どんな方にも人生には必ず「終わり」が訪れます。
自分らしい最期を迎えるための一つの方法として、ホスピスケアがあります。
本記事ではホスピスについて、以下の点を中心にご紹介します。
- ホスピスとは
- ホスピスの内容
- ホスピスの費用
ホスピスの利用を検討するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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ホスピスとは
ホスピスの意味や、その他の終末ケアとの違いを解説します。
ホスピスとは?
ホスピスとは、人生の終末期を迎えた方の身体的・精神的苦痛を軽減させるケア方法です。
とくに重要視されるのが、その方らしい最期を迎えるためのサポートです。
ホスピスで行われるケアは、大きく分けて以下の3つです。
- 身体的ケア
- 精神的ケア
- 社会的ケア
なお、「ホスピス」という名称は、1967年にロンドンで創設された末期がん患者のためのケア施設から由来しています。
ホスピスと看取りケアや緩和ケアとはどう違う?
ホスピスとよく似た言葉に、「看取りケア」や「緩和ケア」があります。
ホスピスと看取りケア・緩和ケアの違いとは、どこにあるのでしょうか?
以下の表を参考に、詳しく解説していきます。
サービス名称 | 目的 | 期間 |
ホスピスケア |
| 治療を望めない段階〜最期 |
緩和ケア | 身体的苦痛の軽減 | 治療開始〜治療終了・最期 |
看取りケア | 死の直前にある人の苦痛を緩和し、その人らしい最期をサポートする | 最期を迎える直前 |
まず看取りケアとは、死の直前にある方の苦痛を緩和しその人らしい最期を支えるケア方法です。
たとえば意識不明の状態に陥っても、一人の人間として尊重しながら、声かけや身体的介助を行います。
一方ホスピスとは、終末期の苦痛を最小限にするためのケア方法です。
看取りケアが死の直前の比較的短い時間を対象とするのに対し、ホスピスはある程度の期間を対象とします。
次に緩和ケアとは、身体的苦痛の軽減に重きを置くケア方法です。
主に末期がんやエイズの方を対象とし、ケアのために医療的な方法が行われることが多いのが特徴です。
対してホスピスが重要視するのは、終末期を迎えた方の総合的な苦痛の軽減です。
具体的には、身体的・精神的トータルケアを行います。
また、緩和ケアとホスピスでは、ケアの対象期間にも違いがあります。
緩和ケアは基本的に、病状・疾患の進行度にかかわらず行われます。
具体的には、治療開始~治療終了・最期までが対象期間です。
一方、ホスピスは、治療を望めない段階~最期までを対象期間としたケア方法です。ホスピスの対象者は?
ホスピスの対象者は、終末期を迎えた方とその家族です。
具体的には、有効な治療を望めなくなった方、余命宣告を受けた方などがあてはまります。
ホスピスは、患者本人だけでなく家族もケアの対象に含んでいる点が特徴です。
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ホスピスケアの内容
ホスピスでは、「身体的ケア」「精神的ケア」「社会的ケア」の3つを主な柱とします。
それぞれの内容を解説します。
身体的ケア
身体的ケアでは、主に身体的症状の緩和を行います。
たとえば呼吸のサポートや、痛みの軽減などの治療が中心です。
あるいは自力での食事が難しい方への食事介助や、身だしなみなども含まれます。
その他以下の身体的ケアが行われます。
- 鎮痛剤の使用
- 痛みの軽減を目的とした放射線治療
- 呼吸苦の緩和
- 疼痛コントロール
- 食事・入浴・排泄など日常動作の介助
- 身だしなみ
- 清拭
ちなみにホスピスでは、基本的に延命を目的とした治療は行いません。
精神的ケア
精神的ケアは、死を目前にした方から死をおそれる気持ちを取り除くためのサポートです。
たとえば、できるかぎり家族と過ごせるようなサポートが代表的です。
あるいは、季節ごとのイベント・レクリエーションなどは、最後まで人生を充実させるという意味で精神的ケアに含まれます。
また、音楽を聴いたりお気に入りのものを飾ったりして部屋を居心地よく整えるのも有効な精神的ケアです。
場合によっては、心理療法士によるカウンセリングや、宗教家によるスピリチュアル面のサポートが行われることもあります。
- 家族と過ごす時間を作る
- レクリエーションや季節のイベント
- 部屋を居心地よく整える
- 心理療法士によるカウンセリング
- 僧侶・牧師などの宗教家によるサポート・宗教行事
いずれの方法も、目的は死に際して心残りや未練を減らすためのサポートです。
未練や心残りをなくすことで患者の方は死を受け入れやすくなり結果として、死への恐怖・不安を取り除くことができます。
社会的ケア
社会的ケアでは、患者の方とその家族の現実生活に必要なサポートが行われます。
たとえば介護・看護スタッフの手配などが代表的です。
経済的な問題などがある場合、ソーシャルワーカーがサポートに加わることもあります。
とくに在宅ホスピスの場合、家族の収入が減ることも多いため、ソーシャルワーカーの支援には大きな意味があります。
ちなみに、ソーシャルワーカーは、社会福祉支援の専門職員です。
ホスピスにおけるソーシャルワーカーの役割とは、患者の方や家族の悩み・不安に耳を傾け、的確な助言を行うことです。
また、社会資源の活用や各機関との連絡・調整もホスピスにおけるソーシャルワーカーの重要な役割です。
その他、下記のようなケアも社会的ケアに含まれます。
- 介護・看護サービスやスタッフの手配
- ソーシャルワーカーによる生活全般の福祉支援(入退院手続き・家族の就労支援など)
- 遺産・遺品の整理や処理
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ホスピスケアを受けられる施設は?
