認知症と判定されたら、これからのことに不安を抱くのは当然です。
特に「最期はどうなるんだろう?」と漠然とした恐怖を感じる方も多いでしょう。
本記事では「認知症の経過」や「最期はどうなるのか」について、解説します。
- 認知症はどのように進行するの?
- 認知症になったら寿命はどれくらい?
- 認知症になったら最期はどうなるの?
- 認知症での死亡原因はなに?
- 認知症におけるACPの意義やメリット・デメリットとは?
認知症では、「最期はどうなるのか」より「最期はどうしたいか」を考えることが大切です。
ぜひ本記事を最後までお読みください。
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認知症の経過について
認知症には、「アルツハイマー型」「レビー小体型」「血管性」などのタイプがあります。
タイプによって認知症の経過は異なりますが、一般的には「初期」「中期」「末期」の3段階に分類できます。
認知症と聞くと、「物忘れ」のイメージを抱く方が多いでしょう。しかし、認知症の症状は物忘れ以外にもたくさんあります。また、認知症の種類によって症状の現れ方もさまざまです。「認知症の症状が現れているけど気付いていない」という[…]
発症初期
認知症発症のごく初期段階では、認知症状は単なる「物忘れ」と大差ありません。
たとえば、「物をどこかに置き忘れる」「少し前に聞いた話の内容を覚えていない」など些細な物忘れの症状が見られます。
進行が進み、初期になると物忘れがやや激しくなります。
たとえば「直前の出来事を覚えていない」「忘れたことすら忘れる」などの記憶障害があります。
ごく初期の段階に比べて、いつもこなしていた事柄がスムーズにできなくなるのも、初期段階の特徴です。
症状の例
- 直近の出来事を忘れる
- 同じ質問を何度もする
- いつも出来ていたことに、時間がかかる
認知症の初期症状と聞くと、「物忘れ」や「徘徊」などの症状を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。 しかし、認知症の初期症状はそれだけではありません。 今回は、以下を中心にご紹介します。認知症の初期症状認知症の初期症状が進行す[…]
発症中期
中期に進むと認知機能の低下が著しくなり、1人での日常生活が困難になります。
たとえば着替えや買い物、掃除などの日常的な動作でさえ、自分ではうまくできません。
直前の記憶が、丸ごと抜け落ちることも多くなります。
食事をしたのに「ごはんを食べていない」と言うのは、認知症中期の代表的な例です。
認知機能の低下とともに、周辺症状も頻発するようになります。
周辺症状とは、本人の性格や周囲の環境によってあらわれる、副次的な症状です。
たとえば、「せん妄」「幻覚」「徘徊」「暴力」「興奮」などがあてはまります。
症状の例
- 着替え・買い物・食事・掃除などが困難
- 入浴や排泄に全面的な介助が必要
- 体験が丸ごと記憶から抜け落ちる
- 徘徊・幻覚・妄想・暴力などの問題行動が目立つ
発症末期
認知症末期になると認知機能の低下に加え、自発性や意欲の著しい低下がみられます。
たとえば「ごはんを食べていない」と思っても、それを訴えることすら困難です。
記憶力や判断力はますます低下し、家族の顔や名前を認識できなくなります。
感情もあらわれにくくなり「話しかけても反応しない」ことも多くなるでしょう。
身体機能もかなりの低下がみられ歩行が難しくなり、寝たきり状態になる方も少なくありません。
症状の例
- 表情が動かない
- 家族を認識できない
- 会話ができない
- 自宅内で迷子になる
- 寝たきり・意識の混濁
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認知症の寿命について
介護の平均期間は6〜7年です。
介護生活の終わりとは、すなわち認知症当事者の逝去を指します。
ただし、認知症の寿命には個人差があるため一概に「何年」とは言えません。
認知症発症からの10年以内生存率は以下の通りです。
- アルツハイマー型認知症…18.9%
- レビー小体型認知症…2.2%
- 血管性認知症…13.2%
アルツハイマー型認知症の診断後の生存期間は以下の通りです。
- 男性…4.2年
- 女性…5.7年
以上のようにおなじ認知症当事者であっても寿命にはバラつきがあることが分かります。
しかし1つ言えることは、寿命に差はあれど必ず最期を迎えるということです。
プラズマローゲンとは?サプリについても説明
プラズマローゲンとは、グリセロリン脂質の一種であり、細胞を構成する主要な成分です。
