「腰が痛くて起き上がることができない」「膝が痛くて立ち上がるのがおっくうだ」「指の関節が痛くてうまく物がつかめない」などなど、高齢になれば、身体のそこかしこに痛みを訴えられる方も多いと思います。
どれも本人にとっては切実な問題です。当然、家族や周りの人たちは、本人に気を使い「痛いですか?」と聞くことが多くなってしまいます。しかし慢性的な痛みはそう簡単には消えません。もちろん「痛いですか?」と聞いて無くなるものでもありません。「痛いですか?」と聞けば、まず「痛い」と返されるに決まっています。
そして「痛い」と発した言葉によって、痛くて動けない自分に閉じ込められてしまいます、つまり体に意識が向いている状態です。じっとしていると、痛みを感じずに済むかも知れませんし、患部を誰かに揉んでもらったり、湿布を貼ったり、温めたりすることで一次的に痛みが和らぐ場合もあるでしょう。
ですが、痛みのある体を意識し過ぎると、起き上がる、立ち上がる、指を曲げるといった単純な動きでさえも、やろうとすると余計なところに力が入ってしまったり、いつもとは違う身体の動きになったりで、うまく目的の動作ができないこともあります。
「痛いからできない」そう片付けてしまうと、本人も周りも、痛みのある身体をますます意識してしまい、そのうち「痛いですか?」「痛いですか?」と、腫れ物に触るかのような扱いとなってしまい、本当に動かせない体が作られてしまいます。
それこそ体全体が腫れ物になって、どこに触れても痛がる方まで出てきます。動かないでいると、体の感覚もにぶって体の使い方そのものが変わってしまいます。「できるはずのことができない状態」です。
オススメは、周りの人はあえて「痛いですか?」を使わないことです。そして、痛い場所からは少し離れた体の部分の動きや、痛みを感じない体の動きを、揉むのではなく本人にやってもらいます。そして少しずつ、痛みのある場所に近い体の部分の動き、本人が受け入れられる動きをほんの1mmくらいずつ広げていけば良いです。
周りの人が「痛いですか?」を使わなくなると、本人は意外にも「痛い」と言われなくなることが多いのです。痛い身体に閉じ込められない分、意識は身体の外に向かいやすく、自分から動いてくれることも増えます。意識を身体の外に向けるという意味では、分かりやすく「ここまで動かしましょう」など、体の外に何か目標を置いて行うとなお効果的です。
まずは、「痛いですか?」を封印してみて下さい。