年齢を重ねていくと身体の筋力が低下しやすくなるため、介護予防を行う必要があります。
特に「体操」は誰でも気軽に始めることができるためおすすめですが、具体的にどのような効果を得ることができるのかなど、詳細について知らない方が多いと思います。
本記事では、介護予防における体操について以下の点を中心にご紹介します。
- レクリエーションと体操の関係
- 介護予防に効果的な上半身の体操
- 介護予防に効果的な下半身の体操
- 体操のやり方と注意点
より安全で効果的な体操を行うためにも、参考にしていただけますと幸いです。
ぜひ最後までご覧ください。
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体操はレクリエーションの一つ
体操は「レクリエーション」の中の一つとして行われるものです。
レクリエーションは、サービス利用者の生活をより快適で豊かにするために行われています。
具体的に挙げると、レクリエーションは「身体を動かすタイプ」と「考えるタイプ」と「音楽を活用するタイプ」と「何かを作るタイプ」の四つに分けることが可能です。
今回紹介する体操は、身体を動かすタイプに含まれます。
輪投げや玉入れなど、チームで行うものも含まれますので、コミュニケーションを取りながら楽しく運動することができます。
また、運動を行うことで、身体を支えるために必要となる筋肉量の低下を予防することも可能です。
タイプごとのレクリエーション内容は以下の通りです。
どのタイプも生活の中にぜひ取り入れて頂きたいものばかりですので、参考にしていただければ幸いです。
タイプ | 内容 | 効果 |
体を動かす | 体操、輪投げ、玉入れ | 筋肉量の低下予防 |
考える | 計算、クイズ、囲碁 | 脳の活性化 |
音楽を活用する | 楽器演奏、歌唱 | 脳の活性化 |
何かを作る | 折り紙、生花、デッサン | 脳の活性化、達成感 |
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介護予防に効果的な体操とは?
一体どのような体操が介護予防に効果的なのでしょうか?
具体的にどのような種類の体操があるのか、そしてどのような効果を期待できるのかについて、上半身と下半身で分けて解説します。
上半身を使った体操
上半身の中でも特に意識して動かした方が良い部分は「手先」や「腕」全体、そして「肩」の周りや「背中」の四か所です。
手先を動かすことで認知症も予防する効果が期待できます。
筋力が低下すると身体を真っ直ぐに保ちづらくなるため、猫背となる方も多い印象です。
しかし、背中のストレッチを行うことで体幹を支えてくれる効果や誤嚥性肺炎の予防を期待することができます。
また、腕の筋力の低下が気になる場合には腕のストレッチを行うと、着替えなど腕を使う動作を以前よりも行いやすくなる可能性があります。
肩こりや腕の上がりにくさも肩の周辺のストレッチを行うことで解消することができ、併せて肩こりによる耳鳴りや不眠症なども改善してくれる効果を期待できます。
下半身を使った体操
下半身の中でも特に意識して動かした方が良い部分は、「足先」や「ふくらはぎ」少し上の「太もも」や「腰」の計4か所です。
身体の中で特に筋力が落ちやすいといわれているのが下半身です。
筋力が落ちると「転倒」のリスクが高まるので、特に足先やふくらはぎ、太もものストレッチを行いましょう。
足の筋肉が増えることで、躓きにくくなるだけでなく、膝への負担を軽減する効果も期待することができます。
また、腰や太もものストレッチを行うと身体を支えてくれる筋力を高めてくれる効果もあるので、腰の曲がりや転倒などを防ぐことが期待できます。
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実際に体操はどうやるの?
介護予防するために必要な体操や期待できる効果について解説しましたので、次は実際のやり方に入ります。
こちらでも上半身・下半身に分け、先程挙げた意識するべき部分を中心とした具体的な体操方法を解説していきます。
上半身の体操
まずは上半身の体操のやり方についてですが、体操は座って行うこともできますのでご安心ください。
立っている方はもちろん、椅子や車椅子に腰掛ける場合でも問題ありません。
手先のストレッチ方法
手先のストレッチ方法は以下の通りです。
特に中指や薬指のあたりが難しいため、注意して行って下さい。
- 両手を前に出し、ぶらぶらと揺らして手首や指先をほぐす
- グーパーの動きを10回行う
- 両手を合わせてから、パーの手をする
- 親指同士、人差し指同士など、両手の同じ指同士がくっついているか確認する
- そのままの形を維持しながら、両手の指先だけが付くように広げる
- まずは親指だけを離して、指と指が付かないように「ぐるぐる」と10回まわしましょう。
- 全ての指同士で行う
腕のストレッチ方法
- 次は腕をストレッチする方法です。
- 両腕をぶらぶらと揺らしてほぐす
- 左手を前に伸ばしてから右真横に動かす
- 右手が左手の肘のあたりに当たるようにクロスさせたら、右手でぐっと体に引き寄せる
- 無理のない秒数でいいので、二の腕が伸びるように左右で行いましょう。
また、今度は背筋や腕がなるべく曲がらないように、両手を上に上げていきます。
腕を伸ばしたら下ろす流れが大切です。
両手の上げ下げ運動も10回程度行います。
(無理のない範囲で行って下さい。)
肩周りのストレッチ
次は肩周りです。
- 肩を上げ下げする
- 両腕を曲げて、肘が外側に向くように広げる
- 肘先で丸を描くように回す
背中のストレッチ
最後に、背中のストレッチについてです。
背中のストレッチは前屈みの体勢となりますので、座って行うことを推奨します。
- 姿勢良く座る
- 肘を引くイメージで胸を張る
- 後ろを振り返るように、身体を捻(ひね)ります。
- 反対側も同じように行う
