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伺うことの意味1(待てる介護の秘訣)

ワンポイントコミュニケーション その11 

介護をさせていただく時に、誰もが経験するジレンマがあります。それは、本人ができることと分かっている、あるいは本人にしてもらったほうが良いと分かっているのだけれど“待てない”で介助の手が出てしまうというものです。

しかし、介護における“待てない”という事態の積み重ねは、確実に本人の自立心を奪っていくほどの威力があります。だからこそ介護者にとってジレンマなのです。

 

本人の自立心や生活力を低下させたいと思っている介護者はいません、在宅を含め介護の現場では、真摯に本人と向き合い少しでも生活が改善するようにとの思いで介護が行われています。

ですから今、この瞬間もどこかで行われている一つひとつの介護において、1秒でも2秒でも“待つ”が実現されたなら、本人の生活改善への効果は計り知れないものがあると思います。

 

介護における“待つ”が必然となる秘技があります。それは「伺う」というコミュニケーションです。たったこれだけです。例えばベッドから「起き上がりましょう」と声をかけて、本人の動きを待てないのは介護者が主導権というボールを握ったままでいるからです。それを「自分で起きられますか?」とい「伺う」に変えてみると様相は一変します。

 

「自分で起きられますか?」という声かけは、主導権というボールを一旦相手に渡すことを意味します。介護者はボールを相手に渡したのですから、そのボールがどう返ってくるか待たなくてはなりません。しかも、ボールの返りかたは、受け取りやすいものもあれば、介護者のミットまで届かないもの、暴投や、変化球と様々です。

 

しかし、返ってくると期待してボールを渡したわけですから、暴投や変化球に対しても、しっかりと受け止めようとする姿勢、つまり「待つ」が自然に生じます。

相手が投げ返すボールに気づいて受け止めるそれが介護の醍醐味ですし、本人の能力を尊重しそれを活かした介護となるのです。つまり介護技術の基礎となるのは、本人が持つ能力に対して如何に気づくことができるかにかかっています。

気づくためには、1秒でも2秒でも待てる介護が最低条件です。待つが、待たされるではなく必然となれば、どんなに介護者のストレスも抑えられるでしょうか。それが「伺う」というコミュニケーションです。

 

 

筆者
大堀 具視(おおほり ともみ)
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