介護保険の認定には、有効期間が設定されているのをご存知でしょうか。
有効期間が切れるとどうなるのか、どうすれば更新できるのか疑問に思っている方もいらっしゃると思います。
今回は、このような介護保険の更新に関する疑問について徹底解説していきます。
- 要介護認定の有効期間
- 要介護認定の更新
- 要介護認定の再申請
この記事を読めば、介護保険の更新期間が近づいたときにどうすればいいのかが分かります。
是非最後までご覧ください。
介護保険で利用できるサービスについて詳しく知りたい方は下記の記事も併せてお読み下さい。
高齢化が進み、要介護者の増加や介護期間の長期化などがみられるようになりました。また、老老介護という言葉もあるように介護する家族も高齢化しています。そういった現状を踏まえ、介護の負担を減らすために作られた制度が介護保険です。[…]
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介護保険について
まずは、介護保険制度の概要について解説します。
介護給付を受けるための流れや、必要な証明書類について説明していきます。
介護給付を受けるには
介護給付を受けるためには、介護保険の被保険者になり、要介護認定を受ける必要があります。
介護保険の被保険者は
- 第一号被保険者(65歳以上)
- 第二号被保険者(40歳以上65歳未満の医療保険加入者)
のいずれかです。
被保険者は、介護認定の申請、認定調査、介護認定審査会を経て要介護認定を受けます。
介護保険被保険者証
介護保険被保険者証が交付されるのは以下の方です。
- 第一号被保険者すべて
- 第二号被保険者のうち、国が定めた16種類の特定疾病により、要介護状態になった方
更新は、要介護認定を受けている方のみ必要です。
以降で解説する要介護認定の有効期間が終了する前に、市町村に更新手続きを申請する必要があります。
介護保険負担割合証
介護保険負担割合証は、要介護認定を受けたすべての方に交付されます。
更新は、要介護認定を受けている方すべてを対象に、自動で行われます。
そのため、被保険者が手続きをする必要はありません。
介護保険負担限度額認定証
介護保険負担限度額認定証は、所得と預貯金等の要件を満たした、第1段階~第4段階と認定された方に交付されます。
毎年7月31日までに更新する必要があり、
- 更新の申請書
- 本人及び配偶者の預貯金等を証明する書類
それぞれを市町村に提出して行います。
更新の申請書は、市町村により送付される時期が異なります。
不明な点は保険者に問い合わせするとよいでしょう。
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要介護認定の有効期間
要介護認定には有効期間があります。
厚生労働省では、要介護認定の有効期間を原則6ヵ月と定めています。
ただし、要介護認定を決定する市町村の判断によって3~48ヵ月(4年間)の間で設定することが可能になっています。
具体的には、介護保険を新規申請した人の場合は3~12ヵ月(1年間)の間で、要介護認定を更新した人の場合は3~48ヵ月(4年間)の間で設定することが可能です。
例えば心身の状態がある程度安定している人や、更新前と同じ要介護度の判定だった場合は有効期間が長くなります。
一方で要支援1・2~要介護1の比較的軽度の人は、3~6ヵ月といった短期間で設定される場合があります。
高齢化が進み、要介護者の増加や介護期間の長期化などがみられるようになりました。また、老老介護という言葉もあるように介護する家族も高齢化しています。そういった現状を踏まえ、介護の負担を減らすために作られた制度が介護保険です。[…]
要介護認定の更新
介護保険の更新を行うには、更新認定の手続きを行う必要があります。
決して難しい手続きではありませんが、更新するのを忘れてしまうと介護保険サービスが利用できなくなってしまいます。
介護保険の更新認定に必要な手続きを間違いなく行うことができるように、しっかり確認しておきましょう。
申請期間
介護保険の更新手続きは、申請期間が定められています。
申請期間は要介護認定の有効期間最終日の60日前~最終日までとなっています。