ホスピスケアを行っている施設には、病院の緩和ケア病棟とホスピスプラン付の介護施設があります。
それぞれの特徴を解説します。
病院の緩和ケア病棟
病院内に設置されたホスピスを緩和ケア病棟と言います。
院内で治療を受けていたが、治癒が難しく病状が悪化した人や自ら緩和ケアを望んだ人が、対象です。
同じ病院内での移動なので、本人の病状や過去の治療歴などがスムーズに伝わり、家族にも負担が少なくて済みます。
緩和ケア病棟では、それまで行われていた病気治療のためのケアは行わず、病気によって引き起こされる苦痛を和らげる治療を行います。
家族に対しても精神的なケアや経済的な悩みについてのサポートがあります。
ホスピスプラン付きの介護施設
最近は、ホスピスケアを提供する有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅なども増えています。
これら介護施設を利用するには、介護保険を利用することがほとんどですので、介護認定を持っている方が入居対象になることが多いです。
介護認定を受けていない人が絶対に入居できないというわけではありません。
しかし、その場合は介護に関わるサービスが実費での支払いになるので、毎月高額の費用が掛かってしまいます。
ホスピスケアにかかる費用の相場
ホスピスケアにかかる費用は、利用する施設の種類によって異なります。
一概にはいえませんが、75歳以上で自己負担一割の方であれば、月10万~15万円程度かかります。
病院の緩和ケア病棟
ちなみに、緩和ケア病棟を利用する場合には、以下の3つの費用が発生します。
- 自己負担分の入院料
- 自己負担分の食費
- 差額ベッド代
入院料
ホスピスの入院料には健康保険が適用されます。
【1ヶ月あたりの自己負担額】
- 70歳以上:約5万7600円
- 70歳未満:約46万9000円(3割負担)
基本的に1ヶ月の入院料は上記の通りですが、「限度額適用認定証」を病院に提出した場合、自己負担額を抑えることができます。
自己負担額の限度は所得によって異なります。
例えば一般的な所得を得ている方であれば、約9万3000円の支払いになります。
食費
食費についても、施設によって異なるため一概には言えません。
一般的には、一食460円(1日1380円)となっています。
差額ベッド代
差額ベッド代とは、病室の規模に応じて変動する費用です。
3~4人部屋・2人部屋・個室などの一室あたりの入居者数が少ない部屋ほど高額になります。
一般的な6人の大部屋であれば、差額ベッド代は発生しません。
なお、緩和ケア病棟でのホスピスには、高額医療費制度が適用されます。
高額医療費制度は、経済的な負担の軽減に役立ちます。
ホスピスの費用は比較的高額であるため、金銭負担を軽減するためにも医療費制度をうまく活用しましょう。
ホスピスプラン付きの介護施設
ホスピスプラン付介護施設を利用する場合は、次のような費用が発生します。
- 居住費
- 食費
- 光熱費
- 諸雑費
- 介護保険サービス費
介護保険サービス費については、介護保険が適用されますので、自己負担は収入に応じて1割~3割になります。
居住費は、施設・部屋の種類・地域により異なりますが、月額15万円~30万円程度かかる施設が多いです。
諸雑費には、おむつ代やリクリエーションに関わる費用、理美容代、日用品などで、個別に支払わなければなりません。
その他、リハビリや口腔内衛生などの医療・介護が必要な場合も個別に費用が必要です。
ホスピスケアに関しても、施設によっては個別に費用が必要となりますので、利用される方によっておよそ5万円~20万円程度はかかると考えておいてください。
これらの費用の負担を少しでも軽減するために、高額介護サービス費制度があります。
高額介護サービス費制度とは、1ヶ月の介護保健サービス費用自己負担額が限度額を超えた場合に、超過分の金額が返ってくる制度です。
支給対象者には、申請書が送付されますので、忘れずに申請しましょう。
その他、収入に応じた負担軽減制度もありますので、対象となる場合はきちんと申請してください。
ホスピスの利用の流れ
ホスピスの利用を希望する場合、どのような手順で入院するのでしょうか。
ホスピスへの入院手順などについて解説します。
入院条件はある?
