食事を制限するダイエットとして、「炭水化物ダイエット」を思いつく人も多いかと思います。
適切な方法で行えば、確かに体重減少の効果が期待できます。
しかし、極端に炭水化物が不足してしまうと、脳の働きが鈍くなり、体力の低下などの問題を引き起こしてしまうため、摂取量の管理が重要です。
そこで今回は、炭水化物の摂取量について、以下のポイントを中心に解説していきます。
- 炭水化物の適切な摂取量
- 摂取量が過剰、不足した場合どうなるのか
- 日本人は炭水化物が好物?外国と比較
炭水化物の働きについて理解するためにも、ぜひ最後までお読みください。
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炭水化物とは
炭水化物は、脂質・たんぱく質と同じく三大栄養素の1つです。
そして、糖質と食物繊維の2つを組み合わせたものが炭水化物です。
炭水化物と糖質、混同して覚えている人もいるかもしれませんが、「糖質は炭水化物の一部」ということになります。
糖質
糖質はさらに「単糖類」「少糖類」「多糖類」など様々な種類に分類されます。
単糖類 | 文字通り1つの糖で構成されているもので、ブドウ糖・果糖・グルコースなどがあり、これらは体内でエネルギーとなる |
少糖類 | 単糖類が2つ以上合わさったもので、オリゴ糖と呼ばれている オリゴ糖は善玉菌を増やし、腸内環境を整える成分として有名で、よくヨーグルトや飲料製品に添加されている |
多糖類 | エネルギー源となるでんぷんや、グリコーゲンなどが多糖類に該当する ご飯やパン、パスタや砂糖に含まれている |
食物繊維
食物繊維は、消化酵素の影響を受けず小腸を通過し、大腸での整腸効果がある成分です。
善玉菌を増やし、排便を促す作用があります。
炭水化物といわれて何を思い浮かべますか?身体を動かすためのエネルギー源、生きていくために重要なものと認識している人がほとんどではないでしょうか。摂りすぎると太ってしまうというイメージもあるでしょう。この記事では、炭水化物につ[…]
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炭水化物の摂取量とは
1日に250~325gの炭水化物を摂取するのが好ましいとされています。
目安摂取量は、おにぎりの約8~10個分に相当します。
また、全摂取エネルギーの約50%が望ましいとされています。
摂取量の基準と、炭水化物が多く含まれている食品について説明します。
1日の摂取基準
炭水化物の1日の摂取量基準は、性別、年齢問わず1日に食事から摂取するエネルギーの50~65%に相当する量となります。
1日に必要とされるエネルギーは、成人女性が1400~2000kcal、成人男性が2200±200kcal程度が目安です。
この値から、1日に必要とされるエネルギー量を2000kcalとした場合、50~65%に相当するエネルギー量は1000~1300kcalとなります。
炭水化物は1gにつき約4kcalなので、1日250~325gの炭水化物を摂取することが望ましいです。
以下の表は摂取目標量をあらわしたものです。
性別 | 男性 | 女性 |
年齢等 | 目標量(%エネルギー) | 目標量(%エネルギー) |
0~5(月) | – | – |
6~11(月) | – | – |
1~2(歳) | 50~65 | 50~65 |
3~5(歳) | 50~65 | 50~65 |
6~7(歳) | 50~65 | 50~65 |
8~9(歳) | 50~65 | 50~65 |
10~11(歳) | 50~65 | 50~65 |
12~14(歳) | 50~65 | 50~65 |
15~17(歳) | 50~65 | 50~65 |
18~29(歳) | 50~65 | 50~65 |
30~49(歳) | 50~65 | 50~65 |
50~64(歳) | 50~65 | 50~65 |
65~74(歳) | 50~65 | 50~65 |
75以上(歳) | 50~65 | 50~65 |
妊婦 | 50~65 | |
授乳婦 | 50~65 |
出典:厚生労働省『日本人の食事摂取基準(2020年版)』
農林水産省・実践食育ナビ「食事バランスガイド早分かり」
多く含まれる食品
炭水化物はご飯やパンといった、日本人が主食としているものに多く含まれています。
そのほか、炭水化物が多く含まれている食品には次のようなものがあります。
- コーンフレーク
- 麺類(パスタ、うどん、そば、中華麺など)
- てんぷら粉
- 薄力粉
- さつまいも
- ながいも
- かぼちゃ
- 砂糖や甘味類の食品
上記の食品ほどではありませんが、柿や桃といった果物にも炭水化物は含まれています。
過剰摂取した場合
炭水化物の摂取量が過剰となってしまった場合、余ってしまった糖質が体内に脂肪として貯まり、肥満の原因となります。
また血糖値の急激な上昇を引き起こし、生活習慣病のリスクが高まります。
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炭水化物が不足するとどうなる?