人間の全身のリン脂質の約18%がこのプラズマローゲンであるといわれており、特に脳に多く存在しプラズマローゲンは人間が存在する上でとても重要な成分と考えられています。
しかし、このプラズマローゲンはさまざまな要因で減少しやすい成分でもあります。
酸化ストレスや炎症、神経の変性、感染症や外傷など、さまざまなストレスにさらされることで、プラズマローゲンが減少していきます。
特に、脳の海馬や前頭葉には多くのプラズマローゲンが含まれており、成分の減少と認知症の進行度には関連性があるという報告もあります。
プラズマローゲンは現在、認知症対策のサプリメントとして販売されています。 1995年にアルツハイマー型認知症の患者の、脳のプラズマローゲンが減少していることが確認されました。
その後、2007年にはアルツハイマー型認知症患者の血清でもプラズマローゲンの減少が認められており、プラズマローゲンは認知症と関係があると考えられています。
また、アルツハイマー型認知症の発症には、アミロイドβたんぱくの沈着が関係しているといわれています。
プラズマローゲンは、アミロイドβたんぱくの沈着を抑える効果のほか、脳神経細胞のアポトーシス抑制の効果も見込めるため、プラズマローゲンを摂取することで認知症への対策が期待できます。
出典:認知症との関係|AdvancedMedicalCareInc.
認知症予防に使われるサプリについて知りたい方は、ぜひこちらの記事もお読みください。
認知症予防とは、脳の神経細胞の働きが低下し、認知機能の低下によって社会生活に支障を来さないよう、「認知症になるのを遅らせる」「認知症になっても進行を緩やかにする」という意味で、生活習慣病対策やサプリメントを用いるなどの予防策があります。[…]
認知症患者のために|最期はどう過ごしたいかを考える
「最期はどうなるのか」より「最期はどうしたいか」を考えることが大切です。
認知症はときに本人はもちろん、家族や周囲に大きな負担やストレスをもたらします。
終わりの見えない介護生活に疲れ果ててしまうこともあるでしょう。
しかし前述の通り、寿命に個人差はあれどどんな方でも認知症の最後は寿命を迎えます。
言ってしまえば、どんなに先が見えなくとも「必ず終わりがくる」わけです。
自分や家族が「いつか死ぬ」と考えるのはナーバスに思えるかもしれません。
しかし、「終わりがある」と割り切ることは一種の覚悟につながります。
すなわち「最期」を受け入れることで、「その時までどのように生きたいか」が具体的にイメージしやすくなるでしょう。
「認知症の最期はどうなるんだろう」と漠然と恐れるより「最期はこう迎えたい」と理想を描くことは、残りの人生の質を高めるうえで重要です。
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認知症患者の寿命は何で決まる?
前項の通り、認知症発症者の寿命には個人差があります。
寿命を決める主な要因を3つ紹介します。
年齢
高齢になるほど、認知症発症からの寿命は短くなります。
認知症にかかると徐々に身体機能や免疫機能が低下します。
肺炎や感染症を合併しやすくなるため、高齢の方ほど死亡リスクは高くなります。
性別
性別に関しては、明確な根拠はありません。
しかし研究データの多くは男性の方が寿命が短いと指摘しています。
進行速度
認知症は、タイプによって進行速度が異なります。
進行がゆるやかなタイプほど寿命が長い傾向が見られます。
たとえば、数十年単位で進行するアルツハイマー型は発症から寿命を迎えるまでの期間が長くなります。
一方、比較的進行が早いといわれるレビー小体型は寿命が短いといわれています。
認知症の末期の症状について
認知症を発症し「最期はどうなるんだろう」と恐怖を感じる人も多いでしょう。
その理由は「なにもできなくなる」という漠然としたイメージがあるためです。
たしかに、認知症末期にはさまざまな重篤症状があらわれます。
しかしそれをおそれるのではなく、受け入れることが大切です。
「最期はどうなるのか」と考えるより、最期に起こりうる事態を想定し「その事態に直面した時にどのように生きたいか」を考えてみましょう。
そのためにも、認知症の最期はどうなるかをあらかじめ知っておくことは重要です。
自分が直面するであろう事態を正しく理解することは「認知症」と冷静に向き合う手助けとなるでしょう。
できること
認知症末期になっても、意識を保っている場合もあります。
明確な意思表示は難しいかもしれませんが、アイコンタクトなどで周囲とある程度の意思疎通ができることもあるでしょう。
また、感情機能も完全には停止していません。
会話の内容は完全に理解できなくても明るく話しかければ「楽しい」という感覚を感じ取ることはできます。