例えば、有効期間が令和2年11月1日~令和3年10月31日までと仮定します。
この場合、更新の申請を実施できるのは令和3年9月2日~令和3年10月31日までの間ということになります。
なお、申請期間内であればいつ申し込んでも現在の有効期間の翌日からが新しい有効期間となります。
例えば更新申請日が令和3年9月2日でも10月31日だったとしても、次の有効期間の開始日には影響ありません。
令和3年11月1日からが新しい有効期間となります。
ただし、申請が遅れると新しい有効期間に介護保険の審査が間に合わない可能性も出てきます。
新しい有効期間の開始日まで介護保険の審査が間に合わなかった場合、利用した介護保険サービスの一部に保険が効かなくなる恐れがあります。
介護保険が効かなくなって高額請求になるリスクを避けるためにも、介護保険更新の申請期間に入ったら速やかに申請できるようにしておくことが大切です。
スムーズな更新申請には、必要書類を事前に準備しておくことがポイントになります。
手続きの方法
介護保険の更新手続きは、住民票が登録されている自治体に必要書類を提出することにより実施します。
更新に必要な書類が受理されれば、あとは自治体の指示に従うことにより更新手続きが完了します。
更新に必要な書類は、以下の通りです。
- 要介護(要支援)認定更新申請書
- 介護保険被保険者証 (万が一紛失していても問題ない)
- 健康保険証 (40~64歳の方)
※40~64歳の方が介護保険を利用するためには、厚生労働省が定める特定疾病の診断を受けていること・公的医療保険に加入していることが条件に加わります。
介護保険の更新手続きは、住民票がある自治体に必要書類を提出します。
要介護(要支援)認定更新申請書は、各自治体の介護保険担当窓口や最寄りの地域包括支援センターにて無料で配布されています。
また、各自治体ではホームページにも申請書データが公開されている場合が多いのでダウンロードして使用することも可能です。
なお自治体ごとに更新申請書の様式が独自に定められていたり、他の提出書類が必要な場合もあります。
ダウンロードする際は、必ず自身が住む市区町村のホームページから探すようにしてください。
【参考】介護保険更新手続きの流れ
- 要介護(要支援)認定更新申請書を提出する
- 更新審査に必要な審査を受ける(要介護認定調査)
- 主治医が自治体へ「主治医意見書」を提出する
- 自治体などが実施する「介護認定審査会」にて要支援1~要介護5のどれに該当するか審査される
- 自宅へ新しい介護保険被保険者証が届く
要介護認定調査は、主に市区町村から委託された民間事業所のケアマネジャーが調査に訪問する主治医がいない人や、長時間受診していない場合は医療機関から受診を求められる場合があります。
また、最も軽度である要支援1にも満たないと判断された場合は「非該当」という認定になります。
要介護認定の再申請
要介護認定の更新手続きの結果が出てからは、有効期間の間は基本的に手続き結果に基づいた介護保険サービスが実施されます。
しかし有効期間の満了を待たずに要介護認定を再申請し、現在の要介護度を見直してもらう手続きがあります。
以下の二つに当てはまる場合は、要介護認定の再申請が可能です。
- 要介護度に不服がある場合
- 区分変更をしたい場合
大まかな違いは下記の通りです。
【不服申し立てと区分変更の違い】
不服申し立て | 区分変更 | |
概要 |
|
|
どんな時に利用するか | 要介護認定の結果に不服があるとき | 心身状態が大きく変わったとき |
申請先 | 都道府県 | 市区町村 |
申請期限 | 認定結果が出てから3ヵ月以内 | 特になし |
審査内容 | 要介護認定の過程に不当な部分があったかどうか | 要介護認定そのものを見直す |
結果が出るまでの期間 | 3ヵ月+α | 1~2ヵ月 |
この章では、要介護認定の再申請についてご紹介していきます。
要介護度に不服がある場合
要介護度を見直す再申請手続きの一つ目は、「不服申し立て」という手続きです。
介護保険の新規申請や更新申請によって出た要介護認定の結果に対して納得がいかない場合は、不服申し立てが可能です。