脂質・たんぱく質・炭水化物が体に重要な三大栄養素であることは説明しましたが、この中で特にエネルギーを生産しているのが炭水化物です。
不足すると身体に以下のような影響を与えます。
- 集中力の低下
- 便秘になる
- 筋肉量が減少
それぞれ詳しく解説していきます。
集中力の低下
炭水化物の一部である糖質は脳にとって、唯一のエネルギー源です。
糖質が不足すると脳の働きが鈍くなり、判断力が低下し、ぼーっとしてしまいます。
便秘になる
炭水化物の不足は、含まれる食物繊維の摂取量不足につながり、腸内環境を乱し便秘の原因となります。
筋肉量が減少
体内の糖質が消費され不足してしまうと、今度はたんぱく質や体脂肪を分解してエネルギーを生産しようとします。
もしそうなってしまうと、体の筋肉量が減少し、疲れやすい体質になります。
「炭水化物を抜くことはダイエットになる」というのは、筋肉量が減少し、結果体重が減るためです。
しかし、行き過ぎた炭水化物の制限は、病気のリスクやリバウンドの可能性が高いことも理解しておきましょう。
炭水化物の働き
炭水化物の主な働きとして、「体を動かすエネルギー源」になることが挙げられます。
炭水化物は摂取された後、唾液や酵素により単糖類(グルコースなど)に分解されます。
その後、各組織へと送り込まれ、エネルギーとして変換・貯蔵され、筋肉を動かしているのです。
炭水化物を摂取し、体内の糖質が増加すると、すい臓からインスリンが分泌されます。
インスリンは、貯蔵されず余った糖質を、グリコーゲンや中性脂肪に変える働きがあります。
従って、インスリンが多く分泌されると、体脂肪が蓄積されやすくなります。
このインスリンが機能しなくなってしまうと、血液中の糖質調整が上手くできず、血糖値が上昇してしまい、糖尿病を引き起こすのです。
炭水化物の効率的な摂取方法
炭水化物は私たちのエネルギー源であり、バランスの取れた食事には欠かせない栄養素です。
しかし、摂りすぎると体重増加や健康問題の原因にもなります。
ここでは、炭水化物の効率的な摂取方法についてご紹介いたします。
食物繊維をしっかり摂る
炭水化物には糖質と食物繊維があります。
食物繊維は、人の消化酵素で分解されない食物中の成分で、水溶性と不溶性に分けられます。
食物繊維は、便秘や生活習慣病の予防に効果があります。
食物繊維の1日あたりの摂取目安量は、成人では24g以上です。
食物繊維を多く含む食品は、野菜や果物、豆類や海藻類などです。
これらの食品をバランスよく摂ることで、炭水化物の効率的な摂取ができます。
よく噛んで食べる
炭水化物の効率的な摂取方法のひとつは、よく噛んで食べることです。
よく噛むことで、唾液中の消化酵素が炭水化物を分解しやすくなります。
また、満腹感が得られやすくなり、食べ過ぎを防げます。
さらに効率的な摂取方法は、朝にビタミンB1と一緒に摂ることです。
ビタミンB1は、炭水化物の代謝を助けるビタミンであり、疲労回復にも役立ちます。
ビタミンB1は豚肉や玄米、豆類などに多く含まれています。
食事の時間に気をつける
炭水化物の効率的な摂取方法のひとつは、食事の時間に気をつけることです。
食事の時間が不規則だったり、夜遅くに摂ったりすると、エネルギーとして消費されずに脂肪として蓄積されやすくなります。
そこで、炭水化物の摂取量を調整するためには、食事の時間を決めて守ることが大切です。
とくに朝食は、炭水化物をしっかり摂ることで、脳や体の活動に必要なエネルギーを補給できます。
また、夕食は寝る3時間前までに済ませることが理想的です。
低GI食品を活用する
低GI食品とは、血糖値が上がりにくい食品のことです。
GIとは、食品の糖質が血糖値に与える影響を数値化したもので、GI値が55以下の食品を低GI食品と呼びます。
低GI食品を摂ることで、血糖値の急激な上昇や下降を防ぎ、空腹感やイライラを抑えられます。
低GI食品の効率的な摂取方法のひとつは、高GI食品と一緒に食べることです。
高GI食品とは、血糖値が上がりやすい食品のことで、GI値が70以上の食品を指します。
高GI食品は、白米やパンなどの主食や、果物やお菓子などに多く含まれています。
高GI食品だけでなく、低GI食品も一緒に食べることで、血糖値の上昇を緩やかにできます。
低GI食品の例としては、カリフラワーやクルミ、サクランボやブルーベリーなどです。
これらの食品は、高GI食品と組み合わせてサラダやスムージーなどにして楽しめるでしょう。
日本人は炭水化物が好き?
