パーキンソン病は、早期発見・治療を行うことで症状の進行を遅らせることができます。
しかし、パーキンソン病によく似た症状や状態の病気も多く、パーキンソン病だと診断するためには、さまざまな検査を行う必要があります。
また、診断結果によって治療方法も異なります。
本記事では、パーキンソン病の診断について以下の点を中心にご紹介します。
- パーキンソン病と診断されるまでの検査の流れ
- パーキンソン病と診断されてからの治療方法
- パーキンソン病の早期発見に役立つ方法
ぜひ最後までご覧いただき、パーキンソン病の早期発見にお役立てください。
パーキンソン病について詳しく知りたい方は下記の記事も併せてお読み下さい。
パーキンソン病は、難病指定されている疾患でとくに高齢の方に多く見られます。パーキンソン病は早期の発見・治療によって進行をゆるやかにできるため、症状を見逃さないことが大切です。本記事では、パーキンソン病について解説します。[…]
スポンサーリンク
パーキンソン病の診断の検査の流れ
パーキンソン病の診断では、あらゆる検査を行います。
脳腫瘍や多発性脳梗塞、正常圧水頭症など、症状がパーキンソン病に似ている病気があるためです。
最近では、パーキンソン病に特徴的な病変が確認できる技術も確立されました。
それではパーキンソン病の診断の流れを見ていきましょう。
神経内科の診察
パーキンソン病を疑ったとき、病院の何科を受診していいのか迷うことはありませんか?
まずは、脳神経内科を専門とする医療機関を受診することをおすすめします。
実際に患者さんの様子を観察し、触診しておおよその診断を行います。
その後、パーキンソン病の診断を裏付けるためのさまざまな検査を行っていきます。
画像診断
画像診断で代表的なのはMRIやCT検査です。
パーキンソン病の症状は他の病気でも見られるものが多く、見かけの症状だけでは判断できません。
画像診断では、パーキンソン病の診断だけでなく、同じ症状がみられる他の病気を発見することにも有効です。
臨床検査
血液や尿などを採取して調べる臨床検査は、直接パーキンソン病であるかは診断できません。
しかし、他の病気が潜んでいないか、異常がないかということ自体がパーキンソン病の診断のために重要なポイントになります。
薬剤反応検査
L-ドパは、パーキンソン病によって不足したドパミンを補う薬です。
L-ドパを服用することで効果が確実に見られた場合、パーキンソン病の診断の一つの材料となります。
MIBG検査
今までの検査方法では、パーキンソン病はほかの病気とは区別がつきにくいものでした。
しかし、MIBG検査ではハッキリと区別できます。
MIBGという特殊な薬剤を投与し反応を見ます。
パーキンソン病の場合、この薬剤が心臓に取り込まれにくくなります。
ドパミントランスポーターイメージング検査
ドパミントランスポーターイメージング検査もパーキンソン病と他の病気を区別するために確立された画像診断方法です。
正常な場合、集まった薬剤の形が「三日月型」や「カンマ型」になります。
パーキンソン病の場合には形が不確かで、左右が非対称といった特徴が現れます。
パーキンソン病の症状について詳しく知りたい方は下記の記事も併せてお読み下さい。
難病にも指定されているパーキンソン病。発症すれば日常生活に支障をきたす可能性のあるパーキンソン病ですが、どのような症状や特徴があるのでしょうか?そこで今回は以下について紹介していきます。 パーキンソン病の運動症状 […]
スポンサーリンク
パーキンソン病の診断は難しい?診断基準について
パーキンソン病の診断は難しく、確実な診断基準は現在のところ確立していません。
最新基準はInternational Parkinson and Movement Disorder Society(MDS)診断基準です。
MDS診断基準は診断の特異度90%以上を目標とした実用的な診断基準です。
MDS診断基準は以下の通りです。
- 必須項目としてパーキンソニズムの運動緩慢が見られる
- 筋強剛、4~6Hzの静止時振戦のどちらか1つ、または両方が見られる
- 症状に左右差が見られる
- 小脳症状等など絶対的除外基準や急速な歩行障害など相対的除外基準に抵触しない
出典:日本神経学会「パーキンソン病の診断」
パーキンソン病は、難病指定されている疾患でとくに高齢の方に多く見られます。パーキンソン病は早期の発見・治療によって進行をゆるやかにできるため、症状を見逃さないことが大切です。本記事では、パーキンソン病について解説します。[…]
パーキンソン病かも?セルフチェックで自己診断
パーキンソン病を疑う自己診断法として、10項目のセルフチェックがあります。
具体的には以下の通りです。
じっとしていると手や足がふるえる | なにげない動作に時間がかかるようになった |
指先の細かい動作が苦手になった | 転びやすくなった |
表情がとぼしくなった | 声が小さくなった |
着替え・ボタンかけが思うようにできない | 歩くのが遅くなった、歩幅が小さくなった |
手足の筋肉が硬く、こわばるように感じる | 姿勢が前かがみになった |
セルフチェック項目が複数あてはまる場合は、パーキンソン病の疑いがあります。
できるだけ早く主治医や神経内科医に相談することをおすすめします。
パーキンソン病の治療方法
さまざまな検査の結果、パーキンソン病と診断された場合、どのような治療を受けることになるのでしょうか。
薬物療法
パーキンソン病治療では、薬物療法が主流となっています。