ホスピスへ入院・入所できるのは、がんなどの病気で完治する見込みのない方です。
そして、本人が治癒のための治療ではなく、苦痛を取り除く治療を受けたいと希望されることが条件です。
ホスピスでは、本人の意思を尊重したケアを行いますので、本人の希望無しでは受け入れられません。
そのため、ホスピスに入院を申し込む大前提として、患者本人と家族がホスピスについてよく話し合うことが必要です。
入院・入所の流れ
入院までの大まかな流れは、次の通りです。
- 入院申し込み
- 家族面談
- 事前説明
- 入院判定
- 入院
病人に入院している場合は、担当医などへの相談、もしくは担当医からホスピスを勧められる場合があります。
どの場合でもまず初めに電話でホスピス入院の希望を伝え、面談を申し込みます。
家族面談では、本人の病状や経過、それまでの治療内容などについて、担当医へ説明をしますので、かかりつけ医からの紹介状や検査データなどの提出をしなければなりません。
その後、担当からホスピスの説明や病棟内の案内などがされる場合もあります。
入院の検討が行われ、入院が決定すると、本人の病状なども考慮した上で、入院の時期が決まります。
ホスピスの平均滞在期間
ホスピスは、最期を迎えるまで入院できる長期療養型の施設だと考えられていますが、現在全国のホスピスや緩和ケア病棟での平均滞在期間は、約43日です。
これは、ホスピスや緩和ケア病棟の数が圧倒的に少ないことと日本の医療制度の在り方に原因があります。
ホスピス病床が少ないために、入院したくてもできない方が多く、長期入院が難しくなっているのです。
一方、緩和ケアが進歩したことで、在宅でもホスピスケアが可能になっていることも滞在期間の短さにつながっています。
例えば、痛みが強い、呼吸が苦しいなどの症状が重くなった時はホスピスへ入院し、症状が落ち着けば退院し、通院でのケアに切り替えるという方法です。
現在は、在宅でのホスピスケアにより最期を自宅で迎える方もいらっしゃるなど、様々な形のホスピスケアが増えています。
ホスピスに入院するタイミングは?
ホスピスに入院するタイミングは、本人の身体状況によります。
また、本人がどんな風にこれから過ごしたいかにもよります。
そのため、この時期に入院するという決まりはありません。
さらに、ホスピスに入院したら、もう退院できないわけではありません。
痛みや吐き気などの症状が和らぐことによって、体力が回復し、自宅へ帰る方もいます。
ホスピスは介護施設や病院とは何が違う?