- 両手にタオルを持ち、同じ姿勢のまま上に上げます。
- 背中を意識しながら腕を左右に動かす
下半身の体操
次に、下半身の体操のやり方を紹介します。
下半身の体操も座って行うことができます。
自分の体調に合わせて、椅子などを利用することをおすすめします。
足先・ふくらはぎのストレッチ方法
まずは足先のストレッチについてです。
足の指に力を入れ、グーの形にしてから開く
かかとを床につけたまま、つま先を上げたり下げたりする
つま先だけを床につけておき、かかとを上げたり下げたりする動きも効果的です。
太もものストレッチ方法
次は、太もものストレッチについてです。
- まずは椅子(もしくは車椅子)に座る
- 太ももの下にタオルを入れ、タオルの両端を両手で持つ
- 片側の足の裏を椅子の上に乗せてから、膝を両手で持つ
- もう片方の足はそのまま下ろした状態で、両手で抱えている側の足を身体側に引く
左足の膝に乗せるのも効果的です。
こちらも左右両方の足で行いましょう。
腰のストレッチ方法
最後は腰のストレッチです。
- お腹のあたりに、丸めたタオルやクッション、まくらなどを置く
- 上半身と太ももの間で挟むように、前屈みの姿勢になる
- 腰に手を当てて、後ろ側に身体をそらす
無理すると腰痛が悪化してしまう可能性もあるので、無理のない範囲で行うように注意しましょう。
腰のあたりの筋が伸びるのを感じながら行います。
ただし、前屈みになりすぎると前側に転倒するリスクが高まりますので、充分に注意しながら行って下さい。
体操上の注意点
体操を行う際には、介護予防を目的としてストレッチしていることを忘れないことが大切です。
ストレッチを行うことで効果を得ることはできますが、無理をし過ぎてしまうと反対に、腰痛の悪化や転倒などのリスクが高くなるので注意しましょう。
また、本記事で紹介しているものは、椅子に座った状態で行うことができるものばかりですので、不安な方は座って行うことをおすすめします。
紐がついているタイプの靴で体操を行う場合、紐がほどけて転倒するリスクがありますので注意が必要です。
介護用に作られているタイプの靴は、足にフィットしやすい上に歩きやすいデザインですので、靴にお悩みの方はぜひ検討してみて下さい。
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体操のレクリエーションを成功させるために
では、介護を予防するための体操をはじめとしたレクリエーションを、一体どうしたら成功させることができるのでしょうか?
ここでは成功につながる重要なポイントを五つ解説していますので、ぜひ参考にしてみて下さい。
参加者の体調を管理する
まず一つ目は、参加者の体調管理についてです。
ここでいう「体調」とは、実は当日の体調だけではありません。
疾患履歴や現在治療中の疾患、現在服薬中の薬の内容なども含めて、すべて把握する必要があります。
全てを本人や家族から直接申告していただくのは難しいという場合には、用紙に記入していただく等の工夫をされることをおすすめします。
また、参加する方がこれまでに疾患履歴などから、体調が損なわれてしまうリスクが高いと分かった場合は対策する必要があります。
ぜひ体調だけでなく、参加する方の性格や状況なども把握したうえで、ご本人に合った対応をすることがおすすめです。
つかみを工夫する
レクリエーション以外にもいえることですが、やはり「つかみ」はかなり重要です。
つかみで参加者の興味を引くことができると、かなり楽しくレクリエーションを行うことができます。
しかし、参加者が「大人」であるということには注意してください。
自分も受けたいと思うようなつかみを基準にしながら、工夫をされることをおすすめします。
クールダウンを大切にする
運動は身体だけでなく心にも負担がかかりますので、体操が終了したらクールダウンを行いましょう。
心が落ち着くような曲を流すなど、リラックスできるような時間を設けることが大切です。
継続できるように工夫する
介護予防の体操を一度行っただけでは効果を期待することはできないため、継続する必要があります。
そのため、参加者が継続できるように工夫しましょう。
たとえば、体操後一人一人に声をかける時間を設けるのも効果的です。
一人で行うよりも誰かと声を掛け合って行うほうが、より続きやすい上に楽しく行える場合も多いです。
毎回同じ内容とならないように考えるだけでも大変ですが、参加者の立場に立って行うようにして下さい。
体操のやり方を教えてくれるカフェがある?
本記事だけでは「介護予防のためにどのような体操を行ったらよいか分からない」と感じる方もいると思います。
そんな方におすすめなのが、体操のやり方を教えてくれるカフェです。
例を挙げると、東京都新宿区左門町の四谷メディカルビル2階にある健脳カフェは、予約をしていなくても誰でも気軽に利用できます。
平日の日中を対象に、レクリエーションだけでなく栄養相談やケア相談なども行われていますので、体操についても気軽にご相談いただけます。
また、介護予防のための体操をレクチャーしている「認知症カフェ」なども全国にあります。
地域によって提供している内容が異なっている可能性がありますので、一度「介護予防の体操」についてお問い合わせしてみて下さい。
介護と体操のまとめ
ここまで介護予防に体操は効果的なのか、具体的にどのようなやり方で体操を行うのかなどを中心に書いてきました。
この記事のポイントをおさらいすると以下の通りです。
- レクリエーションは全四種類あり、体操は「体を動かすタイプ」に含まれる
- 介護予防に効果的な上半身の体操は、特に手先や腕、肩周り、背中を意識して動かす
- 介護予防に効果的な下半身の体操は、特に足先やふくらはぎ、太もも、腰を意識して動かす
- 体操は身体をほぐしながら自分のペースで、自分のできる範囲で無理をせずに行う
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。