以下できることの例です。
- アイコンタクトなどでの意思疎通
- 返事・相槌
- 介助つきの食事・入浴・排泄
- テレビ・ラジオ鑑賞
- 周囲の会話を聞く
など
できないこと
基本的に自分では身動きできません。
また、末期でもさらに最終段階に進むと嚥下障害などが起こりやすくなり食事をとれなくなることも多いです。
以下できないことの例です。
- 家族や親しい人の認識
- 周囲との意思疎通
- 自力で立つ・歩く
- 寝返り
- 自力での食事・入浴・排泄
- (嚥下障害などによる)食事
など
普段の生活
自力で座っていることも難しいため、1日を寝たきりで過ごすことが多いでしょう。
喉の筋肉の低下から物を飲み込みづらくなり食事はすりつぶしたものや、流動食が中心になります。
末期には家族や身近な人の認識も難しくなります。
話しかけても反応がないことが多いですが「話しかけられている」ことは理解できることもあります。
また、話の内容を完全に理解できなくても明るく話しかけられれば「楽しい」「うれしい」と感じることもできるでしょう。
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認知症患者の死亡原因について
認知症になったら「最期はどうなるんだろう」という疑問は、すなわち「どんな亡くなり方をするのか」という疑問でもあります。
実は、認知症の方の死亡原因は身体機能・認知機能の低下に伴う合併症状がほとんどです。
特に肺炎での死亡が最も多いとされています。
あるいは、転倒などの事故が直接的な死因になる場合もあります。
また、認知症の進行に伴い食事がとれなくなる方も多くいます。
たとえば「食べ物を認識できない」「食べ方が分からない」などの摂食障害により、衰弱死するケースも多く見られます。
以下、原因の例です。
- 誤嚥性肺炎
- 気管支炎
- 虚血性心疾患
- 循環器疾患
- 呼吸器感染
- 悪性新生物(腫瘍)
- 転倒
- 摂食障害
など
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認知症の終末期介護|アドバンス・ケア・プランニング(ACP)って何?
ACPとは認知症当事者の希望に沿って、本人・家族・医療チームが終末期の介護・医療を話し合うプロセスのことです。
ACPでは、認知症当事者と家族が将来的に「受けたい医療」と「その理由」を話し合います。
さらに、意思決定に至るまでのプロセスは医療チームと緊密に共有されます。
ACPで重視されるのは、本人・家族・医療チームが意思決定に至る「プロセス」を共有することです。
プロセスを重視することで、将来的に想定外の事態が発生してもより柔軟に本人の意思を尊重した医療を実現できると考えられています。
認知症におけるACP
認知症を発症すると「これからどうなるんだろう」「最期はどうなるんだろう」という恐怖がつきまといます。
しかし、恐怖する時間は実は「最期はこうしたい」と考える時間でもあります。
前述の通り、認知症では「最期はどうなるのか」より「最期はどうしたいのか」を考えることが重要です。
ACPは、その人が自分らしく生きるための意思決定をサポートする方法です。
そのため認知症の終末ケアとして取り入れられつつあります。
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ACPのメリットとデメリットについて
認知症の方のACPにおけるメリットとデメリットの両方を紹介します。
メリット
- 認知症当事者が自分の人生に責任を持てる
- 本人と家族の満足感が高まる
- 終末期の過ごし方を決めるゆとりができる
- 望まない「延命治療」や「病院死」を回避できる
- 強固かつ柔軟な医療連携を実現できる
デメリット
- 「死に方」を決めることをナーバスに感じ、そもそもACPに踏み切れない
- 本人や家族に心理的・身体的負担がかかる
- 本人・家族・医療チームの信頼関係がなければ実現が難しい
- 死生観の押し付けになることがある
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認知症の最期についてのまとめ
ここまで、「認知症の最期はどうなる?」という疑問に対し、認知症の進行の仕方や予後の考え方についてお伝えしてきました。
- 認知症になると、平均寿命は6〜7年
- 寿命は必ず来るので「最期はどうなるのか」より「最期はどうしたいか」を考えることが大切
- 認知症での主な死亡原因は、肺炎などの合併症状
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。