【「不服申し立て」の概要】
審査する団体 | 介護保険審査会(都道府県) |
申請期限 | 要介護認定の結果を受け取ってから3ヵ月以内 |
審査内容 | 要介護認定の過程が法令・制度上適切だったかどうか |
審査中の取扱い | 新しい要介護度は有効のまま介護保険サービスを利用する |
結果が出るまでの期間 | 約3ヵ月(+1~2ヵ月) ※結果が出た後に要介護認定の審査がやり直しとなるので、更に1~2ヵ月上乗せされる |
審査後の取扱い | 要介護認定の過程において法令・制度上不適切な取扱いがあったと認められた場合に、要介護認定結果が取り消され、改めて市区町村が要介護認定を審査する |
審査の結果、要介護度の認定が不当だったと認められた場合に初めて再審査が行われます。
その点には注意が必要です。
例えば、今まで要介護2の認定を受けていた人が更新によって要支援2と判定されたとします。
要支援2の判定に対し「不服申し立て」をした場合は、要支援2の認定のままサービスを利用しながら不服申し立ての審査結果を待ちます。
不服申し立てによる約3ヵ月の審査の結果、要支援2の認定プロセスの中で不適切な点があったと認定された場合に初めて要支援2だった審査をやり直す手続きに入ります。
このように、「不服申し立て」は要介護認定の結果そのものに不服があった場合に実施される手続きです。
ただし、審査結果までは3ヵ月ほどかかることに加えて審査中は不服であった要介護度が無効にならないという注意点があります。
審査の結果が出るまで時間がかかるだけでなく、不服申し立て自体では要介護度を見直してもらうことができません。
区分変更をしたい場合
要介護度を見直す再申請手続きの二つ目は、「区分変更申請」です。
区分変更申請は、要介護認定の審査を受けた後に著しく心身の状態が改善・悪化したことによって要介護度の見直しが必要になったときに実施します。
【区分変更申請の概要】
審査する団体 | 介護認定審査会(市区町村) |
申請期限 | 特になし(認定当時と比べて明らかに状態が良くなった・悪くなったとき) |
審査内容 | 要介護認定そのもの |
審査中の取扱い | 現在の要介護度が保留される |
結果が出るまでの期間 | 1~2ヵ月 |
審査後の取扱い | 「区分変更申請」申請日に遡って見直し後の要介護度が適用される 要介護度は上がることも下がることもある |
区分変更申請は、介護保険の更新申請と同様に住民票がある自治体に申請します。
区分変更申請は、改めて要介護認定の一連の手続きを直接やり直すことになります。
そのため、審査は更新申請の時と同様の流れで実施されます。
なお介護保険の更新手続きの審査結果に不満があった場合に、結果が出るまでかなりの時間がかかる「不服申し立て」の代わりに「区分変更申請」が実施されるときもあります。
前回の要介護認定調査を受けたときと比較して明らかに状態が改善した(もしくは悪化した)状態が続いたことによって、現在の介護保険サービスが不要になった(もしくは足りなくなった)場合に申請することができます。
介護度が軽くなれば一部サービスの利用料が安くなりますし、要介護度が重くなれば利用できるサービスの種類や量が増えるというメリットがあります。
区分変更申請を実施すると、再び介護認定調査の流れに沿って審査が行われます。
ただし民間のケアマネジャーが審査に関わる更新申請と違って、区分変更申請の場合は市区町村の介護保険担当課の職員が全ての調査を実施します。
審査中は申請時点の要介護度が一旦無効となるので、介護保険サービスを利用しても利用料の請求がストップします。
結果が出てからまとめて数ヵ月分の請求が発生する点は念頭に置いておきましょう。
ケアマネジャーに相談を
要介護認定の再申請について、不服申し立てと、区分変更申請の二つの手続きをご紹介してきました。
例え介護保険の更新結果に不満があって再申請の手続きを実施したとしても、必ず覆るというわけではありません。
またどちらの再申請も手続きの流れが複雑で、申請中の介護保険サービスの取扱いについても専門家でなければ理解が難しいです。
介護保険の更新結果に不満があった場合はすぐに再申請の手続きを行うのではなく、まずは担当のケアマネジャーに相談しましょう。