日本人はお米が主食で、ラーメンなどの麺類を頻繁に食べている人も珍しくありません。
やはり諸外国と比べると、日本人は炭水化物の摂取量が多いのでしょうか。
まずは下の表をご覧ください。
この表は日本人のエネルギー摂取量、エネルギー生産構成栄養素の割合の推移を示したものです。
たんぱく質 | 脂質 | 炭水化物 | |
1950年 | 13.0% | 7.7% | 79.3% |
1960年 | 13.3% | 10.6% | 76.1% |
1970年 | 14.0% | 18.9% | 67.0% |
1980年 | 14.9% | 23.6% | 61.5% |
1990年 | 15.5% | 25.3% | 59.2% |
2000年 | 16.0% | 26.5% | 57.5% |
2010年 | 14.6% | 26.1% | 59.3% |
2012年 | 14.5% | 26.4% | 59.1% |
出典:厚生労働省『日本人の食事をめぐる状況と「健康な食事」のあり方』
1950年頃では、炭水化物の摂取量が全体の約79%であるのに対し、2012年になると約59%と徐々に低下してきています。
これは日本人の「食の欧米化」による食生活の変化が原因であり、以前と比べると肉類を食べる機会が増え、炭水化物を食べなくなった、とも見て取れます。
反対に、脂質が占める割合は近年増加しており、「肥満」に当てはまる日本人も増えています。
以下の表は日本の体系の比率をあらわしたものです。
やせ | 普通 | 肥満 | |
男性(20歳以上) | 4.7% | 66.7% | 28.6% |
女性(20歳以上) | 12.3% | 67.4% | 20.3% |
(出典:厚生労働省『平成25年 国民健康・栄養調査結果の概要』)
ここからは炭水化物摂取量は諸外国と比べるとどうなのかについて説明していきます。
下の表はPFC供給熱量比率(たんぱく質・脂質・炭水化物の比率)を諸外国と比較したものです。
PFC供給熱量比率(%) | |||
たんぱく質 | 脂質 | 炭水化物 | |
アメリカ | 12.4 | 41.8 | 45.8 |
ドイツ | 12.2 | 40.1 | 47.7 |
フランス | 12.9 | 43.7 | 43.4 |
イギリス | 12.3 | 38.4 | 49.3 |
オーストラリア | 13.0 | 44.1 | 42.9 |
日本 | 13.0 | 28.6 | 58.4 |
出典:厚生労働省『日本人の食事をめぐる状況と「健康な食事」のあり方』
外国と比べると、日本の炭水化物供給量は高いことが分かります。
つまり、徐々に日本人の炭水化物摂取量は減ってきているが、諸外国と比べるとまだ多く、「日本人は炭水化物が好き」といえるかも知れません。
炭水化物の摂取量のまとめ
ここまで炭水化物について、働きと摂取量の基準、過剰・不足になった場合などについてお伝えしてきました。
この記事のポイントをおさらいすると以下の通りです。
- 炭水化物の1日の摂取量は250~325g、全摂取エネルギーの約50%が望ましい
- 炭水化物が不足してしまうと、集中力の低下、便秘、筋肉量の減少の原因となる
- 摂取量が減少傾向にあるが、外国と比較すると日本人の炭水化物摂取量はまだ多い
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。