ホスピスの特徴について、介護施設や病院と異なる点を中心に解説します。
治療を行わない
基本的にホスピスでは、延命を目的とした治療は行いません。
たとえば抗がん剤や手術などが当てはまります。
ホスピスで行われる治療は、痛みなどの身体的苦痛を取り除く対症療法が中心です。
ただし、治療に対する姿勢はホスピスによって異なります。
原則として病変そのものの治療は行いませんが、症状コントロールに必要であれば、治療・手術が選択される場合もあります。
イベントなどが積極的
ホスピスは一般的な病院と異なり、患者の方の「家」という側面が強いです。
そのため、季節のイベントやレクリエーションなど、にぎやかな催しを積極的に開催するところも多くあります。
多職種が連携してサポートに当たる
病院や介護施設では、介護スタッフのほか、医師・看護師・理学士などの医療スタッフが連携してケアを行います。
ホスピスでは、さらにカウンセラーや宗教家などがケアチームに含まれるのが特徴です。
たとえば施設内に、チャペルなどの宗教施設を併設しているところもあります。
ホスピスでは患者の方の最後の時間をトータル的にサポートするため、さまざまな分野の方がサポートにあたります。
家族のケア参加も可能
ホスピスでは、患者の方のケアチームに家族が含まれることも多いです。
実際に、患者の家族のための宿泊施設を併設している施設もあります。
また、面会時間に制限を設けていないところも多いです。
利用者の意思を尊重したケアが可能
ホスピスでは、利用者一人一人の意思が尊重されます。
ホスピスの目的は、その方が満足できる終末期をサポートすることだからです。
そのため、客観的に見れば必要とされるサポートであっても本人が拒否するのなら強制はされません。
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ホスピスケアを受ける場所は選べる
ホスピスケアは、在宅・施設のどちらでも利用可能です。
それぞれのメリットとデメリットを紹介します。
施設で受ける場合のメリット
1点目は、医師・看護師・介護スタッフなどが常駐していることです。
緊急時にも、素早く的確なケアを受けることができます。
2点目は、家族の介護の負担を減らせる点です。
とくに終末期は寝たきり状態になることも多いため、専門スタッフによるサポートは家族に大きなメリットをもたらします。
施設で受ける場合のデメリット
1つ目は経済面です。
在宅ホスピスに比べると、施設でのホスピスは費用が大きくなりがちです。
2つ目は家族の付き添いに制限がある点です。
家族用の宿泊設備がある施設もありますが、その分使用料などの負担が大きくなります。
家族がつねに付き添えないことは、本人だけでなく、家族の方にも不安やさびしい思いをさせることがあります。
在宅で受ける場合のメリット
在宅ホスピスの最も大きなメリットは、患者の方が、住み慣れたわが家で過ごせる点です。
最後の時間を家族水入らずで過ごせることは、本人と家族にとって大きな意味があります。
また、面会のために通院・通所しなくてよい点も、家族の負担の軽減に役立ちます。
在宅で受ける場合のデメリット
1つ目は、緊急時に必要なケアを受けられない可能性があることです。
医師や看護師がすぐ駆けつけるとは限らないことは、十分に留意しておきましょう。
2つ目は、家族の介護負担が大きくなることです。
訪問型の介護や看護をうまく組み合わせることで、負担を軽減できます。
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ホスピス・緩和ケア病棟から退院は可能?
ホスピス・緩和ケア病棟から退院は可能です。
ホスピス・緩和ケア病棟の入院や退院には基準があり、長期療養を目的とした入院はできません。
基本的には1ヶ月ほどの入院期間後に、退院して自宅で緩和ケアへ移行することが多いです。
しかし、具合が悪くなってしまい入院が必要になったときは、いつでも入院できるようになっています。
在宅を希望する方は、緩和ケア病棟のスタッフと往診可能な医療機関が連携して本人や家族をサポートする体制があります。
緩和ケア病棟の療養は辛い時間となる可能性があります。
そのため、家族が緩和ケア病棟の入院を希望しても本人が希望していないときは入院できません。
入院については本人と家族が話し合って決めましょう。
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ホスピス施設への入居を希望するなら
ホスピス施設への入居を希望するときのポイントについて
- 探し方の基準・ポイント
- 選び方の基準・ポイント
などがあります。
以下でそれぞれご紹介いたします。
探し方の基準・ポイント
ホスピス施設への入居を希望する場合は
- かかりつけの病院のがん相談支援センター
- 地域包括支援センター
- 医師会の在宅医療介護連携支援室
などへ相談または情報を入手しましょう。
そのほか、ケアマネージャーに相談するのもよいでしょう。
また、病院のホスピスだけでなく、ホスピスプランを提供する有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅もあります。
その結果、選択肢が広がるので、より希望にあったケアを受けられるでしょう。
本人と家族で、最期をどのように過ごしたいか話し合いましょう
選び方の基準・ポイント
ホスピスには大きく分けて
- がんの高度進行期や終末期の療養場所としての緩和ケア
- がん治療と並行して、病気とうまく付き合うことを目的とした緩和ケア
があります。
がんの高度進行期や終末期の療養場所としての緩和ケアは、主としてホスピスや緩和ケア病棟などをいいます。
さらにもう1つは、がんの治療と並行して質の良い生活を送り病気とうまく付き合うことを目的に行う緩和ケアです。
早い時期から病気の治療と合わせてケアが行われます。
自分の希望に合うかを基準にホスピス施設を探しましょう。
ホスピスのまとめ
ここまで、ホスピスについてお伝えしてきました。
要点を以下にまとめます。
- ホスピスとは、終末期を自分らしく過ごすためのトータル的なケア・サポートのこと
- ホスピスの内容は、主に「身体的ケア」「精神的ケア」「社会的ケア」の3つがある
- ホスピスの費用は、利用施設・入院日数で変動するが、ひと月10万~15万程度はかかる
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。