要介護認定の有効期間が切れてしまったら
要介護認定の有効期間が切れてしまったら、介護保険サービスが利用できなくなります。
要介護認定の有効期間が切れる前に更新申請を実施しないと要介護認定が失効してしまうからです。
有効期間がいつまでなのかを必ず確認しておき、申請期間開始と同時に更新申請ができるように準備しておきましょう。
万が一要介護認定期間が切れて要介護認定が失効してしまうと、当然ながら介護保険サービスを利用する権利を失ってしまいます。
失効した場合はもう一度「要介護認定新規申請」を実施する必要があります。
再び要介護認定新規申請を実施すれば、要介護認定の結果が出る前からでも介護保険サービスを再び利用できるようになります。
しかし失効後すぐに、要介護認定新規申請をしたとしても前回と同じ要介護認定になるとは限りません。
また、要介護認定の結果が出る前に介護保険サービスを利用すると、予想と異なる要介護度が出たときに利用した介護保険サービスの一部が全額自己負担となり思わぬ高額請求のリスクがあります。
要介護認定の更新を怠ると一時的に介護保険サービスを利用することができなくなるだけでなく、利用料の高額請求が発生するリスクも生まれてしまいます。
要介護認定の有効期間は必ずチェックし、更新申請期間を逃さないように注意しましょう。
入院中でも更新申請は必要?
入院中に更新申請の申請期間が訪れた場合は、更新申請の必要性を判断する必要があります。
入院中の必要な医療的ケアや介護については全て医療保険制度が適用されるので、退院の目途が立たない場合は更新申請は不要です。
入院中で更新手続きが不要となる場合は、例えば専門的な医療ケアが常時必要となって介護保険サービスでの対応が困難となった場合や、病院での看取りを選択した場合が考えられます。
ただし、入院中でも更新申請が必要なケースがあります。
具体的な退院の目途が立っており、退院後に介護保険サービスを利用することが予測されている場合です。
また入院中に心身状態が悪化したが退院日が近づいている場合、「区分変更申請」を勧められることもあります。
入院中に更新申請の申請時期が来たとき、退院できる目途が立たない場合や病院での看取りを選択した場合は不要です。
退院して在宅復帰したり、退院後は介護保険施設への入所をしたりする場合は更新が必要です。
退院が間近に迫っている場合は更新申請ではなく、区分変更申請が必要になる場合もあるので病院の医療相談員や担当のケアマネジャーに相談しましょう。
自分で申請に行けないときは
更新申請は基本的に利用者・家族が実施します。
もし、自分で申請に行けないときは担当のケアマネジャーや最寄りの地域包括支援センターなどの介護サービス事業所が代行申請することができます。
施設入所している方であれば、入所先の相談員にお願いすれば大丈夫です。
どの場合も書類作成を手伝ってくれたり、自治体への更新申請を代行したりしてくれます。
なお、更新申請に関する手続きの流れは市区町村によって異なる場合があります。
例えば利用者側から更新手続きの書類を準備しなくても、更新のための認定調査の連絡と同時に自動的に更新手続きが実施される自治体があります。
また、更新申請の期間になると自動的に更新申請書が自宅に送られてくる場合もあります。
更には、利用者・家族ではなく担当のケアマネジャーが更新スケジュールを管理し、特に依頼しなくても更新申請をしてくれる場合もあります。
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介護保険と更新のまとめ
ここまで、介護保険の更新に必要な手続きや再申請ができる場合について解説してきました。
- 要介護認定の有効期間は、原則6ヵ月だが認定の状況に応じて3~48ヵ月の間で設定される
- 更新認定の更新手続きは、有効期間最終日の60日前~有効期間最終日までに住民票のある市区町村へ提出する
- 要介護認定の再申請には、認定プロセスの正当性を審査してもらう「不服申し立て」と、要介護認定を見直してもらう「区分変更申請」がある
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。