット型のデメリットとは一体何でしょうか。
まず、従来型の費用よりもユニット型の費用の方が高い点です。
ユニット型は個室であることが多いため、多床室タイプの従来型と比較すると光熱費などの負担が増えると考えられます。
また、ユニット型特養は入居者同士が交流しやすい構造で作られていますが、ユニット内の人間関係が良好でないとトラブルが起こる恐れがあります。
従来型のメリット
次は従来型のメリットについて触れていきます。
従来型特養の居室は多床室が主流であるため、孤独を感じにくいというメリットがあります。
また、月額費用がユニット型よりも安いこともメリットだといえるでしょう。
ユニット型特養よりも入居者同士の自然な交流が少ないため、人間関係によるトラブルなども起きにくいと考えられます。
従来型のデメリット
一方、従来型のデメリットとして、プライバシーや尊厳が守られにくいことが挙げられます。
大勢のスタッフが大勢の入居者に対し介護を行うことも多いため、効率を重視することから個別ケアが行われにくくなります。
従来型特養では、専任スタッフではなく大勢のスタッフによって介護が提供されるため、認知症による気持ちの動揺も起きやすくなります。
また、大勢の介護スタッフがケアを行うため、トラブルが発生した際の責任の所在が分かりにくいというデメリットも挙げられます。
そのため、入居者がインフルエンザなどの感染症に感染した場合には、ユニット型特養よりも従来型の方が施設内感染のリスクが高くなります。
ユニット型と従来型のどちらがおすすめ?
ユニット型と従来型では、施設内の間取りや介護スタッフの介護の仕方など、様々な違いがあります。
では一体どのような方におすすめだといえるのでしょうか。
次は、ユニット型・従来型、それぞれの施設におすすめの方の特徴についてご紹介します。
ユニット型がおすすめな方
ユニット型は、自宅にいるような感覚で過ごせる施設であるため、認知症の方に向いているといえます。
また、適切なケアを個別で受けることができるため、心身ともにサポートが必要な方や要介護度が重い方にもおすすめです。
従来型がおすすめな方
従来型は要介護度が比較的軽い方におすすめの施設です。
また、ユニットケアのアットホームな雰囲気が苦手な方や、他の入居者の方と深い関係を築くことを煩わしく感じる方にもおすすめだといえます。
ユニット型特養と従来型特養には、それぞれのメリット・デメリットがありますので、実際に利用してみないと分からない部分もあります。
悩まれる方は「ショートステイ」などを活用して、ぜひお試しで入居してみてはいかがでしょうか。
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働く上でのユニット型特養と従来型特養の違いとは?
ユニット型特養と従来型特養には働く上での違いもあります。
そちらについても解説していきます。
働く上でのユニット型特養
まずは、働く上でのユニット型特養について解説します。
働き方
ユニット型特養では、ユニットごとに介護スタッフを配置されます。
ユニットごとにシフトが組まれ、配置されたユニットの専任スタッフとして働きます。
また、従来型の場合は、夜勤を複数人で行うことも多いですが、ユニット型は一人で介護を行う時間帯が長いことを特徴として挙げることができます。
特に、夜勤では2ユニット(約20人)に入居している方の介護を一人で行うため、自分一人で判断しなければならないこともあります。
メリット
次は、ユニット型のメリットについてですが、やはり第一に従来型よりも施設や備品が新しいことです。
また、ユニット型には個室が多く対応する入居者の方が少人数であるため、個別ケアを行いやすい環境となっています。
そのため、入居者の方との信頼関係を築きやすくなります。
デメリット
一方、デメリットについてですが、ユニット型の勤務表はユニット単位で作成されます。
そのため、介護スタッフが欠勤した場合の対応が大変であるといえます。
また、シフトの入れ替わりなど、ユニット内の介護スタッフの数が少なくなる時間帯もあります。
一人で働く時間帯に呼び出される場合もあるため、このような場合にも一人でこなさなければならないという大変さがあります。
働く上での従来型特養
次は、働く上での従来型特養について解説します。
働き方
まず、従来型特養では、施設単位でシフトが組まれます。
また、従来型の場合は大人数の入居者に対して、大人数の介護スタッフで対応するため、ユニット型だと一人になる時間帯(夜勤など)にも、複数人で対応することができます。
同じ時間帯に働く人が多い分、ユニット型よりも従来型の方が、ベテランのスタッフの技術を間近で学べる機会も多いため、新人スタッフも安心して働くことができます。
メリット
従来型特養のメリットは、やはり入居者の状態を他の介護職員に相談しやすいところにあります。
人手が必要なときや、自分一人では判断に迷う場合でも複数人で対応することが可能です。
また、夜勤も複数人の介護スタッフで対応することができますので、新人スタッフ以外の方も安心して働くことができます。
デメリット
一方、従来型特養のデメリットとして建物や設備が古い場合も多いことが挙げられます。
なぜなら、ユニット型特養が導入されてからは「ユニット型特養」が主流で建てられたからです。
また、従来型特養の居室は多床室が多く、プライバシーを保護しにくい環境にあります。
介護スタッフは多くの入所者を対応する必要があるため、特定の入居者を担当したり、個別ケアで対応したりすることは難しいケースが多いです。
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ユニット型特養のまとめ
ここまで、ユニット型特養や従来型特養の情報を中心にお伝えしました。
要点を以下にまとめます。
- ユニット型特養と従来型特養は、間取りや介護スタッフの介護の仕方、かかる費用、介護スタッフの働き方などが違っている
- ユニット型特養と従来型特養は、入居条件や受けられるサービスなどは共通している
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。