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手引き(介助)歩行のあれこれ

ワンポイントケア その14

お一人での歩行に不安のある高齢者に対して、介護者の手引きによる歩行介助が行われることがあります。安全に歩くためには必要ですし、介護者も本人の歩行の状態(ふらつきや足の踏ん張りなど)を手で直接感じられますので、体調の変化を知るためにも有効な手段だと思います。

何より、お互いの手と手が触れ合いますのでコミュニケーションの大切な機会にもなります。

 

このようにメリットも多い手引き歩行ですが、やはり一人で歩くこととは違いも多いです。本人にとって手を引かれるということは、多少でも自分の体重を他者に預ける形になりますので、その分だけ自分の筋肉を使う量は減ります。

また、一人で歩く場合のちょっとしたバランスを保つのは、意識しませんが全身を使いますし、視力や聴力含め、五感をフルに使ってこそなせる業です。歩くことが認知機能の低下を予防するというのもうなずけます。

一方、手引き歩行では、そのちょっとしたバランスを保つ役割は、手を引いている介護者が本人より少しだけ先に防いでくれますので、使われる体の機能は一人で歩くことに比べるとどうしても限られてしまいやすいのです。

 

そこで、普段手引き歩行をされている介護者に良い提案があります。同じ介助歩行であっても介助する場所、つまり高齢者本人の体に触れる場所を少し変えて見ると良いです。

例えば手繋ぎのような手引きから、本人の腕を支える、脇を支える、本人のとなりに立って手つなぎ、本人と腕を組んで、本人の肩を抱いて、あるいは本人の後ろから腰を支えて、肩を支えてなどなど、毎回とは言いませんが、たまに介助する場所を変えてみると良いと思います。

それだけでも、普段の歩行では使われていない筋肉が働いたり、バランスを保つために使う体の機能も変わります。

 

もっと言えば、安全の範囲で一瞬でも介助の手を離してみるのも良いでしょう。一人で立つ、歩くには、体の機能を保つ、向上するための大切な役割があるということです。

一人で歩けるようになった子どもが、その後飛躍的に複雑な身体能力を獲得していく過程を考えれば納得します。

手引き(介助)歩行のバリエーションを多くする、そして本人の体から手を離すこと、本人に触れない介助も立派な介護技術であり、それこそが自立支援と言えるでしょう。

 

筆者
大堀 具視(おおほり ともみ)
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