年齢や症状の変化などの診断に合わせて、さまざまな薬を組み合わせて治療を行います。
現在医療現場で使われている主な治療薬は、2種類あります。
L‐ドパ
L‐ドパは、アミノ酸の一種で、ドパミンの元となる物質です。
パーキンソン病は脳内でドパミンが不足する病気です。
ドパミンを補充することで症状を抑えることができます。
ドパミンはもともと人間の身体の中にある物質であり、服用に際して安全性が高いことがメリットです。
デメリットとしては、もともと体内にあるアミノ酸を服用するため代謝が早く、効果が長く持たないことです。
ドパミンアゴニスト
ドパミンとは全く違う物質ですが、ある種のたんぱく質と結合することでドパミンと同じ働きをします。
ドパミンアゴニストの最大の特徴は、効果が長続きすることです。
ただし、L‐ドパに比べて効果が弱いため、初期のパーキンソン病と診断された場合や症状の軽い患者さんに投与することが推奨されています。
また、副作用として食欲低下や吐き気、下肢のむくみなどが報告されています。
手術
パーキンソン病の治療は、薬物療法から始めます。
しかし、薬に効果が認められなかったり、副作用が強かったりすると、服用が困難になります。
薬物療法が困難な場合、手術という選択もあります。
手術はDBS(脳深部刺激療法)という術式が主流となっており、脳内に電極を埋め込み神経細胞の興奮を抑えることを目的としています。
現在手術を行っている医療機関は限られており、年齢制限や認知症がないことなど適応基準が決まっています。
リハビリテーション
リハビリテーションは、パーキンソン病治療に欠かせません。
主に「体力維持」「柔軟性維持」「筋力維持」「動作の練習」「呼吸練習」があります。
パーキンソン病治療は、進行をいかに遅らせるかが主な目的となっています。
薬を服用しながら、リハビリテーションで身体を動かしやすい状態を維持することは、生活のクオリティにも関わってきます。
パーキンソン病の診断から早い段階でリハビリテーションを行うことで、移動、食事、入浴といった基本的な日常生活も一人で行うことができ、介助の必要が少なくなります。
パーキンソン病で注意の必要な薬
パーキンソン病の治療では、薬物療法が重要となっています。
ところが、ほかの薬との飲み合わせにより、症状が悪化したり、効果を抑制する事があります。
新しい薬を服用するときには必ず主治医に相談するか、お薬手帳を持って薬剤師に相談するなどしましょう。
悪化させる可能性がある薬
他の病気の薬を併用する際には気をつけなければなりません。
ドパミンを抑制する事でパーキンソン病をの症状を促す可能性のある薬を取り上げました。
胃腸薬
胃腸薬は食べ過ぎた時などに、つい手が伸びてしまいます。
しかし、胃腸薬にもパーキンソン病を悪化させる薬があります。
代表的な薬としてプリンペラン、ドグマチールなどがあります。
うつ・不安の薬
誰でも気分が晴れず落ち込んだり、悲観的になって眠れなくなることがあります。
そのようなときに効果が期待できるのがうつ・不安の薬です。
代表的な薬としてドグマチールなどがあります。
精神薬
精神的に気持ちの高ぶりを抑え、気持ちを穏やかにする治療薬です。
おもな作用は、「ドパミン」と「セロトニン」という神経伝達物質を抑制することです。
代表的な薬としてリスパダール、ジプレキサなどがあります。
薬の効果が出にくくなる可能性がある薬
パーキンソン病の薬の効果が出にくくなる可能性のある薬もあります。
特に、胃酸の分泌を抑える薬には注意が必要です。
薬局などでも簡単に手に入ることもあるため、薬剤師に確認しましょう。
代表的な薬としてガスター、タケプロン、オメプラールなどがあります。
パーキンソン病の薬について詳しく知りたい方は下記の記事も併せてお読み下さい。
パーキンソン病の治療法は「薬物療法」が中心となります。しかし、薬物療法はときに副作用を伴うため、体調や症状の変化を注意深く観察する必要があります。本記事では、以下の項目について解説します。 パーキンソン病とは パーキンソン病[…]
あぶらとり紙でパーキンソン病の早期発見?
パーキンソン病は似た症状の病気も多く、さまざまな検査を経て初めて診断されます。
しかし、2021年9月、「花王」「Preferred Networks(PFN)」「順天堂大学」の共同研究によって新発見が発表されました。
それは、皮脂に含まれるRNAにパーキンソン病患者特有の情報が含まれているということです。
約4000種類のRNA情報の中で、パーキンソン病患者だけが大きく変化していたRNA情報に注目した研究です。
年齢や性別にかかわらず、皮脂RNAを分析することでパーキンソン病の診断が可能になるということが示されました。
将来的には、あぶら取り紙のようなフィルムで皮脂を採取して、簡単にパーキンソン病の診断ができるかもしれません。
パーキンソン病は、とにかく早期発見・早期治療が重要で、発症後の生活クオリティが変わってきます。
手軽に検査をして診断結果がわかれば、早い段階で対処・治療が可能になります。
パーキンソン病の診断のまとめ
ここまで、パーキンソン病の診断や治療方法ついて解説しました。
要点を以下にまとめます。
- パーキンソン病の診断は神経内科で行い、画像診断など様々な検査が必要
- パーキンソン病の主な治療方法は、薬物療法とリハビリテーション
- パーキンソン病の早期発見・治療に皮脂のRNA情報に役立つ
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。